スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

英語でアンデルセン童話「人魚姫」(3)

本文は”Gutenburg”から、辞書は”英辞郎””リーダーズ英和辞典(研究社)、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


この色の箇所は、注意すべき用法などです。


前回は、人魚姫たちが、順番に、15歳になると海の上に浮かび上がって人間の世界を垣間見れるというお話でした。


None of them was so full of longings as the youngest, the very one who had the longest time to wait, and who was so quiet and dreamy. Many a night she stood by the open windows and looked up through the dark blue water which the fish were lashing with their tails and fins. She could see the moon and the stars, it is true; their light was pale, but they looked much bigger through the water than they do to our eyes. When she saw a dark shadow glide between her and them, she knew that it was either a whale swimming above her, or else a ship laden with human beings. I am certain they never dreamt that a lovely little mermaid was standing down below, stretching up her white hands towards the keel.


・longing=切望、あこがれ、激しく恋しがること
・very=〈強調〉まさに、まさしく
・Many a=いくつもの~、幾多の~、数々の~◆【用法】「many a + 単数名詞」の形で単数扱い
・lash=むち打つ
・fin=ひれ
・pale=青白い
・do=look
・glide=滑るように動く
・or else=あるいは
・laden with=~を積んだ、~でいっぱいの
・dreamt=〈英〉dreamの過去・過去分詞形
・keel=〔船や飛行船の〕竜骨(船底の中心部分を縦貫している力材。人間の背骨にあたり、船体構成の基礎となるもの)


「そのなかでも、いちばん下のひいさまは、あいにく、いちばんながく待たなくてはならないし、ものしずかな、かんがえぶかい子でしたから、それだけたれよりもふかくこのことをおもいつづけました。いく晩もいく晩も、ひいさまは、あいている窓ぎわに、じっと立ったまま、くらいあい色した水のなかで、おさかながひれやしっぽをうごかして、およぎまわっているのをすかしてみていました。お月さまと星もみえました。それはごくよわく光っているだけでしたが、でも水をすかしてみるので、おかでわたしたちの目にみえるよりは、ずっと大きくみえました。ときおり、なにかまっ黒な影のようなものが、光をさえぎりました。それが、くじらがあたまの上をおよいでとおるのか、またはおおぜい人をのせた船の影だということは、ひいさまにもわかっていました。この船の人たちも、はるか海の底に人魚のひいさまがいて、その白い手を、船のほうへさしのべていようとは、さすがにおもいもつかなかったでしょう」


The eldest princess had now reached her fifteenth birthday, and was to venture above the water. When she came back she had hundreds of things to tell them, but the most delightful of all, she said, was to lie in the moonlight, on a sandbank in a calm sea, and to gaze at the large town close to the shore, where the lights twinkled like hundreds of stars; to listen to music and the noise and bustle of carriages and people, to see the many church towers and spires, and to hear the bells ringing; and just because she could not go on shore she longed for that most of all.


・was to: 《be to do》~する予定[つもり]だ
・venture=危険を冒して[承知で]進む[試みる]
・sandbank=〔川・海などの〕砂州、砂堆
・gaze=じっと見る
・where=the large town
・bustle=せわしげな[慌ただしい]動き、にぎわい、喧騒
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・spire=《建築》尖塔
・just because=まさに~だからこそ、~だからこそ余計に
・long for=~が恋しい、~を慕う、渇望する、思慕する、切望する


「さて、いちばん上のひいさまも、十五になりました。いよいよ、海の上に出られることになりました。このおねえさまがかえって来ると、山ほどもおみやげの話がありましたが、でも、なかでいちばんよかったのは、波のしずかな遠浅の海に横になりながら、すぐそばの海ぞいの大きな町をみていたことであったといいます。そこでは、町のあかりが、なん百とない星の光のようにかがやいていましたし、音楽もきこえるし、車や人の通るとよめきも耳にはいりました。お寺のまるい塔と、とがった塔のならんでいるのが見えたし、そこから、鐘の音もきこえて来ました。でも、そこへ上がっていくことはできませんから、ただなにくれと、そういうものへのあこがれで、胸をいっぱいにしてかえって来たということでした」


Oh, how eagerly the youngest sister listened! and when, later in the evening she stood at the open window and looked up through the dark blue water, she thought of the big town with all its noise and bustle, and fancied that she could even hear the church bells ringing.


・eagerly=熱心に、一生懸命
・bustle=にぎわい、喧騒
・fancied:fancy=~を心に描く、想像する、~のような気がする


「まあ、いちばん下のひいさまは、この話をどんなに夢中できいたことでしょう。それからというもの、あいた窓ぎわに立って、くらい色の水をすかして上を仰ぐたんびに、このひいさまは、いろいろの物音ととよめきのする、その大きな町のことをかんがえました。するうち、そこのお寺の鐘の音が、つい海の底までも、ひびいてくるようにおもいました」


The year after, the second sister was allowed to mount up through the water and swim about wherever she liked. The sun was just going down when she reached the surface, the most beautiful sight, she thought, that she had ever seen. The whole sky had looked like gold, she said, and as for the clouds! well, their beauty was beyond description; they floated in red and violet splendour over her head, and, far faster than they went, a flock of wild swans flew like a long white veil over the water towards the setting sun; she swam towards it, but it sank and all the rosy light on clouds and water faded away.


・The year after=その翌年
・swim about =泳ぎ回る
・as for=~はどうかというと
・beyond description=例えようのない、筆舌に尽くし難い
・they=the clouds
・float=浮く
・splendour=輝き、光彩
・far=〔程度が〕はるかに、大いに、ずっと
・a flock of=~の群れ
・she=the second sister
・it=the sun
・faded away:fade away=〔光・音などが〕徐々に[少しずつ・だんだん・次第に]消えていく、〔色が〕薄れる、色あせる


「そのあくる年、二ばんめのおねえさまが、海の上へあがって行って、好きな所へおよいでいっていい、おゆるしがでました。このあねえさまが、浮き上がると、そのときちょうどお日さまが沈みましたが、これこそいちばんうつくしいとおもったものでした。大空がいちめん金をちらしたようにみえて、その光をうつした雲のきれいだったこと、とてもそれを書きあらわすことばはないといいました。くれないに、またむらさきに、それがあたまの上をすうすう通ってながれていきました。けれども、その雲よりももっとはやく、野のはくちょうのむれが、それはながい、白いうすものが空にただようように、しずんで行く夕日を追って、波の上をとんでいきました。このおねえさまも、これについてまけずにおよいでいきましたが、そのうち、お日さまはまったくしずんで、ばら色の光は、海の上からも、雲の上からも消えていきました」


The year after that the third sister went up, and, being much the most venturesome of them all, swam up a broad river which ran into the sea. She saw beautiful green, vine-clad hills; palaces and country seats peeping through splendid woods. She heard the birds singing, and the sun was so hot that she was often obliged to dive, to cool her burning face. In a tiny bay she found a troop of little children running about naked and paddling in the water; she wanted to play with them, but they were frightened and ran away. Then a little black animal came up; it was a dog, but she had never seen one before; it barked so furiously at her that she was frightened and made for the open sea. She could never forget the beautiful woods, the green hills and the lovely children who could swim in the water although they had no fishes' tails.


・being:主語は"the third sister"
・much=ずっと、非常に、大変、とても、大体
・venturesome=向こう見ずな、大胆な、冒険好きな
・them all=the sisters
・ran into:run into=~に流れ込む
・vine=つる、つる植物、つる草、ブドウの木
・clad=覆われた
・country=田舎の
・seat=大庭園[広大な土地]のある郊外の邸宅
・peep=現れる、姿を現す
・troop=群れ
・paddling:paddle=〔水の中を〕手足をバタバタさせて進む
・made for:make for=~に向かって突進する
・open sea=《the ~》外海、大海原


「また次の年には、三ばんめのおねえさまが上がっていきました。このおねえさまは、たれよりもむこうみずな子でしたから、大きな川が海にながれだしている、そこの川口をさかのぼっておよいでいってみました。そこにはぶどうのつるにおおわれたうつくしいみどりの丘がみえました。むかしのお城や荘園が、みごとに茂った森のなかからちらちらしていました。いろんな鳥のうたいかわす声も聞きました。するうちお日さまが、照りつけて来たので、ほてった顔をひやすために、たびたび水にもぐらなくてはなりませんでした。水がよどんでちいさな入江になった所で、かわいい人間のこどもたちのかたまって、あそんでいるのに出あいました。まるはだかで、かけまわって、ぼちゃぼちゃ水をはねかしました。いっしょにあそぼうとすると、みんなおどろいて逃げていってしまいました。するとそこへ、ちいさな、まっ黒な動物がでて来ました。これは犬でしたが、犬なんて、みたことはなかったし、いきなり、はげしくほえかかって来たので、こわくなって、またひろい海へおよいでもどりました。でも、あのうつくしい森もみどりの丘も、それから、おさかなのしっぽももっていないくせに、水におよげるかわいらしいこどもたちのことをも、このひいさまは、いつまでもわすれることができませんでした」

 

Oh, how eagerly the youngest sister listened! and when, later in the evening she stood at the open window and looked up through the dark blue water, she thought of the big town with all its noise and bustle, and fancied that she could even hear the church bells ringing.


・eagerly=熱心に、一生懸命
・bustle=にぎわい、喧騒
・fancied:fancy=~を心に描く、想像する、~のような気がする


「まあ、いちばん下のひいさまは、この話をどんなに夢中できいたことでしょう。それからというもの、あいた窓ぎわに立って、くらい色の水をすかして上を仰ぐたんびに、このひいさまは、いろいろの物音ととよめきのする、その大きな町のことをかんがえました。するうち、そこのお寺の鐘の音が、つい海の底までも、ひびいてくるようにおもいました」


The year after, the second sister was allowed to mount up through the water and swim about wherever she liked. The sun was just going down when she reached the surface, the most beautiful sight, she thought, that she had ever seen. The whole sky had looked like gold, she said, and as for the clouds! well, their beauty was beyond description; they floated in red and violet splendour over her head, and, far faster than they went, a flock of wild swans flew like a long white veil over the water towards the setting sun; she swam towards it, but it sank and all the rosy light on clouds and water faded away.


・The year after=その翌年
・swim about =泳ぎ回る
・as for=~はどうかというと
・beyond description=例えようのない、筆舌に尽くし難い
・they=the clouds
・float=浮く
・splendour=輝き、光彩
・far=〔程度が〕はるかに、大いに、ずっと
・a flock of=~の群れ
・she=the second sister
・it=the sun
・faded away:fade away=〔光・音などが〕徐々に[少しずつ・だんだん・次第に]消えていく、〔色が〕薄れる、色あせる


「そのあくる年、二ばんめのおねえさまが、海の上へあがって行って、好きな所へおよいでいっていい、おゆるしがでました。このあねえさまが、浮き上がると、そのときちょうどお日さまが沈みましたが、これこそいちばんうつくしいとおもったものでした。大空がいちめん金をちらしたようにみえて、その光をうつした雲のきれいだったこと、とてもそれを書きあらわすことばはないといいました。くれないに、またむらさきに、それがあたまの上をすうすう通ってながれていきました。けれども、その雲よりももっとはやく、野のはくちょうのむれが、それはながい、白いうすものが空にただようように、しずんで行く夕日を追って、波の上をとんでいきました。このおねえさまも、これについてまけずにおよいでいきましたが、そのうち、お日さまはまったくしずんで、ばら色の光は、海の上からも、雲の上からも消えていきました」


The year after that the third sister went up, and, being much the most venturesome of them all, swam up a broad river which ran into the sea. She saw beautiful green, vine-clad hills; palaces and country seats peeping through splendid woods. She heard the birds singing, and the sun was so hot that she was often obliged to dive, to cool her burning face. In a tiny bay she found a troop of little children running about naked and paddling in the water; she wanted to play with them, but they were frightened and ran away. Then a little black animal came up; it was a dog, but she had never seen one before; it barked so furiously at her that she was frightened and made for the open sea. She could never forget the beautiful woods, the green hills and the lovely children who could swim in the water although they had no fishes' tails.


・being:主語は"the third sister"
・much=ずっと、非常に、大変、とても、大体
・venturesome=向こう見ずな、大胆な、冒険好きな
・them all=the sisters
・ran into:run into=~に流れ込む
・vine=つる、つる植物、つる草、ブドウの木
・clad=覆われた
・country=田舎の
・seat=大庭園[広大な土地]のある郊外の邸宅
・peep=現れる、姿を現す
・troop=群れ
・paddling:paddle=〔水の中を〕手足をバタバタさせて進む
・made for:make for=~に向かって突進する
・open sea=《the ~》外海、大海原


「また次の年には、三ばんめのおねえさまが上がっていきました。このおねえさまは、たれよりもむこうみずな子でしたから、大きな川が海にながれだしている、そこの川口をさかのぼっておよいでいってみました。そこにはぶどうのつるにおおわれたうつくしいみどりの丘がみえました。むかしのお城や荘園が、みごとに茂った森のなかからちらちらしていました。いろんな鳥のうたいかわす声も聞きました。するうちお日さまが、照りつけて来たので、ほてった顔をひやすために、たびたび水にもぐらなくてはなりませんでした。水がよどんでちいさな入江になった所で、かわいい人間のこどもたちのかたまって、あそんでいるのに出あいました。まるはだかで、かけまわって、ぼちゃぼちゃ水をはねかしました。いっしょにあそぼうとすると、みんなおどろいて逃げていってしまいました。するとそこへ、ちいさな、まっ黒な動物がでて来ました。これは犬でしたが、犬なんて、みたことはなかったし、いきなり、はげしくほえかかって来たので、こわくなって、またひろい海へおよいでもどりました。でも、あのうつくしい森もみどりの丘も、それから、おさかなのしっぽももっていないくせに、水におよげるかわいらしいこどもたちのことをも、このひいさまは、いつまでもわすれることができませんでした」

スポンサーサイト

英語でアンデルセン童話「人魚姫」(2)

本文は”Gutenburg”から、辞書は”英辞郎””リーダーズ英和辞典(研究社)、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


Each little princess had her own little plot of garden, where she could dig and plant just as she liked. One made her flower-bed in the shape of a whale; another thought it nice to have hers like a little mermaid; but the youngest made hers quite round like the sun, and she would only have flowers of a rosy hue like its beams. She was a curious child, quiet and thoughtful, and while the other sisters decked out their gardens with all kinds of extraordinary objects which they got from wrecks, she would have nothing besides the rosy flowers like the sun up above, except a statue of a beautiful boy. It was hewn out of the purest white marble and had gone to the bottom from some wreck. By the statue she planted a rosy red weeping willow which grew splendidly, and the fresh delicate branches hung round and over it, till they almost touched the blue sand where the shadows showed violet, and were ever moving like the branches. It looked as if the leaves and the roots were playfully interchanging kisses.


・plot=小区画の土地
・dig=掘る
・flower-bed=花壇
・it=to have hers…
・hers=her flower-bed
・round=丸い、円形の
・would=~したものだった◆過去の短期的な習慣・反復行動を表す
・rosy=バラのような、バラ色の
・hue=色、種類
・its=the sun's
・beam=光、光線
・curious=好奇心のある、何にでも興味がある
・thoughtful=思いやりのある、物思いにふけった
・while=~なのに、~ではあるものの、~だが
・deck out=美しく着飾る、飾り立てる
・extraordinary=非凡な、たぐいまれな、驚くべき
・wreck=難破船、(難破船の)漂流物
・nothing besides~=~のほかには何も
・hewn=hewの過去分詞、hew=〔石を〕切り出す〔おのなどで何度もたたいて〕切り取る
・weeping willow=シダレヤナギ
・splendidly=見事に、立派に
・delicate=繊細な、優雅な
・hung round:hang round=まつわりつく
・it=the statue
・show=見える
・violet=すみれ色の
・ever=いつも、常に、始終
・playfully=ふざけて


「ひいさまたちは、めいめい、花園のなかに、ちいさい 花壇をもっていて、そこでは、すき自由に、掘りかえすことも植えかえることもできました。ひとりのひいさまは、花壇を、くじらの形につくりました。するともうひとりは、じぶんのは、かわいい人魚に似せたほうがいいとおもいました。ところが、いちばん下のひいさまは、それをまんまるく、そっくりお日さまのかたちにこしらえて、お日さまとおなじようにまっ赤に光る花ばかりを咲かせました。このひいさまはひとりちがって、ふしぎとものしずかな、かんがえぶかい子でした。ほかのおねえさまたちが、難船した船からとって来ためずらしい品物をならべたててよろこんでいるとき、このひいさまだけは、うつくしい大理石の像をひとつとって来て、大空のお日さまの色に似た、ばら色の花の下に、それをおいただけでした。それはまっ白にすきとおる石をきざんだ、かわいらしい少年の像で、 難破して海の底にしずんだ船のなかにあったものでした。この像のわきに、ひいさまは、ばら色したしだれやなぎを植えました。それがうつくしくそだって、そのみずみずしい枝が像をこして、むこうの赤い砂地の上までたれました。そこに 濃いむらさきの影ができて、枝といっしょにゆれました。それはまるで、こずえのさきと根とがからみあって、たわむれているようにみえました」


*playfully interchanging kisses:大正時代にこの訳本は刊行されたようだし、子供向けということもあって、ただ「たわむれている」になっているのかもしれませんね。今訳すなら、「ふざけてキスをしあっているように見えました」でもいいかも。シダレヤナギの枝の先が始終揺れながら砂地にtouchしていたということですから。その情景が目に浮びますね。


Nothing gave her greater pleasure than to hear about the world of human beings up above; she made her old grandmother tell her all that she knew about ships and towns, people and animals. But above all it seemed strangely beautiful to her that up on the earth the flowers were scented, for they were not so at the bottom of the sea; also that the woods were green, and that the fish which were to be seen among the branches could sing so loudly and sweetly that it was a delight to listen to them. You see the grandmother called little birds fish, or the mermaids would not have understood her, as they had never seen a bird.


・to hear:toの名詞的用法
・she=the youngest princess
・all that:thatの先行詞がall
・above all=とりわけ、何よりも
・scented=よい香りのする
・they=flowers
・woods=森、林
・fish:ここでは複数形で"fish"になっているが、魚の種類を言う時は、複数形が"fishes"になることがある
・were to be=could be
・could sing:主語はthe fish
・sweetly=甘く、やさしく
・You see=ほら、あのね、ご存じでしょう◆会話で注意を促すときなどに用いられる。
・or=【接続】そうしなければ、さもなければ
・would not have~=~しなかっただろう
・as=【接続】~なので、~だから


このひいさまにとつて、海の上にある人間の世界の話をきくほど、おおきなよろこびはありません。おばあさまにせがむと、船のことや、町のことや、人間やけもののことや、知っていらっしゃることはなにもかも話してくださいました。とりわけ、ひいさまにとってめずらしくおもわれたのは、海の底ではついないことなのに、地の上では、お花がにおっているということでした。それと、森がみどり色していて、その森のこずえのなかに、おさかなが、高い、かわいらしい声で歌がうたえて、それがきくひとの耳をたのしくするということでした。その、おばあさまがおさかなとおっしゃったのは、小鳥のことでした。だって、ひいさまたちは、小鳥というものをみたことがないのですもの、そういって話さなければわからないでしょう。



'When you are fifteen,' said the grandmother, 'you will be allowed to rise up from the sea and sit on the rocks in the moonlight, and look at the big ships sailing by, and you will also see woods and towns.'


「まあ、あなたたち、十五になったらね。」と、おばあさまはいいました。「そのときは、海の上へ浮かび出ていいおゆるしをあげますよ。そうすれば、岩に腰をかけて、お月さまの光にひたることもできるし、大きな船のとおるところもみられるし、森や町だってみられるようになるよ。」


One of the sisters would be fifteen in the following year, but the others,—well, they were each one year younger than the other, so that the youngest had five whole years to wait before she would be allowed to come up from the bottom, to see what things were like on earth. But each one promised the others to give a full account of all that she had seen, and found most wonderful on the first day. Their grandmother could never tell them enough, for there were so many things about which they wanted information.


・each=【副】各々、それぞれ
・so that=従って、だから
・account=説明、報告
・found:find=~と思う、~と感じる◆【用法】find + 目的語 + 形容詞:目的語は"a full account of all"、形容詞は"most wonderful"
・for=〔その理由は〕~だから


来年は、いちばん上のおねえさまが、十五になるわけでした。でも、ほかのおねえさまたちは――そう、めいめい、一年ずつ年がちがっていましたから、いちばん下のひいさまが、海の底からあがっていって、わたしたちの世界のようすをみることになるまでには、まる五年も待たなければなりません。でも、ひとりがいけば、ほかのひとたちに、はじめていった日みたこと、そのなかでいちばんうつくしいとおもったことを、かえって来て話す約束ができました。なぜなら、おばあさまのお話だけでは、どうも物たりなくて、ひいさまたちの知りたいとおもうことが、だんだんおおくなって来ましたからね。

英語でアンデルセン童話「人魚姫」(1)

本文はGutenburgから、辞書は”英辞郎”、訳は「青空文庫」より”楠山正雄訳”を使わせていただいています。


THE MERMAID


Far out at sea the water is as blue as the bluest cornflower, and as clear as the clearest crystal; but it is very deep, too deep for any cable to fathom, and if many steeples were piled on the top of one another they would not reach from the bed of the sea to the surface of the water. It is down there that the Mermen live. 


・Far out at sea=(海の)はるか沖合いで
・cornflower=《植物》ヤグルマギク、ヤグルマ草Yagurumagiku
・clear=澄んだ、透明な
・crystal=《鉱物》水晶◆石英の透明な結晶
・cable=太綱
・fathom=~の水深を測る
・too deep for any cable to fathom=so deep that any cable can't fathom it
・steeple=教会などの尖塔、尖塔、尖り屋根
・pile=~を積み重ねる、山と積む
・bed=海底
・Mermen=Merman(男の人魚)の複数形


「はるか、沖合へでてみますと、海の水は、およそうつくしいやぐるまぎくの花びらのように青くて、あくまですきとおったガラスのように澄みきっています。でも、そこは、ふかいのなんのといって、どんなにながく綱をおろしても底にとどかないというくらいふかいのです。お寺の塔を、いったい、いくつかさねて積み上げたら、水の上までとどくというのでしょうか。そういうふかい海の底に、海のおとめたち――人魚のなかまは住んでいるのです」


Now don't imagine that there are only bare white sands at the bottom; oh no! the most wonderful trees and plants grow there, with such flexible stalks and leaves, that at the slightest motion of the water they move just as if they were alive. All the fish, big and little, glide among the branches just as, up here, birds glide through the air. The palace of the Merman King lies in the very deepest part; its walls are of coral and the long pointed windows of the clearest amber, but the roof is made of mussel shells which open and shut with the lapping of the water. This has a lovely effect, for there are gleaming pearls in every shell, any one of which would be the pride of a queen's crown.


・bare=あらわな、むきだしの
・flexible=しなやかな
・stalk=茎
・slight=ほんのわずかな
・just as=(ちょうど)であろう通り
・glide=滑るように動く
・coral=サンゴ
・pointed=先の尖った
・amber=琥珀
・mussel=イガイ◆海水生の二枚貝の総称
・lap=〔波が~に〕打ち寄せる
・effect=印象
・which:先行詞は"pearls"
・pride=最良の部分、〘古〙装飾


「ところで、海の底なんて、ただ、からからな砂地があるだけだろうと、そうきめてしまってはいけません。どうして、そこには、世にもめずらしい木や草がたくさんしげっていて、そのじくや葉のしなやかなことといったら、ほんのかすかに水がゆらいだのにも、いっしょにゆれて、まるで生きものがうごいているようです。ちいさいのも、おおきいのも、いろんなおさかなが、その枝と枝とのなかをつうい、つういとくぐりぬけて行くところは、地の上で、鳥たちが、空をとびまわるのとかわりはありません。この海の底をずっと底まで行ったところに、海の人魚の王さまが御殿をかまえています。その御殿の壁は、さんごでできていて、ほそながく、さきのとがった窓は、すきとおったこはくの窓でした。屋根は貝がらでふけていて、海の水がさしひきするにつれて、貝のふたは、ひとりでにあいたりしまったりします。これはなかなかうつくしいみものでした。なぜといって、一枚一枚の貝がらには、それひとつでも女王さまのかんむりのりっぱなそうしょくになるような、大きな真珠がはめてあるのでしたからね」


The Merman King had been for many years a widower, but his old mother kept house for him; she was a clever woman, but so proud of her noble birth that she wore twelve oysters on her tail, while the other grandees were only allowed six. Otherwise she was worthy of all praise, especially because she was so fond of the little mermaid princesses, her grandchildren. They were six beautiful children, but the youngest was the prettiest of all; her skin was as soft and delicate as a roseleaf, her eyes as blue as the deepest sea, but like all the others she had no feet, and instead of legs she had a fish's tail.


