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英語でアンデルセン童話「雪の女王」14

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

FIFTH STORY. The Little Robber Maiden


おいはぎのこむすめ

They drove through the dark wood; but the carriage shone like a torch, and it dazzled the eyes of the robbers, so that they could not bear to look at it.


・Robber=強盗、追いはぎ
・Maiden=娘、少女
・wood=森
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・torch=たいまつ


それから、ゲルダのなかまは、くらい森の中を通っていきました。ところが、馬車の光は、たいまつのようにちらちらしていました。それが、おいはぎどもの目にとまって、がまんがならなくさせました。


"'Tis gold! 'Tis gold!" they cried; and they rushed forward, seized the horses, knocked down the little postilion, the coachman, and the servants, and pulled little Gerda out of the carriage.20070810031056


"How plump, how beautiful she is! She must have been fed on nut-kernels," said the old female robber, who had a long, scrubby beard, and bushy eyebrows that hung down over her eyes. "She is as good as a fatted lamb! How nice she will be!" And then she drew out a knife, the blade of which shone so that it was quite dreadful to behold.


・postilion=先頭左馬御者、騎手頭
・coachman=〔馬車の〕御者
・plump=ぽっちゃりした、肉付きのいい
・fed on:fedはfeedの過去分詞、fed on=~で育てられた
・nut-kernels=木の実の(種子から種皮を取り去った内部。胚と胚乳から成る)
・scrubby=むさくるしい
・bushy=〔毛が〕ふさふさした、モジャモジャした
・fatted=〔家畜が食用に〕太らされた
・dreadful=恐ろしい、怖い
・behold=見守る、注視する


「やあ、金(きん)だぞ、金だぞ。」と、おいはぎたちはさけんで、いちどにとびだしてきました。馬をおさえて、ぎょしゃ、べっとうから、おさきばらいまでころして、ゲルダを馬車からひきずりおろしました。
「こりゃあ、たいそうふとって、かわいらしいむすめだわい。きっと、年中くるみの実(み)ばかりたべていたのだろう。」と、おいはぎばばがいいました。女のくせに、ながい、こわいひげをはやして、まゆげが、目の上までたれさがったばあさんでした。「なにしろそっくり、あぶらののった、こひつじというところだが、さあたべたら、どんな味がするかな。」
 そういって、ばあさんは、ぴかぴかするナイフをもちだしました。きれそうにひかって、きみのわるいといったらありません。


"Oh!" cried the woman at the same moment. She had been bitten in the ear by her own little daughter, who hung at her back; and who was so wild and unmanageable, that it was quite amusing to see her. "You naughty child!" said the mother: and now she had not time to kill Gerda.


"She shall play with me," said the little robber child. "She shall give me her muff, and her pretty frock; she shall sleep in my bed!" And then she gave her mother another bite, so that she jumped, and ran round with the pain; and the Robbers laughed, and said, "Look, how she is dancing with the little one!"


・wild=気の荒い
・unmanageable=扱いにくい
・You naughty child=いたずらっ子だね、しょうがない子だね
・She shall~:話し手の意思を表す「彼女に~させる」


「あッ。」
 そのとたん、ばあさんはこえをあげました。その女のせなかにぶらさがっていた、こむすめが、なにしろらんぼうなだだっ子で、おもしろがって、いきなり、母親の耳をかんだのです。
「このあまあ、なにょをする。」と、母親はさけびました。おかげで、ゲルダをころす、はなさきをおられました。
「あの子は、あたいといっしょにあそぶのだよ。」と、おいはぎのこむすめは、いいました。
「あの子はマッフや、きれいな着物をあたいにくれて、晩にはいっしょにねるのだよ。」
 こういって、その女の子は、もういちど、母親の耳をしたたかにかみました。それで、ばあさんはとびあがって、ぐるぐるまわりしました。おいはぎどもは、みんなわらって、
「見ろ、ばばあが、がきといっしょにおどっているからよ。」と、いいました。


"I will go into the carriage," said the little robber maiden; and she would have her will, for she was very spoiled and very headstrong. She and Gerda got in; and then away they drove over the stumps of felled trees, deeper and deeper into the woods. The little robber maiden was as tall as Gerda, but stronger, broader-shouldered, and of dark complexion; her eyes were quite black; they looked almost melancholy. She embraced little Gerda, and said, "They shall not kill you as long as I am not displeased with you. You are, doubtless, a Princess?"


"No," said little Gerda; who then related all that had happened to her, and how much she cared about little Kay.


・have one's will=意のままにする
・spoiled=〔人が〕甘やかされて育った
・headstrong=強情な、わがままな
・stump=切り株
・fell=(木を)切り倒す
・shouldered=【形】~な肩をした
・complexion=顔の色
・melancholy=憂うつな、物悲しい
・displeased with=、(人)に嫌気がさす
・doubtless=確かに
・relate=~を話す、述べる、物語る


「馬車の中へはいってみようや。」と、おいはぎのこむすめはいいました。
 このむすめは、わんぱくにそだって、おまけにごうじょうっぱりでしたから、なんでもしたいとおもうことをしなければ、気がすみませんでした。それで、ゲルダとふたり馬車にのりこんで、きりかぶや、石のでている上を通って、林のおくへ、ふかくはいっていきました。おいはぎのこむすめは、ちょうどゲルダぐらいの大きさでしたが、ずっと、きつそうで、肩つきががっしりしていました。どす黒(ぐろ)いはだをして、その目はまっ黒で、なんだかかなしそうに見えました。女の子は、ゲルダのこしのまわりに手をかけて、
「あたい、おまえとけんかしないうちは、あんなやつらに、おまえをころさせやしないことよ。おまえはどこかの王女じゃなくて。」と、いいました。
「いいえ、わたしは王女ではありません。」と、ゲルダはこたえて、いままでにあったできごとや、じぶんがどんなに、すきなカイちゃんのことを思っているか、ということなぞを話しました。


The little robber maiden looked at her with a serious air, nodded her head slightly, and said, "They shall not kill you, even if I am angry with you: then I will do it myself"; and she dried Gerda's eyes, and put both her hands in the handsome muff, which was so soft and warm.


At length the carriage stopped. They were in the midst of the court-yard of a robber's castle. It was full of cracks from top to bottom; and out of the openings magpies and rooks were flying; and the great bull-dogs, each of which looked as if he could swallow a man, jumped up, but they did not bark, for that was forbidden.


・handsome=素晴らしい
・muff=〔防寒具の〕マフ◆女性が手を入れるためのもので、毛皮製で円筒形をしている
Muff.jpg
・At length= 〔長時間かかって〕ついに、しまいには
・opening=開口部、穴、すき間
・magpie=カササギ
・rook=ミヤマガラス

おいはぎのむすめは、しげしげとゲルダを見て、かるくうなずきながら、
「あたいは、おまえとけんかしたって、あのやつらに、おまえをころさせやしないよ。そんなくらいなら、あたい、じぶんでおまえをころしてしまうわ。」と、いいました。
 それからむすめは、ゲルダの目をふいてやり、両手をうつくしいマッフにつけてみましたが、それはたいへん、ふっくりして、やわらかでした。
 さあ、馬車はとまりました。そこはおいはぎのこもる、お城のひろ庭でした。その山塞(さんさい)は、上から下までひびだらけでした。そのずれたわれ目から、大がらす小がらすがとびまわっていました。大きなブルドッグが、あいてかまわず、にんげんでもくってしまいそうなようすで、高くとびあがりました。でも、けっしてほえませんでした。ほえることはとめられてあったからです。


バードウォッチング』より「カササギ」Images_2




ここから「ミヤマガラス」20000130_012d  

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英語でアンデルセン童話「雪の女王」13

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The Prince was only like him about the neck; but he was young and handsome. And out of the white lily leaves the Princess peeped, too, and asked what was the matter. Then little Gerda cried, and told her her whole history, and all that the Ravens had done for her.


・peep=現れる、姿を現す


いまは王子となったその人は、ただ、くびすじのところが、カイちゃんににていただけでした。でもその王子はわかくて、うつくしい顔をしていました。王女は白いゆりの花ともみえるベッドから、目をぱちくりやって見あげながら、たれがそこにきたのかと、おたずねになりました。そこでゲルダは泣いて、いままでのことや、からすがいろいろにつくしてくれたことなどを、のこらず王子に話しました。


"Poor little thing!" said the Prince and the Princess. They praised the Ravens very much, and told them they were not at all angry with them, but they were not to do so again. However, they should have a reward. "Will you fly about here at liberty," asked the Princess; "or would you like to have a fixed appointment as court ravens, with all the broken bits from the kitchen?"


・fixed appointment=決まった任務
・were not to~:are not to~=~してはいけない


「それは、まあ、かわいそうに。」と、王子と王女とがいいました。そして、からすをおほめになり、じぶんたちはけっして、からすがしたことをおこりはしないが、二どとこんなことをしてくれるな、とおっしゃいました。それでも、からすたちは、ごほうびをいただくことになりました。
「おまえたちは、すきかってに、そとをとびまわっているほうがいいかい。」と、王女はたずねました。「それとも、宮中おかかえのからすとして、台所のおあまりは、なんでもたべることができるし、そういうふうにして、いつまでもごてんにいたいとおもうかい。」


宮廷の台所からパンを盗み、王子と王女の寝室の鍵も盗んで、ゲルダを裏口から連れて入って来たことを叱りながらも、その代わり宮廷の中を自由に飛ぶことか、宮廷付きのカラスとして台所のパンのかけらを食べられることを許してくれるというわけだ。


And both the Ravens nodded, and begged for a fixed appointment; for they thought of their old age, and said, "It is a good thing to have a provision for our old days."


・provision=食料


そこで、二わのからすはおじぎをして、自分たちが、としをとってからのことをかんがえると、やはりごてんにおいていただきたいと、ねがいました。そして、
「だれしもいっていますように、さきへいってこまらないように、したいものでございます。」と、いいました。


And the Prince got up and let Gerda sleep in his bed, and more than this he could not do. She folded her little hands and thought, "How good men and animals are!" and she then fell asleep and slept soundly. All the dreams flew in again, and they now looked like the angels; they drew a little sledge, in which little Kay sat and nodded his head; but the whole was only a dream, and therefore it all vanished as soon as she awoke.


