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英語でアンデルセン童話「人魚姫」(3)

本文は”Gutenburg”から、辞書は”英辞郎””リーダーズ英和辞典(研究社)、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


この色の箇所は、注意すべき用法などです。


前回は、人魚姫たちが、順番に、15歳になると海の上に浮かび上がって人間の世界を垣間見れるというお話でした。


None of them was so full of longings as the youngest, the very one who had the longest time to wait, and who was so quiet and dreamy. Many a night she stood by the open windows and looked up through the dark blue water which the fish were lashing with their tails and fins. She could see the moon and the stars, it is true; their light was pale, but they looked much bigger through the water than they do to our eyes. When she saw a dark shadow glide between her and them, she knew that it was either a whale swimming above her, or else a ship laden with human beings. I am certain they never dreamt that a lovely little mermaid was standing down below, stretching up her white hands towards the keel.


・longing=切望、あこがれ、激しく恋しがること
・very=〈強調〉まさに、まさしく
・Many a=いくつもの~、幾多の~、数々の~◆【用法】「many a + 単数名詞」の形で単数扱い
・lash=むち打つ
・fin=ひれ
・pale=青白い
・do=look
・glide=滑るように動く
・or else=あるいは
・laden with=~を積んだ、~でいっぱいの
・dreamt=〈英〉dreamの過去・過去分詞形
・keel=〔船や飛行船の〕竜骨(船底の中心部分を縦貫している力材。人間の背骨にあたり、船体構成の基礎となるもの)


「そのなかでも、いちばん下のひいさまは、あいにく、いちばんながく待たなくてはならないし、ものしずかな、かんがえぶかい子でしたから、それだけたれよりもふかくこのことをおもいつづけました。いく晩もいく晩も、ひいさまは、あいている窓ぎわに、じっと立ったまま、くらいあい色した水のなかで、おさかながひれやしっぽをうごかして、およぎまわっているのをすかしてみていました。お月さまと星もみえました。それはごくよわく光っているだけでしたが、でも水をすかしてみるので、おかでわたしたちの目にみえるよりは、ずっと大きくみえました。ときおり、なにかまっ黒な影のようなものが、光をさえぎりました。それが、くじらがあたまの上をおよいでとおるのか、またはおおぜい人をのせた船の影だということは、ひいさまにもわかっていました。この船の人たちも、はるか海の底に人魚のひいさまがいて、その白い手を、船のほうへさしのべていようとは、さすがにおもいもつかなかったでしょう」


The eldest princess had now reached her fifteenth birthday, and was to venture above the water. When she came back she had hundreds of things to tell them, but the most delightful of all, she said, was to lie in the moonlight, on a sandbank in a calm sea, and to gaze at the large town close to the shore, where the lights twinkled like hundreds of stars; to listen to music and the noise and bustle of carriages and people, to see the many church towers and spires, and to hear the bells ringing; and just because she could not go on shore she longed for that most of all.


・was to: 《be to do》~する予定[つもり]だ
・venture=危険を冒して[承知で]進む[試みる]
・sandbank=〔川・海などの〕砂州、砂堆
・gaze=じっと見る
・where=the large town
・bustle=せわしげな[慌ただしい]動き、にぎわい、喧騒
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・spire=《建築》尖塔
・just because=まさに~だからこそ、~だからこそ余計に
・long for=~が恋しい、~を慕う、渇望する、思慕する、切望する


「さて、いちばん上のひいさまも、十五になりました。いよいよ、海の上に出られることになりました。このおねえさまがかえって来ると、山ほどもおみやげの話がありましたが、でも、なかでいちばんよかったのは、波のしずかな遠浅の海に横になりながら、すぐそばの海ぞいの大きな町をみていたことであったといいます。そこでは、町のあかりが、なん百とない星の光のようにかがやいていましたし、音楽もきこえるし、車や人の通るとよめきも耳にはいりました。お寺のまるい塔と、とがった塔のならんでいるのが見えたし、そこから、鐘の音もきこえて来ました。でも、そこへ上がっていくことはできませんから、ただなにくれと、そういうものへのあこがれで、胸をいっぱいにしてかえって来たということでした」


Oh, how eagerly the youngest sister listened! and when, later in the evening she stood at the open window and looked up through the dark blue water, she thought of the big town with all its noise and bustle, and fancied that she could even hear the church bells ringing.


・eagerly=熱心に、一生懸命
・bustle=にぎわい、喧騒
・fancied:fancy=~を心に描く、想像する、~のような気がする


「まあ、いちばん下のひいさまは、この話をどんなに夢中できいたことでしょう。それからというもの、あいた窓ぎわに立って、くらい色の水をすかして上を仰ぐたんびに、このひいさまは、いろいろの物音ととよめきのする、その大きな町のことをかんがえました。するうち、そこのお寺の鐘の音が、つい海の底までも、ひびいてくるようにおもいました」


The year after, the second sister was allowed to mount up through the water and swim about wherever she liked. The sun was just going down when she reached the surface, the most beautiful sight, she thought, that she had ever seen. The whole sky had looked like gold, she said, and as for the clouds! well, their beauty was beyond description; they floated in red and violet splendour over her head, and, far faster than they went, a flock of wild swans flew like a long white veil over the water towards the setting sun; she swam towards it, but it sank and all the rosy light on clouds and water faded away.


・The year after=その翌年
・swim about =泳ぎ回る
・as for=~はどうかというと
・beyond description=例えようのない、筆舌に尽くし難い
・they=the clouds
・float=浮く
・splendour=輝き、光彩
・far=〔程度が〕はるかに、大いに、ずっと
・a flock of=~の群れ
・she=the second sister
・it=the sun
・faded away:fade away=〔光・音などが〕徐々に[少しずつ・だんだん・次第に]消えていく、〔色が〕薄れる、色あせる


「そのあくる年、二ばんめのおねえさまが、海の上へあがって行って、好きな所へおよいでいっていい、おゆるしがでました。このあねえさまが、浮き上がると、そのときちょうどお日さまが沈みましたが、これこそいちばんうつくしいとおもったものでした。大空がいちめん金をちらしたようにみえて、その光をうつした雲のきれいだったこと、とてもそれを書きあらわすことばはないといいました。くれないに、またむらさきに、それがあたまの上をすうすう通ってながれていきました。けれども、その雲よりももっとはやく、野のはくちょうのむれが、それはながい、白いうすものが空にただようように、しずんで行く夕日を追って、波の上をとんでいきました。このおねえさまも、これについてまけずにおよいでいきましたが、そのうち、お日さまはまったくしずんで、ばら色の光は、海の上からも、雲の上からも消えていきました」


The year after that the third sister went up, and, being much the most venturesome of them all, swam up a broad river which ran into the sea. She saw beautiful green, vine-clad hills; palaces and country seats peeping through splendid woods. She heard the birds singing, and the sun was so hot that she was often obliged to dive, to cool her burning face. In a tiny bay she found a troop of little children running about naked and paddling in the water; she wanted to play with them, but they were frightened and ran away. Then a little black animal came up; it was a dog, but she had never seen one before; it barked so furiously at her that she was frightened and made for the open sea. She could never forget the beautiful woods, the green hills and the lovely children who could swim in the water although they had no fishes' tails.