・widower=男やもめ
・keep house=家事をする
・noble=地位の高い、貴族の
・grandee=高官、身分の高い人
・Otherwise=そのほかの点では、別の面では
・soft=手ざわりの柔らかな、なめらかな、すべすべした
・delicate=(皮膚が)きめ細かな
・roseleaf=バラの花弁


「ところで、この御殿のあるじの王さまは、もうなが年のやもめぐらしで、そのかわり、年とったおかあさまが、いっさい、うちのことを引きうけておいでになりました。このおかあさまは、りこうな方でしたけれど、いちだんたかい身分をほこりたさに、しっぽにつける飾りのかきをごじぶんだけは十二もつけて、そのほかはどんな家柄のものでも、六つから上つけることをおゆるしになりませんでした。――そんなことをべつにすれば、たんとほめられてよい方でした。とりわけ、お孫さんにあたるひいさまたちのおせわをよくなさいました。それはみんなで六人、そろってきれいなひいさんたちでしたが、なかでもいちばん下のひいさまが、たれよりもきりょうよしで、はだはばらの花びらのようにすきとおって、きめがこまかく、目はふかいふかい海のようにまっ青でした。ただほかのひいさまたちとおなじように、足というものがなくて、そこがおさかなの尾になっていました」


All the livelong day they used to play in the palace in the great halls, where living flowers grew out of the walls. When the great amber windows were thrown open the fish swam in, just as the swallows fly into our rooms when we open the windows, but the fish swam right up to the little princesses, ate out of their hands, and allowed themselves to be patted.


・livelong day=一日中、終日、まる一日
・amber=琥珀
・swallow=ツバメ
・allow oneself to=あえて~する、思い切って~する、自分から~する
・pat=〔愛情表現として〕軽くたたく 


「ながいまる一日、ひいさまたちは、海の底の御殿の、大広間であそびました。そとの壁からは、生きた花が咲きだしていました。大きなこはくの窓をあけると、おさかながつういとはいって来ます。それはわたしたちが窓をあけると、つばめがとび込んでくるのに似ています。ただ、おさかなは、すぐと、ひいさまたちの所まで泳いで行って、その手からえさをとってたべて、なでいたわってもらいました」


Outside the palace was a large garden, with fiery red and deep blue trees, the fruit of which shone like gold, while the flowers glowed like fire on their ceaselessly waving stalks. The ground was of the finest sand, but it was of a blue phosphorescent tint. Everything was bathed in a wondrous blue light down there; you might more readily have supposed yourself to be high up in the air, with only the sky above and below you, than that you were at the bottom of the ocean. In a dead calm you could just catch a glimpse of the sun like a purple flower with a stream of light radiating from its calyx.


・fiery=火のような
・which:先行詞は"trees"
・glow=真っ赤になる、〔色が〕照り輝く、燃えるようである
・ceaselessly=絶えず、とめどなく
・fine=〔粒子などが〕細かい
・phosphorescent=リン光を発する
・tint=色合い、~がかった色
・bathed in=~を浴びる、~に染まる
・wondrous=驚くべき、不思議な
・readily=たやすく、容易に
・suppose=想像する
・dead=全くの、完全な
・calm=静けさ、平穏
・glimpse=チラッと見ること、垣間見ること
・calyx=萼(がく)


「御殿のそとには、大きな花園があって、はでにまっ赤な木や、くらいあい色の木がしげっていました。その木の実は金のようにかがやいて、花はほのおのようにもえながら、しじゅうじくや葉をゆらゆらさせていました。海の底は、地面からしてもうこまかい砂でしたが、それは硫黄の火のように青く光りました。そこでは、なにもかも、ふしぎな、青い光につつまれているので、それはふかい海の底にいるというよりも、なにか宙に浮いていて、上にも下にも青空をみているようでした。海のないでいるときには、お日さまが仰げました。それはむらさきの花のようで、そのうてなからながれだす光が、海の底いちめんひろがるようにおもわれました」

英語でアンデルセン童話「雪の女王」19

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

最終章です。

SEVENTH STORY. What Took Place in the Palace of the Snow Queen, and what
Happened Afterward


第七のお話

   雪の女王のお城でのできごとと そののちのお話


The walls of the palace were of driving snow, and the windows and doors of cutting winds. There were more than a hundred halls there, according as the snow was driven by the winds. The largest was many miles in extent; all were lighted up by the powerful Aurora Borealis, and all were so large, so empty, so icy cold, and so resplendent! Mirth never reigned there; there was never even a little bear-ball, with the storm for music, while the polar bears went on their hind legs and showed off their steps. Never a little tea-party of white young lady foxes; vast, cold, and empty were the halls of the Snow Queen. The northern-lights shone with such precision that one could tell exactly when they were at their highest or lowest degree of brightness. In the middle of the empty, endless hall of snow, was a frozen lake; it was cracked in a thousand pieces, but each piece was so like the other, that it seemed the work of a cunning artificer. In the middle of this lake sat the Snow Queen when she was at home; and then she said she was sitting in the Mirror of Understanding, and that this was the only one and the best thing in the world.


・driving=〔雨・風などが〕猛烈な、吹きつける
・cutting=身を切るような
・according as=~次第で、~に従って
・in extent=大きさは
・Aurora Borealis=北極光(オーロラ)
・resplendent=キラキラ輝く、まばゆい
・Mirth=陽気、笑い
・reign=支配する、行き渡る
・ball=(正式な)ダンスパーティー、(大)舞踏会
・polar bear=シロクマ、北極グマ
・hind leg=後ろ足
・show off=見せびらかす
・step=足の運び、ステップ
・northern-lights=オーロラ、北極光
・with precision=絶対的[確実]な精度[正確さ]で
・crack=~にひびを入れる、~を割る
・cunning=抜け目のない、精巧な
・artificer=考案者、熟練工
・Mirror of Understanding=理解の鏡


雪の女王のお城は、はげしくふきたまる雪が、そのままかべになり、窓や戸口は、身をきるような風で、できていました。そこには、百いじょうの広間が、じゅんにならんでいました。それはみんな雪のふきたまったものでした。いちばん大きな広間はなんマイルにもわたっていました。つよい極光(オーロラ)がこの広間をもてらしていて、それはただもう、ばか大きく、がらんとしていて、いかにも氷のようにつめたく、ぎらぎらして見えました。たのしみというものの、まるでないところでした。あらしが音楽をかなでて、ほっきょくぐまがあと足で立ちあがって、気どっておどるダンスの会もみられません。わかい白ぎつねの貴婦人(きふじん)のあいだに、ささやかなお茶(ちゃ)の会(かい)がひらかれることもありません。雪の女王の広間は、ただもうがらんとして、だだっぴろく、そしてさむいばかりでした。極光のもえるのは、まことにきそく正しいので、いつがいちばん高いか、いつがいちばんひくいか、はっきり見ることができました。このはてしなく大きながらんとした雪の広間のまん中に、なん千万という数のかけらにわれてこおった、みずうみがありました。われたかけらは、ひとつひとつおなじ形をして、これがあつまって、りっぱな美術品になっていました。このみずうみのまん中に、お城にいるとき、雪の女王はすわっていました。そしてじぶんは理性(りせい)の鏡のなかにすわっているのだ、この鏡ほどのものは、世界中さがしてもない、といっていました。


Little Kay was quite blue, yes nearly black with cold; but he did not observe it, for she had kissed away all feeling of cold from his body, and his heart was a lump of ice. He was dragging along some pointed flat pieces of ice, which he laid together in all possible ways, for he wanted to make something with them; just as we have little flat pieces of wood to make geometrical figures with, called the Chinese Puzzle. Kay made all sorts of figures, the
most complicated, for it was an ice-puzzle for the understanding. In his eyes the figures were extraordinarily beautiful, and of the utmost importance; for the bit of glass which was in his eye caused this. He found whole figures which represented a written word; but he never could manage to represent just the word he wanted--that word was "eternity"; and the Snow Queen had said, "If you can discover that figure, you shall be your own master, and I will make you a present of the whole world and a pair of new skates." But he could not find it out.


・blue=青ざめた
・she=the Snow Queen
・drag along=~を引きずって歩く
・pointed=先のとがった
・laid together:lay together=一緒に(くっつけて)置く
・geometrical figure=幾何学的図形
・Chinese Puzzle=複雑なパズル、難問
・utmost=最高の
・represent=意味する、示す
・manage to=なんとか~する
・eternity=永遠
・own master 《be one's ~》=誰の干渉も受けない、思うとおりにできる
・make you a present=あなたに進呈する、贈り物をする


カイはここにいて、さむさのため、まっ青に、というよりは、うす黒くなっていました。それでいて、カイはさむさを感じませんでした。というよりは、雪の女王がせっぷんして、カイのからだから、さむさをすいとってしまったからです。そしてカイのしんぞうは、氷のようになっていました。カイは、たいらな、いく枚かのうすい氷の板を、あっちこっちからはこんできて、いろいろにそれをくみあわせて、なにかつくろうとしていました。まるでわたしたちが、むずかしい漢字をくみ合わせるようでした。カイも、この上なく手のこんだ、みごとな形をつくりあげました。それは氷のちえあそびでした。カイの目には、これらのものの形はこのうえなくりっぱな、この世の中で一ばんたいせつなもののようにみえました。それはカイの目にささった鏡のかけらのせいでした。カイは、形でひとつのことばをかきあらわそうとおもって、のこらずの氷の板をならべてみましたが、自分があらわしたいとおもうことば、すなわち、「永遠(えいえん)」ということばを、どうしてもつくりだすことはできませんでした。でも、女王はいっていました。
「もしおまえに、その形をつくることがわかれば、からだも自由になるよ。そうしたら、わたしは世界ぜんたいと、あたらしいそりぐつを、いっそくあげよう。」
 けれども、カイには、それができませんでした。


"I am going now to warm lands," said the Snow Queen. "I must have a look down into the black caldrons." It was the volcanoes Vesuvius and Etna that she meant. "I will just give them a coating of white, for that is as it ought to be; besides, it is good for the oranges and the grapes." And then away she flew, and Kay sat quite alone in the empty halls of ice that were miles long, and looked at the blocks of ice, and thought and thought till his skull was
almost cracked. There he sat quite benumbed and motionless; one would have imagined he was frozen to death.


・caldron=大釜
・volcanoe=火山
・Vesuvius=イタリア・カンパニア州にある火山。ナポリから東へ約9キロメーターのナポリ湾岸にある。紀元79年8月24日の大噴火で、噴出物(火砕流)でポンペイ市をを埋没させたことは有名。
・Etna=イタリア南部シチリア島の東部にある活火山。
・coating=塗装、上塗り
・skull=頭蓋骨
・benumbed=感覚を失った、麻痺した
・one would have imagined=誰かが見たら~と思っただろう


「これから、わたしは、あたたかい国を、ざっとひとまわりしてこよう。」と、雪の女王はいいました。「ついでにそこの黒なべをのぞいてくる。」黒なべというのは、*エトナとかヴェスヴィオとか、いろんな名の、火をはく山のことでした。「わたしはすこしばかり、それを白くしてやろう。ぶどうやレモンをおいしくするためにいいそうだから。」

*エトナはイタリア半島の南シシリー島の火山。ヴェスヴィオはおなじくナポリ市の東方にある火山。

 こういって、雪の女王は、とんでいってしまいました。そしてカイは、たったひとりぼっちで、なんマイルというひろさのある、氷の大広間のなかで、氷の板を見つめて、じっと考えこんでいました。もう、こちこちになって、おなかのなかの氷が、みしりみしりいうかとおもうほど、じっとうごかずにいました。それをみたら、たれも、カイはこおりついたなり、死んでしまったのだとおもったかもしれません。


Suddenly little Gerda stepped through the great portal into the palace. The gate was formed of cutting winds; but Gerda repeated her evening prayer, and the winds were laid as though they slept; and the little maiden entered the vast, empty, cold halls. There she beheld Kay: she recognised him, flew to embrace him, and cried out, her arms firmly holding him the while, "Kay, sweet little Kay! Have I then found you at last?"


・portal=正門、玄関
・laid:lay(~を鎮める、静める)の過去分詞
・beheld:behold(見る)の過去形
・recognise=(人の)見分けがつく、(だれそれと)わかる
・flew:fly(飛ぶように走る)の過去形
・embrace=抱きしめる
・sweet=大切な、いとしいSave0011


ちょうどそのとき、ゲルダは大きな門を通って、その大広間にはいってきました。そこには、身をきるような風が、ふきすさんでいましたが、ゲルダが、ゆうべのおいのりをあげると、ねむったように、しずかになってしまいました。そして、ゲルダは、いくつも、いくつも、さむい、がらんとしたひろまをぬけて、――とうとう、カイをみつけました。ゲルダは、カイをおぼえていました。で、いきなりカイのくびすじにとびついて、しっかりだきしめながら、
「カイ、すきなカイ。ああ、あたしとうとう、みつけたわ。」と、さけびました。


But he sat quite still, benumbed and cold. Then little Gerda shed burning tears; and they fell on his bosom, they penetrated to his heart, they thawed the lumps of ice, and consumed the splinters of the looking-glass; he looked at her, and she sang the hymn:

"The rose in the valley is blooming so sweet,
And angels descend there the children to greet."


・benumbed=麻痺した、感覚を失った
・shed=(涙を)流す
・burning=激しい、ひどい
・bosom=胸
・thaw=雪解けする、解凍する
・consume=消滅させる、使い尽くす
・splinter=破片:[2-(2)参照]
・looking-glass=鏡、姿見
・hymn=賛美歌
・descend=降りる、下ろす


けれども、カイは身ゆるぎもしずに、じっとしゃちほこばったなり、つめたくなっていました。そこで、ゲルダは、あつい涙を流して泣きました。それはカイのむねの上におちて、しんぞうのなかにまで、しみこんで行きました。そこにたまった氷をとかして、しんぞうの中の、鏡のかけらをなくなしてしまいました。カイは、ゲルダをみました。ゲルダはうたいました。


ばらのはな さきてはちりぬ
おさな子エス やがてあおがん


Hereupon Kay burst into tears; he wept so much that the splinter rolled out of his eye, and he recognised her, and shouted, "Gerda, sweet little Gerda! Where have you been so long? And where have I been?" He looked round him. "How cold it is here!" said he. "How empty and cold!" And he held fast by Gerda, who laughed and wept for joy. It was so beautiful, that even the blocks of ice danced about for joy; and when they were tired and laid themselves down, they formed exactly the letters which the Snow Queen had told him to find out; so
now he was his own master, and he would have the whole world and a pair of new skates into the bargain.


・Hereupon=このあと、ここに至って
・the letters:"eternity"[7-(1)参照]
・own master=《be one's ~》誰の干渉も受けない、思うとおりにできる
・into the bargain=おまけに、さらに


すると、カイはわっと泣きだしました。カイが、あまりひどく泣いたものですから、ガラスのとげが、目からぽろりとぬけてでてしまいました。すぐとカイは、ゲルダがわかりました。そして、大よろこびで、こえをあげました。
「やあ、ゲルダちゃん、すきなゲルダちゃん。――いままでどこへいってたの、そしてまた、ぼくはどこにいたんだろう。」こういって、カイは、そこらをみまわしました。「ここは、ずいぶんさむいんだなあ。なんて大きくて、がらんとしているんだろうなあ。」
 こういって、カイは、ゲルダに、ひしととりつきました。ゲルダは、うれしまぎれに、泣いたり、わらったりしました。それがあまりたのしそうなので、氷の板きれまでが、はしゃいでおどりだしました。そして、おどりつかれてたおれてしまいました。そのたおれた形が、ひとりでに、ことばをつづっていました。それは、もしカイに、そのことばがつづれたら、カイは自由になれるし、そしてあたらしいそりぐつと、のこらずの世界をやろうと、雪の女王がいった、そのことばでした。


Gerda kissed his cheeks, and they grew quite blooming; she kissed his eyes, and they shone like her own; she kissed his hands and feet, and he was again well and merry. The Snow Queen might come back as soon as she liked; there stood his discharge written in resplendent masses of ice.


・blooming=はつらつとした
・merry=楽しい、陽気な
・discharge=解放
・resplendent=キラキラ輝く、まばゆい


ゲルダは、カイのほおにせっぷんしました。みるみるそれはぽおっと赤くなりました。それからカイの目にもせっぷんしました。すると、それはゲルダの目のように、かがやきだしました。カイの手だの足だのにもせっぷんしました。これで、しっかりしてげんきになりました。もうこうなれば、雪の女王がかえってきても、かまいません。だって、女王が、それができればゆるしてやるといったことばが、ぴかぴかひかる氷のもんじで、はっきりとそこにかかれていたからです。


They took each other by the hand, and wandered forth out of the large hall; they talked of their old grandmother, and of the roses upon the roof; and wherever they went, the winds ceased raging, and the sun burst forth. And when they reached the bush with the red berries, they found the Reindeer waiting for them. He had brought another, a young one, with him, whose udder was filled with milk, which he gave to the little ones, and kissed their lips. They then carried Kay and Gerda--first to the Finland woman, where they warmed themselves in the warm room, and learned what they were to do on their journey home; and they went to the Lapland woman, who made some new clothes for them and repaired their sledges.


・wander=歩き回る、さまよう
・udder=〔牛・ヤギなどの垂れた〕乳房


さて、そこでふたりは手をとりあって、その大きなお城からそとへでました。そして、うちのおばあさんの話だの、屋根の上のばらのことなどを、語りあいました。ふたりが行くさきざきには、風もふかず、お日さまの光がかがやきだしました。そして、赤い実(み)のなった、あの木やぶのあるところにきたとき、そこにもう、となかいがいて、ふたりをまっていました。そのとなかいは、もう一ぴきのわかいとなかいをつれていました。そして、このわかいほうは、ふくれた乳ぶさからふたりのこどもたちに、あたたかいおちちを出してのませてくれて、そのくちの上にせっぷんしました。それから二ひきのとなかいは、カイとゲルダをのせて、まずフィンランドの女のところへ行きました。そこでふたりは、あのあついへやで、じゅうぶんからだをあたためて、うちへかえる道をおしえてもらいました。それからこんどは、ラップランドの女のところへいきました。その女は、ふたりにあたらしい着物をつくってくれたり、そりをそろえてくれたりしました。


The Reindeer and the young hind leaped along beside them, and accompanied them to the boundary of the country. Here the first vegetation peeped forth; here Kay and Gerda took leave of the Lapland woman. "Farewell! Farewell!" they all said. And the first green buds appeared, the first little birds began to chirrup; and out of the wood came, riding on a magnificent horse, which Gerda knew (it was one of the leaders in the golden carriage), a young damsel with a bright-red cap on her head, and armed with pistols. It was the little robber maiden, who, tired of being at home, had determined to make a journey to the north; and afterwards in another direction, if that did not please her. She recognised Gerda immediately, and Gerda knew her too. It was a joyful meeting.


・hind=雌鹿
・boundary=境界
・vegetation=植物
・peep=姿を現す
・chirrup=〔鳥や虫が〕チュッチュッと鳴く
・wood=森
・magnificent=堂々とした、立派な
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・damsel=〈古・詩〉乙女


となかいと、もう一ぴきのとなかいとは、それなり、ふたりのそりについてはしって、国境(くにざかい)までおくってきてくれました。そこでは、はじめて草の緑が[#「が」は底本では「か」]もえだしていました。カイとゲルダとは、ここで、二ひきのとなかいと、ラップランドの女とにわかれました。
「さようなら。」と、みんなはいいました。そして、はじめて、小鳥がさえずりだしました。森には、緑の草の芽が、いっぱいにふいていました。
 その森の中から、うつくしい馬にのった、わかいむすめが、赤いぴかぴかするぼうしをかぶり、くらにピストルを二ちょうさして、こちらにやってきました。ゲルダはその馬をしっていました。(それは、ゲルダの金(きん)の馬車をひっぱった馬であったからです。)そして、このむすめは、れいのおいはぎのこむすめでした。この女の子は、もう、うちにいるのがいやになって、北の国のほうへいってみたいとおもっていました。そしてもし、北の国が気にいらなかったら、どこかほかの国へいってみたいとおもっていました。このむすめは、すぐにゲルダに気がつきました。ゲルダもまた、このむすめをみつけました。そして、もういちどあえたことを、心からよろこびました。


"You are a fine fellow for tramping about," said she to little Kay; "I should like to know, faith, if you deserve that one should run from one end of the world to the other for your sake?"


・tramp about=歩き回る、さまよう
・faith=<古>実に、全く
・deserve=~を受けるに値する


「おまえさん、ぶらつきやのほうでは、たいしたおやぶんさんだよ。」と、そのむすめは、カイにいいました。「おまえさんのために、世界のはてまでもさがしにいってやるだけのねうちが、いったい、あったのかしら。」


But Gerda patted her cheeks, and inquired for the Prince and Princess.

"They are gone abroad," said the other.


・Prince and Princess、the Ravenは第4話に出てきました。


けれども、ゲルダは、そのむすめのほおを、かるくさすりながら、王子と王女とは、あののちどうなったかとききました。
「あの人たちは、外国へいってしまったのさ。」と、おいはぎのこむすめがこたえました。


"But the Raven?" asked little Gerda.

"Oh! The Raven is dead," she answered. "His tame sweetheart is a widow, and wears a bit of black worsted round her leg; she laments most piteously, but it's all mere talk and stuff! Now tell me what you've been doing and how you managed to catch him."


・worsted=梳(そ)毛糸、毛織物の一種、ウーステッド
・and stuff=~など、みたいなもの

And Gerda and Kay both told their story.


「それで、からすはどうして。」と、ゲルダはたずねました。
「ああ、からすは死んでしまったよ。」と、むすめがいいました。「それでさ、おかみさんがらすも、やもめになって、黒い毛糸の喪章(もしょう)を足につけてね、ないてばかりいるっていうけれど、うわさだけだろう。さあ、こんどは、あれからどんな旅をしたか、どうしてカイちゃんをつかまえたか、話しておくれ。」
そこで、カイとゲルダとは、かわりあって、のこらずの話をしました。


And "Schnipp-schnapp-schnurre-basselurre," said the robber maiden; and she took the hands of each, and promised that if she should some day pass through the town where they lived, she would come and visit them; and then away she rode. Kay and Gerda took each other's hand: it was lovely spring weather, with abundance of flowers and of verdure. The church-bells rang, and the children recognised the high towers, and the large town; it was that in which they dwelt. They entered and hastened up to their grandmother's room, where everything was standing as formerly. The clock said "tick! tack!" and the finger moved round; but as they entered, they remarked that they were now grown up. The roses on the leads hung blooming in at the open window; there stood the little children's chairs, and Kay and Gerda sat down on them, holding each other by the hand; they both had forgotten the cold empty splendor of the Snow Queen, as though it had been a dream. The grandmother sat in the bright sunshine, and read aloud from the Bible: "Unless ye become as little children, ye cannot enter the kingdom of heaven."


・Schnipp-schnapp-schnurre-basselurre:楠山氏訳は「そこで、よろしく、ちんがらもんがらか、でも、まあうまくいって、よかったわ。」楠山氏自身は東京生まれのようですが、「ちんがら」は、宮崎の方言に「めちゃくちゃ」って意味であるようなんですが、これでしょうか。原文も韻を踏んでいるから、「ひっちゃかめっちゃか」ってとこかな(笑)
・abundance of=多数の
・verdure=緑草、新緑
・dwelt=dwell の過去・過去分詞形
・formerly=以前は
・finger=時計の針:動いているのが見えると言うことは長針でしょうか。
・leads=トタン屋根
・splendor=壮観、見事なもの
・from the Bible: "Unless ye become as little children, ye cannot enter the kingdom of heaven.":マタイ福音書18章3節「心を入れ替えて幼な子のようにならなければ、天国に入ることはできないだろう」


「そこで、よろしく、ちんがらもんがらか、でも、まあうまくいって、よかったわ。」と、むすめはいいました。
 そして、ふたりの手をとって、もしふたりのすんでいる町を通ることがあったら、きっとたずねようと、やくそくしました。それから、むすめは馬をとばして、ひろい世界へでて行きました。でも、カイとゲルダとは、手をとりあって、あるいていきました。いくほど、そこらが春めいてきて、花がさいて、青葉がしげりました。お寺の鐘(かね)がきこえて、おなじみの高い塔(とう)と、大きな町が見えてきました。それこそ、ふたりがすんでいた町でした。そこでふたりは、おばあさまの家の戸口へいって、かいだんをあがって、へやへはいりました。そこではなにもかも、せんとかわっていませんでした。柱どけいが「カッチンカッチン」いって、針がまわっていました。けれど、その戸口をはいるとき、じぶんたちが、いつかもうおとなになっていることに気がつきました。おもての屋根(やね)のといの上では、ばらの花がさいて、ひらいた窓から、うちのなかをのぞきこんでいました。そしてそこには、こどものいすがおいてありました。カイとゲルダとは、めいめいのいすにこしをかけて、手をにぎりあいました。ふたりはもう、あの雪の女王のお城のさむい、がらんとした、そうごんなけしきを、ただぼんやりと、おもくるしい夢のようにおもっていました。おばあさまは、神さまの、うららかなお日さまの光をあびながら、「なんじら、もし、おさなごのごとくならずば、天国にいることをえじ。」と、高らかに聖書(せいしょ)の一せつをよんでいました。


And Kay and Gerda looked in each other's eyes, and all at once they understood the old hymn:

"The rose in the valley is blooming so sweet,
And angels descend there the children to greet."

There sat the two grown-up persons; grown-up, and yet children; children at least in heart; and it was summer-time; summer, glorious summer!Save0012


・hymn=賛美歌


カイとゲルダとは、おたがいに、目と目を見あわせました。そして、


ばらのはな さきてはちりぬ
おさな子エスやがてあおがん


というさんび歌のいみが、にわかにはっきりとわかってきました。
 こうしてふたりは、からだこそ大きくなっても、やはりこどもで、心だけはこどものままで、そこにこしをかけていました。
 ちょうど夏でした。あたたかい、みめぐみあふれる夏でした。


以上で『雪の女王』を終わります。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」18

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

前回は、ReindeerがFinland womanに、どうかゲルダに雪の女王に打ち勝つ力を与えてほしいと頼んだところでした。


But the Reindeer begged so hard for little Gerda, and Gerda looked so imploringly with tearful eyes at the Finland woman, that she winked, and drew the Reindeer aside into a corner, where they whispered together, while the animal got some fresh ice put on his head.