・fold=~を組む、組み合わせる
・slept soundly:sleep soundly=ぐっすり眠る


王子はそのとき、ベッドから出て、ゲルダをそれにねかせ、じぶんは、それなりねようとはしませんでした。ゲルダはちいさな手をくんで、「まあ、なんといういい人や、いいからすたちだろう。」と、おもいました。それから、目をつぶって、すやすやねむりました。すると、また夢がやってきて、こんどは天使のような人たちが、一だいのそりをひいてきました。その上には、カイちゃんが手まねきしていました。けれども、それはただの夢だったので、目をさますと、さっそくきえてしまいました。


The next day she was dressed from head to foot in silk and velvet. They offered to let her stay at the palace, and lead a happy life; but she begged to have a little carriage with a horse in front, and for a small pair of shoes; then, she said, she would again go forth in the wide world and look for Kay.


・lead a happy life=楽しく暮らす
・for=begged for
・go forth=出発する


あくる日になると、ゲルダはあたまから、足のさきまで、絹やびろうどの着物でつつまれました。そしてこのままお城にとどまっていて、たのしくくらすようにとすすめられました。でも、ゲルダはただ、ちいさな馬車と、それをひくうまと、ちいさな一そくの長ぐつがいただきとうございますと、いいました。それでもういちど、ひろい世界へ、カイちゃんをさがしに出ていきたいのです。


Shoes and a muff were given her; she was, too, dressed very nicely; and when she was about to set off, a new carriage stopped before the door. It was of pure gold, and the arms of the Prince and Princess shone like a star upon it; the coachman, the footmen, and the outriders, for outriders were there, too, all wore golden crowns. The Prince and the Princess assisted her into the carriage themselves, and wished her all success. The Raven of the woods, who was now married, accompanied her for the first three miles. He sat beside Gerda, for he could not bear riding backwards; the other Raven stood in the doorway, and flapped her wings; she could not accompany Gerda, because she suffered from headache since she had had a fixed appointment and ate so much. The carriage was lined inside with sugar-plums, and in the seats were fruits and gingerbread.


・muff=〔防寒具の〕マフ◆女性が手を入れるためのもので、毛皮製で円筒形をしている。
・set off=出発する
・coachman=〔馬車の〕御者
・footmen:footman=従僕、召使
・outrider=先導する人、乗馬従者
・was lined with~=~で覆われていた、~が敷きつめられていた
・gingerbread=ジンジャーブレッド◆甘いショウガ入りのクッキー(gingerbread cookie または gingersnap)またはケーキ。クッキーは固く焼かれ、通常丸い形をしている。ケーキは糖みつで味付けをされることが多い。


さて、ゲルダは長ぐつばかりでなく、マッフまでもらって、さっぱりと旅のしたくができました。いよいよでかけようというときに、げんかんには、じゅん金のあたらしい馬車が一だいとまりました。王子と王女の紋章(もんしょう)が、星のようにひかってついていました。ぎょしゃや、べっとうや、おさきばらいが――そうです、おさきばらいまでが――金の冠(かんむり)をかぶってならんでいました。王子と王女は、ごじぶんで、ゲルダをたすけて馬車にのらせ、ぶじにいってくるようにおっしゃいました。もういまはけっこんをすませた森のからすも、三マイルさきまで、みおくりについてきました。このからすは、うしろむきにのっていられないというので、ゲルダのそばにすわっていました。めすのほうのからすは、羽根をばたばたやりながら、門のところにとまっていました。おくっていかないわけは、あれからずっとごてんづとめで、たくさんにたべものをいただくせいか、ひどく頭痛(ずつう)がしていたからです。その馬車のうちがわは、さとうビスケットでできていて、こしをかけるところは、くだものや、くるみのはいったしょうがパンでできていました。


"Farewell! Farewell!" cried Prince and Princess; and Gerda wept, and the Raven wept. Thus passed the first miles; and then the Raven bade her farewell, and this was the most painful separation of all. He flew into a tree, and beat his black wings as long as he could see the carriage, that shone from afar like a sunbeam.


「さよなら、さよなら。」と、王子と王女がさけびました。するとゲルダは泣きだしました。――からすもまた泣きました。――さて、馬車が三マイル先のところまできたとき、こんどはからすが、さよならをいいました。この上ないかなしいわかれでした。からすはそこの木の上にとびあがって、馬車がいよいよ見えなくなるまで、黒いつばさを、ばたばたやっていました。馬車はお日さまのようにかがやきながら、どこまでもはしりつづけました。


絵本では、御者や従者はついていませんねえ(^_^;)20070720040851

英語でアンデルセン童話「雪の女王」12

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The evening was closing in when the Raven returned. "Caw--caw!" said he. "She sends you her compliments; and here is a roll for you. She took it out of the kitchen, where there is bread enough. You are hungry, no doubt. It is not possible for you to enter the palace, for you are barefooted: the guards in silver, and the lackeys in gold, would not allow it; but do not cry, you shall come in still. My sweetheart knows a little back stair that leads to the
bedchamber, and she knows where she can get the key of it."


・closing in:close in=近づく、迫る
・compliments=あいさつ
・roll=ロール(パン)
・you shall come in=入ってよい:you shallは話し手の意志を表す
・still=〈古〉常に、いつでも
・back stair=裏階段
・bedchamber=寝室


そのからすがかえってきたときには、晩もだいぶくらくなっていました。
「すてき、すてき。」と、からすはいいました。「いいなずけが、あなたによろしくとのことでしたよ。さあ、ここに、すこしばかりパンをもってきてあげました。さぞ、おなかがすいたでしょう。いいなずけが、だいどころからもってきたのです。そこにはたくさんまだあるのです。――どうも、お城へはいることは、できそうもありませんよ。なぜといって、あなたはくつをはいていませんから、銀の軍服のへいたいや、金ぴかのせいふくのお役人たちが、ゆるしてくれないでしょうからね、だがそれで泣いてはいけない。きっと、つれて行けるくふうはしますよ。わたしのいいなずけは、王女さまのねまに通じている、ほそい、うらばしごをしっていますし、そのかぎのあるところもしっているのですからね。」


And they went into the garden in the large avenue, where one leaf was falling after the other; and when the lights in the palace had all gradually disappeared, the Raven led little Gerda to the back door, which stood half open.


・avenue=大通り
・stood:stand=現時点で~である


そこで、からすとゲルダとは、お庭をぬけて、木の葉があとからあとからと、ちってくる並木道(なみきみち)を通りました。そして、お城のあかりが、じゅんじゅんにきえてしまったとき、からすはすこしあいているうらの戸口へ、ゲルダをつれていきました。


Oh, how Gerda's heart beat with anxiety and longing! It was just as if she had been about to do something wrong; and yet she only wanted to know if little Kay was there. Yes, he must be there. She called to mind his intelligent eyes, and his long hair, so vividly, she could quite see him as he used to laugh when they were sitting under the roses at home. "He will, no doubt, be glad to see you--to hear what a long way you have come for his sake; to know how unhappy all at home were when he did not come back."


Oh, what a fright and a joy it was!


・longing=切望、熱望
・and yet=それなのに
・call to mind=思い浮かべる
・all at home=家にいるみんな


まあ、ゲルダのむねは、こわかったり、うれしかったりで、なんてどきどきしたことでしょう。まるでゲルダは、なにかわるいことでもしているような気がしました。けれど、ゲルダはその人が、カイちゃんであるかどうかをしりたい、いっしんなのです。そうです。それはきっと、カイちゃんにちがいありません。ゲルダは、しみじみとカイちゃんのりこうそうな目つきや、長いかみの毛をおもいだしていました。そして、ふたりがうちにいて、ばらの花のあいだにすわってあそんだとき、カイちゃんがわらったとおりの笑顔(えがお)が、目にうかびました。そこで、カイちゃんにあって、ながいながい道中をして自分をさがしにやってきたことをきき、あれなりかえらないので、どんなにみんなが、かなしんでいるかしったなら、こうしてきてくれたことを、どんなによろこぶでしょう。まあ、そうおもうと、うれしいし、しんぱいでした。


They were now on the stairs. A single lamp was burning there; and on the floor stood the tame Raven, turning her head on every side and looking at Gerda, who bowed as her grandmother had taught her to do.


・on every side=四方八方に


さて、からすとゲルダとは、かいだんの上にのぼりました。ちいさなランプが、たなの上についていました。そして、ゆか板のまん中のところには、飼いならされた女がらすが、じっとゲルダを見て立っていました。ゲルダはおばあさまからおそわったように、ていねいにおじぎしました。


"My intended has told me so much good of you, my dear young lady," said the tame Raven. "Your tale is very affecting. If you will take the lamp, I will go before. We will go straight on, for we shall meet no one."


"I think there is somebody just behind us," said Gerda; and something rushed past: it was like shadowy figures on the wall; horses with flowing manes and thin legs, huntsmen, ladies and gentlemen on horseback.


・intended=いいなずけ
・affecting=心を打つ、感動的な
・go straight on=一直線に進む、真っすぐに行く
・flowing=流れるような
・mane=たてがみ
・huntsmen:huntman=狩猟者


「かわいいおじょうさん。わたしのいいなずけは、あなたのことを、たいそうほめておりました。」と、そのやさしいからすがいいました。「あなたの、そのごけいれきとやらもうしますのは、ずいぶんおきのどくなのですね。さあ、ランプをおもちください。ごあんないしますわ。このところをまっすぐにまいりましょう。もうだれにもあいませんから。」
「だれか、わたしたちのあとから、ついてくるような気がすることね。」と、なにかがそばをきゅうに通ったときに、ゲルダはいいました。それは、たてがみをふりみだして、ほっそりとした足をもっている馬だの、それから、かりうどだの、馬にのったりっぱな男の人や、女の人だのの、それがみんなかべにうつったかげのように見えました。


"They are only dreams," said the Raven. "They come to fetch the thoughts of the high personages to the chase; 'tis well, for now you can observe them in bed all the better. But let me find, when you enjoy honor and distinction, that you possess a grateful heart."


"Tut! That's not worth talking about," said the Raven of the woods.


・fetch=~の心をつかむ
・high personage=高貴な方
・the chase=要点
・'tis=it isの短縮形
・for now=今のところ、さしあたって
・observe=よく見る、観察する
・all the better=なおさら、いっそう
・distinction=名声
・grateful=感謝する
・Tut=【間投】 〔いら立ちや非難を表す〕ちぇっ


「あれは、ほんの夢なのですわ。」と、からすがいいました。「あれらは、それぞれのご主人たちのこころを、りょうにさそいだそうとしてくるのです。つごうのいいことに、あなたは、ねどこの中であのひとたちのお休みのところがよくみられます。そこで、どうか、あなたがりっぱな身分におなりになったのちも、せわになったおれいは、おわすれなくね。」
「それはいうまでもないことだろうよ。」と、森のからすがいいました。


They now entered the first saloon, which was of rose-colored satin, with artificial flowers on the wall. Here the dreams were rushing past, but they hastened by so quickly that Gerda could not see the high personages. One hall was more magnificent than the other; one might indeed well be abashed; and at last they came into the bedchamber. The ceiling of the room resembled a large palm-tree with leaves of glass, of costly glass; and in the middle, from a thick golden stem, hung two beds, each of which resembled a lily. One was white, and in this lay the Princess; the other was red, and it was here that Gerda was to look for little Kay. She bent back one of the red leaves, and saw a brown neck. Oh! that was Kay! She called him quite loud by name, held the lamp towards him--the dreams rushed back again into the chamber--he awoke, turned his head, and--it was not little Kay!