・being:主語は"the third sister"
・much=ずっと、非常に、大変、とても、大体
・venturesome=向こう見ずな、大胆な、冒険好きな
・them all=the sisters
・ran into:run into=~に流れ込む
・vine=つる、つる植物、つる草、ブドウの木
・clad=覆われた
・country=田舎の
・seat=大庭園[広大な土地]のある郊外の邸宅
・peep=現れる、姿を現す
・troop=群れ
・paddling:paddle=〔水の中を〕手足をバタバタさせて進む
・made for:make for=~に向かって突進する
・open sea=《the ~》外海、大海原


「また次の年には、三ばんめのおねえさまが上がっていきました。このおねえさまは、たれよりもむこうみずな子でしたから、大きな川が海にながれだしている、そこの川口をさかのぼっておよいでいってみました。そこにはぶどうのつるにおおわれたうつくしいみどりの丘がみえました。むかしのお城や荘園が、みごとに茂った森のなかからちらちらしていました。いろんな鳥のうたいかわす声も聞きました。するうちお日さまが、照りつけて来たので、ほてった顔をひやすために、たびたび水にもぐらなくてはなりませんでした。水がよどんでちいさな入江になった所で、かわいい人間のこどもたちのかたまって、あそんでいるのに出あいました。まるはだかで、かけまわって、ぼちゃぼちゃ水をはねかしました。いっしょにあそぼうとすると、みんなおどろいて逃げていってしまいました。するとそこへ、ちいさな、まっ黒な動物がでて来ました。これは犬でしたが、犬なんて、みたことはなかったし、いきなり、はげしくほえかかって来たので、こわくなって、またひろい海へおよいでもどりました。でも、あのうつくしい森もみどりの丘も、それから、おさかなのしっぽももっていないくせに、水におよげるかわいらしいこどもたちのことをも、このひいさまは、いつまでもわすれることができませんでした」

 

Oh, how eagerly the youngest sister listened! and when, later in the evening she stood at the open window and looked up through the dark blue water, she thought of the big town with all its noise and bustle, and fancied that she could even hear the church bells ringing.


・eagerly=熱心に、一生懸命
・bustle=にぎわい、喧騒
・fancied:fancy=~を心に描く、想像する、~のような気がする


「まあ、いちばん下のひいさまは、この話をどんなに夢中できいたことでしょう。それからというもの、あいた窓ぎわに立って、くらい色の水をすかして上を仰ぐたんびに、このひいさまは、いろいろの物音ととよめきのする、その大きな町のことをかんがえました。するうち、そこのお寺の鐘の音が、つい海の底までも、ひびいてくるようにおもいました」


The year after, the second sister was allowed to mount up through the water and swim about wherever she liked. The sun was just going down when she reached the surface, the most beautiful sight, she thought, that she had ever seen. The whole sky had looked like gold, she said, and as for the clouds! well, their beauty was beyond description; they floated in red and violet splendour over her head, and, far faster than they went, a flock of wild swans flew like a long white veil over the water towards the setting sun; she swam towards it, but it sank and all the rosy light on clouds and water faded away.


・The year after=その翌年
・swim about =泳ぎ回る
・as for=~はどうかというと
・beyond description=例えようのない、筆舌に尽くし難い
・they=the clouds
・float=浮く
・splendour=輝き、光彩
・far=〔程度が〕はるかに、大いに、ずっと
・a flock of=~の群れ
・she=the second sister
・it=the sun
・faded away:fade away=〔光・音などが〕徐々に[少しずつ・だんだん・次第に]消えていく、〔色が〕薄れる、色あせる


「そのあくる年、二ばんめのおねえさまが、海の上へあがって行って、好きな所へおよいでいっていい、おゆるしがでました。このあねえさまが、浮き上がると、そのときちょうどお日さまが沈みましたが、これこそいちばんうつくしいとおもったものでした。大空がいちめん金をちらしたようにみえて、その光をうつした雲のきれいだったこと、とてもそれを書きあらわすことばはないといいました。くれないに、またむらさきに、それがあたまの上をすうすう通ってながれていきました。けれども、その雲よりももっとはやく、野のはくちょうのむれが、それはながい、白いうすものが空にただようように、しずんで行く夕日を追って、波の上をとんでいきました。このおねえさまも、これについてまけずにおよいでいきましたが、そのうち、お日さまはまったくしずんで、ばら色の光は、海の上からも、雲の上からも消えていきました」


The year after that the third sister went up, and, being much the most venturesome of them all, swam up a broad river which ran into the sea. She saw beautiful green, vine-clad hills; palaces and country seats peeping through splendid woods. She heard the birds singing, and the sun was so hot that she was often obliged to dive, to cool her burning face. In a tiny bay she found a troop of little children running about naked and paddling in the water; she wanted to play with them, but they were frightened and ran away. Then a little black animal came up; it was a dog, but she had never seen one before; it barked so furiously at her that she was frightened and made for the open sea. She could never forget the beautiful woods, the green hills and the lovely children who could swim in the water although they had no fishes' tails.


