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英語で小泉八雲『耳なし芳一』(6)

侍と思われる、甲冑の音をさせた人に導かれ、部屋に通された芳一は…

Hoichi was told to put himself at ease, and he found a kneeling-cushion ready for him. After having taken his place upon it, and tuned his instrument, the voice of a woman -- whom he divined to be the Rojo, or matron in charge of the female service -- addressed him, saying,--
"It is now required that the history of the Heike be recited, to the accompaniment of the biwa."


put himself at ease=気楽にする、安心する
・kneeling-cushion:kneel が「【自動】 ひざを曲げる、ひざまずく」なので、「座布団」の意味
・ready=【形】 用意[準備・支度]ができている
・take his place upon it:take one's placeが「席に着く」なので、この場合は「座布団に座る」
・tune=(楽器を)調律する
・instrument=楽器(ここでは「琵琶」)
・divine=【他動】~と推測する、~と思う
・Rojo=【老女】(1)年とった女性(2)武家や貴族の家で、侍女の筆頭である年長の女:ここでは(2)の意味、戸川氏は「女すなわち女のする用向きを取り締る女中頭」と訳しておられる
・or=【接続】 すなわち、つまり
・matron=【名】 既婚婦人、女性監督者
・in charge of =~を担当[管理]して、~を任されて
・female=【形】 女性の
・service=【名】 勤務、業務、部局
・address=【他動】 話し掛ける、言葉をかける
・saying=and said:付帯状況を表す分詞構文
・be required=どうしても必要な
・recite=吟唱する
・accompaniment=【名】 《音楽》伴奏

芳一は気楽にしているようにと云われ、座蒲団が自分のために備えられているのを知った。それでその上に座を取って、琵琶の調子を合わせると、女の声が――その女を芳一は老女すなわち女のする用向きを取り締る女中頭だと判じた――芳一に向ってこう言いかけた――
『ただ今、琵琶に合わせて、平家の物語を語っていただきたいという御所望に御座います』


Now the entire recital would have required a time of many nights: therefore Hoichi ventured a question:--
"As the whole of the story is not soon told, what portion is it augustly desired that I now recite?"
The woman's voice made answer:--
"Recite the story of the battle at Dan-no-ura,-- for the pity of it is the most deep."


・Now=【副】 さて
・recital=朗読、独奏会、独唱会
・require=【他動】~を必要とする
・the entire recital would have d a time of many nights=if he had done the entire recital, it would have required  a time of many nights:仮定法過去完了(過去の事実に反する仮定を表す)、実際には平家物語を全部語らなかった、語ったら幾晩もかかっただろうということ。
・therefore=【副】 それ故に、従って、だから
・venture=【他動】思い切って~する、思い切って[意を決して]~と言う
・soon=【副】 すぐに
・As the whole of the story is not soon told=すぐに全部さっと語れるわけではないので
・portion=部分、一部分
・augustly=堂々と、威厳を持って:ただここではこの意味だけでは意味が通じないので戸川氏の訳を参考にさせていただくと「どの条下(くさり)を語れという殿様の御所望で御座いますか?」
august(adj.)を英英辞典で引くと"of or befitting(~に適する) a lord"ともあるので、「偉い人、御主人の意向としては」という意味があるのだろう。
・文の構造:what portion is it augustly desired that I now recite?:it ~ that構文、what portionはreciteの目的語
・for=【接】なぜなら
・pity=哀れさ

さてそれをすっかり語るのには幾晩もかかる、それ故芳一は進んでこう訊ねた――
『物語の全部は、ちょっとは語られませぬが、どの条下(くさり)を語れという殿様の御所望で御座いますか?』
 女の声は答えた――
『壇ノ浦の戦(いくさ)の話をお語りなされ――その一条下(ひとくさり)が一番哀れの深い処で御座いますから』


壇ノ浦の場面だけを語ってほしいということですね。


Then Hoichi lifted up his voice, and chanted the chant of the fight on the bitter sea,-- wonderfully making his biwa to sound like the straining of oars and the rushing of ships, the whirr and the hissing of arrows, the shouting and trampling of men, the crashing of steel upon helmets, the plunging of slain in the flood.