・saloon=大広間、客室
・artificial=作り物の
・hall=大広間、廊下
・magnificent=素晴らしい、格調高い
・might well=《推量・可能性》~だろう
・abashed=当惑した、恥じている、ばつが悪い
・palm=ヤシ、シュロ
・costly=高価な
・stem=茎、幹
・bent back:bend back=後ろに(弓なりに)曲げる


さて、からすとゲルダとは、一ばんはじめの広間にはいっていきました。そこのかべには、花でかざった、ばら色のしゅすが、上から下まで、はりつめられていました。そして、ここにもりょうにさそうさっきの夢は、もうとんで来ていましたが、あまりはやくうごきすぎて、ゲルダはえらい殿(との)さまや貴婦人(きふじん)方を、こんどはみることができませんでした。ひろまから、ひろまへ行くほど、みごとにできていました。ただもうあまりのうつくしさに、まごつくばかりでしたが、そのうち、とうとうねままではいっていきました。そこのてんじょうは、高価なガラスの葉をひろげた、大きなしゅろの木のかたちになっていました。そして、へやのまんなかには、ふたつのベッドが、木のじくにあたる金のふとい柱につりさがっていて、ふたつとも、ゆりの花のようにみえました。そのベッドはひとつは白くて、それには王女がねむっていました。もうひとつのは赤くて、そこにねむっている人こそ、ゲルダのさがすカイちゃんでなくてはならないのです。ゲルダは赤い花びらをひとひら、そっとどけると、そこに日やけしたくびすじが見えました。――ああ、それはカイちゃんでした。
 ――ゲルダは、カイちゃんの名をこえ高くよびました。ランプをカイちゃんのほうへさしだしました。……夢がまた馬にのって、さわがしくそのへやの中へ、はいってきました。……その人は目をさまして、顔をこちらにむけました。ところが、それはカイちゃんではなかったのです。


なかなか原作は複雑で細かくて、意味深ですなあ(^_^;)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」11

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

"But Kay--little Kay," said Gerda, "when did he come? Was he among the number?"


"Patience, patience; we are just come to him. It was on the third day when a little personage without horse or equipage, came marching right boldly up to the palace; his eyes shone like yours, he had beautiful long hair, but his clothes were very shabby."


"That was Kay," cried Gerda, with a voice of delight. "Oh, now I've found him!" and she clapped her hands for joy.


"He had a little knapsack at his back," said the Raven.


"No, that was certainly his sledge," said Gerda; "for when he went away he took his sledge with him."


・the number=((集合的)) 連中
・Patience=忍耐
・personage=〔一般に〕人
・equipage=〈古〉〔貴族などの〕従者
・right=完全に、本当に
・boldly=大胆に、正々堂々と
・shabby=ぼろぼろの、みすぼらしい


「でも、カイちゃんはどうしたのです。いつカイちゃんはやってきたのです。」と、ゲルダはたずねました。「カイちゃんは、その人たちのなかまにいたのですか。」
「まあまあ、おまちなさい。これから、そろそろ、カイちゃんのことになるのです。ところで、その三日目に、馬にも、馬車にものらないちいさな男の子が、たのしそうにお城のほうへ、あるいていきました。その人の目は、あなたの目のようにかがやいて、りっぱな、長いかみの毛をもっていましたが、着物はぼろぼろにきれていました。」
「それがカイちゃんなのね。ああ、それでは、とうとう、あたし、カイちゃんをみつけたわ。」と、ゲルダはうれしそうにさけんで、手をたたきました。
「その子は、せなかに、ちいさなはいのうをしょっていました。」と、からすがいいました。
「いいえ、きっと、それは、そりよ。」と、ゲルダはいいました。「カイちゃんは、そりといっしょに見えなくなってしまったのですもの。」


"That may be," said the Raven; "I did not examine him so minutely; but I know from my tame sweetheart, that when he came into the court-yard of the palace, and saw the body-guard in silver, the lackeys on the staircase, he was not the least abashed; he nodded, and said to them, 'It must be very tiresome to stand on the stairs; for my part, I shall go in.' The saloons were gleaming with lustres--privy councillors and excellencies were walking about barefooted, and wore gold keys; it was enough to make any one feel uncomfortable. His boots creaked, too, so loudly, but still he was not at all afraid."


・minutely=詳細に、細かに
・tame=従順な
・lackey=召使
・staircase=階段
・not the least=少しの~もない◆【同】no~at all
・abashed=恥じている、ばつが悪い
・for my part=私としては
・saloon=大広間、客室
・lustre=〔照明の〕シャンデリア
・privy=内情に通じた
・councillor=顧問官
・excellencies:excellency=閣下◆高官に対する敬称
・creak=きしむ、ギシギシという音を立てる


「なるほど、そうかもしれません。」と、からすはいいました。「なにしろ、ちょっと見ただけですから。しかし、それは、みんなわたしのやさしいいいなずけからきいたのです。それから、その子はお城の門をはいって、銀の軍服(ぐんぷく)のへいたいをみながら、だんをのぼって、金ぴかのせいふくのお役人の前にでましたが、すこしもまごつきませんでした。それどころか、へいきでえしゃくして、
『かいだんの上に立っているのは、さぞたいくつでしょうね。ではごめんこうむって、わたしは広間にはいらせてもらいましょう。』と、いいました。広間にはあかりがいっぱいついて、枢密顧問官(すうみつこもんかん)や、身分の高い人たちが、はだしで金の器(うつわ)をはこんであるいていました。そんな中で、たれだって、いやでもおごそかなきもちになるでしょう。ところへ、その子のながぐつは、やけにやかましくギュウ、ギュウなるのですが、いっこうにへいきでした。」


"That's Kay for certain," said Gerda. "I know he had on new boots; I have heard them creaking in grandmama's room."


"Yes, they creaked," said the Raven. "And on he went boldly up to the Princess, who was sitting on a pearl as large as a spinning-wheel. All the ladies of the court, with their attendants and attendants' attendants, and all the cavaliers, with their gentlemen and gentlemen's gentlemen, stood round; and the nearer they stood to the door, the prouder they looked. It was hardly possible to look at the gentleman's gentleman, so very haughtily did he stand in the doorway."


・spinning-wheel=糸車、紡ぎ車
・attendant=従者、お供
・cavalier=〈古〉騎士
・gentlemen:gentleman==従僕
・stood round=そのあたりに[周りに]立っていた
・haughtily=横柄な様子で


「きっとカイちゃんよ。」と、ゲルダがさけびました。
「だって、あたらしい長ぐつをはいていましたもの。わたし、そのくつがギュウ、ギュウいうのを、おばあさまのへやできいたわ。」
「そう、ほんとうにギュウ、ギュウってなりましたよ。」と、からすはまた話しはじめました。
「さて、その子は、つかつかと、糸車ほどの大きなしんじゅに、こしをかけている、王女さまのご前(ぜん)に進みました。王女さまのぐるりをとりまいて、女官たちがおつきを、そのおつきがまたおつきを、したがえ、侍従(じじゅう)がけらいの、またそのけらいをしたがえ、それがまた、めいめい小姓(こしょう)をひきつれて立っていました。しかも、とびらの近くに立っているものほど、いばっているように見えました。しじゅう、うわぐつであるきまわっていた、けらいのけらいの小姓なんか、とてもあおむいて顔が見られないくらいでした。とにかく、戸ぐちのところでいばりかえっているふうは、ちょっと見ものでした。」


"It must have been terrible," said little Gerda. "And did Kay get the Princess?"


"Were I not a Raven, I should have taken the Princess myself, although I am promised. It is said he spoke as well as I speak when I talk Raven language; this I learned from my tame sweetheart. He was bold and nicely behaved; he had not come to woo the Princess, but only to hear her wisdom. She pleased him, and he pleased her."


・terrible=ひどく嫌な、怖い
・Were I not a Raven=If I were not a Raven
・am promised=見込みがある
・woo=〈古〉〔女性に〕求婚する
・please=~の気に入る


「まあ、ずいぶんこわいこと。それでもカイちゃんは、王女さまとけっこんしたのですか。」と、ゲルダはいいました。
「もし、わたしがからすでなかったなら、いまのいいなずけをすてても、王女さまとけっこんしたかもしれません。人のうわさによりますと、その人は、わたしがからすのことばを話すときとどうよう、じょうずに話したということでした。わたしは、そのことを、わたしのいいなずけからきいたのです。どうして、なかなかようすのいい、げんきな子でした。それも王女さまとけっこんするためにきたのではなくて、ただ、王女さまがどのくらいかしこいか知ろうとおもってやってきたのですが、それで王女さまがすきになり、王女さまもまたその子がすきになったというわけです。」


"Yes, yes; for certain that was Kay," said Gerda. "He was so clever; he could reckon fractions in his head. Oh, won't you take me to the palace?"


"That is very easily said," answered the Raven. "But how are we to manage it? I'll speak to my tame sweetheart about it: she must advise us; for so much I must tell you, such a little girl as you are will never get permission to enter."


・reckon=~を勘定に入れる、考える
・fraction=破片、断片、一部分
・easily said=言うのは簡単


「そう、いよいよ、そのひと、カイちゃんにちがいないわ。カイちゃんは、そりゃりこうで、分数まであんざんでやれますもの――ああ、わたしを、そのお城へつれていってくださらないこと。」と、ゲルダはいいました。
「さあ、くちでいうのはたやすいが、どうしたら、それができるか、むずかしいですよ。」と、からすはいいました。「ところで、まあ、それをどうするか、まあ、わたしのいいなずけにそうだんしてみましょう。きっと、いいちえをかしてくれるかもしれません。なにしろ、あなたのような、ちいさな娘さんが、お城の中にはいることは、ゆるされていないのですからね。」


"Oh, yes I shall," said Gerda; "when Kay hears that I am here, he will come out directly to fetch me."


"Wait for me here on these steps," said the Raven. He moved his head backwards and forwards and flew away.