・being:主語は"the third sister"
・much=ずっと、非常に、大変、とても、大体
・venturesome=向こう見ずな、大胆な、冒険好きな
・them all=the sisters
・ran into:run into=~に流れ込む
・vine=つる、つる植物、つる草、ブドウの木
・clad=覆われた
・country=田舎の
・seat=大庭園[広大な土地]のある郊外の邸宅
・peep=現れる、姿を現す
・troop=群れ
・paddling:paddle=〔水の中を〕手足をバタバタさせて進む
・made for:make for=~に向かって突進する
・open sea=《the ~》外海、大海原


「また次の年には、三ばんめのおねえさまが上がっていきました。このおねえさまは、たれよりもむこうみずな子でしたから、大きな川が海にながれだしている、そこの川口をさかのぼっておよいでいってみました。そこにはぶどうのつるにおおわれたうつくしいみどりの丘がみえました。むかしのお城や荘園が、みごとに茂った森のなかからちらちらしていました。いろんな鳥のうたいかわす声も聞きました。するうちお日さまが、照りつけて来たので、ほてった顔をひやすために、たびたび水にもぐらなくてはなりませんでした。水がよどんでちいさな入江になった所で、かわいい人間のこどもたちのかたまって、あそんでいるのに出あいました。まるはだかで、かけまわって、ぼちゃぼちゃ水をはねかしました。いっしょにあそぼうとすると、みんなおどろいて逃げていってしまいました。するとそこへ、ちいさな、まっ黒な動物がでて来ました。これは犬でしたが、犬なんて、みたことはなかったし、いきなり、はげしくほえかかって来たので、こわくなって、またひろい海へおよいでもどりました。でも、あのうつくしい森もみどりの丘も、それから、おさかなのしっぽももっていないくせに、水におよげるかわいらしいこどもたちのことをも、このひいさまは、いつまでもわすれることができませんでした」

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英語でアンデルセン童話「人魚姫」(2)

本文は”Gutenburg”から、辞書は”英辞郎””リーダーズ英和辞典(研究社)、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


Each little princess had her own little plot of garden, where she could dig and plant just as she liked. One made her flower-bed in the shape of a whale; another thought it nice to have hers like a little mermaid; but the youngest made hers quite round like the sun, and she would only have flowers of a rosy hue like its beams. She was a curious child, quiet and thoughtful, and while the other sisters decked out their gardens with all kinds of extraordinary objects which they got from wrecks, she would have nothing besides the rosy flowers like the sun up above, except a statue of a beautiful boy. It was hewn out of the purest white marble and had gone to the bottom from some wreck. By the statue she planted a rosy red weeping willow which grew splendidly, and the fresh delicate branches hung round and over it, till they almost touched the blue sand where the shadows showed violet, and were ever moving like the branches. It looked as if the leaves and the roots were playfully interchanging kisses.


・plot=小区画の土地
・dig=掘る
・flower-bed=花壇
・it=to have hers…
・hers=her flower-bed
・round=丸い、円形の
・would=~したものだった◆過去の短期的な習慣・反復行動を表す
・rosy=バラのような、バラ色の
・hue=色、種類
・its=the sun's
・beam=光、光線
・curious=好奇心のある、何にでも興味がある
・thoughtful=思いやりのある、物思いにふけった
・while=~なのに、~ではあるものの、~だが
・deck out=美しく着飾る、飾り立てる
・extraordinary=非凡な、たぐいまれな、驚くべき
・wreck=難破船、(難破船の)漂流物
・nothing besides~=~のほかには何も
・hewn=hewの過去分詞、hew=〔石を〕切り出す〔おのなどで何度もたたいて〕切り取る
・weeping willow=シダレヤナギ
・splendidly=見事に、立派に
・delicate=繊細な、優雅な
・hung round:hang round=まつわりつく
・it=the statue
・show=見える
・violet=すみれ色の
・ever=いつも、常に、始終
・playfully=ふざけて


「ひいさまたちは、めいめい、花園のなかに、ちいさい 花壇をもっていて、そこでは、すき自由に、掘りかえすことも植えかえることもできました。ひとりのひいさまは、花壇を、くじらの形につくりました。するともうひとりは、じぶんのは、かわいい人魚に似せたほうがいいとおもいました。ところが、いちばん下のひいさまは、それをまんまるく、そっくりお日さまのかたちにこしらえて、お日さまとおなじようにまっ赤に光る花ばかりを咲かせました。このひいさまはひとりちがって、ふしぎとものしずかな、かんがえぶかい子でした。ほかのおねえさまたちが、難船した船からとって来ためずらしい品物をならべたててよろこんでいるとき、このひいさまだけは、うつくしい大理石の像をひとつとって来て、大空のお日さまの色に似た、ばら色の花の下に、それをおいただけでした。それはまっ白にすきとおる石をきざんだ、かわいらしい少年の像で、 難破して海の底にしずんだ船のなかにあったものでした。この像のわきに、ひいさまは、ばら色したしだれやなぎを植えました。それがうつくしくそだって、そのみずみずしい枝が像をこして、むこうの赤い砂地の上までたれました。そこに 濃いむらさきの影ができて、枝といっしょにゆれました。それはまるで、こずえのさきと根とがからみあって、たわむれているようにみえました」


*playfully interchanging kisses:大正時代にこの訳本は刊行されたようだし、子供向けということもあって、ただ「たわむれている」になっているのかもしれませんね。今訳すなら、「ふざけてキスをしあっているように見えました」でもいいかも。シダレヤナギの枝の先が始終揺れながら砂地にtouchしていたということですから。その情景が目に浮びますね。


Nothing gave her greater pleasure than to hear about the world of human beings up above; she made her old grandmother tell her all that she knew about ships and towns, people and animals. But above all it seemed strangely beautiful to her that up on the earth the flowers were scented, for they were not so at the bottom of the sea; also that the woods were green, and that the fish which were to be seen among the branches could sing so loudly and sweetly that it was a delight to listen to them. You see the grandmother called little birds fish, or the mermaids would not have understood her, as they had never seen a bird.


・to hear:toの名詞的用法
・she=the youngest princess
・all that:thatの先行詞がall
・above all=とりわけ、何よりも
・scented=よい香りのする
・they=flowers
・woods=森、林
・fish:ここでは複数形で"fish"になっているが、魚の種類を言う時は、複数形が"fishes"になることがある
・were to be=could be
・could sing:主語はthe fish
・sweetly=甘く、やさしく
・You see=ほら、あのね、ご存じでしょう◆会話で注意を促すときなどに用いられる。
・or=【接続】そうしなければ、さもなければ
・would not have~=~しなかっただろう
・as=【接続】~なので、~だから


このひいさまにとつて、海の上にある人間の世界の話をきくほど、おおきなよろこびはありません。おばあさまにせがむと、船のことや、町のことや、人間やけもののことや、知っていらっしゃることはなにもかも話してくださいました。とりわけ、ひいさまにとってめずらしくおもわれたのは、海の底ではついないことなのに、地の上では、お花がにおっているということでした。それと、森がみどり色していて、その森のこずえのなかに、おさかなが、高い、かわいらしい声で歌がうたえて、それがきくひとの耳をたのしくするということでした。その、おばあさまがおさかなとおっしゃったのは、小鳥のことでした。だって、ひいさまたちは、小鳥というものをみたことがないのですもの、そういって話さなければわからないでしょう。



'When you are fifteen,' said the grandmother, 'you will be allowed to rise up from the sea and sit on the rocks in the moonlight, and look at the big ships sailing by, and you will also see woods and towns.'