・lift up one's voice=声の調子を上げる
・chant=【名】 詠唱(節をつけて歌をうたうこと)【自動】 詠唱する
・bitter=激しい、無情な
・making his biwa to sound=琵琶を奏でる
・strain=ぐいと引っ張る
・oar=【名】 オール、櫂(かい)
・rush=【自動】 大急ぎでする、焦る、突進する、走る、急ぐ
・whirr=whir【名】 ヒュー[ビュー・ブンブン・ブーン・ウィーン]という音
・hiss=【名】 シュー[シュッ・ジュー]という音
・arrow=矢
・trample=踏みつける、踏みつぶす
・crash=【自動】 (大きな音を立てて)衝突する
・steel=【名】 剣
・helmet=ヘルメット、兜(かぶと)
・plunge=【自動】 飛び込む
・slain=slay(【他動】 殺す)の過去分詞
・flood=(古語)大洋、海、川
・the plunging of slain in the flood:slainは文法的にわかりづらいが、ここの意味は「殺された侍が海に落ちる音」ということだと思う

芳一は声を張り上げ、烈しい海戦の歌をうたった――琵琶を以て、あるいは橈を引き、船を進める音を出さしたり、はッしと飛ぶ矢の音、人々の叫ぶ声、足踏みの音、兜にあたる刃の響き、海に陥る打たれたもの音等を、驚くばかりに出さしたりして。


And to left and right of him, in the pauses of his playing, he could hear voices murmuring praise: "How marvelous an artist!" -- "Never in our own province was playing heard like this!" -- "Not in all the empire is there another singer like Hoichi!" Then fresh courage came to him, and he played and sang yet better than before; and a hush of wonder deepened about him.


・pause=【名】 中断、(小)休止
・murmur=【他動】 ~を小声で言う、~をつぶやく、~をささやく
・praise=【名】 称賛、褒めること
・"How marvelous an artist!" ="How marvelous an artist he is!"="What a marvelous artist he is!"
・"Never in our own province was playing heard like this!"="Playing like this was never heard in our own province.":"Never in our own province"という強調する言葉が前に来たための倒置構文
・province=田舎、地域
・"Not in all the empire is there another singer like Hoichi!"="There is not another singer like Hoichi in all the empire.":これも上の文と同じ倒置構文
・empire=帝国
・fresh=【形】 新たな
・yet=【副】 さらに、その上
・hush=静けさ
・wonder=驚き
・deepen=深まる、募る
・about=【前】~のまわりに
・a hush of wonder deepened about him=驚きのために彼のまわりはしんと静まった

その演奏の途切れ途切れに、芳一は自分の左右に、賞讃の囁く声を聞いた、――「何という巧(うま)い琵琶師だろう!」――「自分達の田舎ではこんな琵琶を聴いた事がない!」――「国中に芳一のような謡い手はまたとあるまい!」するといっそう勇気が出て来て、芳一はますますうまく弾きかつ謡った。そして驚きのため周囲は森としてしまった。


But when at last he came to tell the fate of the fair and helpless,-- the piteous perishing of the women and children,-- and the death-leap of Nii-no-Ama, with the imperial infant in her arms,-- then all the listeners uttered together one long, long shuddering cry of anguish; and thereafter they wept and wailed so loudly and so wildly that the blind man was frightened by the violence and grief that he had made.


・fate=死、悲運
・fair=【形】 きれいな、美しい
・helpless=【形】無力な、頼りない
・the fair and helpless=美しい人たちと無力な人たち:the+形容詞で複数名詞の意味を表し、ここでは次のthe womenとchildrenがそれぞれ対応している:the+形容詞の例[The strong should take care of the weak.(強者は弱者のめんどうをみるべきである)]
・piteous=【形】哀れな、痛ましい
・perish=滅びる、死ぬ
・death-leap=【名】 飛び降り自殺、身投げ
・Nii-no-Ama=二位の尼=平時子
フリー百科事典『Wikipedia』より