・fetch=~を(目的の物が置かれている場所まで)行って取ってくる、連れてくる20070715053937


「いいえ、そのおゆるしならもらえてよ。」と、ゲルダがこたえました。「カイちゃんは、わたしがきたときけば、すぐに出てきて、わたしをいれてくれるでしょう。」
「むこうのかきねのところで、まっていらっしゃい。」と、からすはいって、あたまをふりふりとんでいってしまいました。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」10

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

FOURTH STORY. The Prince and Princess


   第四のお話

     王子と王女

Gerda was obliged to rest herself again, when, exactly opposite to her, large Raven came hopping over the white snow. He had long been looking at Gerda and shaking his head; and now he said, "Caw! Caw!" Good day! Good day! He could not say it better; but he felt a sympathy for the little girl, and asked her where she was going all alone. The word "alone" Gerda understood quite well, and felt how much was expressed by it; so she told the Raven her whole history, and asked if he had not seen Kay.


・obliged to=仕方なく~する
・opposite to=~の逆方向に、逆方向から
・Raven=(大型の)カラス、ワタリガラス◆不吉の兆しとされる
・hop=ピョンピョン飛ぶ
・Cawd=(カラスが)かーかー鳴く(声)
・Good day=【間投】 こんにちは、ご機嫌よう、さようなら、じゃあこれで


ゲルダは、またも、やすまなければなりませんでした。ゲルダがやすんでいた場所の、ちょうどむこうの雪の上で、一わの大きなからすが、ぴょんぴょんやっていました。このからすは、しばらくじっとしたなりゲルダをみつめて、あたまをふっていましたが、やがてこういいました。
「カア、カア、こんちは。こんちは。」
 からすは、これよりよくは、なにもいうことができませんでしたが、でも、ゲルダをなつかしくおもっていて、このひろい世界で、たったひとりぼっち、どこへいくのだといって、たずねました。この「ひとりぼっち。」ということばを、ゲルダはよくあじわって、しみじみそのことばに、ふかいいみのこもっていることをおもいました。ゲルダはそこでからすに、じぶんの身の上のことをすっかり話してきかせた上、どうかしてカイをみなかったか、たずねました。


The Raven nodded very gravely, and said, "It may be--it may be!"


"What, do you really think so?" cried the little girl; and she nearly squeezed the Raven to death, so much did she kiss him.


"Gently, gently," said the Raven. "I think I know; I think that it may be little Kay. But now he has forgotten you for the Princess."


"Does he live with a Princess?" asked Gerda.


"Yes--listen," said the Raven; "but it will be difficult for me to speak your language. If you understand the Raven language I can tell you better."


"No, I have not learnt it," said Gerda; "but my grandmother understands it, and she can speak gibberish too. I wish I had learnt it."


"No matter," said the Raven; "I will tell you as well as I can; however, it will be bad enough." And then he told all he knew.


・gravely=深刻に
・Gently=優しく、おだやかに
・I think I know=彼(カイ)に会ったと思う、会ったのは彼だったと思う
・learnt=learnの過去・過去分詞
・gibberish=ちんぷんかんぷんな[訳の分からない]話[おしゃべり・文章]


するとからすは、ひどくまじめにかんがえこんで、こういいました。
「あれかもしれない。あれかもしれない。」
「え、しってて。」と、ゲルダは大きなこえでいって、からすをらんぼうに、それこそいきのとまるほどせっぷんしました。
「おてやわらかに、おてやわらかに。」と、からすはいいました。「どうも、カイちゃんをしっているような気がします。たぶん、あれがカイちゃんだろうとおもいますよ。けれど、カイちゃんは、王女さまのところにいて、あなたのことなどは、きっとわすれていますよ。」
「カイちゃんは、王女さまのところにいるんですって。」と、ゲルダはききました。
「そうです。まあ、おききなさい。」と、からすはいいました。「どうも、わたしにすると、にんげんのことばで話すのは、たいそうなほねおりです。あなたにからすのことばがわかると、ずっとうまく話せるのだがなあ。」
「まあ、あたし、ならったことがなかったわ。」と、ゲルダはいいました。「でも、うちのおばあさまは、おできになるのよ。あたし、ならっておけばよかった。」
「かまいませんよ。」と、からすはいいました。「まあ、できるだけしてみますから。うまくいけばいいが。」  それからからすは、しっていることを、話しました。


"In the kingdom where we now are there lives a Princess, who is extraordinarily clever; for she has read all the newspapers in the whole world, and has forgotten them again--so clever is she. She was lately, it is said, sitting on her throne--which is not very amusing after all--when she began humming an old tune, and it was just, 'Oh, why should I not be married?' 'That song is not without its meaning,' said she, and so then she was determined to marry; but she would have a husband who knew how to give an answer when he was spoken to--not one who looked only as if he were a great personage, for that is so tiresome. She then had all the ladies of the court drummed together; and when they heard her intention, all were very pleased, and said, 'We are very glad to hear it; it is the very thing we were thinking of.' You may believe every word I say," said the Raven; "for I have a tame sweetheart that hops about in the palace quite free, and it was she who told me all this.


・lately=【副】 最近、このごろ◆【用法】過去形で用いることができるのは結果が現在に影響を及ぼしているときのみ
・which=sitting on her throne
・amusing=面白い、楽しい
・why should=一体何でまた~なのか
・would=~したいと思う
・personage=有名人、有力者、〔一般に〕人
・tiresome=うんざりする、退屈な
・drum=(太鼓をたたいて)呼集める
・the very thing=まさしくそのもの
・tame=従順な
・sweetheart=恋人


「わたしたちがいまいる国には、たいそうかしこい王女さまがおいでなるのです。なにしろ世界中のしんぶんをのこらず読んで、のこらずまたわすれてしまいます。まあそんなわけで、たいそうりこうなかたなのです。さて、このあいだ、王女さまは玉座(ぎょくざ)におすわりになりました。玉座というものは、せけんでいうほどたのしいものではありません。そこで王女さまは、くちずさみに歌をうたいだしました。その歌は『なぜに、わたしは、むことらぬ』といった歌でした。そこで、『なるほど、それももっともだわ。』と、いうわけで、王女さまはけっこんしようとおもいたちました。でも夫(おっと)にするなら、ものをたずねても、すぐとこたえるようなのがほしいとおもいました。だって、ただそこにつっ立って、ようすぶっているだけでは、じきにたいくつしてしまいますからね。そこで、王女さまは、女官(じょかん)たち、のこらずおめしになって、このもくろみをお話しになりました。女官たちは、たいそうおもしろくおもいまして、
『それはよいおもいつきでございます。わたくしどもも、ついさきごろ、それとおなじことをかんがえついたしだいです。』などと申しました。
「わたしのいっていることは、ごく、ほんとうのことなのですよ。」と、からすはいって、「わたしには、やさしいいいなずけがあって、その王女さまのお城に、自由にとんでいける、それがわたしにすっかり話してくれたのです。」と、いいそえました。


おお!カラスのスパイ!?(笑)


"The newspapers appeared forthwith with a border of hearts and the initials of the Princess; and therein you might read that every good-looking young man was at liberty to come to the palace and speak to the Princess; and he who spoke in such wise as showed he felt himself at home there, that one the Princess would choose for her husband.


・appear=発刊される
・forthwith=すぐに
・border=縁取り
・initial=頭文字
・therein=その中に
・at liberty to=《be ~》自由に~してよい
・wise=《古》方法(way)
・felt at home=くつろいだ気持ちになった


ハートと、王女さまのかしらもじでふちどったしんぶんが、さっそく、はっこうされました。それには、ようすのりっぱな、わかい男は、たれでもお城にきて、王女さまと話すことができる。そしてお城へきても、じぶんのうちにいるように、気やすく、じょうずに話した人を、王女は夫としてえらぶであろうということがかいてありました。


"Yes, Yes," said the Raven, "you may believe it; it is as true as I am sitting here. People came in crowds; there was a crush and a hurry, but no one was successful either on the first or second day. They could all talk well enough when they were out in the street; but as soon as they came inside the palace gates, and saw the guard richly dressed in silver, and the lackeys in gold on the staircase, and the large illuminated saloons, then they were abashed; and when they stood before the throne on which the Princess was sitting, all they could do was to repeat the last word they had uttered, and to hear it again did not interest her very much. It was just as if the people within were under a charm, and had fallen into a trance till they came out again into the street; for then--oh, then--they could chatter enough. There was a whole row of them standing from the town-gates to the palace. I was there myself to look," said the Raven. "They grew hungry and thirsty; but from the palace they got nothing whatever, not even a glass of water. Some of the cleverest, it is true, had taken bread and butter with them: but none shared it with his neighbor, for each thought, 'Let him look hungry, and then the Princess won't have him.'"


・crush=押し合い
・hurry=急ぐこと、あわてること
・guard=守衛、見張り
・lackey=召使
・staircase=階段
・illuminated=彩色された
・saloon=大広間、客室
・abashed=恥じている、ばつが悪い
・last word=《the ~》最後の[決定的な・とどめの]言葉[一言・発言]
・under a charm=魔法にかかっている
・fall into a trance=恍惚状態になる
・chatter=ぺちゃくちゃしゃべる
・whole=完全な、まるごとの
・row=列
・nothing whatever=何一つ~ない
・bread and butter=バターつきパン


「そうです。そうです。あなたはわたしをだいじょうぶ信じてください。この話は、わたしがここにこうしてすわっているのとどうよう、ほんとうの話なのですから。」と、からすはいいました。
「わかい男の人たちは、むれをつくって、やってきました。そしてたいそう町はこんざつして、たくさんの人が、あっちへいったり、こっちへきたり、いそがしそうにかけずりまわっていました。でもはじめの日も、つぎの日も、ひとりだってうまくやったものはありません。みんなは、お城のそとでこそ、よくしゃべりましたが、いちどお城の門をはいって、銀ずくめのへいたいをみたり、かいだんをのぼって、金ぴかのせいふくをつけたお役人に出あって、あかるい大広間にはいると、とたんにぽうっとなってしまいました。そして、いよいよ王女さまのおいでになる玉座の前に出たときには、たれも王女さまにいわれたことばのしりを、おうむがえしにくりかえすほかありませんでした。王女さまとすれば、なにもじぶんのいったことばを、もういちどいってもらってもしかたがないでしょう。ところが、だれも、ごてんのなかにはいると、かぎたばこでものまされたように、ふらふらで、おうらいへでてきて、やっとわれにかえって、くちがきけるようになる。なにしろ町の門から、お城の門まで、わかいひとたちが、れつをつくってならんでいました。わたしはそれをじぶんで見てきましたよ。」と、からすが、ねんをおしていいました。
「みんなは自分のばんが、なかなかまわってこないので、おなかがすいたり、のどがかわいたりしましたが、ごてんの中では、なまぬるい水いっぱいくれませんでした。なかで気のきいたせんせいたちが、バタパンご持参で、やってきていましたが、それをそばの人にわけようとはしませんでした。このれんじゅうの気では――こいつら、たんとひもじそうな顔をしているがいい。おかげで王女さまも、ごさいようになるまいから――というのでしょう。」


醜い人間の姿ですなあ(笑)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」9

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

And Gerda went to the Ranunculuses, that looked forth from among the shining green leaves.