・imploringly=懇願して
・drew~aside:draw~aside=~を脇に引き寄せる[引っ張っていく]、~を脇へ連れていく


でも、となかいは、かわいいゲルダのために、またいっしょうけんめい、その女の人にたのみました。ゲルダも目に涙をいっぱいためて、おがむように、フィンランドの女を見あげました。女はまた目をしばたたきはじめました。そして、となかいをすみのほうへつれていって、そのあたまにあたらしい氷をのせてやりながら、こうつぶやきました。


"'Tis true little Kay is at the Snow Queen's, and finds everything there quite to his taste; and he thinks it the very best place in the world; but the reason of that is, he has a splinter of glass in his eye, and in his heart. These must be got out first; otherwise he will never go back to mankind, and the Snow Queen will retain her power over him."


・quite=まったく
・to his taste=好みに合った、気に入った
・splinter=破片
・got out:get out=取り出す
・retain=持ち続ける


「カイって子は、ほんとうに雪の女王のお城にいるのだよ。そして、そこにあるものはなんでも気にいってしまって、世界にこんないいところはないとおもっているんだよ。けれどそれというのも、あれの目のなかには、鏡のかけらがはいっているし、しんぞうのなかにだって、ちいさなかけらがはいっているからなのだよ。だからそんなものを、カイからとりだしてしまわないうちは、あれはけっしてまにんげんになることはできないし、いつまでも雪の女王のいうなりになっていることだろうよ。」


とにかく、カイの目と心に入ったガラスの破片を取り除くこと……


"But can you give little Gerda nothing to take which will endue her with power over the whole?"


"I can give her no more power than what she has already. Don't you see how great it is? Don't you see how men and animals are forced to serve her; how well she gets through the world barefooted? She must not hear of her power from us; that power lies in her heart, because she is a sweet and innocent child! If she cannot get to the Snow Queen by herself, and rid little Kay of the glass, we cannot help her. Two miles hence the garden of the Snow Queen begins; thither you may carry the little girl. Set her down by the large bush with red berries, standing in the snow; don't stay talking, but hasten back as fast as possible." And now the Finland woman placed little Gerda on the Reindeer's back, and off he ran with all imaginable speed.


・endue=(才能などを)賦与する
・over the whole=すべてにわたる
・She must not hear of her power from us:みんながゲルダのために何かせずにはいられなくなる、そういう力がゲルダにある、でもそれをゲルダに知らせてはいけない、意識させてはいけない、その力は純粋なゲルダの心にあるのだから、ということでしょうか。
・sweet=優しい、思いやりのある
・innocent=純真な、邪心の無い
・rid…of~=…から~(望ましくないもの)を取り除く
・hence=ここから
・thither=あそこへ
・berries:berry=(イチゴ、ブドウなどの)実
・imaginable=想像できる限りの


20070914130904






「では、どんなものにも、うちかつことのできる力になるようなものを、ゲルダちゃんにくださるわけにはいかないでしょうか。」
「このむすめに、うまれついてもっている力よりも、大きな力をさずけることは、わたしにはできないことなのだよ。まあ、それはおまえさんにも、あのむすめがいまもっている力が、どんなに大きな力だかわかるだろう。ごらん、どんなにして、いろいろと人間やどうぶつが、あのむすめひとりのためにしてやっているか、どんなにして、はだしのくせに、あのむすめがよくもこんなとおくまでやってこられたか。それだもの、あのむすめは、わたしたちから、力をえようとしてもだめなのだよ。それはあのむすめの心のなかにあるのだよ。それがかわいいむじゃきなこどもだというところにあるのだよ。もし、あのむすめが、自分で雪の女王のところへ、でかけていって、カイからガラスのかけらをとりだすことができないようなら、まして、わたしたちの力におよばないことさ。もうここから二マイルばかりで、雪の女王のお庭の入口になるから、おまえはそこまで、あの女の子をはこんでいって、雪の中で、赤い実(み)をつけてしげっている、大きな木やぶのところに、おろしてくるがいい。それで、もうよけいな口をきかないで、さっさとかえっておいで。」
 こういって、フィンランドの女は、ゲルダを、となかいのせなかにのせました。そこで、となかいは、ぜんそくりょくで、はしりだしました。


"Oh! I have not got my boots! I have not brought my gloves!" cried little Gerda. She remarked she was without them from the cutting frost; but the Reindeer dared not stand still; on he ran till he came to the great bush with the red berries, and there he set Gerda down, kissed her mouth, while large bright tears flowed from the animal's eyes, and then back he went as fast as possible. There stood poor Gerda now, without shoes or gloves, in the very middle of dreadful icy Finland.


・remark=~に気付く
・cutting frost=身を切るような寒気
・dare=あえて~する
・bright=輝く
・dreadful=恐ろしい


「ああ、あたしは、長ぐつをおいてきたわ。手ぶくろもおいてきてしまった。」と、ゲルダはさけびました。
 とたんに、ゲルダは身をきるようなさむさをかんじました。でも、となかいはけっしてとまろうとはしませんでした。それは赤い実(み)のなった木やぶのところへくるまで、いっさんばしりに、はしりつづけました。そして、そこでゲルダをおろして、くちのところにせっぷんしました。
 大つぶの涙が、となかいの頬(ほお)を流れました。それから、となかいはまた、いっさんばしりに、はしっていってしまいました。かわいそうに、ゲルダは、くつもはかず、手ぶくろもはめずに、氷にとじられた、さびしいフィンマルケンのまっただなかに、ひとりとりのこされて立っていました。


She ran on as fast as she could. There then came a whole regiment of snow-flakes, but they did not fall from above, and they were quite bright and shining from the Aurora Borealis. The flakes ran along the ground, and the nearer they came the larger they grew. Gerda well remembered how large and strange the snow-flakes appeared when she once saw them through a magnifying-glass; but now they were large and terrific in another manner--they were all alive. They were the outposts of the Snow Queen. They had the most wondrous shapes; some looked like large ugly porcupines; others like snakes knotted together, with their heads sticking out; and others, again, like small fat bears, with the hair standing on end: all were of dazzling whiteness--all were living snow-flakes.


・a whole regiment of=非常にたくさんの
・Aurora Borealis=北極光(オーロラ):aurora australis=南極光
・magnifying-glass=ルーペ、拡大鏡、虫眼鏡
・terrific=〔大きさや程度などが〕激しい、ものすごい、〈古〉怖い、恐ろしい
・in another manner=違った風に、違ったやり方で
・outpost=前哨基地、出先機関
・wondrous=驚くべき
・porcupine=《動物》ヤマアラシ
・knotted=もつれた
・on end=直立して


ゲルダは、いっしょうけんめいかけだしました。すると、雪の大軍が、むこうからおしよせてきました。
 けれど、その雪は、空からふってくるのではありません。空は極光(オーロラ)にてらされて、きらきらかがやいていました。雪は地面の上をまっすぐに走ってきて、ちかくにくればくるほど、形が大きくなりました。ゲルダは、いつか虫めがねでのぞいたとき、雪のひとひらがどんなにか大きくみえたことを、まだおぼえていました。けれども、ここの雪はほんとうに、ずっと大きく、ずっとおそろしくみえました。この雪は生きていました。それは雪の女王の前哨(ぜんしょう)でした。そして、ずいぶんへんてこな形をしていました。大きくてみにくい、やまあらしのようなものもいれば、かまくびをもたげて、とぐろをまいているへびのようなかっこうのもあり、毛のさかさにはえた、ふとった小ぐまににたものもありました。それはみんなまぶしいように、ぎらぎら白くひかりました。これこそ生きた雪の大軍でした。


Little Gerda repeated the Lord's Prayer. The cold was so intense that she could see her own breath, which came like smoke out of her mouth. It grew thicker and thicker, and took the form of little angels, that grew more and more when they touched the earth. All had helms on their heads, and lances and shields in their hands; they increased in numbers; and when Gerda had finished the Lord's Prayer, she was surrounded by a whole legion. They thrust at the horrid snow-flakes with their spears, so that they flew into a thousand pieces; and little Gerda walked on bravely and in security. The angels patted her hands and feet; and then she felt the cold less, and went on quickly towards the palace of the Snow Queen.


・Lord's Prayer=主の祈り
・grew:grow=大きくなる
・helm=〔古〕かぶと(helmet)
・lance=槍
・shield=盾
・legion=【史】(古代ローマの)軍団、軍
・thrust:thrust(突き刺す)の過去・過去分詞形
・horrid=恐ろしい、ひどく嫌な
・spear=やり
・in security=安全に、無事に20070914133328






そこでゲルダは、いつもの主(しゅ)の祈の「われらの父」をとなえました。さむさはとてもひどくて、ゲルダはじぶんのつくいきを見ることができました。それは、口からけむりのようにたちのぼりました。そのいきはだんだんこくなって、やがてちいさい、きゃしゃな天使になりました。それが地びたにつくといっしょに、どんどん大きくなりました。天使たちはみな、かしらにはかぶとをいただき、手には楯(たて)とやりをもっていました。天使の数はだんだんふえるばかりでした。そして、ゲルダが主のおいのりをおわったときには、りっぱな天使軍の一たいが、ゲルダのぐるりをとりまいていました。天使たちはやりをふるって、おそろしい雪のへいたいをうちたおすと、みんなちりぢりになってしまいました。そこでゲルダは、ゆうきをだして、げんきよく進んで行くことができました。天使たちは、ゲルダの手と足とをさすりました。するとゲルダは、前ほどさむさを感じなくなって、雪の女王のお城をめがけていそぎました。


But now we shall see how Kay fared. He never thought of Gerda, and least of all that she was standing before the palace. 


・fare=やっていく
・least of all ~=最も~ない:「宮殿の前にゲルダがいるなんて最もカイが思い付かなかったことだ」


ところで、カイは、あののち、どうしていたでしょう。それからまずお話をすすめましょう。カイは、まるでゲルダのことなど、おもってはいませんでした。だから、ゲルダが、雪の女王のごてんまできているなんて、どうして、ゆめにもおもわないことでした。


さあ、いよいよ再会!

英語でアンデルセン童話「雪の女王」17

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

SIXTH STORY. The Lapland Woman and the Finland Woman


第六のお話
ラップランドの女とフィンランドの女

Suddenly they stopped before a little house, which looked very miserable. The roof reached to the ground; and the door was so low, that the family were obliged to creep upon their stomachs when they went in or out. Nobody was at home except an old Lapland woman, who was dressing fish by the light of an oil lamp. And the Reindeer told her the whole of Gerda's history, but first of all his own; for that seemed to him of much greater importance. Gerda was so chilled that she could not speak.


・creep upon their stomachs=腹ばいで進む
・Lapland=ラップランド (Scandinavia最北部地方)
・dress=《料理》~の下ごしらえをする
・chilled=体が冷えて


ちいさな、そまつなこやの前で、となかいはとまりました。そのこやはたいそうみすぼらしくて、屋根(やね)は地面(じめん)とすれすれのところまでも、おおいかぶさっていました。そして、戸口がたいそうひくくついているものですから、うちの人が出たり、はいったりするときには、はらばいになって、そこをくぐらなければなりませんでした。その家には、たったひとり年とったラップランドの女がいて、鯨油(げいゆ)ランプのそばで、おさかなをやいていました。となかいはそのおばあさんに、ゲルダのことをすっかり話してきかせました。でも、その前にじぶんのことをまず話しました。となかいは、じぶんの話のほうが、ゲルダの話よりたいせつだとおもったからでした。
 ゲルダはさむさに、ひどくやられていて、口をきくことができませんでした。


"Poor thing," said the Lapland woman, "you have far to run still. You have more than a hundred miles to go before you get to Finland; there the Snow Queen has her country-house, and burns blue lights every evening. I will give you a few words from me, which I will write on a dried haberdine, for paper I have none; this you can take with you to the Finland woman, and she will be able to give you more information than I can."


・have far to run still=まだこれからずっと走らなければならない(先は長い)
・country-house=田舎の大邸宅
・haberdine=a cod(《魚》タラ) salted and dried


「やれやれ、それはかわいそうに。」と、ラップランドの女はいいました。「おまえたちはまだまだ、ずいぶんとおくはしって行かなければならないよ。百マイル以上も北の*フィンマルケンのおくふかくはいらなければならないのだよ。雪の女王はそこにいて、まい晩、青い光を出す花火をもやしているのさ。わたしは紙をもっていないから、干鱈(ひだら)のうえに、てがみをかいてあげよう。これをフィンランドの女のところへもっておいで。その女のほうが、わたしよりもくわしく、なんでも教えてくれるだろうからね。」

*ノルウェーの北端、最低地方。


When Gerda had warmed herself, and had eaten and drunk, the Lapland woman wrote a few words on a dried haberdine, begged Gerda to take care of them, put her on the Reindeer, bound her fast, and away sprang the animal. "Ddsa! Ddsa!" was again heard in the air; the most charming blue lights burned the whole night in the sky, and at last they came to Finland. They knocked at the chimney of the Finland woman; for as to a door, she had none.


・beg=~を懇願する
・bound=bind(縛る)の過去形


さてゲルダのからだもあたたまり、たべものやのみものでげんきをつけてもらったとき、ラップランドの女は、干鱈(ひだら)に、ふたことみこと、もんくをかきつけて、それをたいせつにもっていくように、といってだしました。ゲルダは、またとなかいにいわえつけられてでかけました。ひゅッひゅッ、空の上でまたいいました。ひと晩中、この上もなくうつくしい青色をした、極光(オーロラ)がもえていました。――さて、こうして、となかいとゲルダとは、フィンマルケンにつきました。そして、フィンランドの女の家のえんとつを、こつこつたたきました。だってその家には、戸口もついていませんでした。


There was such a heat inside that the Finland woman herself went about almost naked. She was diminutive and dirty. She immediately loosened little Gerda's clothes, pulled off her thick gloves and boots; for otherwise the heat would have been too great--and after laying a piece of ice on the Reindeer's head, read what was written on the fish-skin. She read it three times: she then knew it by heart; so she put the fish into the cupboard--for it might very well be eaten, and she never threw anything away.


・went about:go about=動き回る、歩き回る
・diminutive=小柄の
・loosen=緩める
・pull off=脱がせる
・otherwise=さもなければ
・might well:may well=おそらく~だろう


家の中は、たいへんあついので、その女の人は、まるではだか同様でした。せいのひくいむさくるしいようすの女でした。女はすぐに、ゲルダの着物や、手ぶくろや、ながぐつをぬがせました。そうしなければ、とてもあつくて、そこにはいられなかったからです。それから、となかいのあたまの上に、ひとかけ、氷のかたまりを、のせてやりました。そして、ひだらにかきつけてあるもんくを、三べんもくりかえしてよみました。そしてすっかりおぼえこんでしまうと、スープをこしらえる大なべの中へ、たらをなげこみました。そのたらはたべることができたからで、この女の人は、けっしてどんなものでも、むだにはしませんでした。


Then the Reindeer related his own story first, and afterwards that of little Gerda; and the Finland woman winked her eyes, but said nothing.


・relate=~を話す、述べる、物語る
・wink=まばたきする


さて、となかいは、まずじぶんのことを話して、それからゲルダのことを話しました。するとフィンランドの女は、そのりこうそうな目をしばたたいただけで、なにもいいませんでした。


"You are so clever," said the Reindeer; "you can, I know, twist all the winds of the world together in a knot. If the seaman loosens one knot, then he has a good wind; if a second, then it blows pretty stiffly; if he undoes the third and fourth, then it rages so that the forests are upturned. Will you give the little maiden a potion, that she may possess the strength of twelve men, and vanquish the Snow Queen?"


・twist=巻く、寄り合わせる
・knot=(糸などの)からみ合った塊、集団、群れ
・seaman=船乗り
・second=二番目
・stiffly=激しく
・undo=緩める
・rage=猛威を振るう、荒れる
・upturned=〔物が〕ひっくり返された
・potion=(妙)薬
・vanquish=負かす、~に勝つ


「あなたは、たいそう、かしこくていらっしゃいますね。」と、となかいは、いいました。「わたしはあなたが、いっぽんのより糸で、世界中の風をつなぐことがおできになると、きいております。もしも舟のりが、そのいちばんはじめのむすびめをほどくなら、つごうのいい追風がふきます。二ばんめのむすびめだったら、つよい風がふきます。三ばんめと四ばんめをほどくなら、森ごとふきたおすほどのあらしがふきすさみます。どうか、このむすめさんに、十二人りきがついて、しゅびよく雪の女王にかてますよう、のみものをひとつ、つくってやっていただけませんか。」


"The strength of twelve men!" said the Finland woman. "Much good that would be!" Then she went to a cupboard, and drew out a large skin rolled up. When she had unrolled it, strange characters were to be seen written thereon; and the Finland woman read at such a rate that the perspiration trickled down her forehead.


・drew out:draw out=引っ張り出す
・skin=皮、獣皮
・character=文字
・thereon=その上に
・rate=速度
・perspiration=汗◆sweat より上品な語
・trickle down=〔汗などが〕流れ落ちる


「十二人りきかい。さぞ役にたつ[#「たつ」は底本では「たっ」]だろうよ。」と、フィンランド[#「フィンランド」は底本では「フィランド」]の女はくりかえしていいました。
 それから女の人は、たなのところへいって、大きな毛皮のまいたものをもってきてひろげました。それには、ふしぎなもんじがかいてありましたが、フィンランドの女は、ひたいから、あせがたれるまで、それをよみかえしました。


この汗の意味はいったい何でしょう?

英語でアンデルセン童話「雪の女王」16

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

Then the Wood-pigeons said, "Coo! Coo! We have seen little Kay! A white hen carries his sledge; he himself sat in the carriage of the Snow Queen, who passed here, down just over the wood, as we lay in our nest. She blew upon us young ones; and all died except we two. Coo! Coo!"


・blew upon us=私たちの上を急いで通り過ぎて行った


そのとき、森のはとが、こういいました。
「くう、くう、わたしたち、カイちゃんを見ましたよ。一わの白いめんどりが、カイちゃんのそりをはこんでいました。カイちゃんは雪の女王のそりにのって、わたしたちが、巣にねていると、森のすぐ上を通っていったのですよ。雪の女王は、わたしたち子ばとに、つめたいいきをふきかけて、ころしてしまいました。たすかったのは、わたしたち二わだけ、くう、くう。」


"What is that you say up there?" cried little Gerda. "Where did the Snow Queen go to? Do you know anything about it?"


"She is no doubt gone to Lapland; for there is always snow and ice there. Only ask the Reindeer, who is tethered there."


"Ice and snow is there! There it is, glorious and beautiful!" said the Reindeer. "One can spring about in the large shining valleys! The Snow Queen has her summer-tent there; but her fixed abode is high up towards the North Pole, on the Island called Spitzbergen."


"Oh, Kay! Poor little Kay!" sighed Gerda.


"Do you choose to be quiet?" said the robber maiden. "If you don't, I shall make you."


・Lapland=ラップランド、スカンジナビア半島北部
・Reindeer=トナカイ
・tether=つなぐ
・glorious=壮大な
・spring about=跳ね回る
・abode=住居


「まあ、なにをそこでいってるの。」と、ゲルダが、つい大きなこえをしました。「その雪の女王さまは、どこへいったのでしょうね。そのさきのこと、なにかしっていて。おしえてよ。」
「たぶん、*ラップランドのほうへいったのでしょうよ。そこには、年中、氷や雪がありますからね。まあ、つながれている、となかいに、きいてごらんなさい。」

*ヨーロッパ洲の極北、スカンジナビア半島の北東部、四〇万平方キロ一帯の寒い土地。遊牧民のラップ人がすむ。

 すると、となかいがひきとって、
「そこには年中、氷や雪があって、それはすばらしいみごとなものですよ。」といいました。
「そこでは大きな、きらきら光る谷まを、自由にはしりまわることができますし、雪の女王は、そこに夏のテントをもっています。でも女王のりっぱな本城(ほんじょう)は、もっと北極のほうの、*スピッツベルゲンという島の上にあるのです。」

*ノルウェーのはるか北、北極海にちかい小島群(一名スヴァルバルド)。

「ああ、カイちゃんは、すきなカイちゃんは。」と、ゲルダはためいきをつきました。
「しずかにしなよ。しないと、ナイフをからだにつきさすよ。」と、おいはぎのこむすめがいいました。


In the morning Gerda told her all that the Wood-pigeons had said; and the little maiden looked very serious, but she nodded her head, and said, "That's no matter--that's no matter. Do you know where Lapland lies!" she asked of the Reindeer.


"Who should know better than I?" said the animal; and his eyes rolled in his head. "I was born and bred there--there I leapt about on the fields of snow."


・bred=breed(育てる)の過去分詞形
・leapt about=跳ね回っていた


あさになって、ゲルダは、森のはとが話したことを、すっかりおいはぎのこむすめに話しました。するとむすめは、たいそうまじめになって、うなずきながら、
「まあいいや。どっちにしてもおなじことだ。」と、いいました。そして、
「おまえ、ラップランドって、どこにあるのかしってるのかい。」と、むすめは、となかいにたずねました。
「わたしほど、それをよくしっているものがございましょうか。」と、目をかがやかしながら、となかいがこたえました。「わたしはそこで生まれて、そだったのです。わたしはそこで、雪の野原を、はしりまわっていました。」


"Listen," said the robber maiden to Gerda. "You see that the men are gone; but my mother is still here, and will remain. However, towards morning she takes a draught out of the large flask, and then she sleeps a little: then I will do something for you." She now jumped out of bed, flew to her mother; with her arms round her neck, and pulling her by the beard, said, "Good morrow, my own sweet nanny-goat of a mother." And her mother took hold of her nose, and pinched it till it was red and blue; but this was all done out of pure love.


・draught=〈英〉=draft=ドラフトビール、生ビール
・flask=〔ウイスキーなどの〕フラスコ瓶◆平らで薄く携帯できるように作られたもの
・Good morrow=Good morning
・nanny-goat=雌やぎ


「ごらん。みんなでかけていってしまうだろう。おっかさんだけがうちにいる。おっかさんは、ずっとうちにのこっているのよ。でもおひるちかくなると、大きなびんからお酒をのんで、すこしのあいだ、ひるねするから、そのとき、おまえにいいことをしてあげようよ。」と、おいはぎのこむすめはゲルダにいいました。
 それから女の子は、ぱんと、ねどこからはねおきて、おっかさんのくびのまわりにかじりついて、おっかさんのひげをひっぱりながら、こういいました。
「かわいい、めやぎさん、おはようございます。」
 すると、おっかさんは、女の子のはなが赤くなったり紫色(むらさきいろ)になったりするまで、ゆびではじきました。
 でもこれは、かわいくてたまらない心からすることでした。


おお、乱暴なお母さん!(笑)


When the mother had taken a sup at her flask, and was having a nap, the little robber maiden went to the Reindeer, and said, "I should very much like to give you still many a tickling with the sharp knife, for then you are so amusing; however, I will untether you, and help you out, so that you may go back to Lapland. But you must make good use of your legs; and take this little girl for me to the palace of the Snow Queen, where her playfellow is. You have heard, I suppose, all she said; for she spoke loud enough, and you were listening."


・sup=一口、一すすり
・should like to=~したい
・tickling=くすぐること


おっかさんが、びんのお酒をのんで、ねてしまったとき、おいはぎのこむすめは、となかいのところへいって、こういいました。
「わたしはもっと、なんべんも、なんべんも、ナイフでおまえを、くすぐってやりたいのだよ。だって、ずいぶんおかしいんだもの、でも、もういいさ。あたい、おまえがラップランドへ行けるように、つなをほどいてにがしてやろう。けれど、おまえはせっせとはしって、この子を、この子のおともだちのいる、雪の女王のごてんへ、つれていかなければいけないよ。おまえ、この子があたいに話していたこと、きいていたろう。とても大きなこえで話したし、おまえも耳をすまして、きいていたのだから。」


The Reindeer gave a bound for joy. The robber maiden lifted up little Gerda, and took the precaution to bind her fast on the Reindeer's back; she even gave her a small cushion to sit on. "Here are your worsted leggins, for it will be cold; but the muff I shall keep for myself, for it is so very pretty. But I do not wish you to be cold. Here is a pair of lined gloves of my mother's; they just reach up to your elbow. On with them! Now you look about the hands just like my ugly old mother!"


・bound=跳躍
・precaution=用心、予防策
・worsted=梳毛糸(そもうし)製の:梳毛=羊毛などの繊維をすいて長い繊維を残し、平行に並べて引き伸ばし、撚りをかけて糸にすること
・leggins=leggings=レギンス(子供用の短めのズボン)
・lined=裏地のついた


となかいはよろこんで、高くはねあがりました。その背中においはぎのこむすめは、ゲルダをのせてやりました。そして用心(ようじん)ぶかく、ゲルダをしっかりいわえつけて、その上、くらのかわりに、ちいさなふとんまで、しいてやりました。
「まあ、どうでもいいや。」と、こむすめはいいました。「そら、おまえの毛皮のながぐつだよ。だんだんさむくなるからね。マッフはきれいだからもらっておくわ。けれど、おまえにさむいおもいはさせないわ。ほら、おっかさんの大きなまる手ぶくろがある。おまえなら、ひじのところまで、ちょうどとどくだろう。まあ、これをはめると、おまえの手が、まるであたいのいやなおっかさんの手のようだよ。」と、むすめはいいました。


And Gerda wept for joy.