「まあ、あなたたち、十五になったらね。」と、おばあさまはいいました。「そのときは、海の上へ浮かび出ていいおゆるしをあげますよ。そうすれば、岩に腰をかけて、お月さまの光にひたることもできるし、大きな船のとおるところもみられるし、森や町だってみられるようになるよ。」


One of the sisters would be fifteen in the following year, but the others,—well, they were each one year younger than the other, so that the youngest had five whole years to wait before she would be allowed to come up from the bottom, to see what things were like on earth. But each one promised the others to give a full account of all that she had seen, and found most wonderful on the first day. Their grandmother could never tell them enough, for there were so many things about which they wanted information.


・each=【副】各々、それぞれ
・so that=従って、だから
・account=説明、報告
・found:find=~と思う、~と感じる◆【用法】find + 目的語 + 形容詞:目的語は"a full account of all"、形容詞は"most wonderful"
・for=〔その理由は〕~だから


来年は、いちばん上のおねえさまが、十五になるわけでした。でも、ほかのおねえさまたちは――そう、めいめい、一年ずつ年がちがっていましたから、いちばん下のひいさまが、海の底からあがっていって、わたしたちの世界のようすをみることになるまでには、まる五年も待たなければなりません。でも、ひとりがいけば、ほかのひとたちに、はじめていった日みたこと、そのなかでいちばんうつくしいとおもったことを、かえって来て話す約束ができました。なぜなら、おばあさまのお話だけでは、どうも物たりなくて、ひいさまたちの知りたいとおもうことが、だんだんおおくなって来ましたからね。

英語でアンデルセン童話「人魚姫」(1)

本文はGutenburgから、辞書は”英辞郎”、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


THE MERMAID


Far out at sea the water is as blue as the bluest cornflower, and as clear as the clearest crystal; but it is very deep, too deep for any cable to fathom, and if many steeples were piled on the top of one another they would not reach from the bed of the sea to the surface of the water. It is down there that the Mermen live. 


・Far out at sea=(海の)はるか沖合いで
・cornflower=《植物》ヤグルマギク、ヤグルマ草Yagurumagiku
・clear=澄んだ、透明な
・crystal=《鉱物》水晶◆石英の透明な結晶
・cable=太綱
・fathom=~の水深を測る
・too deep for any cable to fathom=so deep that any cable can't fathom it
・steeple=教会などの尖塔、尖塔、尖り屋根
・pile=~を積み重ねる、山と積む
・bed=海底
・Mermen=Merman(男の人魚)の複数形


「はるか、沖合へでてみますと、海の水は、およそうつくしいやぐるまぎくの花びらのように青くて、あくまですきとおったガラスのように澄みきっています。でも、そこは、ふかいのなんのといって、どんなにながく綱をおろしても底にとどかないというくらいふかいのです。お寺の塔を、いったい、いくつかさねて積み上げたら、水の上までとどくというのでしょうか。そういうふかい海の底に、海のおとめたち――人魚のなかまは住んでいるのです」


Now don't imagine that there are only bare white sands at the bottom; oh no! the most wonderful trees and plants grow there, with such flexible stalks and leaves, that at the slightest motion of the water they move just as if they were alive. All the fish, big and little, glide among the branches just as, up here, birds glide through the air. The palace of the Merman King lies in the very deepest part; its walls are of coral and the long pointed windows of the clearest amber, but the roof is made of mussel shells which open and shut with the lapping of the water. This has a lovely effect, for there are gleaming pearls in every shell, any one of which would be the pride of a queen's crown.


・bare=あらわな、むきだしの
・flexible=しなやかな
・stalk=茎
・slight=ほんのわずかな
・just as=(ちょうど)であろう通り
・glide=滑るように動く
・coral=サンゴ
・pointed=先の尖った
・amber=琥珀
・mussel=イガイ◆海水生の二枚貝の総称
・lap=〔波が~に〕打ち寄せる
・effect=印象
・which:先行詞は"pearls"
・pride=最良の部分、〘古〙装飾


「ところで、海の底なんて、ただ、からからな砂地があるだけだろうと、そうきめてしまってはいけません。どうして、そこには、世にもめずらしい木や草がたくさんしげっていて、そのじくや葉のしなやかなことといったら、ほんのかすかに水がゆらいだのにも、いっしょにゆれて、まるで生きものがうごいているようです。ちいさいのも、おおきいのも、いろんなおさかなが、その枝と枝とのなかをつうい、つういとくぐりぬけて行くところは、地の上で、鳥たちが、空をとびまわるのとかわりはありません。この海の底をずっと底まで行ったところに、海の人魚の王さまが御殿をかまえています。その御殿の壁は、さんごでできていて、ほそながく、さきのとがった窓は、すきとおったこはくの窓でした。屋根は貝がらでふけていて、海の水がさしひきするにつれて、貝のふたは、ひとりでにあいたりしまったりします。これはなかなかうつくしいみものでした。なぜといって、一枚一枚の貝がらには、それひとつでも女王さまのかんむりのりっぱなそうしょくになるような、大きな真珠がはめてあるのでしたからね」


The Merman King had been for many years a widower, but his old mother kept house for him; she was a clever woman, but so proud of her noble birth that she wore twelve oysters on her tail, while the other grandees were only allowed six. Otherwise she was worthy of all praise, especially because she was so fond of the little mermaid princesses, her grandchildren. They were six beautiful children, but the youngest was the prettiest of all; her skin was as soft and delicate as a roseleaf, her eyes as blue as the deepest sea, but like all the others she had no feet, and instead of legs she had a fish's tail.