"You are a little bright sun!" said Gerda. "Tell me if you know where I can find my playfellow."


And the Ranunculus shone brightly, and looked again at Gerda. What song could the Ranunculus sing? It was one that said nothing about Kay either.


"In a small court the bright sun was shining in the first days of spring. The beams glided down the white walls of a neighbor's house, and close by the fresh yellow flowers were growing, shining like gold in the warm sun-rays. An old grandmother was sitting in the air; her grand-daughter, the poor and lovely servant just come for a short visit. She knows her grandmother. There was gold, pure virgin gold in that blessed kiss. There, that is my little story," said the Ranunculus.


・Ranunculus=《植物》ラナンキュラス(キンポウゲ科)
日本語訳は「たんぽぽ」になっていますが…
ラナンキュラスはこんなの…
3004885.jpg
キンポウゲは…
Ranunculus_japonicus_004.jpg

・look forth=外を見る
・playfellow=〈古〉〔子供の〕遊び仲間[友達]
・court=中庭
・beam=光線
・close by=すぐ近くに


それから、ゲルダは、緑の葉のあいだから、あかるくさいている、たんぽぽのところへいきました。
「あなたはまるで、ちいさな、あかるいお日さまね。どこにわたしのおともだちがいるか、しっていたらおしえてくださいな。」と、ゲルダはいいました。
 そこで、たんぽぽは、よけいあかるくひかりながら、ゲルダのほうへむきました。どんな歌を、その花がうたったでしょう。その歌も、カイのことではありませんでした。
「ちいさな、なか庭には、春のいちばんはじめの日、うららかなお日さまが、あたたかに照っていました。お日さまの光は、おとなりの家の、まっ白なかべの上から下へ、すべりおちていました。そのそばに、春いちばんはじめにさく、黄色い花が、かがやく光の中に、金のようにさいていました。おばあさんは、いすをそとにだして、こしをかけていました。おばあさんの孫の、かわいそうな女中ぼうこうをしているうつくしい女の子が、おばあさんにあうために、わずかなおひまをもらって、うちへかえってきました。女の子はおばあさんにせっぷんしました。このめぐみおおいせっぷんには金(きん)が、こころの金(きん)がありました。その口にも金、そのふむ土にも金、そのあさのひとときにも金がありました。これがわたしのつまらないお話です。」と、たんぽぽがいいました。


"My poor old grandmother!" sighed Gerda. "Yes, she is longing for me, no doubt: she is sorrowing for me, as she did for little Kay. But I will soon come home, and then I will bring Kay with me. It is of no use asking the flowers; they only know their own old rhymes, and can tell me nothing." And she tucked up her frock, to enable her to run quicker; but the Narcissus gave her a knock on the leg, just as she was going to jump over it. So she stood still, looked at the long yellow flower, and asked, "You perhaps know something?" and she bent down to the Narcissus. And what did it say?


・of no use=全く役に立たない
・rhymes=歌
・tuck up=たくし上げる
・Narcissus=スイセン
・give a knock=打つ、たたく
・it=the Narcissus


まあ、わたしのおばあさまは、どうしていらっしゃるかしら。」と、ゲルダはためいきをつきました。「そうよ。きっとおばあさまは、わたしにあいたがって、かなしがっていらっしゃるわ。カイちゃんのいなくなったとおなじように、しんぱいしていらっしゃるわ。けれど、わたし、じきにカイちゃんをつれて、うちにかえれるでしょう。――もう花たちにいくらたずねてみたってしかたがない。花たち、ただ、自分の歌をうたうだけで、なんにもこたえてくれないのだもの。」
 そこでゲルダは、はやくかけられるように、着物をきりりとたくしあげました。けれど、黄(き)ずいせんを、ゲルダがとびこえようとしたとき、それに足がひっかかりました。そこでゲルダはたちどまって、その黄色い、背の高い花にむかってたずねました。
「あんた、カイちゃんのこと、なんかしっているの。」
 そしてゲルダは、こごんで、その花の話すことをききました。その花はなんといったでしょう。


"I can see myself--I can see myself! Oh, how odorous I am! Up in the little garret there stands, half-dressed, a little Dancer. She stands now on one leg, now on both; she despises the whole world; yet she lives only in imagination. She pours water out of the teapot over a piece of stuff which she holds in her hand; it is the bodice; cleanliness is a fine thing. The white dress is hanging on the hook; it was washed in the teapot, and dried on the roof. She puts it on, ties a saffron-colored kerchief round her neck, and then the gown looks whiter. I can see myself--I can see myself!"


"That's nothing to me," said little Gerda. "That does not concern me." And then off she ran to the further end of the garden.


・odorous=香りの良い
・garret=〔傾斜屋根の下の〕屋根裏部屋
・live in imagination=想像の世界に住む
・stuff=物、材料
・bodice=女性用胴着
・cleanliness=清潔
・hook=鉤(かぎ)、フック
・saffron-colored =サフラン色の、鮮黄色の(サフランの花は紫色だが、花柱を乾燥し、薬にしたり、菓子や料理の黄色染料にするので、サフラン色という時は、鮮やかな黄色を指す)
・kerchief=(女性のかぶる)ネッカチーフ、スカーフ
・gown=(婦人の)外出着、寝巻
・further end=向こうの端


「わたし、じぶんがみられるのよ。じぶんがわかるのよ。」と、黄ずいせんはいいました。「ああ、ああ、なんてわたしはいいにおいがするんだろう。屋根うらのちいさなへやに、半はだかの、ちいさなおどりこが立っています。おどりこはかた足で立ったり、両足で立ったりして、まるで世界中をふみつけるように見えます。でも、これはほんの目のまよいです。おどりこは、ちいさな布(ぬの)に、湯わかしから湯をそそぎます。これはコルセットです。――そうです。そうです、せいけつがなによりです。白い上着(うわぎ)も、くぎにかけてあります。それもまた、湯わかしの湯であらって、屋根でかわかしたものなのです。おどりこは、その上着をつけて、サフラン色のハンケチをくびにまきました。ですから、上着はよけい白くみえました。ほら、足をあげた。どう、まるでじくの上に立って、うんとふんばった姿は。わたし、じぶんが見えるの。じぶんがわかるの。」
「なにもそんな話、わたしにしなくてもいいじゃないの。そんなこと、どうだって、かまわないわ。」と、ゲルダはいいました。
 それでゲルダは、庭のむこうのはしまでかけて行きました。


The gate was locked, but she shook the rusted bolt till it was loosened, and the gate opened; and little Gerda ran off barefooted into the wide world. She looked round her thrice, but no one followed her. At last she could run no longer; she sat down on a large stone, and when she looked about her, she saw that the summer had passed; it was late in the autumn, but that one could not remark in the beautiful garden, where there was always sunshine, and where there were flowers the whole year round.


"Dear me, how long I have staid!" said Gerda. Autumn is come. I must not rest any longer." And she got up to go further.


Oh, how tender and wearied her little feet were! All around it looked so cold and raw: the long willow-leaves were quite yellow, and the fog dripped from them like water; one leaf fell after the other: the sloes only stood full of fruit, which set one's teeth on edge. Oh, how dark and comfortless it was in the dreary world!


・rusted=さびた
・bolt=かんぬき(門や建物の出入り口の扉を閉ざすための横木。左右の扉につけた金具に通して扉が開かないようにする)
・barefooted=はだしで
・thrice=三度
・that=it was late in the autumn
・one could not~=普通は誰も~できない
・remark=~に気づく
・Dear me=まあ◆驚き・失望・同情などを表す
・staid=《古》stayの過去・過去分詞
・tender=圧痛のある、触ると痛い
・wearied=疲れて
・raw=(天候が)じめじめして冷たい
・willow=【植】ヤナギ
・fog=霧
・sloe=スモモ(バラ科の落葉高木。春、葉に先立って、葉腋に白色の五弁花を一~三個つける。果実は球形で、赤紫色または黄色に熟し、甘酸っぱい。巴旦杏(はたんきよう)・ソルダム・サンタローザなどの系統がある。プラム。実がなるのは夏)
・set one's teeth=覚悟を決めた
・on edge=極限状態で、緊張状態で、イライラして
・comfortless=楽しみのない、わびしい
・dreary=わびしい、物憂い、荒涼とした


その戸はしまっていましたが、ゲルダがそのさびついたとってを、どんとおしたので、はずれて戸はぱんとひらきました。ゲルダはひろい世界に、はだしのままでとびだしました。ゲルダは、三度(ど)もあとをふりかえってみましたが、たれもおっかけてくるものはありませんでした。とうとうゲルダは、もうとてもはしることができなくなったので、大きな石の上にこしをおろしました。そこらをみまわしますと、夏はすぎて、秋がふかくなっていました。お日さまが年中かがやいて、四季(しき)の花がたえずさいていた、あのうつくしい花ぞのでは、そんなことはわかりませんでした。
「ああ、どうしましょう。あたし、こんなにおくれてしまって。」と、ゲルダはいいました。「もうとうに秋になっているのね。さあ、ゆっくりしてはいられないわ。」
 そしてゲルダは立ちあがって、ずんずんあるきだしました。まあ、ゲルダのかよわい足は、どんなにいたむし、そして、つかれていたことでしょう。どこも冬がれて、わびしいけしきでした。ながいやなぎの葉は、すっかり黄ばんで、きりが雨しずくのように枝からたれていました。ただ、とげのある、こけももだけは、まだ実(み)をむすんでいましたが、こけももはすっぱくて、くちがまがるようでした。ああ、なんてこのひろびろした世界は灰色で、うすぐらくみえたことでしょう。


どうしてスモモだけ実をつけているのでしょうか?


THIRD STORYは終わり。さあ、次回からはFOURTH STORYです。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」8

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

まだまだ花々のお話は続きます。


What did the Snowdrops say?


