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英語で小泉八雲『じきにんき(食人鬼)』(1)

小泉八雲を続けますが、この作品は翻訳が公開されていないので、拙いですが私の訳を載せます。
誤訳等はご指摘ください。

JIKININKI


Once, when Muso Kokushi, a priest of the Zen sect, as journeying alone through the province of Mino (1), he lost his way in a mountain-district where there was nobody to direct him. For a long time he wandered about helplessly; and he was beginning to despair of finding shelter for the night, when he perceived, on the top of a hill lighted by the last rays of the sun, one of those little hermitages, called anjitsu, which are built for solitary priests. It seemed to be in ruinous condition; but he hastened to it eagerly, and found that it was inhabited by an aged priest, from whom he begged the favor of a night's lodging. This the old man harshly refused; but he directed Muso to a certain hamlet, in the valley adjoining where lodging and food could be obtained.


[脚注]
(1)  The southern part of present-day Gifu Prefecture.


・Muso Kokushi=夢窓疎石(むそうそせき)、諡号(しごう=生前のおこないをたたえ、死後におくる名、おくりな)が「夢窓国師」、 (1275-1351) 鎌倉末・室町初期の臨済宗の僧。伊勢の人。天台・真言などを学んだのち、無隠円範(むいんえんぱん)・一山一寧(いっさんいちねい)・高峰顕日(こうほうけんにち)について臨済禅を修めた。後醍醐天皇や足利尊氏らの帰依をうけ、甲斐の恵林寺(えりんじ)や京都の臨川寺・天竜寺を創建。門下に五山文学の中心をなした春屋妙葩(しゅんおくみようは)らが出た。造園術にすぐれ天竜寺・西芳寺などに築庭。また、天竜寺船による貿易を促進。著「夢中問答集」など。
・direct=(人に)道を教える、案内する
・helplessly=どうしようもなく、どうすることもできず
・wander about=歩き回る
・despair of=~をあきらめる
・shelter=避難所、住まい、家
・when=するとその時
・perceive=~に気付く
・hermitage=隠者の住処
・anjitsu=庵室(あんしつ):〔「あんじつ」とも〕僧・尼あるいは隠遁者の質素な住まい、いおり
・solitary=ひとりの(形容詞)、隠者・独居者(名詞)
・ruinous=荒れた
・hasten=急ぐ
・inhabit=~に住む
・beg the favor of~=~の頼みごとをする
・lodging=宿泊(所)
・This=the favor of a night's lodging
・harshly=無情にも
・direct=(人)を道案内する、(人)に~への道を教える
・hamlet=(小)村、部落
・adjoining=隣の、接している


かつて、禅宗の僧の夢窓国師が美濃の地方を一人て旅している時、誰も道案内をしてくれる人もない山の中で道に迷った。なすすべもなく、ただ長い間歩きまわった。そしてその夜に雨露をしのぐ場所を見つけるのも、そろそろ諦めかけたころ、沈んでいく太陽の最後の光に照らされた丘の上に、庵室と言われる、隠遁者の僧のための小さな家があるのに気がついた。荒れ果てているようであったが、夢窓国師はそこへ向かって夢中で足を運んだ。そこには年老いた僧が住んでいたので、夢窓国師は一夜の宿を頼んだのだが、無情にも断られた。しかし、その老僧はすぐそばにある渓谷の村への道を教えてくれた。そこに行けば宿も食べ物も見つかるというのだった。


Muso found his way to the hamlet, which consisted of less than a dozen farm-cottages; and he was kindly received at the dwelling of the headman. Forty or fifty persons were assembled in the principal apartment, at the moment of Muso's arrival; but he was shown into a small separate room, where he was promptly supplied with food and bedding. Being very tired, he lay down to rest at an early hour; but a little before midnight he was roused from sleep by a sound of loud weeping in the next apartment. Presently the sliding-screens were gently pushed apart; and a young man, carrying a lighted lantern, entered the room, respectfully saluted him, and said:--


・find one's way=苦労して進む、やっとたどり着く
・cottage=小さい家
・dwelling=住居
・headman=長、首長
・assemble=集合させる
・principal=主な
・apartment=室
・show=案内する
・separate=分かれた、別の
・promptly=すぐに、素早く
・supply with=~を提供する
・bedding=寝具類
・rouse=~を目覚めさせる
・presently=やがて、まもなく
・sliding-screen=障子
・respectfully=丁重に、うやうやしく
・salute=挨拶する、会釈する