平時子(たいら の ときこ、大治元年(1126年) - 文治元年3月24日(1185年4月25日))は、平安時代末期の女性。平清盛の正妻。位階は従二位。二位尼と称される。下級貴族の平時信の娘、平時忠・平滋子の姉。清盛との間に宗盛、知盛、重衡、建礼門院徳子らを生む。 承安元年(1171年)従二位に叙され、二位尼(にいのあま)と呼ばれ、清盛亡き後は一門の精神的支柱として重きをなした。壇ノ浦の戦いで一門が源氏軍に最終的な敗北を喫した際、外孫に当たる安徳天皇を抱き、「浪の下にも都の候ぞ」(『平家物語』)と言い聞かせ、海中に身を投じて自殺した。

・imperial=皇室の
・infant=幼児
・imperial infant=安徳天皇


Wikipediaより

安徳天皇
[系譜]父は高倉天皇で、母は平清盛の娘の徳子(後の建礼門院)、祖父は、平清盛。
[略歴]治承2年(1178年)11月12日に生まれ、生後まもない12月15日に立太子。治承4年(1180年)2月21日に践祚し、4月22日に2歳で即位するが、当然、政治の実権は清盛がにぎる。 即位の同年に福原(現在の神戸市)に遷都するがまもなく還都。1183年、源義仲の入京に伴い、三種の神器とともに都落ちする。平家一門に連れられ大宰府を経て屋島に行き、行宮を置いた。平家が屋島の戦いに敗れると西海へ逃げた。そして、1185年、壇ノ浦で平家と源氏が激突。平家軍は敗北し、安徳天皇は祖母である平時子に抱かれて入水し、8歳で崩御(歴代最年少の崩御)。母の建礼門院も入水するが、引き上げられる。この際、三種の神器のうち、神璽と宝剣が海底へ沈んだ。のちに神璽は引き上げられたが、宝剣は失われた。

・in her arms=腕に抱いて
・utter=【自他動】 口に出す、話す、口を利く、言う、述べる、声に出す
・shuddering=【形】(寒さ・恐怖などで)震えている
・anguish=【名】 苦悶、苦悩
・thereafter=その後
・wept=weep(すすり泣く、泣く、涙を流す)の過去形
・wail=声を上げて泣く、泣き叫ぶ、嘆き悲しむ
・loudly=【副】 大声で
・wildly=【副】ひどく、激しく
・so loudly and so wildly that the blind man…:so~that 構文(=大変~なので~)
・was frightened=驚いた、びっくりした
・violence=【名】激しさ、猛烈
・grief=【名】嘆き、悲しみ
・文の構造:the violence and grief [that he had made]:thatはthe violence and griefを先行詞とする関係代名詞

しかし終りに美人弱者の運命――婦人と子供との哀れな最期――双腕に幼帝を抱き奉った二位の尼の入水を語った時には――聴者はことごとく皆一様に、長い長い戦(おのの)き慄える苦悶の声をあげ、それから後というもの一同は声をあげ、取り乱して哭き悲しんだので、芳一は自分の起こさした悲痛の強烈なのに驚かされたくらいであった。


For much time the sobbing and the wailing continued. But gradually the sounds of lamentation died away; and again, in the great stillness that followed, Hoichi heard the voice of the woman whom he supposed to be the Rojo.


She said:--

"Although we had been assured that you were a very skillful player upon the biwa, and without an equal in recitative, we did not know that any one could be so skillful as you have proved yourself to-night. Our lord has been pleased to say that he intends to bestow upon you a fitting reward. But he desires that you shall perform before him once every night for the next six nights -- after which time he will probably make his august return-journey. Tomorrow night, therefore, you are to come here at the same hour. The retainer who to-night conducted you will be sent for you... There is another matter about which I have been ordered to inform you. It is required that you shall speak to no one of your visits here, during the time of our lord's august sojourn at Akamagaseki. As he is traveling incognito, he commands that no mention of these things be made... You are now free to go back to your temple."