・widower=男やもめ
・keep house=家事をする
・noble=地位の高い、貴族の
・grandee=高官、身分の高い人
・Otherwise=そのほかの点では、別の面では
・soft=手ざわりの柔らかな、なめらかな、すべすべした
・delicate=(皮膚が)きめ細かな
・roseleaf=バラの花弁


「ところで、この御殿のあるじの王さまは、もうなが年のやもめぐらしで、そのかわり、年とったおかあさまが、いっさい、うちのことを引きうけておいでになりました。このおかあさまは、りこうな方でしたけれど、いちだんたかい身分をほこりたさに、しっぽにつける飾りのかきをごじぶんだけは十二もつけて、そのほかはどんな家柄のものでも、六つから上つけることをおゆるしになりませんでした。――そんなことをべつにすれば、たんとほめられてよい方でした。とりわけ、お孫さんにあたるひいさまたちのおせわをよくなさいました。それはみんなで六人、そろってきれいなひいさんたちでしたが、なかでもいちばん下のひいさまが、たれよりもきりょうよしで、はだはばらの花びらのようにすきとおって、きめがこまかく、目はふかいふかい海のようにまっ青でした。ただほかのひいさまたちとおなじように、足というものがなくて、そこがおさかなの尾になっていました」


All the livelong day they used to play in the palace in the great halls, where living flowers grew out of the walls. When the great amber windows were thrown open the fish swam in, just as the swallows fly into our rooms when we open the windows, but the fish swam right up to the little princesses, ate out of their hands, and allowed themselves to be patted.


・livelong day=一日中、終日、まる一日
・amber=琥珀
・swallow=ツバメ
・allow oneself to=あえて~する、思い切って~する、自分から~する
・pat=〔愛情表現として〕軽くたたく 


「ながいまる一日、ひいさまたちは、海の底の御殿の、大広間であそびました。そとの壁からは、生きた花が咲きだしていました。大きなこはくの窓をあけると、おさかながつういとはいって来ます。それはわたしたちが窓をあけると、つばめがとび込んでくるのに似ています。ただ、おさかなは、すぐと、ひいさまたちの所まで泳いで行って、その手からえさをとってたべて、なでいたわってもらいました」


Outside the palace was a large garden, with fiery red and deep blue trees, the fruit of which shone like gold, while the flowers glowed like fire on their ceaselessly waving stalks. The ground was of the finest sand, but it was of a blue phosphorescent tint. Everything was bathed in a wondrous blue light down there; you might more readily have supposed yourself to be high up in the air, with only the sky above and below you, than that you were at the bottom of the ocean. In a dead calm you could just catch a glimpse of the sun like a purple flower with a stream of light radiating from its calyx.


・fiery=火のような
・which:先行詞は"trees"
・glow=真っ赤になる、〔色が〕照り輝く、燃えるようである
・ceaselessly=絶えず、とめどなく
・fine=〔粒子などが〕細かい
・phosphorescent=リン光を発する
・tint=色合い、~がかった色
・bathed in=~を浴びる、~に染まる
・wondrous=驚くべき、不思議な
・readily=たやすく、容易に
・suppose=想像する
・dead=全くの、完全な
・calm=静けさ、平穏
・glimpse=チラッと見ること、垣間見ること
・calyx=萼(がく)


「御殿のそとには、大きな花園があって、はでにまっ赤な木や、くらいあい色の木がしげっていました。その木の実は金のようにかがやいて、花はほのおのようにもえながら、しじゅうじくや葉をゆらゆらさせていました。海の底は、地面からしてもうこまかい砂でしたが、それは硫黄の火のように青く光りました。そこでは、なにもかも、ふしぎな、青い光につつまれているので、それはふかい海の底にいるというよりも、なにか宙に浮いていて、上にも下にも青空をみているようでした。海のないでいるときには、お日さまが仰げました。それはむらさきの花のようで、そのうてなからながれだす光が、海の底いちめんひろがるようにおもわれました」

英語でアンデルセン童話「雪の女王」19

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

最終章です。

SEVENTH STORY. What Took Place in the Palace of the Snow Queen, and what
Happened Afterward


第七のお話

   雪の女王のお城でのできごとと そののちのお話


The walls of the palace were of driving snow, and the windows and doors of cutting winds. There were more than a hundred halls there, according as the snow was driven by the winds. The largest was many miles in extent; all were lighted up by the powerful Aurora Borealis, and all were so large, so empty, so icy cold, and so resplendent! Mirth never reigned there; there was never even a little bear-ball, with the storm for music, while the polar bears went on their hind legs and showed off their steps. Never a little tea-party of white young lady foxes; vast, cold, and empty were the halls of the Snow Queen. The northern-lights shone with such precision that one could tell exactly when they were at their highest or lowest degree of brightness. In the middle of the empty, endless hall of snow, was a frozen lake; it was cracked in a thousand pieces, but each piece was so like the other, that it seemed the work of a cunning artificer. In the middle of this lake sat the Snow Queen when she was at home; and then she said she was sitting in the Mirror of Understanding, and that this was the only one and the best thing in the world.


・driving=〔雨・風などが〕猛烈な、吹きつける
・cutting=身を切るような
・according as=~次第で、~に従って
・in extent=大きさは
・Aurora Borealis=北極光(オーロラ)
・resplendent=キラキラ輝く、まばゆい
・Mirth=陽気、笑い
・reign=支配する、行き渡る
・ball=(正式な)ダンスパーティー、(大)舞踏会
・polar bear=シロクマ、北極グマ
・hind leg=後ろ足
・show off=見せびらかす
・step=足の運び、ステップ
・northern-lights=オーロラ、北極光
・with precision=絶対的[確実]な精度[正確さ]で
・crack=~にひびを入れる、~を割る
・cunning=抜け目のない、精巧な
・artificer=考案者、熟練工
・Mirror of Understanding=理解の鏡


雪の女王のお城は、はげしくふきたまる雪が、そのままかべになり、窓や戸口は、身をきるような風で、できていました。そこには、百いじょうの広間が、じゅんにならんでいました。それはみんな雪のふきたまったものでした。いちばん大きな広間はなんマイルにもわたっていました。つよい極光(オーロラ)がこの広間をもてらしていて、それはただもう、ばか大きく、がらんとしていて、いかにも氷のようにつめたく、ぎらぎらして見えました。たのしみというものの、まるでないところでした。あらしが音楽をかなでて、ほっきょくぐまがあと足で立ちあがって、気どっておどるダンスの会もみられません。わかい白ぎつねの貴婦人(きふじん)のあいだに、ささやかなお茶(ちゃ)の会(かい)がひらかれることもありません。雪の女王の広間は、ただもうがらんとして、だだっぴろく、そしてさむいばかりでした。極光のもえるのは、まことにきそく正しいので、いつがいちばん高いか、いつがいちばんひくいか、はっきり見ることができました。このはてしなく大きながらんとした雪の広間のまん中に、なん千万という数のかけらにわれてこおった、みずうみがありました。われたかけらは、ひとつひとつおなじ形をして、これがあつまって、りっぱな美術品になっていました。このみずうみのまん中に、お城にいるとき、雪の女王はすわっていました。そしてじぶんは理性(りせい)の鏡のなかにすわっているのだ、この鏡ほどのものは、世界中さがしてもない、といっていました。


Little Kay was quite blue, yes nearly black with cold; but he did not observe it, for she had kissed away all feeling of cold from his body, and his heart was a lump of ice. He was dragging along some pointed flat pieces of ice, which he laid together in all possible ways, for he wanted to make something with them; just as we have little flat pieces of wood to make geometrical figures with, called the Chinese Puzzle. Kay made all sorts of figures, the
most complicated, for it was an ice-puzzle for the understanding. In his eyes the figures were extraordinarily beautiful, and of the utmost importance; for the bit of glass which was in his eye caused this. He found whole figures which represented a written word; but he never could manage to represent just the word he wanted--that word was "eternity"; and the Snow Queen had said, "If you can discover that figure, you shall be your own master, and I will make you a present of the whole world and a pair of new skates." But he could not find it out.