"I can't bear to see you fretting," said the little robber maiden. "This is just the time when you ought to look pleased. Here are two loaves and a ham for you, so that you won't starve." The bread and the meat were fastened to the Reindeer's back; the little maiden opened the door, called in all the dogs, and then with her knife cut the rope that fastened the animal, and said to him, "Now, off with you; but take good care of the little girl!"


・fret=くよくよする
・loaves:loaf=ひと塊のパン
・starve=飢え死にする
・off with you=出ていけ、消えうせろ


ゲルダは、もううれしくて、涙(なみだ)がこぼれました。
「泣くなんて、いやなことだね。」と、おいはぎのこむすめはいいました。「ほんとは、うれしいはずじゃないの。さあ、ここにふたつ、パンのかたまりと、ハムがあるわ。これだけあれば、ひもじいおもいはしないだろう。」
 これらの品じなは、となかいの背中のうしろにいわえつけられました。おいはぎのむすめは戸をあけて、大きな犬をだまして、中にいれておいて、それから、よくきれるナイフでつなをきると、となかいにむかっていいました。
「さあ、はしって。そのかわり、その子に、よく気をつけてやってよ。」


And Gerda stretched out her hands with the large wadded gloves towards the robber maiden, and said, "Farewell!" and the Reindeer flew on over bush and bramble through the great wood, over moor and heath, as fast as he could go.


"Ddsa! Ddsa!" was heard in the sky. It was just as if somebody was sneezing.


"These are my old northern-lights," said the Reindeer, "look how they gleam!" And on he now sped still quicker--day and night on he went: the loaves were consumed, and the ham too; and now they were in Lapland.


・wadded=綿入れの
・bramble=イバラ◆バラやバラに似たとげのある低木の総称
・moor=荒地、沼地
・heath=ヒース(ヨーロッパおよび南アフリカ原産のエリカ属の常緑低木)、荒地、荒野
・old=昔なじみの
・sped:speed=疾走する
・consume=~を食べつくす


そのとき、ゲルダは、大きなまる手ぶくろをはめた両手を、おいはぎのこむすめのほうにさしのばして、「さようなら。」といいました。
 とたんに、となかいはかけだしました。木の根、岩かどをとびこえ、大きな森をつきぬけて、沼地や草原もかまわず、いっしょうけんめい、まっしぐらにはしっていきました。おおかみがほえ、わたりがらすがこえをたてました。ひゅッ、ひゅッ、空で、なにか音がしました。それはまるで花火があがったように。
「あれがわたしのなつかしい北極(オーロラ)光です。」と、となかいがいいました。「ごらんなさい。なんてよく、かがやいているでしょう。」
 それからとなかいは、ひるも夜も、前よりももっとはやくはしって行きました。
 パンのかたまりもなくなりました。ハムもたべつくしました。となかいとゲルダとは、ラップランドにつきました。


盗賊の娘だったけど優しいところがある子だったわけね。ゲルダは幸運!20070810031427

英語でアンデルセン童話「雪の女王」15

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

In the midst of the large, old, smoking hall burnt a great fire on the stone floor. The smoke disappeared under the stones, and had to seek its own egress. In an immense caldron soup was boiling; and rabbits and hares were being roasted on a spit.


・smoking=煙っている
・egress=〈文〉出口
・immense=巨大な
・caldron=大釜
・rabbit=《動》ウサギ◆ウサギ目ウサギ科(Leporidae)のうち、主にペットとして飼われる小型のものを指す
・hare=野ウサギ(rabbit より大型)
・spit=串、細い棒


大きな、煤(すす)けたひろまには、煙がもうもうしていて、たき火が、赤あかと石だたみのゆか上でもえていました。煙はてんじょうの下にたちまよって、どこからともなくでていきました。大きなおなべには、スープがにえたって、大うさぎ小うさぎが、あぶりぐしにさして、やかれていました。


"You shall sleep with me to-night, with all my animals," said the little robber maiden. They had something to eat and drink; and then went into a corner, where straw and carpets were lying. Beside them, on laths and perches, sat nearly a hundred pigeons, all asleep, seemingly; but yet they moved a little when the robber maiden came. "They are all mine," said she, at the same time seizing one that was next to her by the legs and shaking it so that its wings fluttered. "Kiss it," cried the little girl, and flung the pigeon in Gerda's face. "Up there is the rabble of the wood," continued she, pointing to several laths which were fastened before a hole high up in the wall; "that's the rabble; they would all fly away immediately, if they were not well fastened in. And here is my dear old Bac"; and she laid hold of the horns of a reindeer, that had a bright copper ring round its neck, and was tethered to the spot. "We are obliged to lock this fellow in too, or he would make his escape. Every evening I tickle his neck with my sharp knife; he is so frightened at it!" and the little girl drew forth a long knife, from a crack in the wall, and let it glide over the Reindeer's neck. The poor animal kicked; the girl laughed, and pulled Gerda into bed with her.


・lath=木摺(きずり=塗り壁の下地として、少しずつ間をあけて取りつけた小幅の貫板)
・perch=止まり木、休む場所
・seemingly=見たところ
・flung:fling=投げつける、放り出す
・rabble=群れ、無秩序な群集
・fasten=(動物を)囲う、閉じ込める
・laid hold of:lay hold of=~を握る[つかむ]
・reindeer=《動物》トナカイ
・tether=〔動物を〕つなぐ
・are obliged to=余儀なく[やむなく・仕方なしに]~する
・tickle=~をくすぐる
・drew forth:draw forth=引き出す、引き抜く


「おまえは、こん夜は、あたいや、あたいのちいさなどうぶつといっしょにねるのよ。」と、おいはぎのこむすめがいいました。
 ふたりはたべものと、のみものをもらうと、わらや、しきものがしいてある、へやのすみのほうへ行きました。その上には、百ぱよりも、もっとたくさんのはとが、ねむったように、木摺(きずり)や、とまり木にとまっていましたが、ふたりの女の子がきたときには、ちょっとこちらをむきました。
「みんな、このはと、あたいのものなのよ。」と、おいはぎのこむすめはいって、てばやく、てぢかにいた一わをつかまえて、足をゆすぶったので、はとは、羽根をばたばたやりました。
「せっぷんしておやりよ。」と、いって、おいはぎのこむすめは、それを、ゲルダの顔になげつけました。
「あすこにとまっているのが、森のあばれものさ。」と、そのむすめは、かべにあけたあなに、うちこまれたとまり木を、ゆびさしながら、また話しつづけました。「あれは二わとも森のあばれものさ。しっかり、とじこめておかないと、すぐにげていってしまうの。ここにいるのが、昔からおともだちのベーよ。」
 こういって、女の子は、ぴかぴかみがいた、銅(どう)のくびわをはめたままつながれている、一ぴきのとなかいを、[#「とかないを、」に傍点]つのをもってひきだしました。
「これも、しっかりつないでおかないと、にげていってしまうの。だから、あたいはね、まい晩よくきれるナイフで、くびのところをくすぐってやるんだよ。すると、それはびっくりするったらありゃしない。」
 そういいながら、女の子はかべのわれめのところから、ながいナイフをとりだして、それをとなかいのくびにあてて、そろそろなでました。かわいそうに、そのけものは、足をどんどんやって、苦しがりました。むすめは、おもしろそうにわらって、それなりゲルダをつれて、ねどこに行きました。


"Do you intend to keep your knife while you sleep?" asked Gerda; looking at it rather fearfully.


"I always sleep with the knife," said the little robber maiden. "There is no knowing what may happen. But tell me now, once more, all about little Kay; and why you have started off in the wide world alone." And Gerda related all, from the very beginning: the Wood-pigeons cooed above in their cage, and the others slept. The little robber maiden wound her arm round Gerda's neck, held the knife in the other hand, and snored so loud that everybody could hear her; but Gerda could not close her eyes, for she did not know whether she was to live or die. The robbers sat round the fire, sang and drank; and the old female robber jumped about so, that it was quite dreadful for Gerda to see her.


・There is no ~ing=~することができない
・start off=出発する、旅に出る
・relate=~を話す
・wood pigeon=《鳥》モリバト、ジュズカケバト
・coo=(ハトが)クークー鳴く
・snore=いびきをかく


「あなたはねているあいだ、ナイフをはなさないの。」と、ゲルダは、きみわるそうに、それをみました。
「わたい、しょっちゅうナイフをもっているよ。」と、おいはぎのこむすめはこたえました。
「なにがはじまるかわからないからね。それよか、もういちどカイちゃんって子の話をしてくれない、それから、どうしてこのひろい世界に、あてもなくでてきたのか、そのわけを話してくれないか。」
 そこで、ゲルダははじめから、それをくりかえしました。森のはとが、頭の上のかごの中でくうくういっていました。ほかのはとはねむっていました。おいはぎのこむすめは、かた手をゲルダのくびにかけて、かた手にはナイフをもったまま、大いびきをかいてねてしまいました。けれども、ゲルダは、目をつぶることもできませんでした。ゲルダは、いったい、じぶんは生かしておかれるのか、ころされるのか、まるでわかりませんでした。
 たき火のぐるりをかこんで、おいはぎたちは、お酒をのんだり、歌をうたったりしていました。そのなかで、ばあさんがとんぼをきりました。ちいさな女の子にとっては、そのありさまを見るだけで、こわいことでした。


「とんぼをきりました」というのは、とんぼがえりをしたということですね。

とんぼ=歌舞伎で、役者が立ち回り中に切られたり投げられたりしたときなどに、手をつかずに宙返りすること。とんぼがえり。「―を切る」

英語でアンデルセン童話「雪の女王」14

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

FIFTH STORY. The Little Robber Maiden


おいはぎのこむすめ

They drove through the dark wood; but the carriage shone like a torch, and it dazzled the eyes of the robbers, so that they could not bear to look at it.


・Robber=強盗、追いはぎ
・Maiden=娘、少女
・wood=森
・carriage=〔大型の四輪〕馬車
・torch=たいまつ


それから、ゲルダのなかまは、くらい森の中を通っていきました。ところが、馬車の光は、たいまつのようにちらちらしていました。それが、おいはぎどもの目にとまって、がまんがならなくさせました。


"'Tis gold! 'Tis gold!" they cried; and they rushed forward, seized the horses, knocked down the little postilion, the coachman, and the servants, and pulled little Gerda out of the carriage.20070810031056


"How plump, how beautiful she is! She must have been fed on nut-kernels," said the old female robber, who had a long, scrubby beard, and bushy eyebrows that hung down over her eyes. "She is as good as a fatted lamb! How nice she will be!" And then she drew out a knife, the blade of which shone so that it was quite dreadful to behold.


・postilion=先頭左馬御者、騎手頭
・coachman=〔馬車の〕御者
・plump=ぽっちゃりした、肉付きのいい
・fed on:fedはfeedの過去分詞、fed on=~で育てられた
・nut-kernels=木の実の(種子から種皮を取り去った内部。胚と胚乳から成る)
・scrubby=むさくるしい
・bushy=〔毛が〕ふさふさした、モジャモジャした
・fatted=〔家畜が食用に〕太らされた
・dreadful=恐ろしい、怖い
・behold=見守る、注視する


「やあ、金(きん)だぞ、金だぞ。」と、おいはぎたちはさけんで、いちどにとびだしてきました。馬をおさえて、ぎょしゃ、べっとうから、おさきばらいまでころして、ゲルダを馬車からひきずりおろしました。
「こりゃあ、たいそうふとって、かわいらしいむすめだわい。きっと、年中くるみの実(み)ばかりたべていたのだろう。」と、おいはぎばばがいいました。女のくせに、ながい、こわいひげをはやして、まゆげが、目の上までたれさがったばあさんでした。「なにしろそっくり、あぶらののった、こひつじというところだが、さあたべたら、どんな味がするかな。」
 そういって、ばあさんは、ぴかぴかするナイフをもちだしました。きれそうにひかって、きみのわるいといったらありません。


"Oh!" cried the woman at the same moment. She had been bitten in the ear by her own little daughter, who hung at her back; and who was so wild and unmanageable, that it was quite amusing to see her. "You naughty child!" said the mother: and now she had not time to kill Gerda.


"She shall play with me," said the little robber child. "She shall give me her muff, and her pretty frock; she shall sleep in my bed!" And then she gave her mother another bite, so that she jumped, and ran round with the pain; and the Robbers laughed, and said, "Look, how she is dancing with the little one!"


・wild=気の荒い
・unmanageable=扱いにくい
・You naughty child=いたずらっ子だね、しょうがない子だね
・She shall~:話し手の意思を表す「彼女に~させる」


「あッ。」
 そのとたん、ばあさんはこえをあげました。その女のせなかにぶらさがっていた、こむすめが、なにしろらんぼうなだだっ子で、おもしろがって、いきなり、母親の耳をかんだのです。
「このあまあ、なにょをする。」と、母親はさけびました。おかげで、ゲルダをころす、はなさきをおられました。
「あの子は、あたいといっしょにあそぶのだよ。」と、おいはぎのこむすめは、いいました。
「あの子はマッフや、きれいな着物をあたいにくれて、晩にはいっしょにねるのだよ。」
 こういって、その女の子は、もういちど、母親の耳をしたたかにかみました。それで、ばあさんはとびあがって、ぐるぐるまわりしました。おいはぎどもは、みんなわらって、
「見ろ、ばばあが、がきといっしょにおどっているからよ。」と、いいました。


"I will go into the carriage," said the little robber maiden; and she would have her will, for she was very spoiled and very headstrong. She and Gerda got in; and then away they drove over the stumps of felled trees, deeper and deeper into the woods. The little robber maiden was as tall as Gerda, but stronger, broader-shouldered, and of dark complexion; her eyes were quite black; they looked almost melancholy. She embraced little Gerda, and said, "They shall not kill you as long as I am not displeased with you. You are, doubtless, a Princess?"


"No," said little Gerda; who then related all that had happened to her, and how much she cared about little Kay.


・have one's will=意のままにする
・spoiled=〔人が〕甘やかされて育った
・headstrong=強情な、わがままな
・stump=切り株
・fell=(木を)切り倒す
・shouldered=【形】~な肩をした
・complexion=顔の色
・melancholy=憂うつな、物悲しい
・displeased with=、(人)に嫌気がさす
・doubtless=確かに
・relate=~を話す、述べる、物語る


「馬車の中へはいってみようや。」と、おいはぎのこむすめはいいました。
 このむすめは、わんぱくにそだって、おまけにごうじょうっぱりでしたから、なんでもしたいとおもうことをしなければ、気がすみませんでした。それで、ゲルダとふたり馬車にのりこんで、きりかぶや、石のでている上を通って、林のおくへ、ふかくはいっていきました。おいはぎのこむすめは、ちょうどゲルダぐらいの大きさでしたが、ずっと、きつそうで、肩つきががっしりしていました。どす黒(ぐろ)いはだをして、その目はまっ黒で、なんだかかなしそうに見えました。女の子は、ゲルダのこしのまわりに手をかけて、
「あたい、おまえとけんかしないうちは、あんなやつらに、おまえをころさせやしないことよ。おまえはどこかの王女じゃなくて。」と、いいました。
「いいえ、わたしは王女ではありません。」と、ゲルダはこたえて、いままでにあったできごとや、じぶんがどんなに、すきなカイちゃんのことを思っているか、ということなぞを話しました。


The little robber maiden looked at her with a serious air, nodded her head slightly, and said, "They shall not kill you, even if I am angry with you: then I will do it myself"; and she dried Gerda's eyes, and put both her hands in the handsome muff, which was so soft and warm.


At length the carriage stopped. They were in the midst of the court-yard of a robber's castle. It was full of cracks from top to bottom; and out of the openings magpies and rooks were flying; and the great bull-dogs, each of which looked as if he could swallow a man, jumped up, but they did not bark, for that was forbidden.


・handsome=素晴らしい
・muff=〔防寒具の〕マフ◆女性が手を入れるためのもので、毛皮製で円筒形をしている
Muff.jpg
・At length= 〔長時間かかって〕ついに、しまいには
・opening=開口部、穴、すき間
・magpie=カササギ
・rook=ミヤマガラス

おいはぎのむすめは、しげしげとゲルダを見て、かるくうなずきながら、
「あたいは、おまえとけんかしたって、あのやつらに、おまえをころさせやしないよ。そんなくらいなら、あたい、じぶんでおまえをころしてしまうわ。」と、いいました。
 それからむすめは、ゲルダの目をふいてやり、両手をうつくしいマッフにつけてみましたが、それはたいへん、ふっくりして、やわらかでした。
 さあ、馬車はとまりました。そこはおいはぎのこもる、お城のひろ庭でした。その山塞(さんさい)は、上から下までひびだらけでした。そのずれたわれ目から、大がらす小がらすがとびまわっていました。大きなブルドッグが、あいてかまわず、にんげんでもくってしまいそうなようすで、高くとびあがりました。でも、けっしてほえませんでした。ほえることはとめられてあったからです。


バードウォッチング』より「カササギ」Images_2




ここから「ミヤマガラス」20000130_012d  

英語でアンデルセン童話「雪の女王」13

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The Prince was only like him about the neck; but he was young and handsome. And out of the white lily leaves the Princess peeped, too, and asked what was the matter. Then little Gerda cried, and told her her whole history, and all that the Ravens had done for her.


・peep=現れる、姿を現す


いまは王子となったその人は、ただ、くびすじのところが、カイちゃんににていただけでした。でもその王子はわかくて、うつくしい顔をしていました。王女は白いゆりの花ともみえるベッドから、目をぱちくりやって見あげながら、たれがそこにきたのかと、おたずねになりました。そこでゲルダは泣いて、いままでのことや、からすがいろいろにつくしてくれたことなどを、のこらず王子に話しました。


"Poor little thing!" said the Prince and the Princess. They praised the Ravens very much, and told them they were not at all angry with them, but they were not to do so again. However, they should have a reward. "Will you fly about here at liberty," asked the Princess; "or would you like to have a fixed appointment as court ravens, with all the broken bits from the kitchen?"


・fixed appointment=決まった任務
・were not to~:are not to~=~してはいけない


「それは、まあ、かわいそうに。」と、王子と王女とがいいました。そして、からすをおほめになり、じぶんたちはけっして、からすがしたことをおこりはしないが、二どとこんなことをしてくれるな、とおっしゃいました。それでも、からすたちは、ごほうびをいただくことになりました。
「おまえたちは、すきかってに、そとをとびまわっているほうがいいかい。」と、王女はたずねました。「それとも、宮中おかかえのからすとして、台所のおあまりは、なんでもたべることができるし、そういうふうにして、いつまでもごてんにいたいとおもうかい。」


宮廷の台所からパンを盗み、王子と王女の寝室の鍵も盗んで、ゲルダを裏口から連れて入って来たことを叱りながらも、その代わり宮廷の中を自由に飛ぶことか、宮廷付きのカラスとして台所のパンのかけらを食べられることを許してくれるというわけだ。


And both the Ravens nodded, and begged for a fixed appointment; for they thought of their old age, and said, "It is a good thing to have a provision for our old days."


・provision=食料


そこで、二わのからすはおじぎをして、自分たちが、としをとってからのことをかんがえると、やはりごてんにおいていただきたいと、ねがいました。そして、
「だれしもいっていますように、さきへいってこまらないように、したいものでございます。」と、いいました。


And the Prince got up and let Gerda sleep in his bed, and more than this he could not do. She folded her little hands and thought, "How good men and animals are!" and she then fell asleep and slept soundly. All the dreams flew in again, and they now looked like the angels; they drew a little sledge, in which little Kay sat and nodded his head; but the whole was only a dream, and therefore it all vanished as soon as she awoke.


・fold=~を組む、組み合わせる
・slept soundly:sleep soundly=ぐっすり眠る


王子はそのとき、ベッドから出て、ゲルダをそれにねかせ、じぶんは、それなりねようとはしませんでした。ゲルダはちいさな手をくんで、「まあ、なんといういい人や、いいからすたちだろう。」と、おもいました。それから、目をつぶって、すやすやねむりました。すると、また夢がやってきて、こんどは天使のような人たちが、一だいのそりをひいてきました。その上には、カイちゃんが手まねきしていました。けれども、それはただの夢だったので、目をさますと、さっそくきえてしまいました。


The next day she was dressed from head to foot in silk and velvet. They offered to let her stay at the palace, and lead a happy life; but she begged to have a little carriage with a horse in front, and for a small pair of shoes; then, she said, she would again go forth in the wide world and look for Kay.


・lead a happy life=楽しく暮らす
・for=begged for
・go forth=出発する


あくる日になると、ゲルダはあたまから、足のさきまで、絹やびろうどの着物でつつまれました。そしてこのままお城にとどまっていて、たのしくくらすようにとすすめられました。でも、ゲルダはただ、ちいさな馬車と、それをひくうまと、ちいさな一そくの長ぐつがいただきとうございますと、いいました。それでもういちど、ひろい世界へ、カイちゃんをさがしに出ていきたいのです。


Shoes and a muff were given her; she was, too, dressed very nicely; and when she was about to set off, a new carriage stopped before the door. It was of pure gold, and the arms of the Prince and Princess shone like a star upon it; the coachman, the footmen, and the outriders, for outriders were there, too, all wore golden crowns. The Prince and the Princess assisted her into the carriage themselves, and wished her all success. The Raven of the woods, who was now married, accompanied her for the first three miles. He sat beside Gerda, for he could not bear riding backwards; the other Raven stood in the doorway, and flapped her wings; she could not accompany Gerda, because she suffered from headache since she had had a fixed appointment and ate so much. The carriage was lined inside with sugar-plums, and in the seats were fruits and gingerbread.


・muff=〔防寒具の〕マフ◆女性が手を入れるためのもので、毛皮製で円筒形をしている。
・set off=出発する
・coachman=〔馬車の〕御者
・footmen:footman=従僕、召使
・outrider=先導する人、乗馬従者
・was lined with~=~で覆われていた、~が敷きつめられていた
・gingerbread=ジンジャーブレッド◆甘いショウガ入りのクッキー(gingerbread cookie または gingersnap)またはケーキ。クッキーは固く焼かれ、通常丸い形をしている。ケーキは糖みつで味付けをされることが多い。


さて、ゲルダは長ぐつばかりでなく、マッフまでもらって、さっぱりと旅のしたくができました。いよいよでかけようというときに、げんかんには、じゅん金のあたらしい馬車が一だいとまりました。王子と王女の紋章(もんしょう)が、星のようにひかってついていました。ぎょしゃや、べっとうや、おさきばらいが――そうです、おさきばらいまでが――金の冠(かんむり)をかぶってならんでいました。王子と王女は、ごじぶんで、ゲルダをたすけて馬車にのらせ、ぶじにいってくるようにおっしゃいました。もういまはけっこんをすませた森のからすも、三マイルさきまで、みおくりについてきました。このからすは、うしろむきにのっていられないというので、ゲルダのそばにすわっていました。めすのほうのからすは、羽根をばたばたやりながら、門のところにとまっていました。おくっていかないわけは、あれからずっとごてんづとめで、たくさんにたべものをいただくせいか、ひどく頭痛(ずつう)がしていたからです。その馬車のうちがわは、さとうビスケットでできていて、こしをかけるところは、くだものや、くるみのはいったしょうがパンでできていました。


"Farewell! Farewell!" cried Prince and Princess; and Gerda wept, and the Raven wept. Thus passed the first miles; and then the Raven bade her farewell, and this was the most painful separation of all. He flew into a tree, and beat his black wings as long as he could see the carriage, that shone from afar like a sunbeam.


「さよなら、さよなら。」と、王子と王女がさけびました。するとゲルダは泣きだしました。――からすもまた泣きました。――さて、馬車が三マイル先のところまできたとき、こんどはからすが、さよならをいいました。この上ないかなしいわかれでした。からすはそこの木の上にとびあがって、馬車がいよいよ見えなくなるまで、黒いつばさを、ばたばたやっていました。馬車はお日さまのようにかがやきながら、どこまでもはしりつづけました。


絵本では、御者や従者はついていませんねえ(^_^;)20070720040851

英語でアンデルセン童話「雪の女王」12

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The evening was closing in when the Raven returned. "Caw--caw!" said he. "She sends you her compliments; and here is a roll for you. She took it out of the kitchen, where there is bread enough. You are hungry, no doubt. It is not possible for you to enter the palace, for you are barefooted: the guards in silver, and the lackeys in gold, would not allow it; but do not cry, you shall come in still. My sweetheart knows a little back stair that leads to the
bedchamber, and she knows where she can get the key of it."


・closing in:close in=近づく、迫る
・compliments=あいさつ
・roll=ロール(パン)
・you shall come in=入ってよい:you shallは話し手の意志を表す
・still=〈古〉常に、いつでも
・back stair=裏階段
・bedchamber=寝室


そのからすがかえってきたときには、晩もだいぶくらくなっていました。
「すてき、すてき。」と、からすはいいました。「いいなずけが、あなたによろしくとのことでしたよ。さあ、ここに、すこしばかりパンをもってきてあげました。さぞ、おなかがすいたでしょう。いいなずけが、だいどころからもってきたのです。そこにはたくさんまだあるのです。――どうも、お城へはいることは、できそうもありませんよ。なぜといって、あなたはくつをはいていませんから、銀の軍服のへいたいや、金ぴかのせいふくのお役人たちが、ゆるしてくれないでしょうからね、だがそれで泣いてはいけない。きっと、つれて行けるくふうはしますよ。わたしのいいなずけは、王女さまのねまに通じている、ほそい、うらばしごをしっていますし、そのかぎのあるところもしっているのですからね。」


And they went into the garden in the large avenue, where one leaf was falling after the other; and when the lights in the palace had all gradually disappeared, the Raven led little Gerda to the back door, which stood half open.