・sob=すすり泣く
・wail=声を上げて泣く
・lamentation=嘆き
・died away=次第に静まる、弱まる
・stillness=静けさ
・Rojo=(17)参照
・be assured=確信した、確信を持った
・without an equal=並ぶもののない
・recitative=叙唱(話すように歌うこと)
・prove yourself=自分の実力を示す、自己の能力を発揮する
・lord=主人
・bestow=【他動】 ~を授ける、与える
・fitting=【形】ふさわしい
・reward 【名】 褒美、報酬、謝礼金
・desire=~を望む、要求する
・you shall :話し手の"you"に対する命令
・perform=演奏する
・after which time:which timeは"the next six nights"を指す。whichは関係形容詞、非制限用法として格式的な意味で用い、「そしてその…」「だがその…」の意味、<例>We traveled together as far as Sendai, at which station we parted.(私たちは仙台まで一緒に旅行したが、その駅で別れた)、The train might be late, in which case you may take a taxi.(列車は遅れるかもしれない、その場合はタクシーを使ってよい)
・august=威厳のある、堂々とした、恐れ多い
・return-journey=帰りの旅:戸川氏の訳によれば「殿様」のようなので、領地に帰る旅なのでしょうか
・you are to come here=ここに来なさい(来るべき):「be+to」の意味は「できる、べき、はず、運命」
・retainer=家臣、家来
・conduct=~を案内する
・be sent for=呼びにやられる、呼ぶために使いに出される
・which=another matter
・order=命じる
・inform=~に知らせる、告げる
・It is required that~=~が必須(必要)である
・文の構造:speak [to no one] of your visits here=ここに来たことは誰にも話さない
・sojourn=【名】 (短期)滞在、逗留
・incognito=【形】【副】 〈イタリア語〉身分を隠した[隠して]、匿名の[で]、偽名の[で]、お忍びの[で]
・command=命令する
・mention=【名】 言及
commands that no mention of these things (should) be made
・be free to=自由に~できる

しばらくの間はむせび悲しむ声が続いた。しかし、おもむろに哀哭の声は消えて、またそれに続いた非常な静かさの内に、芳一は老女であると考えた女の声を聞いた。
 その女はこう云った――
『私共は貴方が琵琶の名人であって、また謡う方でも肩を並べるもののない事は聞き及んでいた事では御座いますが、貴方が今晩御聴かせ下すったようなあんなお腕前をお有ちになろうとは思いも致しませんでした。殿様には大層御気に召し、貴方に十分な御礼を下さる御考えである由を御伝え申すようにとの事に御座います。が、これから後六日の間毎晩一度ずつ殿様の御前(ごぜん)で演奏(わざ)をお聞きに入れるようとの御意に御座います――その上で殿様にはたぶん御帰りの旅に上られる事と存じます。それ故明晩も同じ時刻に、ここへ御出向きなされませ。今夜、貴方を御案内いたしたあの家来が、また、御迎えに参るで御座いましょう……それからも一つ貴方に御伝えするように申しつけられた事が御座います。それは殿様がこの赤間ヶ関に御滞在中、貴方がこの御殿に御上りになる事を誰れにも御話しにならぬようとの御所望に御座います。殿様には御忍びの御旅行ゆえ、かような事はいっさい口外致さぬようにとの御上意によりますので。……ただ今、御自由に御坊に御帰りあそばせ』


After Hoichi had duly expressed his thanks, a woman's hand conducted him to the entrance of the house, where the same retainer, who had before guided him, was waiting to take him home. The retainer led him to the verandah at the rear of the temple, and there bade him farewell.

・duly=【副】 十分に
・conduct=導く、案内する
・to take him home=彼を家へ連れて帰るために
・verandah=縁側
・at the rear of=~の後方に、~の裏に<例>garden at the rear of the house 家の裏にある庭
・bade him farewell=bid him farewell(彼に別れのあいさつをする)の過去形

芳一は感謝の意を十分に述べると、女に手を取られてこの家の入口まで来、そこには前に自分を案内してくれた同じ家来が待っていて、家につれられて行った。家来は寺の裏の縁側の処まで芳一を連れて来て、そこで別れを告げて行った。

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