・blue=青ざめた
・she=the Snow Queen
・drag along=~を引きずって歩く
・pointed=先のとがった
・laid together:lay together=一緒に(くっつけて)置く
・geometrical figure=幾何学的図形
・Chinese Puzzle=複雑なパズル、難問
・utmost=最高の
・represent=意味する、示す
・manage to=なんとか~する
・eternity=永遠
・own master 《be one's ~》=誰の干渉も受けない、思うとおりにできる
・make you a present=あなたに進呈する、贈り物をする


カイはここにいて、さむさのため、まっ青に、というよりは、うす黒くなっていました。それでいて、カイはさむさを感じませんでした。というよりは、雪の女王がせっぷんして、カイのからだから、さむさをすいとってしまったからです。そしてカイのしんぞうは、氷のようになっていました。カイは、たいらな、いく枚かのうすい氷の板を、あっちこっちからはこんできて、いろいろにそれをくみあわせて、なにかつくろうとしていました。まるでわたしたちが、むずかしい漢字をくみ合わせるようでした。カイも、この上なく手のこんだ、みごとな形をつくりあげました。それは氷のちえあそびでした。カイの目には、これらのものの形はこのうえなくりっぱな、この世の中で一ばんたいせつなもののようにみえました。それはカイの目にささった鏡のかけらのせいでした。カイは、形でひとつのことばをかきあらわそうとおもって、のこらずの氷の板をならべてみましたが、自分があらわしたいとおもうことば、すなわち、「永遠(えいえん)」ということばを、どうしてもつくりだすことはできませんでした。でも、女王はいっていました。
「もしおまえに、その形をつくることがわかれば、からだも自由になるよ。そうしたら、わたしは世界ぜんたいと、あたらしいそりぐつを、いっそくあげよう。」
 けれども、カイには、それができませんでした。


"I am going now to warm lands," said the Snow Queen. "I must have a look down into the black caldrons." It was the volcanoes Vesuvius and Etna that she meant. "I will just give them a coating of white, for that is as it ought to be; besides, it is good for the oranges and the grapes." And then away she flew, and Kay sat quite alone in the empty halls of ice that were miles long, and looked at the blocks of ice, and thought and thought till his skull was
almost cracked. There he sat quite benumbed and motionless; one would have imagined he was frozen to death.


・caldron=大釜
・volcanoe=火山
・Vesuvius=イタリア・カンパニア州にある火山。ナポリから東へ約9キロメーターのナポリ湾岸にある。紀元79年8月24日の大噴火で、噴出物(火砕流)でポンペイ市をを埋没させたことは有名。
・Etna=イタリア南部シチリア島の東部にある活火山。
・coating=塗装、上塗り
・skull=頭蓋骨
・benumbed=感覚を失った、麻痺した
・one would have imagined=誰かが見たら~と思っただろう


「これから、わたしは、あたたかい国を、ざっとひとまわりしてこよう。」と、雪の女王はいいました。「ついでにそこの黒なべをのぞいてくる。」黒なべというのは、*エトナとかヴェスヴィオとか、いろんな名の、火をはく山のことでした。「わたしはすこしばかり、それを白くしてやろう。ぶどうやレモンをおいしくするためにいいそうだから。」

*エトナはイタリア半島の南シシリー島の火山。ヴェスヴィオはおなじくナポリ市の東方にある火山。

 こういって、雪の女王は、とんでいってしまいました。そしてカイは、たったひとりぼっちで、なんマイルというひろさのある、氷の大広間のなかで、氷の板を見つめて、じっと考えこんでいました。もう、こちこちになって、おなかのなかの氷が、みしりみしりいうかとおもうほど、じっとうごかずにいました。それをみたら、たれも、カイはこおりついたなり、死んでしまったのだとおもったかもしれません。


Suddenly little Gerda stepped through the great portal into the palace. The gate was formed of cutting winds; but Gerda repeated her evening prayer, and the winds were laid as though they slept; and the little maiden entered the vast, empty, cold halls. There she beheld Kay: she recognised him, flew to embrace him, and cried out, her arms firmly holding him the while, "Kay, sweet little Kay! Have I then found you at last?"


・portal=正門、玄関
・laid:lay(~を鎮める、静める)の過去分詞
・beheld:behold(見る)の過去形
・recognise=(人の)見分けがつく、(だれそれと)わかる
・flew:fly(飛ぶように走る)の過去形
・embrace=抱きしめる
・sweet=大切な、いとしいSave0011


ちょうどそのとき、ゲルダは大きな門を通って、その大広間にはいってきました。そこには、身をきるような風が、ふきすさんでいましたが、ゲルダが、ゆうべのおいのりをあげると、ねむったように、しずかになってしまいました。そして、ゲルダは、いくつも、いくつも、さむい、がらんとしたひろまをぬけて、――とうとう、カイをみつけました。ゲルダは、カイをおぼえていました。で、いきなりカイのくびすじにとびついて、しっかりだきしめながら、
「カイ、すきなカイ。ああ、あたしとうとう、みつけたわ。」と、さけびました。


But he sat quite still, benumbed and cold. Then little Gerda shed burning tears; and they fell on his bosom, they penetrated to his heart, they thawed the lumps of ice, and consumed the splinters of the looking-glass; he looked at her, and she sang the hymn:

"The rose in the valley is blooming so sweet,
And angels descend there the children to greet."