・avenue=大通り
・stood:stand=現時点で~である


そこで、からすとゲルダとは、お庭をぬけて、木の葉があとからあとからと、ちってくる並木道(なみきみち)を通りました。そして、お城のあかりが、じゅんじゅんにきえてしまったとき、からすはすこしあいているうらの戸口へ、ゲルダをつれていきました。


Oh, how Gerda's heart beat with anxiety and longing! It was just as if she had been about to do something wrong; and yet she only wanted to know if little Kay was there. Yes, he must be there. She called to mind his intelligent eyes, and his long hair, so vividly, she could quite see him as he used to laugh when they were sitting under the roses at home. "He will, no doubt, be glad to see you--to hear what a long way you have come for his sake; to know how unhappy all at home were when he did not come back."


Oh, what a fright and a joy it was!


・longing=切望、熱望
・and yet=それなのに
・call to mind=思い浮かべる
・all at home=家にいるみんな


まあ、ゲルダのむねは、こわかったり、うれしかったりで、なんてどきどきしたことでしょう。まるでゲルダは、なにかわるいことでもしているような気がしました。けれど、ゲルダはその人が、カイちゃんであるかどうかをしりたい、いっしんなのです。そうです。それはきっと、カイちゃんにちがいありません。ゲルダは、しみじみとカイちゃんのりこうそうな目つきや、長いかみの毛をおもいだしていました。そして、ふたりがうちにいて、ばらの花のあいだにすわってあそんだとき、カイちゃんがわらったとおりの笑顔(えがお)が、目にうかびました。そこで、カイちゃんにあって、ながいながい道中をして自分をさがしにやってきたことをきき、あれなりかえらないので、どんなにみんなが、かなしんでいるかしったなら、こうしてきてくれたことを、どんなによろこぶでしょう。まあ、そうおもうと、うれしいし、しんぱいでした。


They were now on the stairs. A single lamp was burning there; and on the floor stood the tame Raven, turning her head on every side and looking at Gerda, who bowed as her grandmother had taught her to do.


・on every side=四方八方に


さて、からすとゲルダとは、かいだんの上にのぼりました。ちいさなランプが、たなの上についていました。そして、ゆか板のまん中のところには、飼いならされた女がらすが、じっとゲルダを見て立っていました。ゲルダはおばあさまからおそわったように、ていねいにおじぎしました。


"My intended has told me so much good of you, my dear young lady," said the tame Raven. "Your tale is very affecting. If you will take the lamp, I will go before. We will go straight on, for we shall meet no one."


"I think there is somebody just behind us," said Gerda; and something rushed past: it was like shadowy figures on the wall; horses with flowing manes and thin legs, huntsmen, ladies and gentlemen on horseback.


・intended=いいなずけ
・affecting=心を打つ、感動的な
・go straight on=一直線に進む、真っすぐに行く
・flowing=流れるような
・mane=たてがみ
・huntsmen:huntman=狩猟者


「かわいいおじょうさん。わたしのいいなずけは、あなたのことを、たいそうほめておりました。」と、そのやさしいからすがいいました。「あなたの、そのごけいれきとやらもうしますのは、ずいぶんおきのどくなのですね。さあ、ランプをおもちください。ごあんないしますわ。このところをまっすぐにまいりましょう。もうだれにもあいませんから。」
「だれか、わたしたちのあとから、ついてくるような気がすることね。」と、なにかがそばをきゅうに通ったときに、ゲルダはいいました。それは、たてがみをふりみだして、ほっそりとした足をもっている馬だの、それから、かりうどだの、馬にのったりっぱな男の人や、女の人だのの、それがみんなかべにうつったかげのように見えました。


"They are only dreams," said the Raven. "They come to fetch the thoughts of the high personages to the chase; 'tis well, for now you can observe them in bed all the better. But let me find, when you enjoy honor and distinction, that you possess a grateful heart."


"Tut! That's not worth talking about," said the Raven of the woods.


・fetch=~の心をつかむ
・high personage=高貴な方
・the chase=要点
・'tis=it isの短縮形
・for now=今のところ、さしあたって
・observe=よく見る、観察する
・all the better=なおさら、いっそう
・distinction=名声
・grateful=感謝する
・Tut=【間投】 〔いら立ちや非難を表す〕ちぇっ


「あれは、ほんの夢なのですわ。」と、からすがいいました。「あれらは、それぞれのご主人たちのこころを、りょうにさそいだそうとしてくるのです。つごうのいいことに、あなたは、ねどこの中であのひとたちのお休みのところがよくみられます。そこで、どうか、あなたがりっぱな身分におなりになったのちも、せわになったおれいは、おわすれなくね。」
「それはいうまでもないことだろうよ。」と、森のからすがいいました。


They now entered the first saloon, which was of rose-colored satin, with artificial flowers on the wall. Here the dreams were rushing past, but they hastened by so quickly that Gerda could not see the high personages. One hall was more magnificent than the other; one might indeed well be abashed; and at last they came into the bedchamber. The ceiling of the room resembled a large palm-tree with leaves of glass, of costly glass; and in the middle, from a thick golden stem, hung two beds, each of which resembled a lily. One was white, and in this lay the Princess; the other was red, and it was here that Gerda was to look for little Kay. She bent back one of the red leaves, and saw a brown neck. Oh! that was Kay! She called him quite loud by name, held the lamp towards him--the dreams rushed back again into the chamber--he awoke, turned his head, and--it was not little Kay!


・saloon=大広間、客室
・artificial=作り物の
・hall=大広間、廊下
・magnificent=素晴らしい、格調高い
・might well=《推量・可能性》~だろう
・abashed=当惑した、恥じている、ばつが悪い
・palm=ヤシ、シュロ
・costly=高価な
・stem=茎、幹
・bent back:bend back=後ろに(弓なりに)曲げる


さて、からすとゲルダとは、一ばんはじめの広間にはいっていきました。そこのかべには、花でかざった、ばら色のしゅすが、上から下まで、はりつめられていました。そして、ここにもりょうにさそうさっきの夢は、もうとんで来ていましたが、あまりはやくうごきすぎて、ゲルダはえらい殿(との)さまや貴婦人(きふじん)方を、こんどはみることができませんでした。ひろまから、ひろまへ行くほど、みごとにできていました。ただもうあまりのうつくしさに、まごつくばかりでしたが、そのうち、とうとうねままではいっていきました。そこのてんじょうは、高価なガラスの葉をひろげた、大きなしゅろの木のかたちになっていました。そして、へやのまんなかには、ふたつのベッドが、木のじくにあたる金のふとい柱につりさがっていて、ふたつとも、ゆりの花のようにみえました。そのベッドはひとつは白くて、それには王女がねむっていました。もうひとつのは赤くて、そこにねむっている人こそ、ゲルダのさがすカイちゃんでなくてはならないのです。ゲルダは赤い花びらをひとひら、そっとどけると、そこに日やけしたくびすじが見えました。――ああ、それはカイちゃんでした。
 ――ゲルダは、カイちゃんの名をこえ高くよびました。ランプをカイちゃんのほうへさしだしました。……夢がまた馬にのって、さわがしくそのへやの中へ、はいってきました。……その人は目をさまして、顔をこちらにむけました。ところが、それはカイちゃんではなかったのです。


なかなか原作は複雑で細かくて、意味深ですなあ(^_^;)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」11

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

"But Kay--little Kay," said Gerda, "when did he come? Was he among the number?"


"Patience, patience; we are just come to him. It was on the third day when a little personage without horse or equipage, came marching right boldly up to the palace; his eyes shone like yours, he had beautiful long hair, but his clothes were very shabby."


"That was Kay," cried Gerda, with a voice of delight. "Oh, now I've found him!" and she clapped her hands for joy.


"He had a little knapsack at his back," said the Raven.


"No, that was certainly his sledge," said Gerda; "for when he went away he took his sledge with him."


・the number=((集合的)) 連中
・Patience=忍耐
・personage=〔一般に〕人
・equipage=〈古〉〔貴族などの〕従者
・right=完全に、本当に
・boldly=大胆に、正々堂々と
・shabby=ぼろぼろの、みすぼらしい


「でも、カイちゃんはどうしたのです。いつカイちゃんはやってきたのです。」と、ゲルダはたずねました。「カイちゃんは、その人たちのなかまにいたのですか。」
「まあまあ、おまちなさい。これから、そろそろ、カイちゃんのことになるのです。ところで、その三日目に、馬にも、馬車にものらないちいさな男の子が、たのしそうにお城のほうへ、あるいていきました。その人の目は、あなたの目のようにかがやいて、りっぱな、長いかみの毛をもっていましたが、着物はぼろぼろにきれていました。」
「それがカイちゃんなのね。ああ、それでは、とうとう、あたし、カイちゃんをみつけたわ。」と、ゲルダはうれしそうにさけんで、手をたたきました。
「その子は、せなかに、ちいさなはいのうをしょっていました。」と、からすがいいました。
「いいえ、きっと、それは、そりよ。」と、ゲルダはいいました。「カイちゃんは、そりといっしょに見えなくなってしまったのですもの。」


"That may be," said the Raven; "I did not examine him so minutely; but I know from my tame sweetheart, that when he came into the court-yard of the palace, and saw the body-guard in silver, the lackeys on the staircase, he was not the least abashed; he nodded, and said to them, 'It must be very tiresome to stand on the stairs; for my part, I shall go in.' The saloons were gleaming with lustres--privy councillors and excellencies were walking about barefooted, and wore gold keys; it was enough to make any one feel uncomfortable. His boots creaked, too, so loudly, but still he was not at all afraid."


・minutely=詳細に、細かに
・tame=従順な
・lackey=召使
・staircase=階段
・not the least=少しの~もない◆【同】no~at all
・abashed=恥じている、ばつが悪い
・for my part=私としては
・saloon=大広間、客室
・lustre=〔照明の〕シャンデリア
・privy=内情に通じた
・councillor=顧問官
・excellencies:excellency=閣下◆高官に対する敬称
・creak=きしむ、ギシギシという音を立てる


「なるほど、そうかもしれません。」と、からすはいいました。「なにしろ、ちょっと見ただけですから。しかし、それは、みんなわたしのやさしいいいなずけからきいたのです。それから、その子はお城の門をはいって、銀の軍服(ぐんぷく)のへいたいをみながら、だんをのぼって、金ぴかのせいふくのお役人の前にでましたが、すこしもまごつきませんでした。それどころか、へいきでえしゃくして、
『かいだんの上に立っているのは、さぞたいくつでしょうね。ではごめんこうむって、わたしは広間にはいらせてもらいましょう。』と、いいました。広間にはあかりがいっぱいついて、枢密顧問官(すうみつこもんかん)や、身分の高い人たちが、はだしで金の器(うつわ)をはこんであるいていました。そんな中で、たれだって、いやでもおごそかなきもちになるでしょう。ところへ、その子のながぐつは、やけにやかましくギュウ、ギュウなるのですが、いっこうにへいきでした。」


"That's Kay for certain," said Gerda. "I know he had on new boots; I have heard them creaking in grandmama's room."


"Yes, they creaked," said the Raven. "And on he went boldly up to the Princess, who was sitting on a pearl as large as a spinning-wheel. All the ladies of the court, with their attendants and attendants' attendants, and all the cavaliers, with their gentlemen and gentlemen's gentlemen, stood round; and the nearer they stood to the door, the prouder they looked. It was hardly possible to look at the gentleman's gentleman, so very haughtily did he stand in the doorway."


・spinning-wheel=糸車、紡ぎ車
・attendant=従者、お供
・cavalier=〈古〉騎士
・gentlemen:gentleman==従僕
・stood round=そのあたりに[周りに]立っていた
・haughtily=横柄な様子で


「きっとカイちゃんよ。」と、ゲルダがさけびました。
「だって、あたらしい長ぐつをはいていましたもの。わたし、そのくつがギュウ、ギュウいうのを、おばあさまのへやできいたわ。」
「そう、ほんとうにギュウ、ギュウってなりましたよ。」と、からすはまた話しはじめました。
「さて、その子は、つかつかと、糸車ほどの大きなしんじゅに、こしをかけている、王女さまのご前(ぜん)に進みました。王女さまのぐるりをとりまいて、女官たちがおつきを、そのおつきがまたおつきを、したがえ、侍従(じじゅう)がけらいの、またそのけらいをしたがえ、それがまた、めいめい小姓(こしょう)をひきつれて立っていました。しかも、とびらの近くに立っているものほど、いばっているように見えました。しじゅう、うわぐつであるきまわっていた、けらいのけらいの小姓なんか、とてもあおむいて顔が見られないくらいでした。とにかく、戸ぐちのところでいばりかえっているふうは、ちょっと見ものでした。」


"It must have been terrible," said little Gerda. "And did Kay get the Princess?"


"Were I not a Raven, I should have taken the Princess myself, although I am promised. It is said he spoke as well as I speak when I talk Raven language; this I learned from my tame sweetheart. He was bold and nicely behaved; he had not come to woo the Princess, but only to hear her wisdom. She pleased him, and he pleased her."


・terrible=ひどく嫌な、怖い
・Were I not a Raven=If I were not a Raven
・am promised=見込みがある
・woo=〈古〉〔女性に〕求婚する
・please=~の気に入る


「まあ、ずいぶんこわいこと。それでもカイちゃんは、王女さまとけっこんしたのですか。」と、ゲルダはいいました。
「もし、わたしがからすでなかったなら、いまのいいなずけをすてても、王女さまとけっこんしたかもしれません。人のうわさによりますと、その人は、わたしがからすのことばを話すときとどうよう、じょうずに話したということでした。わたしは、そのことを、わたしのいいなずけからきいたのです。どうして、なかなかようすのいい、げんきな子でした。それも王女さまとけっこんするためにきたのではなくて、ただ、王女さまがどのくらいかしこいか知ろうとおもってやってきたのですが、それで王女さまがすきになり、王女さまもまたその子がすきになったというわけです。」


"Yes, yes; for certain that was Kay," said Gerda. "He was so clever; he could reckon fractions in his head. Oh, won't you take me to the palace?"


"That is very easily said," answered the Raven. "But how are we to manage it? I'll speak to my tame sweetheart about it: she must advise us; for so much I must tell you, such a little girl as you are will never get permission to enter."


・reckon=~を勘定に入れる、考える
・fraction=破片、断片、一部分
・easily said=言うのは簡単


「そう、いよいよ、そのひと、カイちゃんにちがいないわ。カイちゃんは、そりゃりこうで、分数まであんざんでやれますもの――ああ、わたしを、そのお城へつれていってくださらないこと。」と、ゲルダはいいました。
「さあ、くちでいうのはたやすいが、どうしたら、それができるか、むずかしいですよ。」と、からすはいいました。「ところで、まあ、それをどうするか、まあ、わたしのいいなずけにそうだんしてみましょう。きっと、いいちえをかしてくれるかもしれません。なにしろ、あなたのような、ちいさな娘さんが、お城の中にはいることは、ゆるされていないのですからね。」


"Oh, yes I shall," said Gerda; "when Kay hears that I am here, he will come out directly to fetch me."


"Wait for me here on these steps," said the Raven. He moved his head backwards and forwards and flew away.


・fetch=~を(目的の物が置かれている場所まで)行って取ってくる、連れてくる20070715053937


「いいえ、そのおゆるしならもらえてよ。」と、ゲルダがこたえました。「カイちゃんは、わたしがきたときけば、すぐに出てきて、わたしをいれてくれるでしょう。」
「むこうのかきねのところで、まっていらっしゃい。」と、からすはいって、あたまをふりふりとんでいってしまいました。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」10

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

FOURTH STORY. The Prince and Princess


   第四のお話

     王子と王女

Gerda was obliged to rest herself again, when, exactly opposite to her, large Raven came hopping over the white snow. He had long been looking at Gerda and shaking his head; and now he said, "Caw! Caw!" Good day! Good day! He could not say it better; but he felt a sympathy for the little girl, and asked her where she was going all alone. The word "alone" Gerda understood quite well, and felt how much was expressed by it; so she told the Raven her whole history, and asked if he had not seen Kay.


・obliged to=仕方なく~する
・opposite to=~の逆方向に、逆方向から
・Raven=(大型の)カラス、ワタリガラス◆不吉の兆しとされる
・hop=ピョンピョン飛ぶ
・Cawd=(カラスが)かーかー鳴く(声)
・Good day=【間投】 こんにちは、ご機嫌よう、さようなら、じゃあこれで


ゲルダは、またも、やすまなければなりませんでした。ゲルダがやすんでいた場所の、ちょうどむこうの雪の上で、一わの大きなからすが、ぴょんぴょんやっていました。このからすは、しばらくじっとしたなりゲルダをみつめて、あたまをふっていましたが、やがてこういいました。
「カア、カア、こんちは。こんちは。」
 からすは、これよりよくは、なにもいうことができませんでしたが、でも、ゲルダをなつかしくおもっていて、このひろい世界で、たったひとりぼっち、どこへいくのだといって、たずねました。この「ひとりぼっち。」ということばを、ゲルダはよくあじわって、しみじみそのことばに、ふかいいみのこもっていることをおもいました。ゲルダはそこでからすに、じぶんの身の上のことをすっかり話してきかせた上、どうかしてカイをみなかったか、たずねました。


The Raven nodded very gravely, and said, "It may be--it may be!"


"What, do you really think so?" cried the little girl; and she nearly squeezed the Raven to death, so much did she kiss him.


"Gently, gently," said the Raven. "I think I know; I think that it may be little Kay. But now he has forgotten you for the Princess."


"Does he live with a Princess?" asked Gerda.


"Yes--listen," said the Raven; "but it will be difficult for me to speak your language. If you understand the Raven language I can tell you better."


"No, I have not learnt it," said Gerda; "but my grandmother understands it, and she can speak gibberish too. I wish I had learnt it."


"No matter," said the Raven; "I will tell you as well as I can; however, it will be bad enough." And then he told all he knew.


・gravely=深刻に
・Gently=優しく、おだやかに
・I think I know=彼(カイ)に会ったと思う、会ったのは彼だったと思う
・learnt=learnの過去・過去分詞
・gibberish=ちんぷんかんぷんな[訳の分からない]話[おしゃべり・文章]


するとからすは、ひどくまじめにかんがえこんで、こういいました。
「あれかもしれない。あれかもしれない。」
「え、しってて。」と、ゲルダは大きなこえでいって、からすをらんぼうに、それこそいきのとまるほどせっぷんしました。
「おてやわらかに、おてやわらかに。」と、からすはいいました。「どうも、カイちゃんをしっているような気がします。たぶん、あれがカイちゃんだろうとおもいますよ。けれど、カイちゃんは、王女さまのところにいて、あなたのことなどは、きっとわすれていますよ。」
「カイちゃんは、王女さまのところにいるんですって。」と、ゲルダはききました。
「そうです。まあ、おききなさい。」と、からすはいいました。「どうも、わたしにすると、にんげんのことばで話すのは、たいそうなほねおりです。あなたにからすのことばがわかると、ずっとうまく話せるのだがなあ。」
「まあ、あたし、ならったことがなかったわ。」と、ゲルダはいいました。「でも、うちのおばあさまは、おできになるのよ。あたし、ならっておけばよかった。」
「かまいませんよ。」と、からすはいいました。「まあ、できるだけしてみますから。うまくいけばいいが。」  それからからすは、しっていることを、話しました。


"In the kingdom where we now are there lives a Princess, who is extraordinarily clever; for she has read all the newspapers in the whole world, and has forgotten them again--so clever is she. She was lately, it is said, sitting on her throne--which is not very amusing after all--when she began humming an old tune, and it was just, 'Oh, why should I not be married?' 'That song is not without its meaning,' said she, and so then she was determined to marry; but she would have a husband who knew how to give an answer when he was spoken to--not one who looked only as if he were a great personage, for that is so tiresome. She then had all the ladies of the court drummed together; and when they heard her intention, all were very pleased, and said, 'We are very glad to hear it; it is the very thing we were thinking of.' You may believe every word I say," said the Raven; "for I have a tame sweetheart that hops about in the palace quite free, and it was she who told me all this.


・lately=【副】 最近、このごろ◆【用法】過去形で用いることができるのは結果が現在に影響を及ぼしているときのみ
・which=sitting on her throne
・amusing=面白い、楽しい
・why should=一体何でまた~なのか
・would=~したいと思う
・personage=有名人、有力者、〔一般に〕人
・tiresome=うんざりする、退屈な
・drum=(太鼓をたたいて)呼集める
・the very thing=まさしくそのもの
・tame=従順な
・sweetheart=恋人


「わたしたちがいまいる国には、たいそうかしこい王女さまがおいでなるのです。なにしろ世界中のしんぶんをのこらず読んで、のこらずまたわすれてしまいます。まあそんなわけで、たいそうりこうなかたなのです。さて、このあいだ、王女さまは玉座(ぎょくざ)におすわりになりました。玉座というものは、せけんでいうほどたのしいものではありません。そこで王女さまは、くちずさみに歌をうたいだしました。その歌は『なぜに、わたしは、むことらぬ』といった歌でした。そこで、『なるほど、それももっともだわ。』と、いうわけで、王女さまはけっこんしようとおもいたちました。でも夫(おっと)にするなら、ものをたずねても、すぐとこたえるようなのがほしいとおもいました。だって、ただそこにつっ立って、ようすぶっているだけでは、じきにたいくつしてしまいますからね。そこで、王女さまは、女官(じょかん)たち、のこらずおめしになって、このもくろみをお話しになりました。女官たちは、たいそうおもしろくおもいまして、
『それはよいおもいつきでございます。わたくしどもも、ついさきごろ、それとおなじことをかんがえついたしだいです。』などと申しました。
「わたしのいっていることは、ごく、ほんとうのことなのですよ。」と、からすはいって、「わたしには、やさしいいいなずけがあって、その王女さまのお城に、自由にとんでいける、それがわたしにすっかり話してくれたのです。」と、いいそえました。


おお!カラスのスパイ!?(笑)


"The newspapers appeared forthwith with a border of hearts and the initials of the Princess; and therein you might read that every good-looking young man was at liberty to come to the palace and speak to the Princess; and he who spoke in such wise as showed he felt himself at home there, that one the Princess would choose for her husband.


・appear=発刊される
・forthwith=すぐに
・border=縁取り
・initial=頭文字
・therein=その中に
・at liberty to=《be ~》自由に~してよい
・wise=《古》方法(way)
・felt at home=くつろいだ気持ちになった


ハートと、王女さまのかしらもじでふちどったしんぶんが、さっそく、はっこうされました。それには、ようすのりっぱな、わかい男は、たれでもお城にきて、王女さまと話すことができる。そしてお城へきても、じぶんのうちにいるように、気やすく、じょうずに話した人を、王女は夫としてえらぶであろうということがかいてありました。


"Yes, Yes," said the Raven, "you may believe it; it is as true as I am sitting here. People came in crowds; there was a crush and a hurry, but no one was successful either on the first or second day. They could all talk well enough when they were out in the street; but as soon as they came inside the palace gates, and saw the guard richly dressed in silver, and the lackeys in gold on the staircase, and the large illuminated saloons, then they were abashed; and when they stood before the throne on which the Princess was sitting, all they could do was to repeat the last word they had uttered, and to hear it again did not interest her very much. It was just as if the people within were under a charm, and had fallen into a trance till they came out again into the street; for then--oh, then--they could chatter enough. There was a whole row of them standing from the town-gates to the palace. I was there myself to look," said the Raven. "They grew hungry and thirsty; but from the palace they got nothing whatever, not even a glass of water. Some of the cleverest, it is true, had taken bread and butter with them: but none shared it with his neighbor, for each thought, 'Let him look hungry, and then the Princess won't have him.'"


・crush=押し合い
・hurry=急ぐこと、あわてること
・guard=守衛、見張り
・lackey=召使
・staircase=階段
・illuminated=彩色された
・saloon=大広間、客室
・abashed=恥じている、ばつが悪い
・last word=《the ~》最後の[決定的な・とどめの]言葉[一言・発言]
・under a charm=魔法にかかっている
・fall into a trance=恍惚状態になる
・chatter=ぺちゃくちゃしゃべる
・whole=完全な、まるごとの
・row=列
・nothing whatever=何一つ~ない
・bread and butter=バターつきパン


「そうです。そうです。あなたはわたしをだいじょうぶ信じてください。この話は、わたしがここにこうしてすわっているのとどうよう、ほんとうの話なのですから。」と、からすはいいました。
「わかい男の人たちは、むれをつくって、やってきました。そしてたいそう町はこんざつして、たくさんの人が、あっちへいったり、こっちへきたり、いそがしそうにかけずりまわっていました。でもはじめの日も、つぎの日も、ひとりだってうまくやったものはありません。みんなは、お城のそとでこそ、よくしゃべりましたが、いちどお城の門をはいって、銀ずくめのへいたいをみたり、かいだんをのぼって、金ぴかのせいふくをつけたお役人に出あって、あかるい大広間にはいると、とたんにぽうっとなってしまいました。そして、いよいよ王女さまのおいでになる玉座の前に出たときには、たれも王女さまにいわれたことばのしりを、おうむがえしにくりかえすほかありませんでした。王女さまとすれば、なにもじぶんのいったことばを、もういちどいってもらってもしかたがないでしょう。ところが、だれも、ごてんのなかにはいると、かぎたばこでものまされたように、ふらふらで、おうらいへでてきて、やっとわれにかえって、くちがきけるようになる。なにしろ町の門から、お城の門まで、わかいひとたちが、れつをつくってならんでいました。わたしはそれをじぶんで見てきましたよ。」と、からすが、ねんをおしていいました。
「みんなは自分のばんが、なかなかまわってこないので、おなかがすいたり、のどがかわいたりしましたが、ごてんの中では、なまぬるい水いっぱいくれませんでした。なかで気のきいたせんせいたちが、バタパンご持参で、やってきていましたが、それをそばの人にわけようとはしませんでした。このれんじゅうの気では――こいつら、たんとひもじそうな顔をしているがいい。おかげで王女さまも、ごさいようになるまいから――というのでしょう。」


醜い人間の姿ですなあ(笑)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」9

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

And Gerda went to the Ranunculuses, that looked forth from among the shining green leaves.