夢窓国師がやっとたどり着いたその村には、十軒ほどの農家があるばかりだったが、村の長の住まいで篤くもてなされた。夢窓国師がその家に着いたとき、大きな部屋に四、五十人の村人が集まっていたが、彼は小さな別の部屋に通され、すぐに食事と寝具が用意された。彼は大変疲れていたので、早くに床に着いたが、真夜中になる少し前に、隣の部屋から聞こえてくる大きなすすり泣きの声で目がさめた。ほどなく、ふすまがそっと開いて、灯りのともった提灯を持った若い男が入ってきて、丁寧にお辞儀をして言った。


"Reverend Sir, it is my painful duty to tell you that I am now the responsible head of this house. Yesterday I was only the eldest son. But when you came here, tired as you were, we did not wish that you should feel embarrassed in any way: therefore we did not tell you that father had died only a few hours before. The people whom you saw in the next room are the inhabitants of this village: they all assembled here to pay their last respects to the dead; and now they are going to another village, about three miles off,-- for by our custom, no one of us may remain in this village during the night after a death has taken place. We make the proper offerings and prayers; -- then we go away, leaving the corpse alone. Strange things always happen in the house where a corpse has thus been left: so we think that it will be better for you to come away with us. We can find you good lodging in the other village. But perhaps, as you are a priest, you have no fear of demons or evil spirits; and, if you are not afraid of being left alone with the body, you will be very welcome to the use of this poor house. However, I must tell you that nobody, except a priest, would dare to remain here tonight."


・Reverend Sir:reverendは「牧師」なので、「お坊様」ぐらいの呼びかけかな
・painful=骨の折れる、つらい
・embarrassed=困って、当惑して、困惑して・inhabitant=居住者
・assemble=集まる
・pay one's last respects to=〔葬儀で死者〕に最後のお別れをする
・mile=マイル◆1760ヤード、5280フィート、1609.344mに相当する
・offering=ささげ物
・lodging=宿屋、寝る場所
・evil spirit=悪霊

「お坊様、私が今この家の主であると言わなければならないのはつらいことなのです。ほんの昨日は、この家の長男であるにすぎませんでした。あなたがこの家にお着きになった時、疲れておられるご様子だったので、とにかく困らせてしまっては申し訳ないと思ったので、ほんのいっとき前に父が亡くなったことはお伝えしなかったのです。隣の部屋にいた人たちは村の人たちで、みんな父に最後のお別れを言いに集まってくれたのです。そして今、みんなで一里あまり離れた別の村へ向かっています。なぜなら村の習わしで、誰かが死んだその夜は、誰もこの村に残っていてはいけないことになっているからです。捧げものをして、冥福を祈った後、みんな遺体を残したまま、ここを離れるのです。ここに遺体が残っていると、必ず家の中ではいろいろ不思議なことが起こりますから、あなたも私たちと一緒にここを出た方がいいでしょう。その村でもちゃんとした宿は見つけられますからるはずです。でもあなたはお坊様ですから、悪魔や悪霊が怖くなくて、遺体と一緒に残されるのが恐ろしくなければ、汚い家ですがお使いくださってかまいません。でも、くれぐれも言っておきますが、今晩は、お坊さんでもなければ誰もここにいようとは思いませんよ」


Muso made answer:--


"For your kind intention and your generous hospitality I am deeply grateful. But I am sorry that you did not tell me of your father's death when I came; -- for, though I was a little tired, I certainly was not so tired that I should have found difficulty in doing my duty as a priest. Had you told me, I could have performed the service before your departure. As it is, I shall perform the service after you have gone away; and I shall stay by the body until morning. I do not know what you mean by your words about the danger of staying here alone; but I am not afraid of ghosts or demons: therefore please to feel no anxiety on my account."


・intention=意図、意思、意味
・generous=気前のよい、寛大な
・hospitality=手厚いもてなし
・grateful=感謝する
・Had you told me=If you had told me:倒置で仮定法を示す
・service=宗教的な儀式、礼拝
・As it is=ところが実際は
・on one's account=~のために

夢窓国師は答えた。
「あなたの親切なお気持ちと心のこもったもてなしには本当に感謝しています。でも、私がここに着いたとき、あなたのお父上が亡くなったことを教えていただけなかったことは残念です。なぜなら、少し疲れてはいましたが、決して僧侶としての務めをできないほどに疲れていたわけではなかったからです。もし、教えていただいていたら、あなたがここをお立ちになる前に葬儀もさせていただけたのですが。でもそれが実際できなかったので、あなたがここを離れられた後に、私が葬儀をして、朝まで遺体のそばにいさせていただくつもりです。あなたがおっしゃるように、ここに一人でいることが危険だというのはどういうことなのか私にはわかりませんが、私は幽霊も悪魔も恐ろしくありません。ですから、どうか私のことはご心配なさいませんように」

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