"Between the trees a long board is hanging--it is a swing. Two little girls are sitting in it, and swing themselves backwards and forwards; their frocks are as white as snow, and long green silk ribands flutter from their bonnets. Their brother, who is older than they are, stands up in the swing; he twines his arms round the cords to hold himself fast, for in one hand he has a little cup, and in the other a clay-pipe. He is blowing soap-bubbles. The swing moves, and the bubbles float in charming changing colors: the last is still hanging to the end of the pipe, and rocks in the breeze. The swing moves. The little black dog, as light as a soap-bubble, jumps up on his hind legs to try to get into the swing. It moves, the dog falls down, barks, and is angry. They tease him; the bubble bursts! A swing, a bursting bubble--such is my song!"


"What you relate may be very pretty, but you tell it in so melancholy a manner, and do not mention Kay."


・Snowdrop=ユキノハナ、マツユキソウ
Snowdrop_4




・swing=ブランコ
・frock=(女性用)ドレス
・riband=〔賞として与えるためのまたは装飾用の〕リボン
・flutter=〔素早く不規則に〕ぱたぱたと揺れる、はためく
・bonnet=婦人用の帽子
・twine=巻き付かせる
・cord=ひも、細綱:ここではブランコを吊り下げている綱をさす
・fast=しっかりと
・clay=粘土(製品)、土、泥
・pipe=管、パイプ
・charming=うっとりさせるような
・the last=the last bubble
・light=〔重さが標準や見掛けよりも〕軽い
・jumps up=急に[パッと]立ち上がる
・hind=後ろの
・fall down=落ちる、ひっくり返る、転ぶ、〔仕事などに〕失敗する
・tease=からかう
・burst=破裂する
・relate=~を述べる、物語る
・pretty=感じの良い、美しい
・melancholy=物悲しい
・mention=~について話す


 かわいい、まつゆきそうは、どんなお話をしたでしょう。
「木と木のあいだに、つなでつるした長い板がさがっています。ぶらんこなの。雪のように白い着物を着て、ぼうしには、ながい、緑色の絹のリボンをまいた、ふたりのかわいらしい女の子が、それにのってゆられています。この女の子たちよりも、大きい男きょうだいが、そのぶらんこに立ってのっています。男の子は、かた手にちいさなお皿をもってるし、かた手には土製のパイプをにぎっているので、からだをささえるために、つなにうでをまきつけています。男の子はシャボンだまをふいているのです。ぶらんこがゆれて、シャボンだまは、いろんなうつくしい色にかわりながらとんで行きます。いちばんおしまいのシャボンだまは、風にゆられながら、まだパイプのところについています。ぶらんこはとぶようにゆれています。あら、シャボンだまのように身のかるい黒犬があと足で立って、のせてもらおうとしています。ぶらんこはゆれる、黒犬はひっくりかえって、ほえているわ。からかわれて、おこっているのね。シャボンだまははじけます。――ゆれるぶらんこ。われてこわれるシャボンだま。――これがわたしの歌なんです。」
「あなたのお話は、とてもおもしろそうね。けれどあなたは、かなしそうに話しているのね。それからあなたは、カイちゃんのことは、なんにも話してくれないのね。」


What do the Hyacinths say?


"There were once upon a time three sisters, quite transparent, and very beautiful. The robe of the one was red, that of the second blue, and that of the third white. They danced hand in hand beside the calm lake in the clear moonshine. They were not elfin maidens, but mortal children. A sweet fragrance was smelt, and the maidens vanished in the wood; the fragrance grew stronger--three coffins, and in them three lovely maidens, glided out of the forest and across the lake: the shining glow-worms flew around like little floating lights. Do the dancing maidens sleep, or are they dead? The odour of the flowers says they are corpses; the evening bell tolls for the dead!"


・Hyacinth=ヒアシンス
・once upon a tim=昔々
・transparent=率直な、気取らない
・that=that=the robe
・clear=明るい
・elfin=小妖精のような
・maiden=娘、少女
・mortal=人間の
・coffin=棺
・glide=滑るように動く
・glow-worm:glowwormは「ツチボタル」(普通に言うホタルとは違い、蚊に近い昆虫で、幼虫が餌をおびき寄せるために光る)だが、文章を見ると"flew around"とあり、ツチボタルの幼虫はほとんど動かないようだから、glow-wormは単に「光る虫」という意味で使われているのかもしれない。
・odour=odor=におい
・corpse=〔人間の〕死体
・toll=鳴る


ヒヤシンスの花は、どんなお話をしたでしょう。
「あるところに、三人の、すきとおるようにうつくしい、きれいな姉いもうとがおりました。なかでいちばん上のむすめの着物は赤く、二ばん目のは水色で、三ばん目のはまっ白でした。きょうだいたちは、手をとりあって、さえた月の光の中で、静かな湖(みずうみ)のふちにでて、おどりをおどります。三人とも妖女(ようじょ)ではなくて、にんげんでした。そのあたりには、なんとなくあまい、いいにおいがしていました。むすめたちは森のなかにきえました。あまい、いいにおいが、いっそうつよくなりました。すると、その三人のうつくしいむすめをいれた三つのひつぎが、森のしげみから、すうっとあらわれてきて、湖のむこうへわたっていきました。つちぼたるが、そのぐるりを、空に舞(ま)っているちいさなともしびのように、ぴかりぴかりしていました。おどりくるっていた三人のむすめたちは、ねむったのでしょうか。死んだのでしょうか。――花のにおいはいいました。あれはなきがらです。ゆうべの鐘(かね)がなくなったひとたちをとむらいます。」


"You make me quite sad," said little Gerda. "I cannot help thinking of the dead maidens. Oh! is little Kay really dead? The Roses have been in the earth, and they say no."


そうそう、バラは"He certainly is not dead. We have been in the earth where all the dead are, but Kay was not there."と言ってましたね。


"Ding, dong!" sounded the Hyacinth bells. "We do not toll for little Kay; we do not know him. That is our way of singing, the only one we have."


「ずいぶんかなしいお話ね。あなたの、そのつよいにおいをかぐと、あたし死んだそのむすめさんたちのことを、おもいださずにはいられませんわ。ああ、カイちゃんは、ほんとうに死んでしまったのかしら。地のなかにはいっていたばらの花は、カイちゃんは死んではいないといってるけれど。」
「チリン、カラン。」と、ヒヤシンスのすずがなりました。「わたしはカイちゃんのために、なっているのではありません。カイちゃんなんて人は、わたしたち、すこしもしりませんもの。わたしたちは、ただ自分のしっているたったひとつの歌を、うたっているだけです。」

英語でアンデルセン童話「雪の女王」7

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The next morning she went to play with the flowers in the warm sunshine, and thus passed away a day. Gerda knew every flower; and, numerous as they were, it still seemed to Gerda that one was wanting, though she did not know which. One day while she was looking at the hat of the old woman painted with flowers, the most beautiful of them all seemed to her to be a rose. The old woman had forgotten to take it from her hat when she made the others vanish in the earth. But so it is when one's thoughts are not collected. "What!" said Gerda. "Are there no roses here?" and she ran about amongst the flowerbeds, and looked, and looked, but there was not one to be found. She then sat down and wept; but her hot tears fell just where a rose-bush had sunk; and when her warm tears watered the ground, the tree shot up suddenly as fresh and blooming as when it had been swallowed up. Gerda kissed the roses, thought of her own dear roses at home, and with them of little Kay.


・thus=このようにして
・pass away=時を過ごす
・numerous=非常に[数えきれないほど]多くの
・numerous as they were=though they were numerous
・wanting=欠けている、抜けている
・the others=other roses
・vanish=消える、姿を消す
・so it is=そんなものだ
・collected=落ち着いた、冷静な
・What!=ええっ!、あら!(驚いて)
・amongst=among=〔三つ以上の〕~の間に
・flowerbed=花壇
・one=rose
・shot up=shoot up(急に成長する、急に上がる)の過去形
・swallow up=飲み込む(ここでは「バラが魔法で土の中に飲み込まれた」ということ)
・them=her own dear roses
・of little Kay=thought of little Kay


そのあくる日、ゲルダは、また、あたたかいお日さまのひかりをあびて、花たちとあそびました。こんなふうにして、いく日もいく日もたちました。ゲルダは花ぞのの花をのこらずしりました。そのくせ、花ぞのの花は、かずこそずいぶんたくさんありましたけれど、ゲルダにとっては、どうもまだなにか、ひといろたりないようにおもわれました。でも、それがなんの花であるか、わかりませんでした。するうちある日、ゲルダはなにげなくすわって、花をかいたおばあさんの夏ぼうしを、ながめていましたが、その花のうちで、いちばんうつくしいのは、ばらの花でした。おばあさんは、ほかのばらの花をみんな見えないように、かくしたくせに、じぶんのぼうしにかいたばらの花を、けすことを、ついわすれていたのでした。まあ手ぬかりということは、たれにでもあるものです。
「あら、ここのお庭には、ばらがないわ。」と、ゲルダはさけびました。
 それから、ゲルダは、花ぞのを、いくどもいくども、さがしまわりましたけれども、ばらの花は、ひとつもみつかりませんでした。そこで、ゲルダは、花ぞのにすわってなきました。ところが、なみだが、ちょうどばらがうずめられた場所の上におちました。あたたかいなみだが、しっとりと土をしめらすと、ばらの木は、みるみるしずまない前とおなじように、花をいっぱいつけて、地の上にあらわれてきました。ゲルダはそれをだいて、せっぷんしました。そして、じぶんのうちのばらをおもいだし、それといっしょに、カイのこともおもいだしました。


おばあさんは、急なことだったからあわててバラを隠したので、帽子に付けたバラを忘れていたんだー。ほんとに、ただゲルダにそばにいてほしいだけなのね。でも残念ながら…


"Oh, how long I have stayed!" said the little girl. "I intended to look for Kay! Don't you know where he is?" she asked of the roses. "Do you think he is dead and gone?"


"Dead he certainly is not," said the Roses. "We have been in the earth where all the dead are, but Kay was not there."


・dead and gone=(とっくに)死んでいる


「まあ、あたし、どうして、こんなところにひきとめられていたのかしら。」と、ゲルダはいいました。「あたし、カイちゃんをさがさなくてはならなかったのだわ――カイちゃん、どこにいるか、しらなくって。あなたは、カイちゃんが死んだとおもって。」と、ゲルダは、ばらにききました。
「カイちゃんは死にはしませんよ。わたしどもは、いままで地のなかにいました。そこには死んだ人はみないましたが、でも、カイちゃんはみえませんでしたよ。」と、ばらの花がこたえました。


"Many thanks!" said little Gerda; and she went to the other flowers, looked into their cups, and asked, "Don't you know where little Kay is?"


But every flower stood in the sunshine, and dreamed its own fairy tale or its own story: and they all told her very many things, but not one knew anything of Kay.