"You are a little bright sun!" said Gerda. "Tell me if you know where I can find my playfellow."


And the Ranunculus shone brightly, and looked again at Gerda. What song could the Ranunculus sing? It was one that said nothing about Kay either.


"In a small court the bright sun was shining in the first days of spring. The beams glided down the white walls of a neighbor's house, and close by the fresh yellow flowers were growing, shining like gold in the warm sun-rays. An old grandmother was sitting in the air; her grand-daughter, the poor and lovely servant just come for a short visit. She knows her grandmother. There was gold, pure virgin gold in that blessed kiss. There, that is my little story," said the Ranunculus.


・Ranunculus=《植物》ラナンキュラス(キンポウゲ科)
日本語訳は「たんぽぽ」になっていますが…
ラナンキュラスはこんなの…
3004885.jpg
キンポウゲは…
Ranunculus_japonicus_004.jpg

・look forth=外を見る
・playfellow=〈古〉〔子供の〕遊び仲間[友達]
・court=中庭
・beam=光線
・close by=すぐ近くに


それから、ゲルダは、緑の葉のあいだから、あかるくさいている、たんぽぽのところへいきました。
「あなたはまるで、ちいさな、あかるいお日さまね。どこにわたしのおともだちがいるか、しっていたらおしえてくださいな。」と、ゲルダはいいました。
 そこで、たんぽぽは、よけいあかるくひかりながら、ゲルダのほうへむきました。どんな歌を、その花がうたったでしょう。その歌も、カイのことではありませんでした。
「ちいさな、なか庭には、春のいちばんはじめの日、うららかなお日さまが、あたたかに照っていました。お日さまの光は、おとなりの家の、まっ白なかべの上から下へ、すべりおちていました。そのそばに、春いちばんはじめにさく、黄色い花が、かがやく光の中に、金のようにさいていました。おばあさんは、いすをそとにだして、こしをかけていました。おばあさんの孫の、かわいそうな女中ぼうこうをしているうつくしい女の子が、おばあさんにあうために、わずかなおひまをもらって、うちへかえってきました。女の子はおばあさんにせっぷんしました。このめぐみおおいせっぷんには金(きん)が、こころの金(きん)がありました。その口にも金、そのふむ土にも金、そのあさのひとときにも金がありました。これがわたしのつまらないお話です。」と、たんぽぽがいいました。


"My poor old grandmother!" sighed Gerda. "Yes, she is longing for me, no doubt: she is sorrowing for me, as she did for little Kay. But I will soon come home, and then I will bring Kay with me. It is of no use asking the flowers; they only know their own old rhymes, and can tell me nothing." And she tucked up her frock, to enable her to run quicker; but the Narcissus gave her a knock on the leg, just as she was going to jump over it. So she stood still, looked at the long yellow flower, and asked, "You perhaps know something?" and she bent down to the Narcissus. And what did it say?


・of no use=全く役に立たない
・rhymes=歌
・tuck up=たくし上げる
・Narcissus=スイセン
・give a knock=打つ、たたく
・it=the Narcissus


まあ、わたしのおばあさまは、どうしていらっしゃるかしら。」と、ゲルダはためいきをつきました。「そうよ。きっとおばあさまは、わたしにあいたがって、かなしがっていらっしゃるわ。カイちゃんのいなくなったとおなじように、しんぱいしていらっしゃるわ。けれど、わたし、じきにカイちゃんをつれて、うちにかえれるでしょう。――もう花たちにいくらたずねてみたってしかたがない。花たち、ただ、自分の歌をうたうだけで、なんにもこたえてくれないのだもの。」
 そこでゲルダは、はやくかけられるように、着物をきりりとたくしあげました。けれど、黄(き)ずいせんを、ゲルダがとびこえようとしたとき、それに足がひっかかりました。そこでゲルダはたちどまって、その黄色い、背の高い花にむかってたずねました。
「あんた、カイちゃんのこと、なんかしっているの。」
 そしてゲルダは、こごんで、その花の話すことをききました。その花はなんといったでしょう。


"I can see myself--I can see myself! Oh, how odorous I am! Up in the little garret there stands, half-dressed, a little Dancer. She stands now on one leg, now on both; she despises the whole world; yet she lives only in imagination. She pours water out of the teapot over a piece of stuff which she holds in her hand; it is the bodice; cleanliness is a fine thing. The white dress is hanging on the hook; it was washed in the teapot, and dried on the roof. She puts it on, ties a saffron-colored kerchief round her neck, and then the gown looks whiter. I can see myself--I can see myself!"


"That's nothing to me," said little Gerda. "That does not concern me." And then off she ran to the further end of the garden.


・odorous=香りの良い
・garret=〔傾斜屋根の下の〕屋根裏部屋
・live in imagination=想像の世界に住む
・stuff=物、材料
・bodice=女性用胴着
・cleanliness=清潔
・hook=鉤(かぎ)、フック
・saffron-colored =サフラン色の、鮮黄色の(サフランの花は紫色だが、花柱を乾燥し、薬にしたり、菓子や料理の黄色染料にするので、サフラン色という時は、鮮やかな黄色を指す)
・kerchief=(女性のかぶる)ネッカチーフ、スカーフ
・gown=(婦人の)外出着、寝巻
・further end=向こうの端


「わたし、じぶんがみられるのよ。じぶんがわかるのよ。」と、黄ずいせんはいいました。「ああ、ああ、なんてわたしはいいにおいがするんだろう。屋根うらのちいさなへやに、半はだかの、ちいさなおどりこが立っています。おどりこはかた足で立ったり、両足で立ったりして、まるで世界中をふみつけるように見えます。でも、これはほんの目のまよいです。おどりこは、ちいさな布(ぬの)に、湯わかしから湯をそそぎます。これはコルセットです。――そうです。そうです、せいけつがなによりです。白い上着(うわぎ)も、くぎにかけてあります。それもまた、湯わかしの湯であらって、屋根でかわかしたものなのです。おどりこは、その上着をつけて、サフラン色のハンケチをくびにまきました。ですから、上着はよけい白くみえました。ほら、足をあげた。どう、まるでじくの上に立って、うんとふんばった姿は。わたし、じぶんが見えるの。じぶんがわかるの。」
「なにもそんな話、わたしにしなくてもいいじゃないの。そんなこと、どうだって、かまわないわ。」と、ゲルダはいいました。
 それでゲルダは、庭のむこうのはしまでかけて行きました。


The gate was locked, but she shook the rusted bolt till it was loosened, and the gate opened; and little Gerda ran off barefooted into the wide world. She looked round her thrice, but no one followed her. At last she could run no longer; she sat down on a large stone, and when she looked about her, she saw that the summer had passed; it was late in the autumn, but that one could not remark in the beautiful garden, where there was always sunshine, and where there were flowers the whole year round.


"Dear me, how long I have staid!" said Gerda. Autumn is come. I must not rest any longer." And she got up to go further.


Oh, how tender and wearied her little feet were! All around it looked so cold and raw: the long willow-leaves were quite yellow, and the fog dripped from them like water; one leaf fell after the other: the sloes only stood full of fruit, which set one's teeth on edge. Oh, how dark and comfortless it was in the dreary world!


・rusted=さびた
・bolt=かんぬき(門や建物の出入り口の扉を閉ざすための横木。左右の扉につけた金具に通して扉が開かないようにする)
・barefooted=はだしで
・thrice=三度
・that=it was late in the autumn
・one could not~=普通は誰も~できない
・remark=~に気づく
・Dear me=まあ◆驚き・失望・同情などを表す
・staid=《古》stayの過去・過去分詞
・tender=圧痛のある、触ると痛い
・wearied=疲れて
・raw=(天候が)じめじめして冷たい
・willow=【植】ヤナギ
・fog=霧
・sloe=スモモ(バラ科の落葉高木。春、葉に先立って、葉腋に白色の五弁花を一~三個つける。果実は球形で、赤紫色または黄色に熟し、甘酸っぱい。巴旦杏(はたんきよう)・ソルダム・サンタローザなどの系統がある。プラム。実がなるのは夏)
・set one's teeth=覚悟を決めた
・on edge=極限状態で、緊張状態で、イライラして
・comfortless=楽しみのない、わびしい
・dreary=わびしい、物憂い、荒涼とした


その戸はしまっていましたが、ゲルダがそのさびついたとってを、どんとおしたので、はずれて戸はぱんとひらきました。ゲルダはひろい世界に、はだしのままでとびだしました。ゲルダは、三度(ど)もあとをふりかえってみましたが、たれもおっかけてくるものはありませんでした。とうとうゲルダは、もうとてもはしることができなくなったので、大きな石の上にこしをおろしました。そこらをみまわしますと、夏はすぎて、秋がふかくなっていました。お日さまが年中かがやいて、四季(しき)の花がたえずさいていた、あのうつくしい花ぞのでは、そんなことはわかりませんでした。
「ああ、どうしましょう。あたし、こんなにおくれてしまって。」と、ゲルダはいいました。「もうとうに秋になっているのね。さあ、ゆっくりしてはいられないわ。」
 そしてゲルダは立ちあがって、ずんずんあるきだしました。まあ、ゲルダのかよわい足は、どんなにいたむし、そして、つかれていたことでしょう。どこも冬がれて、わびしいけしきでした。ながいやなぎの葉は、すっかり黄ばんで、きりが雨しずくのように枝からたれていました。ただ、とげのある、こけももだけは、まだ実(み)をむすんでいましたが、こけももはすっぱくて、くちがまがるようでした。ああ、なんてこのひろびろした世界は灰色で、うすぐらくみえたことでしょう。


どうしてスモモだけ実をつけているのでしょうか?


THIRD STORYは終わり。さあ、次回からはFOURTH STORYです。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」8

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

まだまだ花々のお話は続きます。


What did the Snowdrops say?


"Between the trees a long board is hanging--it is a swing. Two little girls are sitting in it, and swing themselves backwards and forwards; their frocks are as white as snow, and long green silk ribands flutter from their bonnets. Their brother, who is older than they are, stands up in the swing; he twines his arms round the cords to hold himself fast, for in one hand he has a little cup, and in the other a clay-pipe. He is blowing soap-bubbles. The swing moves, and the bubbles float in charming changing colors: the last is still hanging to the end of the pipe, and rocks in the breeze. The swing moves. The little black dog, as light as a soap-bubble, jumps up on his hind legs to try to get into the swing. It moves, the dog falls down, barks, and is angry. They tease him; the bubble bursts! A swing, a bursting bubble--such is my song!"


"What you relate may be very pretty, but you tell it in so melancholy a manner, and do not mention Kay."


・Snowdrop=ユキノハナ、マツユキソウ
Snowdrop_4




・swing=ブランコ
・frock=(女性用)ドレス
・riband=〔賞として与えるためのまたは装飾用の〕リボン
・flutter=〔素早く不規則に〕ぱたぱたと揺れる、はためく
・bonnet=婦人用の帽子
・twine=巻き付かせる
・cord=ひも、細綱:ここではブランコを吊り下げている綱をさす
・fast=しっかりと
・clay=粘土(製品)、土、泥
・pipe=管、パイプ
・charming=うっとりさせるような
・the last=the last bubble
・light=〔重さが標準や見掛けよりも〕軽い
・jumps up=急に[パッと]立ち上がる
・hind=後ろの
・fall down=落ちる、ひっくり返る、転ぶ、〔仕事などに〕失敗する
・tease=からかう
・burst=破裂する
・relate=~を述べる、物語る
・pretty=感じの良い、美しい
・melancholy=物悲しい
・mention=~について話す


 かわいい、まつゆきそうは、どんなお話をしたでしょう。
「木と木のあいだに、つなでつるした長い板がさがっています。ぶらんこなの。雪のように白い着物を着て、ぼうしには、ながい、緑色の絹のリボンをまいた、ふたりのかわいらしい女の子が、それにのってゆられています。この女の子たちよりも、大きい男きょうだいが、そのぶらんこに立ってのっています。男の子は、かた手にちいさなお皿をもってるし、かた手には土製のパイプをにぎっているので、からだをささえるために、つなにうでをまきつけています。男の子はシャボンだまをふいているのです。ぶらんこがゆれて、シャボンだまは、いろんなうつくしい色にかわりながらとんで行きます。いちばんおしまいのシャボンだまは、風にゆられながら、まだパイプのところについています。ぶらんこはとぶようにゆれています。あら、シャボンだまのように身のかるい黒犬があと足で立って、のせてもらおうとしています。ぶらんこはゆれる、黒犬はひっくりかえって、ほえているわ。からかわれて、おこっているのね。シャボンだまははじけます。――ゆれるぶらんこ。われてこわれるシャボンだま。――これがわたしの歌なんです。」
「あなたのお話は、とてもおもしろそうね。けれどあなたは、かなしそうに話しているのね。それからあなたは、カイちゃんのことは、なんにも話してくれないのね。」


What do the Hyacinths say?


"There were once upon a time three sisters, quite transparent, and very beautiful. The robe of the one was red, that of the second blue, and that of the third white. They danced hand in hand beside the calm lake in the clear moonshine. They were not elfin maidens, but mortal children. A sweet fragrance was smelt, and the maidens vanished in the wood; the fragrance grew stronger--three coffins, and in them three lovely maidens, glided out of the forest and across the lake: the shining glow-worms flew around like little floating lights. Do the dancing maidens sleep, or are they dead? The odour of the flowers says they are corpses; the evening bell tolls for the dead!"


・Hyacinth=ヒアシンス
・once upon a tim=昔々
・transparent=率直な、気取らない
・that=that=the robe
・clear=明るい
・elfin=小妖精のような
・maiden=娘、少女
・mortal=人間の
・coffin=棺
・glide=滑るように動く
・glow-worm:glowwormは「ツチボタル」(普通に言うホタルとは違い、蚊に近い昆虫で、幼虫が餌をおびき寄せるために光る)だが、文章を見ると"flew around"とあり、ツチボタルの幼虫はほとんど動かないようだから、glow-wormは単に「光る虫」という意味で使われているのかもしれない。
・odour=odor=におい
・corpse=〔人間の〕死体
・toll=鳴る


ヒヤシンスの花は、どんなお話をしたでしょう。
「あるところに、三人の、すきとおるようにうつくしい、きれいな姉いもうとがおりました。なかでいちばん上のむすめの着物は赤く、二ばん目のは水色で、三ばん目のはまっ白でした。きょうだいたちは、手をとりあって、さえた月の光の中で、静かな湖(みずうみ)のふちにでて、おどりをおどります。三人とも妖女(ようじょ)ではなくて、にんげんでした。そのあたりには、なんとなくあまい、いいにおいがしていました。むすめたちは森のなかにきえました。あまい、いいにおいが、いっそうつよくなりました。すると、その三人のうつくしいむすめをいれた三つのひつぎが、森のしげみから、すうっとあらわれてきて、湖のむこうへわたっていきました。つちぼたるが、そのぐるりを、空に舞(ま)っているちいさなともしびのように、ぴかりぴかりしていました。おどりくるっていた三人のむすめたちは、ねむったのでしょうか。死んだのでしょうか。――花のにおいはいいました。あれはなきがらです。ゆうべの鐘(かね)がなくなったひとたちをとむらいます。」


"You make me quite sad," said little Gerda. "I cannot help thinking of the dead maidens. Oh! is little Kay really dead? The Roses have been in the earth, and they say no."


そうそう、バラは"He certainly is not dead. We have been in the earth where all the dead are, but Kay was not there."と言ってましたね。


"Ding, dong!" sounded the Hyacinth bells. "We do not toll for little Kay; we do not know him. That is our way of singing, the only one we have."


「ずいぶんかなしいお話ね。あなたの、そのつよいにおいをかぐと、あたし死んだそのむすめさんたちのことを、おもいださずにはいられませんわ。ああ、カイちゃんは、ほんとうに死んでしまったのかしら。地のなかにはいっていたばらの花は、カイちゃんは死んではいないといってるけれど。」
「チリン、カラン。」と、ヒヤシンスのすずがなりました。「わたしはカイちゃんのために、なっているのではありません。カイちゃんなんて人は、わたしたち、すこしもしりませんもの。わたしたちは、ただ自分のしっているたったひとつの歌を、うたっているだけです。」

英語でアンデルセン童話「雪の女王」7

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

The next morning she went to play with the flowers in the warm sunshine, and thus passed away a day. Gerda knew every flower; and, numerous as they were, it still seemed to Gerda that one was wanting, though she did not know which. One day while she was looking at the hat of the old woman painted with flowers, the most beautiful of them all seemed to her to be a rose. The old woman had forgotten to take it from her hat when she made the others vanish in the earth. But so it is when one's thoughts are not collected. "What!" said Gerda. "Are there no roses here?" and she ran about amongst the flowerbeds, and looked, and looked, but there was not one to be found. She then sat down and wept; but her hot tears fell just where a rose-bush had sunk; and when her warm tears watered the ground, the tree shot up suddenly as fresh and blooming as when it had been swallowed up. Gerda kissed the roses, thought of her own dear roses at home, and with them of little Kay.


・thus=このようにして
・pass away=時を過ごす
・numerous=非常に[数えきれないほど]多くの
・numerous as they were=though they were numerous
・wanting=欠けている、抜けている
・the others=other roses
・vanish=消える、姿を消す
・so it is=そんなものだ
・collected=落ち着いた、冷静な
・What!=ええっ!、あら!(驚いて)
・amongst=among=〔三つ以上の〕~の間に
・flowerbed=花壇
・one=rose
・shot up=shoot up(急に成長する、急に上がる)の過去形
・swallow up=飲み込む(ここでは「バラが魔法で土の中に飲み込まれた」ということ)
・them=her own dear roses
・of little Kay=thought of little Kay


そのあくる日、ゲルダは、また、あたたかいお日さまのひかりをあびて、花たちとあそびました。こんなふうにして、いく日もいく日もたちました。ゲルダは花ぞのの花をのこらずしりました。そのくせ、花ぞのの花は、かずこそずいぶんたくさんありましたけれど、ゲルダにとっては、どうもまだなにか、ひといろたりないようにおもわれました。でも、それがなんの花であるか、わかりませんでした。するうちある日、ゲルダはなにげなくすわって、花をかいたおばあさんの夏ぼうしを、ながめていましたが、その花のうちで、いちばんうつくしいのは、ばらの花でした。おばあさんは、ほかのばらの花をみんな見えないように、かくしたくせに、じぶんのぼうしにかいたばらの花を、けすことを、ついわすれていたのでした。まあ手ぬかりということは、たれにでもあるものです。
「あら、ここのお庭には、ばらがないわ。」と、ゲルダはさけびました。
 それから、ゲルダは、花ぞのを、いくどもいくども、さがしまわりましたけれども、ばらの花は、ひとつもみつかりませんでした。そこで、ゲルダは、花ぞのにすわってなきました。ところが、なみだが、ちょうどばらがうずめられた場所の上におちました。あたたかいなみだが、しっとりと土をしめらすと、ばらの木は、みるみるしずまない前とおなじように、花をいっぱいつけて、地の上にあらわれてきました。ゲルダはそれをだいて、せっぷんしました。そして、じぶんのうちのばらをおもいだし、それといっしょに、カイのこともおもいだしました。


おばあさんは、急なことだったからあわててバラを隠したので、帽子に付けたバラを忘れていたんだー。ほんとに、ただゲルダにそばにいてほしいだけなのね。でも残念ながら…


"Oh, how long I have stayed!" said the little girl. "I intended to look for Kay! Don't you know where he is?" she asked of the roses. "Do you think he is dead and gone?"


"Dead he certainly is not," said the Roses. "We have been in the earth where all the dead are, but Kay was not there."


・dead and gone=(とっくに)死んでいる


「まあ、あたし、どうして、こんなところにひきとめられていたのかしら。」と、ゲルダはいいました。「あたし、カイちゃんをさがさなくてはならなかったのだわ――カイちゃん、どこにいるか、しらなくって。あなたは、カイちゃんが死んだとおもって。」と、ゲルダは、ばらにききました。
「カイちゃんは死にはしませんよ。わたしどもは、いままで地のなかにいました。そこには死んだ人はみないましたが、でも、カイちゃんはみえませんでしたよ。」と、ばらの花がこたえました。


"Many thanks!" said little Gerda; and she went to the other flowers, looked into their cups, and asked, "Don't you know where little Kay is?"


But every flower stood in the sunshine, and dreamed its own fairy tale or its own story: and they all told her very many things, but not one knew anything of Kay.


・cup=(花の)萼(がく)


「ありがとう。」と、ゲルダはいって、ほかの花のところへいって、ひとつひとつ、うてなのなかをのぞきながらたずねました。「カイちゃんはどこにいるか、しらなくって。」
 でも、どの花も、日なたぼっこしながら、じぶんたちのつくったお話や、おとぎばなしのことばかりかんがえていました。ゲルダはいろいろと花にきいてみましたが、どの花もカイのことについては、いっこうにしりませんでした。


Well, what did the Tiger-Lily say?


"Hearest thou not the drum? Bum! Bum! Those are the only two tones. Always bum! Bum! Hark to the plaintive song of the old woman, to the call of the priests! The Hindoo woman in her long robe stands upon the funeral pile; the flames rise around her and her dead husband, but the Hindoo woman thinks on the living one in the surrounding circle; on him whose eyes burn hotter than the flames--on him, the fire of whose eyes pierces her heart more than the flames which soon will burn her body to ashes. Can the heart's flame die in the flame of the funeral pile?"


・Tiger-Lily=オニユリ
・Hearest=hear:主語がthouの場合
・thou=そなた(二人称単数主格)
・Bum! Bum!=バン!バン!(音の形容)
・tone=音
・Hark=聞く、傾聴する
・plaintive=〔声・音などが〕悲しげな、物悲しい
・priest=聖職者、牧師
・Hindoo=Hindu(【名】 ヒンドゥー◆インド、ヒンダスタン地方の住民。またはヒンドゥー教を信じる人【形】 ヒンドゥー教の、ヒンドゥー教に帰依した)
・funeral pile=火葬用の薪の山


ところで、おにゆりは、なんといったでしょう。
「あなたには、たいこの音が、ドンドンというのがきこえますか。あれには、ふたつの音しかないのです。だからドンドンといつでもやっているのです。女たちがうたう、とむらいのうたをおききなさい。また、坊(ぼう)さんのあげる、おいのりをおききなさい。――インド人(じん)のやもめは、火葬(かそう)のたきぎのつまれた上に、ながい赤いマントをまとって立っています。焔(ほのお)がその女と、死んだ夫(おっと)のしかばねのまわりにたちのぼります。でもインドの女は、ぐるりにあつまった人たちのなかの、生きているひとりの男のことをかんがえているのです。その男の目は焔よりもあつくもえ、その男のやくような目つきは、やがて、女のからだをやきつくして灰にする焔などよりも、もっとはげしく、女の心の中で、もえていたのです。心の焔は、火あぶりのたきぎのなかで、もえつきるものでしょうか。」


"I don't understand that at all," said little Gerda.


"That is my story," said the Lily.


What did the Convolvulus say?


"Projecting over a narrow mountain-path there hangs an old feudal castle. Thick evergreens grow on the dilapidated walls, and around the altar, where a lovely maiden is standing: she bends over the railing and looks out upon the rose. No fresher rose hangs on the branches than she; no appleblossom carried away by the wind is more buoyant! How her silken robe is rustling!


"'Is he not yet come?'"


"Is it Kay that you mean?" asked little Gerda.


"I am speaking about my story--about my dream," answered the Convolvulus.