・benumbed=麻痺した、感覚を失った
・shed=(涙を)流す
・burning=激しい、ひどい
・bosom=胸
・thaw=雪解けする、解凍する
・consume=消滅させる、使い尽くす
・splinter=破片:[2-(2)参照]
・looking-glass=鏡、姿見
・hymn=賛美歌
・descend=降りる、下ろす


けれども、カイは身ゆるぎもしずに、じっとしゃちほこばったなり、つめたくなっていました。そこで、ゲルダは、あつい涙を流して泣きました。それはカイのむねの上におちて、しんぞうのなかにまで、しみこんで行きました。そこにたまった氷をとかして、しんぞうの中の、鏡のかけらをなくなしてしまいました。カイは、ゲルダをみました。ゲルダはうたいました。


ばらのはな さきてはちりぬ
おさな子エス やがてあおがん


Hereupon Kay burst into tears; he wept so much that the splinter rolled out of his eye, and he recognised her, and shouted, "Gerda, sweet little Gerda! Where have you been so long? And where have I been?" He looked round him. "How cold it is here!" said he. "How empty and cold!" And he held fast by Gerda, who laughed and wept for joy. It was so beautiful, that even the blocks of ice danced about for joy; and when they were tired and laid themselves down, they formed exactly the letters which the Snow Queen had told him to find out; so
now he was his own master, and he would have the whole world and a pair of new skates into the bargain.


・Hereupon=このあと、ここに至って
・the letters:"eternity"[7-(1)参照]
・own master=《be one's ~》誰の干渉も受けない、思うとおりにできる
・into the bargain=おまけに、さらに


すると、カイはわっと泣きだしました。カイが、あまりひどく泣いたものですから、ガラスのとげが、目からぽろりとぬけてでてしまいました。すぐとカイは、ゲルダがわかりました。そして、大よろこびで、こえをあげました。
「やあ、ゲルダちゃん、すきなゲルダちゃん。――いままでどこへいってたの、そしてまた、ぼくはどこにいたんだろう。」こういって、カイは、そこらをみまわしました。「ここは、ずいぶんさむいんだなあ。なんて大きくて、がらんとしているんだろうなあ。」
 こういって、カイは、ゲルダに、ひしととりつきました。ゲルダは、うれしまぎれに、泣いたり、わらったりしました。それがあまりたのしそうなので、氷の板きれまでが、はしゃいでおどりだしました。そして、おどりつかれてたおれてしまいました。そのたおれた形が、ひとりでに、ことばをつづっていました。それは、もしカイに、そのことばがつづれたら、カイは自由になれるし、そしてあたらしいそりぐつと、のこらずの世界をやろうと、雪の女王がいった、そのことばでした。


Gerda kissed his cheeks, and they grew quite blooming; she kissed his eyes, and they shone like her own; she kissed his hands and feet, and he was again well and merry. The Snow Queen might come back as soon as she liked; there stood his discharge written in resplendent masses of ice.


・blooming=はつらつとした
・merry=楽しい、陽気な
・discharge=解放
・resplendent=キラキラ輝く、まばゆい


ゲルダは、カイのほおにせっぷんしました。みるみるそれはぽおっと赤くなりました。それからカイの目にもせっぷんしました。すると、それはゲルダの目のように、かがやきだしました。カイの手だの足だのにもせっぷんしました。これで、しっかりしてげんきになりました。もうこうなれば、雪の女王がかえってきても、かまいません。だって、女王が、それができればゆるしてやるといったことばが、ぴかぴかひかる氷のもんじで、はっきりとそこにかかれていたからです。


They took each other by the hand, and wandered forth out of the large hall; they talked of their old grandmother, and of the roses upon the roof; and wherever they went, the winds ceased raging, and the sun burst forth. And when they reached the bush with the red berries, they found the Reindeer waiting for them. He had brought another, a young one, with him, whose udder was filled with milk, which he gave to the little ones, and kissed their lips. They then carried Kay and Gerda--first to the Finland woman, where they warmed themselves in the warm room, and learned what they were to do on their journey home; and they went to the Lapland woman, who made some new clothes for them and repaired their sledges.


・wander=歩き回る、さまよう
・udder=〔牛・ヤギなどの垂れた〕乳房


さて、そこでふたりは手をとりあって、その大きなお城からそとへでました。そして、うちのおばあさんの話だの、屋根の上のばらのことなどを、語りあいました。ふたりが行くさきざきには、風もふかず、お日さまの光がかがやきだしました。そして、赤い実(み)のなった、あの木やぶのあるところにきたとき、そこにもう、となかいがいて、ふたりをまっていました。そのとなかいは、もう一ぴきのわかいとなかいをつれていました。そして、このわかいほうは、ふくれた乳ぶさからふたりのこどもたちに、あたたかいおちちを出してのませてくれて、そのくちの上にせっぷんしました。それから二ひきのとなかいは、カイとゲルダをのせて、まずフィンランドの女のところへ行きました。そこでふたりは、あのあついへやで、じゅうぶんからだをあたためて、うちへかえる道をおしえてもらいました。それからこんどは、ラップランドの女のところへいきました。その女は、ふたりにあたらしい着物をつくってくれたり、そりをそろえてくれたりしました。


The Reindeer and the young hind leaped along beside them, and accompanied them to the boundary of the country. Here the first vegetation peeped forth; here Kay and Gerda took leave of the Lapland woman. "Farewell! Farewell!" they all said. And the first green buds appeared, the first little birds began to chirrup; and out of the wood came, riding on a magnificent horse, which Gerda knew (it was one of the leaders in the golden carriage), a young damsel with a bright-red cap on her head, and armed with pistols. It was the little robber maiden, who, tired of being at home, had determined to make a journey to the north; and afterwards in another direction, if that did not please her. She recognised Gerda immediately, and Gerda knew her too. It was a joyful meeting.


・hind=雌鹿
・boundary=境界
・vegetation=植物
・peep=姿を現す
・chirrup=〔鳥や虫が〕チュッチュッと鳴く
・wood=森
・magnificent=堂々とした、立派な
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・damsel=〈古・詩〉乙女


となかいと、もう一ぴきのとなかいとは、それなり、ふたりのそりについてはしって、国境(くにざかい)までおくってきてくれました。そこでは、はじめて草の緑が[#「が」は底本では「か」]もえだしていました。カイとゲルダとは、ここで、二ひきのとなかいと、ラップランドの女とにわかれました。
「さようなら。」と、みんなはいいました。そして、はじめて、小鳥がさえずりだしました。森には、緑の草の芽が、いっぱいにふいていました。
 その森の中から、うつくしい馬にのった、わかいむすめが、赤いぴかぴかするぼうしをかぶり、くらにピストルを二ちょうさして、こちらにやってきました。ゲルダはその馬をしっていました。(それは、ゲルダの金(きん)の馬車をひっぱった馬であったからです。)そして、このむすめは、れいのおいはぎのこむすめでした。この女の子は、もう、うちにいるのがいやになって、北の国のほうへいってみたいとおもっていました。そしてもし、北の国が気にいらなかったら、どこかほかの国へいってみたいとおもっていました。このむすめは、すぐにゲルダに気がつきました。ゲルダもまた、このむすめをみつけました。そして、もういちどあえたことを、心からよろこびました。


"You are a fine fellow for tramping about," said she to little Kay; "I should like to know, faith, if you deserve that one should run from one end of the world to the other for your sake?"