・cup=(花の)萼(がく)


「ありがとう。」と、ゲルダはいって、ほかの花のところへいって、ひとつひとつ、うてなのなかをのぞきながらたずねました。「カイちゃんはどこにいるか、しらなくって。」
 でも、どの花も、日なたぼっこしながら、じぶんたちのつくったお話や、おとぎばなしのことばかりかんがえていました。ゲルダはいろいろと花にきいてみましたが、どの花もカイのことについては、いっこうにしりませんでした。


Well, what did the Tiger-Lily say?


"Hearest thou not the drum? Bum! Bum! Those are the only two tones. Always bum! Bum! Hark to the plaintive song of the old woman, to the call of the priests! The Hindoo woman in her long robe stands upon the funeral pile; the flames rise around her and her dead husband, but the Hindoo woman thinks on the living one in the surrounding circle; on him whose eyes burn hotter than the flames--on him, the fire of whose eyes pierces her heart more than the flames which soon will burn her body to ashes. Can the heart's flame die in the flame of the funeral pile?"


・Tiger-Lily=オニユリ
・Hearest=hear:主語がthouの場合
・thou=そなた(二人称単数主格)
・Bum! Bum!=バン!バン!(音の形容)
・tone=音
・Hark=聞く、傾聴する
・plaintive=〔声・音などが〕悲しげな、物悲しい
・priest=聖職者、牧師
・Hindoo=Hindu(【名】 ヒンドゥー◆インド、ヒンダスタン地方の住民。またはヒンドゥー教を信じる人【形】 ヒンドゥー教の、ヒンドゥー教に帰依した)
・funeral pile=火葬用の薪の山


ところで、おにゆりは、なんといったでしょう。
「あなたには、たいこの音が、ドンドンというのがきこえますか。あれには、ふたつの音しかないのです。だからドンドンといつでもやっているのです。女たちがうたう、とむらいのうたをおききなさい。また、坊(ぼう)さんのあげる、おいのりをおききなさい。――インド人(じん)のやもめは、火葬(かそう)のたきぎのつまれた上に、ながい赤いマントをまとって立っています。焔(ほのお)がその女と、死んだ夫(おっと)のしかばねのまわりにたちのぼります。でもインドの女は、ぐるりにあつまった人たちのなかの、生きているひとりの男のことをかんがえているのです。その男の目は焔よりもあつくもえ、その男のやくような目つきは、やがて、女のからだをやきつくして灰にする焔などよりも、もっとはげしく、女の心の中で、もえていたのです。心の焔は、火あぶりのたきぎのなかで、もえつきるものでしょうか。」


"I don't understand that at all," said little Gerda.


"That is my story," said the Lily.


What did the Convolvulus say?


"Projecting over a narrow mountain-path there hangs an old feudal castle. Thick evergreens grow on the dilapidated walls, and around the altar, where a lovely maiden is standing: she bends over the railing and looks out upon the rose. No fresher rose hangs on the branches than she; no appleblossom carried away by the wind is more buoyant! How her silken robe is rustling!


"'Is he not yet come?'"


"Is it Kay that you mean?" asked little Gerda.


"I am speaking about my story--about my dream," answered the Convolvulus.


・Convolvulus=《植物》コンボルブルス、セイヨウヒルガオ◆地中海沿岸原産の、ヒルガオ科セイヨウヒルガオ属(Convolvulus)のほふく性の常緑多年草
・Project=突き出る
・hang=ぶら下がる、覆いかぶさる
・feudal=封建制度時代の
・evergreen=常緑樹
・dilapidated=荒れ果てた、崩れかかった、壊れかけた
・altar=祭壇、階段
・maiden=乙女、未婚女性
・railing=手すり、柵
・buoyant=浮力のある、快活な
・rustling:rustle=さらさら鳴る


「なんのことだか、まるでわからないわ。」と、ゲルダがこたえました。
「わたしの話はそれだけさ。」と、おにゆりはいいました。
 ひるがおは、どんなお話をしたでしょう。
「せまい山道のむこうに、昔のさむらいのお城がぼんやりみえます。くずれかかった、赤い石がきのうえには、つたがふかくおいしげって、ろだいのほうへ、ひと葉ひと葉、はいあがっています。ろだいの上には、うつくしいおとめが、らんかんによりかかって、おうらいをみおろしています。どんなばらの花でも、そのおとめほど、みずみずとは枝にさきだしません。どんなりんごの花でも、こんなにかるがるとしたふうに、木から風がはこんでくることはありません。まあ、おとめのうつくしい絹の着物のさらさらなること。
 あの人はまだこないのかしら。」
「あの人というのは、カイちゃんのことなの。」と、ゲルダがたずねました。
「わたしは、ただ、わたしのお話をしただけ。わたしの夢をね。」と、ひるがおはこたえました。


それぞれの花のストーリーは結構複雑。子供の絵本にはここまで載ってないな。カイのことを知らないかとゲルダが花に聞いて、知らないと言われてすぐ花園を出る、ってことになってる(^_^;)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」6

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

Gerda called to them, for she thought they were alive; but they, of course, did not answer. She came close to them, for the stream drifted the boat quite near the land.Photo_11


Gerda called still louder, and an old woman then came out of the cottage, leaning upon a crooked stick. She had a large broad-brimmed hat on, painted with the most splendid flowers.


・them=wooden soldiers
・drift=押し流す、吹き寄せる
・lean upon~=~にもたれる
・crooked=曲がっている、ねじれた
・broad-brimmed=つば広の
・painted=色彩の鮮やかな


ゲルダは、それをほんとうのへいたいかとおもって、こえをかけました。しかし、いうまでもなくそのへいたいは、なんのこたえもしませんでした。ゲルダはすぐそのそばまできました。波が小舟を岸のほうにはこんだからです。
 ゲルダはもっと大きなこえで、よびかけてみました。すると、その家のなかから、撞木杖(しゅもくづえ)にすがった、たいそう年とったおばあさんが出てきました。おばあさんは、目のさめるようにきれいな花をかいた、大きな夏ぼうしをかぶっていました。


"Poor little child!" said the old woman. "How did you get upon the large rapid river, to be driven about so in the wide world!" And then the old woman went into the water, caught hold of the boat with her crooked stick, drew it to the bank, and lifted little Gerda out.


And Gerda was so glad to be on dry land again; but she was rather afraid of the strange old woman.


"But come and tell me who you are, and how you came here," said she.


And Gerda told her all; and the old woman shook her head and said, "A-hem! a-hem!" and when Gerda had told her everything, and asked her if she had not seen little Kay, the woman answered that he had not passed there, but he no doubt would come; and she told her not to be cast down, but taste her cherries, and look at her flowers, which were finer than any in a picture-book, each of which could tell a whole story. She then took Gerda by the hand, led her into the little cottage, and locked the door.


・A-hem=エヘン◆せき払いをする時、人の注意を引く時などの発声
・be cast down=落胆する


「やれやれ、かわいそうに。どうしておまえさんは、そんなに大きな波のたつ上を、こんなとおいところまで流れてきたのだね。」と、おばあさんはいいました。
 それからおばあさんは、ざぶりざぶり水の中にはいって、撞木杖で小舟をおさえて、それを陸(おか)のほうへひっぱってきて、ゲルダをだきおろしました。ゲルダはまた陸にあがることのできたのをうれしいとおもいました。でも、このみなれないおばあさんは、すこし、こわいようでした。
「さあ、おまえさん、名まえをなんというのだか、またどうして、ここへやってきたのだか、話してごらん。」と、おばあさんはいいました。そこでゲルダは、なにもかも、おばあさんに話しました。おばあさんはうなずきながら、「ふん、ふん。」と、いいました。ゲルダは、すっかり話してしまってから、おばあさんがカイをみかけなかったかどうか、たずねますと、おばあさんは、カイはまだここを通らないが、いずれそのうち、ここを通るかもしれない。まあ、そう、くよくよおもわないで、花をながめたり、さくらんぼをたべたりしておいで。花はどんな絵本のよりも、ずっときれいだし、その花びらの一まい、一まいが、ながいお話をしてくれるだろうからといいました。それからおばあさんは、ゲルダの手をとって、じぶんのちいさな家へつれていって、中から戸にかぎをかけました。


The windows were very high up; the glass was red, blue, and green, and the sunlight shone through quite wondrously in all sorts of colors. On the table stood the most exquisite cherries, and Gerda ate as many as she chose, for she had permission to do so. While she was eating, the old woman combed her hair with a golden comb, and her hair curled and shone with a lovely golden color around that sweet little face, which was so round and so like a rose.


・wondrously=驚くほど
・all sorts of=あらゆる種類の、各種の、いろいろな
・exquisite=この上なく素晴らしい
・had permission=許可を得た、許された


その家の窓は、たいそう高くて、赤いのや、青いのや、黄いろの窓ガラスだったので、お日さまの光はおもしろい色にかわって、きれいに、へやのなかにさしこみました。つくえの上には、とてもおいしいさくらんぼがおいてありました。そしてゲルダは、いくらたべてもいいという、おゆるしがでたものですから、おもうぞんぶんそれをたべました。ゲルダがさくらんぼをたべているあいだに、おばあさんが、金のくしで、ゲルダのかみの毛をすきました。そこで、ゲルダのかみの毛は、ばらの花のような、まるっこくて、かわいらしい顔のまわりで、金色にちりちりまいて、光っていました。


"I have often longed for such a dear little girl," said the old woman. "Now you shall see how well we agree together"; and while she combed little Gerda's hair, the child forgot her foster-brother Kay more and more, for the old woman understood magic; but she was no evil being, she only practised witchcraft a little for her own private amusement, and now she wanted very much to keep little Gerda. She therefore went out in the garden, stretched out her crooked stick towards the rose-bushes, which, beautifully as they were blowing, all sank into the earth and no one could tell where they had stood. The old woman feared that if Gerda should see the roses, she would then think of her own, would remember little Kay, and run away from her.