・Convolvulus=《植物》コンボルブルス、セイヨウヒルガオ◆地中海沿岸原産の、ヒルガオ科セイヨウヒルガオ属(Convolvulus)のほふく性の常緑多年草
・Project=突き出る
・hang=ぶら下がる、覆いかぶさる
・feudal=封建制度時代の
・evergreen=常緑樹
・dilapidated=荒れ果てた、崩れかかった、壊れかけた
・altar=祭壇、階段
・maiden=乙女、未婚女性
・railing=手すり、柵
・buoyant=浮力のある、快活な
・rustling:rustle=さらさら鳴る


「なんのことだか、まるでわからないわ。」と、ゲルダがこたえました。
「わたしの話はそれだけさ。」と、おにゆりはいいました。
 ひるがおは、どんなお話をしたでしょう。
「せまい山道のむこうに、昔のさむらいのお城がぼんやりみえます。くずれかかった、赤い石がきのうえには、つたがふかくおいしげって、ろだいのほうへ、ひと葉ひと葉、はいあがっています。ろだいの上には、うつくしいおとめが、らんかんによりかかって、おうらいをみおろしています。どんなばらの花でも、そのおとめほど、みずみずとは枝にさきだしません。どんなりんごの花でも、こんなにかるがるとしたふうに、木から風がはこんでくることはありません。まあ、おとめのうつくしい絹の着物のさらさらなること。
 あの人はまだこないのかしら。」
「あの人というのは、カイちゃんのことなの。」と、ゲルダがたずねました。
「わたしは、ただ、わたしのお話をしただけ。わたしの夢をね。」と、ひるがおはこたえました。


それぞれの花のストーリーは結構複雑。子供の絵本にはここまで載ってないな。カイのことを知らないかとゲルダが花に聞いて、知らないと言われてすぐ花園を出る、ってことになってる(^_^;)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」6

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

Gerda called to them, for she thought they were alive; but they, of course, did not answer. She came close to them, for the stream drifted the boat quite near the land.Photo_11


Gerda called still louder, and an old woman then came out of the cottage, leaning upon a crooked stick. She had a large broad-brimmed hat on, painted with the most splendid flowers.


・them=wooden soldiers
・drift=押し流す、吹き寄せる
・lean upon~=~にもたれる
・crooked=曲がっている、ねじれた
・broad-brimmed=つば広の
・painted=色彩の鮮やかな


ゲルダは、それをほんとうのへいたいかとおもって、こえをかけました。しかし、いうまでもなくそのへいたいは、なんのこたえもしませんでした。ゲルダはすぐそのそばまできました。波が小舟を岸のほうにはこんだからです。
 ゲルダはもっと大きなこえで、よびかけてみました。すると、その家のなかから、撞木杖(しゅもくづえ)にすがった、たいそう年とったおばあさんが出てきました。おばあさんは、目のさめるようにきれいな花をかいた、大きな夏ぼうしをかぶっていました。


"Poor little child!" said the old woman. "How did you get upon the large rapid river, to be driven about so in the wide world!" And then the old woman went into the water, caught hold of the boat with her crooked stick, drew it to the bank, and lifted little Gerda out.


And Gerda was so glad to be on dry land again; but she was rather afraid of the strange old woman.


"But come and tell me who you are, and how you came here," said she.


And Gerda told her all; and the old woman shook her head and said, "A-hem! a-hem!" and when Gerda had told her everything, and asked her if she had not seen little Kay, the woman answered that he had not passed there, but he no doubt would come; and she told her not to be cast down, but taste her cherries, and look at her flowers, which were finer than any in a picture-book, each of which could tell a whole story. She then took Gerda by the hand, led her into the little cottage, and locked the door.


・A-hem=エヘン◆せき払いをする時、人の注意を引く時などの発声
・be cast down=落胆する


「やれやれ、かわいそうに。どうしておまえさんは、そんなに大きな波のたつ上を、こんなとおいところまで流れてきたのだね。」と、おばあさんはいいました。
 それからおばあさんは、ざぶりざぶり水の中にはいって、撞木杖で小舟をおさえて、それを陸(おか)のほうへひっぱってきて、ゲルダをだきおろしました。ゲルダはまた陸にあがることのできたのをうれしいとおもいました。でも、このみなれないおばあさんは、すこし、こわいようでした。
「さあ、おまえさん、名まえをなんというのだか、またどうして、ここへやってきたのだか、話してごらん。」と、おばあさんはいいました。そこでゲルダは、なにもかも、おばあさんに話しました。おばあさんはうなずきながら、「ふん、ふん。」と、いいました。ゲルダは、すっかり話してしまってから、おばあさんがカイをみかけなかったかどうか、たずねますと、おばあさんは、カイはまだここを通らないが、いずれそのうち、ここを通るかもしれない。まあ、そう、くよくよおもわないで、花をながめたり、さくらんぼをたべたりしておいで。花はどんな絵本のよりも、ずっときれいだし、その花びらの一まい、一まいが、ながいお話をしてくれるだろうからといいました。それからおばあさんは、ゲルダの手をとって、じぶんのちいさな家へつれていって、中から戸にかぎをかけました。


The windows were very high up; the glass was red, blue, and green, and the sunlight shone through quite wondrously in all sorts of colors. On the table stood the most exquisite cherries, and Gerda ate as many as she chose, for she had permission to do so. While she was eating, the old woman combed her hair with a golden comb, and her hair curled and shone with a lovely golden color around that sweet little face, which was so round and so like a rose.


・wondrously=驚くほど
・all sorts of=あらゆる種類の、各種の、いろいろな
・exquisite=この上なく素晴らしい
・had permission=許可を得た、許された


その家の窓は、たいそう高くて、赤いのや、青いのや、黄いろの窓ガラスだったので、お日さまの光はおもしろい色にかわって、きれいに、へやのなかにさしこみました。つくえの上には、とてもおいしいさくらんぼがおいてありました。そしてゲルダは、いくらたべてもいいという、おゆるしがでたものですから、おもうぞんぶんそれをたべました。ゲルダがさくらんぼをたべているあいだに、おばあさんが、金のくしで、ゲルダのかみの毛をすきました。そこで、ゲルダのかみの毛は、ばらの花のような、まるっこくて、かわいらしい顔のまわりで、金色にちりちりまいて、光っていました。


"I have often longed for such a dear little girl," said the old woman. "Now you shall see how well we agree together"; and while she combed little Gerda's hair, the child forgot her foster-brother Kay more and more, for the old woman understood magic; but she was no evil being, she only practised witchcraft a little for her own private amusement, and now she wanted very much to keep little Gerda. She therefore went out in the garden, stretched out her crooked stick towards the rose-bushes, which, beautifully as they were blowing, all sank into the earth and no one could tell where they had stood. The old woman feared that if Gerda should see the roses, she would then think of her own, would remember little Kay, and run away from her.


・long for=~を待ちこがれる
・you shall see:二人称につくshallは話手の意思や威嚇を表すから、この場合は「見せてやる」
・agree together=気が合う、仲良くやる
・foster-brother=乳兄弟(=血のつながりはないが、同じ女性の乳で育てられた人):ここでは、二人は別に乳兄弟というわけではないのだから、「まるで本当の兄妹同様に育ったその兄のカイ」という意味
・understood=~の扱い方を心得ていた、~に通じていた
・blow=花が咲く
・beautifully as they were blowing:as they were blowing beautifullyの倒置になっているので、意味は「~だけれども」→「バラは美しく咲いていたけれども」<例>Young as he is, he is equal to the task.(彼は若いけれども、その仕事をすることができる)
・her own=her own roses(カイと一緒に家の屋根の上で育てているバラのこと)


「わたしは長いあいだ、おまえのような、かわいらしい女の子がほしいとおもっていたのだよ。さあこれから、わたしたちといっしょに、なかよくくらそうね。」と、おばあさんはいいました。そしておばあさんが、ゲルダのかみの毛にくしをいれてやっているうちに、ゲルダはだんだん、なかよしのカイのことなどはわすれてしまいました。というのは、このおばあさんは魔法(まほう)が使えるからでした。けれども、おばあさんは、わるい魔女(まじょ)ではありませんでした。おばあさんはじぶんのたのしみに、ほんのすこし魔法を使うだけで、こんども、それをつかったのは、ゲルダをじぶんの手もとにおきたいためでした。そこで、おばあさんは、庭へ出て、そこのばらの木にむかって、かたっぱしから撞木杖をあてました。すると、いままでうつくしく、さきほこっていたばらの木も、みんな、黒い土の中にしずんでしまったので、もうたれの目にも、どこにいままでばらの木があったか、わからなくなりました。おばあさんは、ゲルダがばらを見て、自分の家のばらのことをかんがえ、カイのことをおもいだして、ここからにげていってしまうといけないとおもったのです。


この魔法使い(?)のおばあさんは、決して悪い人ではないわけね…


She now led Gerda into the flower-garden. Oh, what odour and what loveliness was there! Every flower that one could think of, and of every season, stood there in fullest bloom; no picture-book could be gayer or more beautiful. Gerda jumped for joy, and played till the sun set behind the tall cherry-tree; she then had a pretty bed, with a red silken coverlet filled with blue violets. She fell asleep, and had as pleasant dreams as ever a queen on her
wedding-day.


・odour=におい
・loveliness=愛らしさ、素晴らしさ
・in fullest bloom=満開で
・gay=華美な、派手な
・silken=絹製の
・violet=スミレ


さて、ゲルダは花ぞのにあんないされました。――そこは、まあなんという、いい香りがあふれていて、目のさめるように、きれいなところでしたろう。花という花は、こぼれるようにさいていました。そこでは、一ねんじゅう花がさいていました。どんな絵本の花だって、これよりうつくしく、これよりにぎやかな色にさいてはいませんでした。ゲルダはおどりあがってよろこびました。そして夕日が、高いさくらの木のむこうにはいってしまうまで、あそびました。それからゲルダは、青いすみれの花がいっぱいつまった、赤い絹のクションのある、きれいなベッドの上で、結婚式の日の女王さまのような、すばらしい夢をむすびました。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」5

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

一方、ゲルダは…


THIRD STORY. Of the Flower-Garden At the Old Woman's Who Understood Witchcraft


第三のお話

     魔法の使える女の花ぞの

But what became of little Gerda when Kay did not return? Where could he be? Nobody knew; nobody could give any intelligence. All the boys knew was, that they had seen him tie his sledge to another large and splendid one, which drove down the street and out of the town. Nobody knew where he was; many sad tears were shed, and little Gerda wept long and bitterly; at last she said he must be dead; that he had been drowned in the river which flowed close to the town. Oh! those were very long and dismal winter evenings!


・Witchcraft=魔法、魔術
・drove down the street=通りを(車で)走っていた
・shed=shed([涙を]流す)の過去分詞
・dismal=憂鬱な、暗い


ところで、カイが、あれなりかえってこなかったとき、あの女の子のゲルダは、どうしたでしょう。カイはまあどうしたのか、たれもしりませんでした。なんの手がかりもえられませんでした。こどもたちの話でわかったのは、カイがよその大きなそりに、じぶんのそりをむすびつけて、町をはしりまわって、町の門からそとへでていったということだけでした。さて、それからカイがどんなことになってしまったか、たれもしっているものはありませんでした。いくにんもの人のなみだが、この子のために、そそがれました。そして、あのゲルダは、そのうちでも、ひとり、もうながいあいだ、むねのやぶれるほどになきました。――みんなのうわさでは、カイは町のすぐそばを流れている川におちて、おぼれてしまったのだろうということでした。ああ、まったくながいながい、いんきな冬でした。


At last spring came, with its warm sunshine.
"Kay is dead and gone!" said little Gerda.
"That I don't believe," said the Sunshine.
"Kay is dead and gone!" said she to the Swallows.
"That I don't believe," said they: and at last little Gerda did not think so any longer either.
"I'll put on my red shoes," said she, one morning; "Kay has never seen them, and then I'll go down to the river and ask there."


It was quite early; she kissed her old grandmother, who was still asleep, put on her red shoes, and went alone to the river.


"Is it true that you have taken my little playfellow? I will make you a present of my red shoes, if you will give him back to me."


・Swallow=ツバメ
・you=the river
・playfellow=〈古〉〔子供の〕遊び仲間[友達]


いま、春はまた、あたたかいお日さまの光とつれだってやってきました。
「カイちゃんは死んでしまったのよ。」と、ゲルダはいいました。
「わたしはそうおもわないね。」と、お日さまがいいました。
「カイちゃんは死んでしまったのよ。」と、ゲルダはつばめにいいました。
「わたしはそうおもいません。」と、つばめたちはこたえました。そこで、おしまいに、ゲルダは、じぶんでも、カイは死んだのではないと、おもうようになりました。
「あたし、あたらしい赤いくつをおろすわ。あれはカイちゃんのまだみなかったくつよ。あれをはいて川へおりていって、カイちゃんのことをきいてみましょう。」と、ゲルダは、ある朝いいました。で、朝はやかったので、ゲルダはまだねむっていたおばあさまに、せっぷんして、赤いくつをはき、たったひとりぼっちで、町の門を出て、川のほうへあるいていきました。
「川さん、あなたが、わたしのすきなおともだちを、とっていってしまったというのは、ほんとうなの。この赤いくつをあげるわ。そのかわり、カイちゃんをかえしてね。」


And, as it seemed to her, the blue waves nodded in a strange manner; then she took off her red shoes, the most precious things she possessed, and threw them both into the river. But they fell close to the bank, and the little waves bore them immediately to land; it was as if the stream would not take what was dearest to her; for in reality it had not got little Kay; but Gerda thought that she had not thrown the shoes out far enough, so she clambered into a boat which lay among the rushes, went to the farthest end, and threw out the shoes. But the boat was not fastened, and the motion which she occasioned, made it drift from the shore. She observed this, and hastened to get back; but before she could do so, the boat was more than a yard from the land, and was gliding quickly onward.


・them both=red shoes
・close to=~の近くに
・bore:bear=~を運ぶ、持って行く
・would not=~しようとしなかった
・dearest=最も大切な、かけがえのない
・in reality=実は、実際には
・clamber=よじ登る
・rush=イグサ
・fasten=固定する
・occasion=~を引き起こす
・it=the boat
・yard=《単位》ヤード◆1ヤード=91.44センチ=3フィート


すると川の水が、よしよしというように、みょうに波だってみえたので、ゲルダはじぶんのもっているもののなかでいちばんすきだった、赤いくつをぬいで、ふたつとも、川のなかになげこみました。ところが、くつは岸の近くにおちたので、さざ波がすぐ、ゲルダの立っているところへ、くつをはこんできてしまいました。まるで川は、ゲルダから、いちばんだいじなものをもらうことをのぞんでいないように見えました。なぜなら、川はカイをかくしてはいなかったからです。けれど、ゲルダは、くつをもっととおくのほうへなげないからいけなかったのだとおもいました。そこで、あしのしげみにうかんでいた小舟にのりました。そして舟のいちばんはしへいって、そこからくつをなげこみました。でも、小舟はしっかりと岸にもやってなかったので、くつをなげるので動かしたひょうしに、岸からすべり出してしまいました。それに気がついて、ゲルダは、いそいでひっかえそうとしましたが、小舟のこちらのはしまでこないうちに、舟は二三尺(にさんじゃく)も岸からはなれて、そのままで、どんどんはやく流れていきました。


Little Gerda was very frightened, and began to cry; but no one heard her except the sparrows, and they could not carry her to land; but they flew along the bank, and sang as if to comfort her, "Here we are! Here we are!" The boat drifted with the stream, little Gerda sat quite still without shoes, for they were swimming behind the boat, but she could not reach them, because the boat went much faster than they did.


・sparrow=スズメ


そこで、ゲルダは、たいそうびっくりして、なきだしましたが、すずめのほかは、たれもその声をきくものはありませんでした。すずめには、ゲルダをつれかえる力はありませんでした。でも、すずめたちは、岸にそってとびながら、ゲルダをなぐさめるように、
「だいじょうぶ、ぼくたちがいます。」と、なきました。
 小舟は、ずんずん流れにはこばれていきました。ゲルダは、足にくつしたをはいただけで、じっと舟のなかにすわったままでいました。ちいさな赤いくつは、うしろのほうで、ふわふわういていましたが、小舟においつくことはできませんでした。小舟のほうが、くつよりも、もっとはやくながれていったからです。


The banks on both sides were beautiful; lovely flowers, venerable trees, and slopes with sheep and cows, but not a human being was to be seen.


"Perhaps the river will carry me to little Kay," said she; and then she grew less sad. She rose, and looked for many hours at the beautiful green banks. Presently she sailed by a large cherry-orchard, where was a little cottage with curious red and blue windows; it was thatched, and before it two wooden soldiers stood sentry, and presented arms when anyone went past.


・venerable=古くて神々しい、立派な
・Presently=現在、ただ今
・cherry-orchard=さくらんぼの果樹園
・curious=〔面白そうなので〕気になる
・thatched=かやぶき屋根の
・sttood sentry:stand sentry=見張りをする
・present=~を差し出す


岸は、うつくしいけしきでした。きれいな花がさいていたり、古い木が立っていたり、ところどころ、なだらかな土手(どて)には、ひつじやめうしが、あそんでいました。でも、にんげんの姿は見えませんでした。
「ことによると、この川は、わたしを、カイちゃんのところへ、つれていってくれるのかもしれないわ。」と、ゲルダはかんがえました。
 それで、だんだんげんきがでてきたので、立ちあがって、ながいあいだ、両方の青あおとうつくしい岸をながめていました。それからゲルダは、大きなさくらんぼばたけのところにきました。そのはたけの中には、ふうがわりな、青や赤の窓のついた、一けんのちいさな家がたっていました。その家はかやぶきで、おもてには、舟で通りすぎる人たちのほうにむいて、木製(もくせい)のふたりのへいたいが、銃剣(じゅうけん)肩に立っていました。

英語でアンデルセン童話「雪の女王」4

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

There, in the market-place, some of the boldest of the boys used to tie their sledges to the carts as they passed by, and so they were pulled along, and got a good ride. It was so capital! Just as they were in the very height of their amusement, a large sledge passed by: it was painted quite white, and there was someone in it wrapped up in a rough white mantle of fur, with a rough white fur cap on his head. The sledge drove round the square twice, and Kay tied on his sledge as quickly as he could, and off he drove with it. On they went quicker and quicker into the next street; and the person who drove turned round to Kay, and nodded to him in a friendly manner, just as if they knew each other. Every time he was going to untie his sledge, the person nodded to him, and then Kay sat quiet; and so on they went till they came outside the gates of the town. Then the snow began to fall so thickly that the little boy could not see an arm's length before him, but still on he went: when suddenly he let go the string he held in his hand in order to get loose from the sledge, but it was of no use; still the little vehicle rushed on with the quickness of the wind. He then cried as loud as he could, but no one heard him; the snow drifted and the sledge flew on, and sometimes it gave a jerk as though they were driving over hedges and ditches. He was quite frightened, and he tried to repeat the Lord's Prayer; but all he could do, he was only able to remember the multiplication table.
Photo_9


・bold=ずうずうしい、厚かましい
・cart=〔二輪の〕荷馬車
・capital=素晴らしい
・height of=~の真っただ中
・wrap up=包む、くるむ
・rough=毛深い、ぼさぼさの、毛足の長い
・mantle=マント
・fur=毛皮(製品)
・it=Kay's sledge
・thickly=頻繁に、ひっきりなしに
・of no use=まったく役に立たない
・vehicle=車、乗り物:ここでは”a large sledge”を指す
・drift=〔風で雪・砂などが〕吹きだまりになる
・flew on:fly on=飛び続ける、飛ぶように疾走し続ける
・jerk=急に動くこと、ぐいと引っ張ること
・hedge=垣根、障壁
・ditch=溝、水路
・Lord's Prayer=主の祈り
・multiplication table=(掛け算の)九九表、掛け算表


その大きなひろばでは、こどもたちのなかでも、あつかましいのが、そりを、おひゃくしょうたちの馬車の、うしろにいわえつけて、じょうずに馬車といっしょにすべっていました。これは、なかなかおもしろいことでした。こんなことで、こどもたちたれも、むちゅうになってあそんでいると、そこへ、いちだい、大きなそりがやってきました。それは、まっ白にぬってあって、なかにたれだか、そまつな白い毛皮(けがわ)にくるまって、白いそまつなぼうしをかぶった人がのっていました。そのそりは二回ばかり、ひろばをぐるぐるまわりました。そこでカイは、さっそくそれに、じぶんのちいさなそりを、しばりつけて、いっしょにすべっていきました。その大そりは、だんだんはやくすべって、やがて、つぎの大通を、まっすぐに、はしっていきました。そりをはしらせていた人は、くるりとふりかえって、まるでよくカイをしっているように、なれなれしいようすで、うなずきましたので、カイはついそりをとくのをやめてしまいました。こんなぐあいにして、とうとうそりは町の門のそとに、でてしまいました。そのとき、雪が、ひどくふってきたので、カイはじぶんの手のさきもみることができませんでした。それでもかまわず、そりははしっていきました。カイはあせって、しきりとつなをうごかして、その大そりからはなれようとしましたが、小そりはしっかりと大そりにしばりつけられていて、どうにもなりませんでした。ただもう、大そりにひっぱられて、風のようにとんでいきました。カイは大声をあげて、すくいをもとめましたが、たれの耳にも、きこえませんでした。雪はぶっつけるようにふりしきりました。そりは前へ前へと、とんでいきました。ときどき、そりがとびあがるのは、生(いけ)がきや、おほりの上を、とびこすのでしょうか、カイはまったくふるえあがってしまいました。主のおいのりをしようと思っても、あたまにうかんでくるのは、かけざんの九九ばかりでした。


The snow-flakes grew larger and larger, till at last they looked just like great white fowls. Suddenly they flew on one side; the large sledge stopped, and the person who drove rose up. It was a lady; her cloak and cap were of snow. She was tall and of slender figure, and of a dazzling whiteness. It was the Snow Queen.


・fowl=ニワトリ
・cloak=マント


こな雪のかたまりは、だんだん大きくなって、しまいには、大きな白いにわとりのようになりました。ふとその雪のにわとりが、両がわにとびたちました。とたんに、大そりはとまりました。そりをはしらせていた人が、たちあがったのを見ると、毛皮のがいとうもぼうしも、すっかり雪でできていました。それはすらりと、背の高い、目のくらむようにまっ白な女の人でした。それが雪の女王だったのです。


big sledgeを運転していたsomeone、the personは、実は「雪の女王」だったわけですね。


"We have travelled fast," said she; "but it is freezingly cold. Come under my bearskin." And she put him in the sledge beside her, wrapped the fur round him, and he felt as though he were sinking in a snow-wreath.


・bearskin=クマの毛皮
・wreath=(煙・雲などの)渦巻き.


「ずいぶんよくはしったわね。」と、雪の女王はいいました。「あら、あんた、ふるえているのね。わたしのくまの毛皮におはいり。」
 こういいながら女王は、カイをじぶんのそりにいれて、かたわらにすわらせ、カイのからだに、その毛皮をかけてやりました。するとカイは、まるで雪のふきつもったなかに、うずめられたように感じました。


"Are you still cold?" asked she; and then she kissed his forehead. Ah! it was colder than ice; it penetrated to his very heart, which was already almost a frozen lump; it seemed to him as if he were about to die--but a moment more and it was quite congenial to him, and he did not remark the cold that was around him.


・congenial=心地良い、気持ちが良い
・remark=~に気付く


「まださむいの。」と、女王はたずねました。それからカイのひたいに、ほおをつけました。まあ、それは、氷よりももっとつめたい感じでした。そして、もう半分氷のかたまりになりかけていた、カイのしんぞうに、じいんとしみわたりました。カイはこのまま死んでしまうのではないかと、おもいました。――けれど、それもほんのわずかのあいだで、やがてカイは、すっかり、きもちがよくなって、もう身のまわりのさむさなど、いっこう気にならなくなりました。


"My sledge! Do not forget my sledge!" It was the first thing he thought of. It was there tied to one of the white chickens, who flew along with it on his back behind the large sledge. The Snow Queen kissed Kay once more, and then he forgot little Gerda, grandmother, and all whom he had left at his home.


"Now you will have no more kisses," said she, "or else I should kiss you to death!"


・or else=あるいは、さもないと


「ぼくのそりは――ぼくのそりを、わすれちゃいけない。」
 カイがまず第一におもいだしたのは、じぶんのそりのことでありました。そのそりは、白いにわとりのうちの一わに、しっかりとむすびつけられました。このにわとりは、そりをせなかにのせて、カイのうしろでとんでいました。雪の女王は、またもういちど、カイにほおずりしました。それで、カイは、もう、かわいらしいゲルダのことも、おばあさまのことも、うちのことも、なにもかも、すっかりわすれてしまいました。
「さあ、もうほおずりはやめましょうね。」と、雪の女王はいいました。「このうえすると、お前を死なせてしまうかもしれないからね。」


Kay looked at her. She was very beautiful; a more clever, or a more lovely countenance he could not fancy to himself; and she no longer appeared of ice as before, when she sat outside the window, and beckoned to him; in his eyes she was perfect, he did not fear her at all, and told her that he could calculate in his head and with fractions, even; that he knew the number of square miles there were in the different countries, and how many inhabitants they contained; and she smiled while he spoke. It then seemed to him as if what he knew was not enough, and he looked upwards in the large huge empty space above him, and on she flew with him; flew high over the black clouds, while the storm moaned and whistled as though it were singing some old tune. On they flew over woods and lakes, over seas, and many lands; and beneath them the chilling storm rushed fast, the wolves howled, the snow crackled; above them flew large screaming crows, but higher up appeared the moon, quite large and bright; and it was on it that Kay gazed during the long long winter's night; while by day he slept at the feet of the Snow Queen.