・tramp about=歩き回る、さまよう
・faith=<古>実に、全く
・deserve=~を受けるに値する


「おまえさん、ぶらつきやのほうでは、たいしたおやぶんさんだよ。」と、そのむすめは、カイにいいました。「おまえさんのために、世界のはてまでもさがしにいってやるだけのねうちが、いったい、あったのかしら。」


But Gerda patted her cheeks, and inquired for the Prince and Princess.

"They are gone abroad," said the other.


・Prince and Princess、the Ravenは第4話に出てきました。


けれども、ゲルダは、そのむすめのほおを、かるくさすりながら、王子と王女とは、あののちどうなったかとききました。
「あの人たちは、外国へいってしまったのさ。」と、おいはぎのこむすめがこたえました。


"But the Raven?" asked little Gerda.

"Oh! The Raven is dead," she answered. "His tame sweetheart is a widow, and wears a bit of black worsted round her leg; she laments most piteously, but it's all mere talk and stuff! Now tell me what you've been doing and how you managed to catch him."


・worsted=梳(そ)毛糸、毛織物の一種、ウーステッド
・and stuff=~など、みたいなもの

And Gerda and Kay both told their story.


「それで、からすはどうして。」と、ゲルダはたずねました。
「ああ、からすは死んでしまったよ。」と、むすめがいいました。「それでさ、おかみさんがらすも、やもめになって、黒い毛糸の喪章(もしょう)を足につけてね、ないてばかりいるっていうけれど、うわさだけだろう。さあ、こんどは、あれからどんな旅をしたか、どうしてカイちゃんをつかまえたか、話しておくれ。」
そこで、カイとゲルダとは、かわりあって、のこらずの話をしました。


And "Schnipp-schnapp-schnurre-basselurre," said the robber maiden; and she took the hands of each, and promised that if she should some day pass through the town where they lived, she would come and visit them; and then away she rode. Kay and Gerda took each other's hand: it was lovely spring weather, with abundance of flowers and of verdure. The church-bells rang, and the children recognised the high towers, and the large town; it was that in which they dwelt. They entered and hastened up to their grandmother's room, where everything was standing as formerly. The clock said "tick! tack!" and the finger moved round; but as they entered, they remarked that they were now grown up. The roses on the leads hung blooming in at the open window; there stood the little children's chairs, and Kay and Gerda sat down on them, holding each other by the hand; they both had forgotten the cold empty splendor of the Snow Queen, as though it had been a dream. The grandmother sat in the bright sunshine, and read aloud from the Bible: "Unless ye become as little children, ye cannot enter the kingdom of heaven."


・Schnipp-schnapp-schnurre-basselurre:楠山氏訳は「そこで、よろしく、ちんがらもんがらか、でも、まあうまくいって、よかったわ。」楠山氏自身は東京生まれのようですが、「ちんがら」は、宮崎の方言に「めちゃくちゃ」って意味であるようなんですが、これでしょうか。原文も韻を踏んでいるから、「ひっちゃかめっちゃか」ってとこかな(笑)
・abundance of=多数の
・verdure=緑草、新緑
・dwelt=dwell の過去・過去分詞形
・formerly=以前は
・finger=時計の針:動いているのが見えると言うことは長針でしょうか。
・leads=トタン屋根
・splendor=壮観、見事なもの
・from the Bible: "Unless ye become as little children, ye cannot enter the kingdom of heaven.":マタイ福音書18章3節「心を入れ替えて幼な子のようにならなければ、天国に入ることはできないだろう」


「そこで、よろしく、ちんがらもんがらか、でも、まあうまくいって、よかったわ。」と、むすめはいいました。
 そして、ふたりの手をとって、もしふたりのすんでいる町を通ることがあったら、きっとたずねようと、やくそくしました。それから、むすめは馬をとばして、ひろい世界へでて行きました。でも、カイとゲルダとは、手をとりあって、あるいていきました。いくほど、そこらが春めいてきて、花がさいて、青葉がしげりました。お寺の鐘(かね)がきこえて、おなじみの高い塔(とう)と、大きな町が見えてきました。それこそ、ふたりがすんでいた町でした。そこでふたりは、おばあさまの家の戸口へいって、かいだんをあがって、へやへはいりました。そこではなにもかも、せんとかわっていませんでした。柱どけいが「カッチンカッチン」いって、針がまわっていました。けれど、その戸口をはいるとき、じぶんたちが、いつかもうおとなになっていることに気がつきました。おもての屋根(やね)のといの上では、ばらの花がさいて、ひらいた窓から、うちのなかをのぞきこんでいました。そしてそこには、こどものいすがおいてありました。カイとゲルダとは、めいめいのいすにこしをかけて、手をにぎりあいました。ふたりはもう、あの雪の女王のお城のさむい、がらんとした、そうごんなけしきを、ただぼんやりと、おもくるしい夢のようにおもっていました。おばあさまは、神さまの、うららかなお日さまの光をあびながら、「なんじら、もし、おさなごのごとくならずば、天国にいることをえじ。」と、高らかに聖書(せいしょ)の一せつをよんでいました。


And Kay and Gerda looked in each other's eyes, and all at once they understood the old hymn:

"The rose in the valley is blooming so sweet,
And angels descend there the children to greet."

There sat the two grown-up persons; grown-up, and yet children; children at least in heart; and it was summer-time; summer, glorious summer!Save0012


・hymn=賛美歌


カイとゲルダとは、おたがいに、目と目を見あわせました。そして、


ばらのはな さきてはちりぬ
おさな子エスやがてあおがん


というさんび歌のいみが、にわかにはっきりとわかってきました。
 こうしてふたりは、からだこそ大きくなっても、やはりこどもで、心だけはこどものままで、そこにこしをかけていました。
 ちょうど夏でした。あたたかい、みめぐみあふれる夏でした。


以上で『雪の女王』を終わります。

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