・long for=~を待ちこがれる
・you shall see:二人称につくshallは話手の意思や威嚇を表すから、この場合は「見せてやる」
・agree together=気が合う、仲良くやる
・foster-brother=乳兄弟(=血のつながりはないが、同じ女性の乳で育てられた人):ここでは、二人は別に乳兄弟というわけではないのだから、「まるで本当の兄妹同様に育ったその兄のカイ」という意味
・understood=~の扱い方を心得ていた、~に通じていた
・blow=花が咲く
・beautifully as they were blowing:as they were blowing beautifullyの倒置になっているので、意味は「~だけれども」→「バラは美しく咲いていたけれども」<例>Young as he is, he is equal to the task.(彼は若いけれども、その仕事をすることができる)
・her own=her own roses(カイと一緒に家の屋根の上で育てているバラのこと)


「わたしは長いあいだ、おまえのような、かわいらしい女の子がほしいとおもっていたのだよ。さあこれから、わたしたちといっしょに、なかよくくらそうね。」と、おばあさんはいいました。そしておばあさんが、ゲルダのかみの毛にくしをいれてやっているうちに、ゲルダはだんだん、なかよしのカイのことなどはわすれてしまいました。というのは、このおばあさんは魔法(まほう)が使えるからでした。けれども、おばあさんは、わるい魔女(まじょ)ではありませんでした。おばあさんはじぶんのたのしみに、ほんのすこし魔法を使うだけで、こんども、それをつかったのは、ゲルダをじぶんの手もとにおきたいためでした。そこで、おばあさんは、庭へ出て、そこのばらの木にむかって、かたっぱしから撞木杖をあてました。すると、いままでうつくしく、さきほこっていたばらの木も、みんな、黒い土の中にしずんでしまったので、もうたれの目にも、どこにいままでばらの木があったか、わからなくなりました。おばあさんは、ゲルダがばらを見て、自分の家のばらのことをかんがえ、カイのことをおもいだして、ここからにげていってしまうといけないとおもったのです。


この魔法使い(?)のおばあさんは、決して悪い人ではないわけね…


She now led Gerda into the flower-garden. Oh, what odour and what loveliness was there! Every flower that one could think of, and of every season, stood there in fullest bloom; no picture-book could be gayer or more beautiful. Gerda jumped for joy, and played till the sun set behind the tall cherry-tree; she then had a pretty bed, with a red silken coverlet filled with blue violets. She fell asleep, and had as pleasant dreams as ever a queen on her
wedding-day.


・odour=におい
・loveliness=愛らしさ、素晴らしさ
・in fullest bloom=満開で
・gay=華美な、派手な
・silken=絹製の
・violet=スミレ


さて、ゲルダは花ぞのにあんないされました。――そこは、まあなんという、いい香りがあふれていて、目のさめるように、きれいなところでしたろう。花という花は、こぼれるようにさいていました。そこでは、一ねんじゅう花がさいていました。どんな絵本の花だって、これよりうつくしく、これよりにぎやかな色にさいてはいませんでした。ゲルダはおどりあがってよろこびました。そして夕日が、高いさくらの木のむこうにはいってしまうまで、あそびました。それからゲルダは、青いすみれの花がいっぱいつまった、赤い絹のクションのある、きれいなベッドの上で、結婚式の日の女王さまのような、すばらしい夢をむすびました。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」5

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

一方、ゲルダは…


THIRD STORY. Of the Flower-Garden At the Old Woman's Who Understood Witchcraft


第三のお話

     魔法の使える女の花ぞの

But what became of little Gerda when Kay did not return? Where could he be? Nobody knew; nobody could give any intelligence. All the boys knew was, that they had seen him tie his sledge to another large and splendid one, which drove down the street and out of the town. Nobody knew where he was; many sad tears were shed, and little Gerda wept long and bitterly; at last she said he must be dead; that he had been drowned in the river which flowed close to the town. Oh! those were very long and dismal winter evenings!


・Witchcraft=魔法、魔術
・drove down the street=通りを(車で)走っていた
・shed=shed([涙を]流す)の過去分詞
・dismal=憂鬱な、暗い


ところで、カイが、あれなりかえってこなかったとき、あの女の子のゲルダは、どうしたでしょう。カイはまあどうしたのか、たれもしりませんでした。なんの手がかりもえられませんでした。こどもたちの話でわかったのは、カイがよその大きなそりに、じぶんのそりをむすびつけて、町をはしりまわって、町の門からそとへでていったということだけでした。さて、それからカイがどんなことになってしまったか、たれもしっているものはありませんでした。いくにんもの人のなみだが、この子のために、そそがれました。そして、あのゲルダは、そのうちでも、ひとり、もうながいあいだ、むねのやぶれるほどになきました。――みんなのうわさでは、カイは町のすぐそばを流れている川におちて、おぼれてしまったのだろうということでした。ああ、まったくながいながい、いんきな冬でした。


At last spring came, with its warm sunshine.
"Kay is dead and gone!" said little Gerda.
"That I don't believe," said the Sunshine.
"Kay is dead and gone!" said she to the Swallows.
"That I don't believe," said they: and at last little Gerda did not think so any longer either.
"I'll put on my red shoes," said she, one morning; "Kay has never seen them, and then I'll go down to the river and ask there."


It was quite early; she kissed her old grandmother, who was still asleep, put on her red shoes, and went alone to the river.


"Is it true that you have taken my little playfellow? I will make you a present of my red shoes, if you will give him back to me."


・Swallow=ツバメ
・you=the river
・playfellow=〈古〉〔子供の〕遊び仲間[友達]


いま、春はまた、あたたかいお日さまの光とつれだってやってきました。
「カイちゃんは死んでしまったのよ。」と、ゲルダはいいました。
「わたしはそうおもわないね。」と、お日さまがいいました。
「カイちゃんは死んでしまったのよ。」と、ゲルダはつばめにいいました。
「わたしはそうおもいません。」と、つばめたちはこたえました。そこで、おしまいに、ゲルダは、じぶんでも、カイは死んだのではないと、おもうようになりました。
「あたし、あたらしい赤いくつをおろすわ。あれはカイちゃんのまだみなかったくつよ。あれをはいて川へおりていって、カイちゃんのことをきいてみましょう。」と、ゲルダは、ある朝いいました。で、朝はやかったので、ゲルダはまだねむっていたおばあさまに、せっぷんして、赤いくつをはき、たったひとりぼっちで、町の門を出て、川のほうへあるいていきました。
「川さん、あなたが、わたしのすきなおともだちを、とっていってしまったというのは、ほんとうなの。この赤いくつをあげるわ。そのかわり、カイちゃんをかえしてね。」


And, as it seemed to her, the blue waves nodded in a strange manner; then she took off her red shoes, the most precious things she possessed, and threw them both into the river. But they fell close to the bank, and the little waves bore them immediately to land; it was as if the stream would not take what was dearest to her; for in reality it had not got little Kay; but Gerda thought that she had not thrown the shoes out far enough, so she clambered into a boat which lay among the rushes, went to the farthest end, and threw out the shoes. But the boat was not fastened, and the motion which she occasioned, made it drift from the shore. She observed this, and hastened to get back; but before she could do so, the boat was more than a yard from the land, and was gliding quickly onward.


・them both=red shoes
・close to=~の近くに
・bore:bear=~を運ぶ、持って行く
・would not=~しようとしなかった
・dearest=最も大切な、かけがえのない
・in reality=実は、実際には
・clamber=よじ登る
・rush=イグサ
・fasten=固定する
・occasion=~を引き起こす
・it=the boat
・yard=《単位》ヤード◆1ヤード=91.44センチ=3フィート


すると川の水が、よしよしというように、みょうに波だってみえたので、ゲルダはじぶんのもっているもののなかでいちばんすきだった、赤いくつをぬいで、ふたつとも、川のなかになげこみました。ところが、くつは岸の近くにおちたので、さざ波がすぐ、ゲルダの立っているところへ、くつをはこんできてしまいました。まるで川は、ゲルダから、いちばんだいじなものをもらうことをのぞんでいないように見えました。なぜなら、川はカイをかくしてはいなかったからです。けれど、ゲルダは、くつをもっととおくのほうへなげないからいけなかったのだとおもいました。そこで、あしのしげみにうかんでいた小舟にのりました。そして舟のいちばんはしへいって、そこからくつをなげこみました。でも、小舟はしっかりと岸にもやってなかったので、くつをなげるので動かしたひょうしに、岸からすべり出してしまいました。それに気がついて、ゲルダは、いそいでひっかえそうとしましたが、小舟のこちらのはしまでこないうちに、舟は二三尺(にさんじゃく)も岸からはなれて、そのままで、どんどんはやく流れていきました。


Little Gerda was very frightened, and began to cry; but no one heard her except the sparrows, and they could not carry her to land; but they flew along the bank, and sang as if to comfort her, "Here we are! Here we are!" The boat drifted with the stream, little Gerda sat quite still without shoes, for they were swimming behind the boat, but she could not reach them, because the boat went much faster than they did.


・sparrow=スズメ


そこで、ゲルダは、たいそうびっくりして、なきだしましたが、すずめのほかは、たれもその声をきくものはありませんでした。すずめには、ゲルダをつれかえる力はありませんでした。でも、すずめたちは、岸にそってとびながら、ゲルダをなぐさめるように、
「だいじょうぶ、ぼくたちがいます。」と、なきました。
 小舟は、ずんずん流れにはこばれていきました。ゲルダは、足にくつしたをはいただけで、じっと舟のなかにすわったままでいました。ちいさな赤いくつは、うしろのほうで、ふわふわういていましたが、小舟においつくことはできませんでした。小舟のほうが、くつよりも、もっとはやくながれていったからです。


The banks on both sides were beautiful; lovely flowers, venerable trees, and slopes with sheep and cows, but not a human being was to be seen.


"Perhaps the river will carry me to little Kay," said she; and then she grew less sad. She rose, and looked for many hours at the beautiful green banks. Presently she sailed by a large cherry-orchard, where was a little cottage with curious red and blue windows; it was thatched, and before it two wooden soldiers stood sentry, and presented arms when anyone went past.


・venerable=古くて神々しい、立派な
・Presently=現在、ただ今
・cherry-orchard=さくらんぼの果樹園
・curious=〔面白そうなので〕気になる
・thatched=かやぶき屋根の
・sttood sentry:stand sentry=見張りをする
・present=~を差し出す


岸は、うつくしいけしきでした。きれいな花がさいていたり、古い木が立っていたり、ところどころ、なだらかな土手(どて)には、ひつじやめうしが、あそんでいました。でも、にんげんの姿は見えませんでした。
「ことによると、この川は、わたしを、カイちゃんのところへ、つれていってくれるのかもしれないわ。」と、ゲルダはかんがえました。
 それで、だんだんげんきがでてきたので、立ちあがって、ながいあいだ、両方の青あおとうつくしい岸をながめていました。それからゲルダは、大きなさくらんぼばたけのところにきました。そのはたけの中には、ふうがわりな、青や赤の窓のついた、一けんのちいさな家がたっていました。その家はかやぶきで、おもてには、舟で通りすぎる人たちのほうにむいて、木製(もくせい)のふたりのへいたいが、銃剣(じゅうけん)肩に立っていました。

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