・countenance=顔つき、表情
・fancy=想像する
・appear=〔~のように〕見える、〔~と〕思われる
・calculate=~を計算する、予測する、予想する
・fraction=端数、分数
・square miles=平方マイル
・the number of square miles there were in the different countries=さまざまな国の面積が何平方マイルあるか
・inhabitant=住民
・they=the different countries
・moan=〔風が〕うなる
・whistle=ヒューと鳴って飛ぶ
・chilling=恐ろしい、ぞっとする
・howl=(犬・オオカミなどが)(声を長く引いて)ほえる、遠ぼえする
・crackle=パチパチ音を立てる
・crow=カラス
・by day=日中は、昼間は


カイは女王をみあげました。まあそのうつくしいことといったら。カイは、これだけかしこそうなりっぱな顔がほかにあろうとは、どうしたっておもえませんでした。いつか窓のところにきて、手まねきしてみせたときとちがって、もうこの女王が、氷でできているとは、おもえなくなりました。カイの目には、女王は、申しぶんなくかんぜんで、おそろしいなどとは、感じなくなりました。それでうちとけて、じぶんは分数(ぶんすう)までも、あんざんで、できることや、じぶんの国が、いく平方マイルあって、どのくらいの人口があるか、しっていることまで、話しました。女王は、しじゅう、にこにこして、それをきいていました。それが、なんだ、しっていることは、それっぱかしかと、いわれたようにおもって、あらためて、ひろいひろい大空をあおぎました。すると、女王はカイをつれて、たかくとびました。高い黒雲の上までも、とんで行きました。あらしはざあざあ、ひゅうひゅう、ふきすさんで、昔の歌でもうたっているようでした。女王とカイは、森や、湖や、海や、陸の上を、とんで行きました。下のほうでは、つめたい風がごうごううなって、おおかみのむれがほえたり、雪がしゃっしゃっときしったりして、その上に、まっくろなからすがカアカアないてとんでいました。しかし、はるか上のほうには、お月さまが、大きくこうこうと、照っていました。このお月さまを、ながいながい冬の夜じゅう、カイはながめてあかしました。ひるになると、カイは女王の足もとでねむりました。


カイはすっかり「雪の女王」のとりこです……

英語でアンデルセン童話「雪の女王」3

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

In the evening, when little Kay was at home, and half undressed, he climbed up on the chair by the window, and peeped out of the little hole. A few snow-flakes were falling, and one, the largest of all, remained lying on the edge of a flower-pot.


・flake=薄片、破片


その夕方、カイはうちにいて、着物(きもの)を半分(はんぶん)ぬぎかけながら、ふとおもいついて、窓のそばの、いすの上にあがって、れいのちいさなのぞきあなから、外をながめました。おもてには、ちらちら、こな雪が舞(ま)っていましたが、そのなかで大きなかたまりがひとひら、植木箱のはしにおちました。


The flake of snow grew larger and larger; and at last it was like a young lady, dressed in the finest white gauze, made of a million little flakes like stars. She was so beautiful and delicate, but she was of ice, of dazzling, sparkling ice; yet she lived; her eyes gazed fixedly, like two stars; but there was neither quiet nor repose in them. She nodded towards the window, and beckoned with her hand. The little boy was frightened, and jumped down from the chair; it seemed to him as if, at the same moment, a large bird flew past the window.


・gauze=紗(しゃ)、絽(ろ)
・delicate=優美な
・dazzling=まぶしい、輝かしい、まばゆい
・sparkling=輝く、光る、きらめく
・gaze fixedly=~をじっと見詰める
・quiet=静けさ
・repose=安らぎ
・beckon=手招きする


するとみるみるそれは大きくなって、とうとうそれが、まがいのない、わかい、ひとりの女の人になりました。もう何百万という数の、星のように光るこな雪で織(お)った、うすい白い紗(しゃ)の着物(きもの)を着ていました。やさしい女の姿はしていましたが、氷のからだをしていました。ぎらぎらひかる氷のからだをして、そのくせ生きているのです。その目は、あかるい星をふたつならべたようでしたが、おちつきも休みもない目でした。女は、カイのいる窓のほうに、うなずきながら、手まねぎしました。カイはびっくりして、いすからとびおりてしまいました。すぐそのあとで、大きな鳥が、窓の外をとんだような、けはいがしました。


The next day it was a sharp frost--and then the spring came; the sun shone, the green leaves appeared, the swallows built their nests, the windows were opened, and the little children again sat in their pretty garden, high up on the leads at the top of the house.


・sharp frost=厳しい霜[寒さ]
・leads=〔英〕(pl.) トタン屋根


そのあくる日は、からりとした、霜日(しもび)よりでした。――それからは、日にまし、雪どけのようきになって、とうとう春が、やってきました。お日さまはあたたかに、照(て)りかがやいて、緑(みどり)がもえだし、つばめは巣をつくりはじめました。あのむかいあわせの屋根うらべやの窓も、また、あけひろげられて、カイとゲルダとは、アパートのてっぺんの屋根上の雨(あま)どいの、ちいさな花ぞので、ことしもあそびました。


That summer the roses flowered in unwonted beauty. The little girl had learned a hymn, in which there was something about roses; and then she thought of her own flowers; and she sang the verse to the little boy, who then sang it with her:


・unwonted=めったにない、まれな
・hymn=賛美歌


この夏は、じつにみごとに、ばらの花がさきました。女の子のゲルダは、ばらのことのうたわれている、さんび歌をしっていました。そして、ばらの花というと、ゲルダはすぐ、じぶんの花ぞののばらのことをかんがえました。ゲルダは、そのさんび歌を、カイにうたってきかせますと、カイもいっしょにうたいました。


"The rose in the valley is blooming so sweet,
And angels descend there the children to greet."


And the children held each other by the hand, kissed the roses, looked up at the clear sunshine, and spoke as though they really saw angels there. What lovely summer-days those were! How delightful to be out in the air, near the fresh rose-bushes, that seem as if they would never finish blossoming!


・sweet=香りの良い
・descend=降りる
・clear=明るい、視界を遮るものがない
・fresh=咲いたばかりの、茂ったばかりの
・bush=茂み


「ばらのはな さきてはちりぬ
 おさなごエス やがてあおがん」
 ふたりのこどもは、手をとりあって、ばらの花にほおずりして、神さまの、みひかりのかがやく、お日さまをながめて、おさなごエスが、そこに、おいでになるかのように、うたいかけました。なんという、楽しい夏の日だったでしょう。いきいきと、いつまでもさくことをやめないようにみえる、ばらの花のにおいと、葉のみどりにつつまれた、この屋根の上は、なんていいところでしたろう。


Kay and Gerda looked at the picture-book full of beasts and of birds; and it was then--the clock in the church-tower was just striking five--that Kay said, "Oh! I feel such a sharp pain in my heart; and now something has got into my eye!"


The little girl put her arms around his neck. He winked his eyes; now there was nothing to be seen.


"I think it is out now," said he; but it was not. It was just one of those pieces of glass from the magic mirror that had got into his eye; and poor Kay had got another piece right in his heart. It will soon become like ice. It did not hurt any longer, but there it was.


・it was not=it was not out(目に入ったものが外に出たわけではなかった)
・right=ちょうど
・It will soon become like ice. It did not hurt any longer, but there it was.=カイの心はもうすぐ氷のようになる。心はもう痛まなかったが、鏡の破片は心の中にあった:FIRST STORYに"Some persons even got a splinter in their heart, and then it made one shudder, for their heart became like a lump of ice. "とある。


カイとゲルダは、ならんで掛けて、けものや鳥のかいてある、絵本をみていました。ちょうどそのとき――お寺の、大きな塔(とう)の上で、とけいが、五つうちましたが――カイは、ふと、
「あッ、なにかちくりとむねにささったよ。それから、目にもなにかとびこんだようだ。」と、いいました。
 あわてて、カイのくびを、ゲルダがかかえると、男の子は目をぱちぱちやりました。でも、目のなかにはなにもみえませんでした。
「じゃあ、とれてしまったのだろう。」と、カイはいいましたが、それは、とれたのではありませんでした。カイの目にはいったのは、れいの鏡から、とびちったかけらでした。そら、おぼえているでしょう。あのいやな、魔法(まほう)の鏡のかけらで、その鏡にうつすと、大きくていいものも、ちいさく、いやなものに、みえるかわり、いけないわるいものほど、いっそうきわだってわるく見え、なんによらず、物事(ものごと)のあらが、すぐめだって見えるのです。かわいそうに、カイは、しんぞうに、かけらがひとつはいってしまいましたから、まもなく、それは氷のかたまりのように、なるでしょう。それなり、もういたみはしませんけれども、たしかに、しんぞうの中にのこりました。


"What are you crying for?" asked he. "You look so ugly! There's nothing the matter with me. Ah," said he at once, "that rose is cankered! And look, this one is quite crooked! After all, these roses are very ugly! They are just like the box they are planted in!" And then he gave the box a good kick with his foot, and pulled both the roses up.


・canker=腐らせる
・crooked=曲がっている、ねじれた
・give a good kic=うまく蹴る
・both=that roseとthis one(rose)


「なんだってべそをかくんだ。」と、カイはいいました。「そんなみっともない顔をして、ぼくは、もうどうもなってやしないんだよ。」
「チェッ、なんだい。」こんなふうに、カイはふいに、いいだしました。「あのばらは虫がくっているよ。このばらも、ずいぶんへんてこなばらだ。みんなきたならしいばらだな。植わっている箱も箱なら、花も花だ。」
 こういって、カイは、足で植木の箱をけとばして、ばらの花をひきちぎってしまいました。


"What are you doing?" cried the little girl; and as he perceived her fright, he pulled up another rose, got in at the window, and hastened off from dear little Gerda.


Afterwards, when she brought her picture-book, he asked, "What horrid beasts have you there?" And if his grandmother told them stories, he always interrupted her; besides, if he could manage it, he would get behind her, put on her spectacles, and imitate her way of speaking; he copied all her ways, and then everybody laughed at him. He was soon able to imitate the gait and manner of everyone in the street. Everything that was peculiar and displeasing in them--that Kay knew how to imitate: and at such times all the people said, "The boy is certainly very clever!" But it was the glass he had got in his eye; the glass that was sticking in his heart, which made him tease even little Gerda, whose whole soul was devoted to him.


・horrid=ひどく嫌な、恐ろしい
・get behind=~の後ろに回る
・gait=歩き方
・peculiar=特異な、変な、風変わりな、おかしな
・displeasing=不快にする
・tease=からかう


「カイちゃん、あんた、なにをするの。」と、ゲルダはさけびました。
 カイは、ゲルダのおどろいた顔をみると、またほかのばらの花を、もぎりだしました。それから、じぶんのうちの窓の中にとびこんで、やさしいゲルダとも、はなれてしまいました。
 ゲルダがそのあとで、絵本(えほん)をもってあそびにきたとき、カイは、そんなもの、かあさんにだっこされている、あかんぼのみるものだ、といいました。また、おばあさまがお話をしても、カイはのべつに「だって、だって。」とばかりいっていました。それどころか、すきをみて、おばあさまのうしろにまわって、目がねをかけて、おばあさまの口まねまで、してみせました。しかも、なかなかじょうずにやったので、みんなはおかしがってわらいました。まもなくカイは、町じゅうの人たちの、身ぶりや口まねでも、できるようになりました。なんでも、ひとくせかわったことや、みっともないことなら、カイはまねすることをおぼえました。
「あの子はきっと、いいあたまなのにちがいない。」と、みんないいましたが、それは、カイの目のなかにはいった鏡のかけらや、しんぞうの奥ふかくささった、鏡のかけらのさせることでした。そんなわけで、カイはまごころをささげて、じぶんをしたってくれるゲルダまでも、いじめだしました。


His games now were quite different to what they had formerly been, they were so very knowing. One winter's day, when the flakes of snow were flying about, he spread the skirts of his blue coat, and caught the snow as it fell.


・game=策略、もくろみ、冗談
・knowing=抜け目のない、知ったかぶりの
・skirt=すそ


カイのあそびも、すっかりかわって、ひどくこましゃくれたものになりました。――ある冬の日、こな雪がさかんに舞いくるっているなかで、カイは大きな虫目がねをもって、そとにでました。そして青いうわぎのすそをひろげて、そのうえにふってくる雪をうけました。


"Look through this glass, Gerda," said he. And every flake seemed larger, and appeared like a magnificent flower, or beautiful star; it was splendid to look at!


"Look, how clever!" said Kay. "That's much more interesting than real flowers! They are as exact as possible; there is not a fault in them, if they did not melt!"


・clever=器用な、巧みな
・exact=正確な


「さあ、この目がねのところからのぞいてごらん、ゲルダちゃん。」と、カイはいいました。なるほど、雪のひとひらが、ずっと大きく見えて、みごとにひらいた花か、六角の星のようで、それはまったくうつくしいものでありました。
「ほら、ずいぶんたくみにできているだろう。ほんとうの花なんか見るよりも、ずっとおもしろいよ。かけたところなんか、ひとつだってないものね。きちんと形をくずさずにいるのだよ。ただとけさえしなければね。」と、カイはいいました。


It was not long after this, that Kay came one day with large gloves on, and his little sledge at his back, and bawled right into Gerda's ears, "I have permission to go out into the square where the others are playing"; and off he was in a moment.


・sledge=そり
・bawl=どなる、叫ぶ
・square=広場


そののちまもなく、カイはあつい手ぶくろをはめて、そりをかついで、やってきました。そしてゲルダにむかって、
「ぼく、ほかのこどもたちのあそんでいる、ひろばのほうへいってもいいと、いわれたのだよ。」と、ささやくと、そのままいってしまいました。


カイの様子がすっかり変わってしまいました…

英語でアンデルセン童話「雪の女王」2

原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

SECOND STORY. A Little Boy and a Little Girl


In a large town, where there are so many houses, and so many people, that there is no roof left for everybody to have a little garden; and where, on this account, most persons are obliged to content themselves with flowers in pots; there lived two little children, who had a garden somewhat larger than a flower-pot. They were not brother and sister; but they cared for each other as much as if they were. Their parents lived exactly opposite. They inhabited two garrets; and where the roof of the one house joined that of the other, and the gutter ran along the extreme end of it, there was to each house a small window: one needed only to step over the gutter to get from one window to the other. Snow_queen_1


・roof=屋根、家
・where=in a large town
・on this account=この理由により、このような訳で
・are obliged to=余儀なく[やむなく・仕方なしに]~する
・pot=鉢
・somewhat=いくらか、いくぶん
・opposite=~の向かい側に
・inhabit=~に住む
・garret=屋根裏部屋
・gutter=雨どい
・step over=~をまたぐ


第二のお話

   男の子と女の子

たくさんの家がたてこんで、おおぜい人がすんでいる大きな町では、たれでも、庭にするだけの、あき地をもつわけにはいきませんでした。ですから、たいてい、植木(うえき)ばちの花をみて、まんぞくしなければなりませんでした。
 そういう町に、ふたりのまずしいこどもがすんでいて、植木ばちよりもいくらか大きな花ぞのをもっていました。そのふたりのこどもは、にいさんでも妹でもありませんでしたが、まるでほんとうのきょうだいのように、仲よくしていました。そのこどもたちの両親は、おむこうどうしで、その住んでいる屋根うらべやは、二軒の家の屋根と屋根とがくっついた所に、むかいあっていました。そのしきりの所には、一本の雨どいがとおっていて、両方から、ひとつずつ、ちいさな窓が、のぞいていました。で、といをひとまたぎしさえすれば、こちらの窓からむこうの窓へいけました。


The children's parents had large wooden boxes there, in which vegetables for the kitchen were planted, and little rose-trees besides: there was a rose in each box, and they grew splendidly. They now thought of placing the boxes across the gutter, so that they nearly reached from one window to the other, and looked just like two walls of flowers. The tendrils of the peas hung down over the boxes; and the rose-trees shot up long branches, twined round the windows, and then bent towards each other: it was almost like a triumphant arch of foliage and flowers. The boxes were very high, and the children knew that they must not creep over them; so they often obtained permission to get out of the windows to each other, and to sit on their little stools among the roses, where they could play delightfully. In winter there was an end of this pleasure. The windows were often frozen over; but then they heated copper farthings on the stove, and laid the hot farthing on the windowpane, and then they had a capital peep-hole, quite nicely rounded; and out of each peeped a gentle friendly eye--it was the little boy and the little girl who were looking out. His name was Kay, hers was Gerda. In summer, with one jump, they could get to each other; but in winter they were obliged first to go down the long stairs, and then up the long stairs again: and out-of-doors there was quite a snow-storm.


・rose-tree=バラの木
・besides=それに加えて
・splendidly=立派に
・they=little rosetrees
・tendril=《植物》巻きひげ
・shot up=shoot up(急に成長する、噴出する、乱立する)の過去形
・twine=からまる、巻き付く
・triumphant=輝かしい、立派な、得意げな
・foliage=葉、枝葉
・creep=這う、ゆっくり近づく
・stool=丸椅子、腰掛け
・delightfully=とても面白く
・frozen over=氷が張っている
・farthing=〈英〉ファージング硬貨◆13世紀から1960年末までイギリスで使われた4分の1ペニーに相当する硬貨で最少の通貨単位だった。初期には銀貨だったが17世紀に銅貨になった:Hans Christian Andersen(1805-1875)
・capital=すばらしい
・peep-hole=〔ドアなどの〕のぞき穴
・Kay=カイ:二人の子供たちの名前の訳は、画像にもある手持ちの『世界の童話 アンデルセンのお話』(小学館 1981年)から
・Gerda=ゲルダ
・quite a=すごい、相当な


こどもの親たちは、それぞれ木の箱を窓の外にだして、台所でつかうお野菜をうえておきました。そのほかにちょっとしたばらをひと株うえておいたのが、みごとにそだって、いきおいよくのびていました。ところで親たちのおもいつきで、その箱を、といをまたいで、横にならべておいたので、箱は窓と窓とのあいだで、むこうからこちらへと、つづいて、そっくり、生きのいい花のかべを、ふたつならべたように見えました。えんどう豆のつるは、箱から下のほうにたれさがり、ばらの木は、いきおいよく長い枝をのばして、それがまた、両方の窓にからみついて、おたがいにおじぎをしあっていました。まあ花と青葉でこしらえた、アーチのようなものでした。その箱は、高い所にありましたし、こどもたちは、その上にはいあがってはいけないのをしっていました。そこで、窓から屋根へ出て、ばらの花の下にある、ちいさなこしかけに、こしをかけるおゆるしをいただいて、そこでおもしろそうに、あそびました。
 冬になると、そういうあそびもだめになりました。窓はどうかすると、まるっきりこおりついてしまいました。そんなとき、こどもたちは、だんろの上で銅貨(どうか)をあたためて、こおった窓ガラスに、この銅貨をおしつけました。すると、そこにまるい、まんまるい、きれいなのぞきあなができあがって、このあなのむこうに、両方の窓からひとつずつ、それはそれはうれしそうな、やさしい目がぴかぴか光ります、それがあの男の子と、女の子でした。男の子はカイ、女の子はゲルダといいました。夏のあいだは、ただひとまたぎで、いったりきたりしたものが、冬になると、ふたりのこどもは、いくつも、いくつも、はしごだんを、おりたりあがったりしなければ、なりませんでした。外(そと)には、雪がくるくる舞(ま)っていました。


"It is the white bees that are swarming," said Kay's old grandmother.


"Do the white bees choose a queen?" asked the little boy; for he knew that the honey-bees always have one.


"Yes," said the grandmother, "she flies where the swarm hangs in the thickest clusters. She is the largest of all; and she can never remain quietly on the earth, but goes up again into the black clouds. Many a winter's night she flies through the streets of the town, and peeps in at the windows; and they then freeze in so wondrous a manner that they look like flowers."


"Yes, I have seen it," said both the children; and so they knew that it was true.


"Can the Snow Queen come in?" said the little girl.


"Only let her come in!" said the little boy. "Then I'd put her on the stove, and she'd melt."


And then his grandmother patted his head and told him other stories.


・swarm=〔昆虫が〕群れで動く[現れる]
・one= a queen
・swarm=〔動いている〕昆虫の群れ、〔分巣するときの〕ミツバチの群れ
・hang=さまよう
・thick=密集した
・cluster=集団、塊、群れ
・Many a=数々の、いくつもの
・they=the windows
・wondrous=驚くべき
・Only let her come in!:onlyは話し言葉で、動詞の前において文意を強めることがあるので、これはその場合かと思う。つまり「入って来るなら来させるさ!来たらストーブの上においてやる…」
・pat=〔愛情表現として〕軽くたたく


「あれはね、白いみつばちがあつまって、とんでいるのだよ。」と、おばあさんがいいました。
「あのなかにも、女王ばちがいるの。」と、男の子はたずねました。この子は、ほんとうのみつばちに、そういうもののいることを、しっていたのです。
「ああ、いるともさ。」と、おばあさんはいいました。「その女王ばちは、いつもたくさんなかまのあつまっているところに、とんでいるのだよ。なかまのなかでも、いちばんからだが大きくて、けっして下にじっとしてはいない。すぐと黒い雲のなかへとんではいってしまう。ま夜中に、いく晩も、いく晩も、女王は町の通から通へとびまわって、窓のところをのぞくのさ。するとふしぎとそこでこおってしまって、窓は花をふきつけたように、見えるのだよ。」
「ああ、それ、みたことがありますよ。」と、こどもたちは、口をそろえて叫(さけ)びました。そして、すると、これはほんとうの話なのだ、とおもいました。
「雪の女王さまは、うちのなかへもはいってこられるかしら。」と、女の子がたずねました。
「くるといいな。そうすれば、ぼく、それをあたたかいストーブの上にのせてやるよ。すると女王はとろけてしまうだろう。」と、男の子がいいました。
 でも、おばあさんは、男の子のかみの毛をなでながら、ほかのお話をしてくれました。


カイのおばあさんの話は、雪は、「白い蜂」の群れで、その群れの中にいる女王蜂は、ミツバチと同じように仲間の中で一番大きく、地面に落ちてもまた黒い雲の中へ戻っていき、夜になると町の中を飛び回って、家々の窓を覗き込む、それで、窓ガラスが華のような結晶の形に凍るのだ、ということかな…


窓ガラスの氷の結晶はここで見られるが…


余談だが、「ソン・ユリ」、「ヒョンビン」主演のKBSドラマ『雪の女王』の原作小説として、韓国語で書かれたアンデルセンのこの童話の本の説明に「空で降りる雪のひらをじっとよく見てください。蜂の中クイーンビーがいるように雪の中も”雪の女王”がいるそうです。一番大きくて白い雪のひらがすぐ雪の女王です。 雪の女王がカイという子供を連れて行ってカイは雪の女王の城で冷ややかに凍りついたまま過ごしました。あの時カイの一番親しい友達ゲルダがカイを捜して道を出たんです。果してゲルダの前にどんな事が開かれましょうか? ゲルダはどんなに雪の女王からカイを救出するんでしょうか」とある。ちょっと日本語が変だけど(笑)

英語でアンデルセン童話「雪の女王」1

小さい頃、よく読んでいた覚えがある『雪の女王』です。
原点はProject Gutenberg、邦訳は青空文庫、楠山正雄訳を使わせていただきます。

THE SNOW QUEEN


FIRST STORY. Which Treats of a Mirror and of the Splinters


・splinter=破片


第一のお話

   鏡とそのかけらのこと


Now then, let us begin. When we are at the end of the story, we shall know more than we know now: but to begin.


Once upon a time there was a wicked sprite, indeed he was the most mischievous of all sprites. One day he was in a very good humor, for he had made a mirror with the power of causing all that was good and beautiful when it was reflected therein, to look poor and mean; but that which was good-for-nothing and looked ugly was shown magnified and increased in ugliness. In this mirror the most beautiful landscapes looked like boiled spinach, and the best persons were turned into frights, or appeared to stand on their heads; their faces were so distorted that they were not to be recognised; and if anyone had a mole, you might be sure that it would be magnified and spread over both nose and mouth.


・sprite=妖精、小人
・in a good humor=機嫌がいい、上機嫌で
・therein=【副】 その中に、その場所に
・cause~to…=~を…させる
・mean=みすぼらしい
・good-for-nothing=何の役にも立たない
・magnified=誇張された
・spinach=ほうれん草
・fright=ゾッとさせるような人
・stand on one's head=何でもする
・are not to=cannot=~できない
・mole=ほくろ、あざ


さあ、きいていらっしゃい。はじめますよ。このお話をおしまいまできくと、だんだんなにかがはっきりしてきて、つまり、それがわるい魔法使(まほうつかい)のお話であったことがわかるのです。この魔法使というのは、なかまでもいちばんいけないやつで、それこそまがいなしの「悪魔(あくま)」でした。
 さて、ある日のこと、この悪魔は、たいそうなごきげんでした。というわけは、それは、鏡をいちめん作りあげたからでしたが、その鏡というのが、どんなけっこうなうつくしいものでも、それにうつると、ほとんどないもどうぜんに、ちぢこまってしまうかわり、くだらない、みっともないようすのものにかぎって、よけいはっきりと、いかにもにくにくしくうつるという、ふしぎなせいしつをもったものでした。どんなうつくしいけしきも、この鏡にうつすと、煮(に)くたらしたほうれんそうのように見え、どんなにりっぱなひとたちも、いやなかっこうになるか、どうたいのない、あたまだけで、さかだちするかしました。顔は見ちがえるほどゆがんでしまい、たった、ひとつぼっちのそばかすでも、鼻や口いっぱいに大きくひろがって、うつりました。


何を映すにしても、悪く見えるようになるってことね…



"That's glorious fun!" said the sprite. If a good thought passed through a man's mind, then a grin was seen in the mirror, and the sprite laughed heartily at his clever discovery. All the little sprites who went to his school--for he kept a sprite school--told each other that a miracle had happened; and that now only, as they thought, it would be possible to see how the world really looked. They ran about with the mirror; and at last there was not a land or a person who was not represented distorted in the mirror. So then they thought they would fly up to the sky, and have a joke there. The higher they flew with the mirror, the more terribly it grinned: they could hardly hold it fast. Higher and higher still they flew, nearer and nearer to the stars, when suddenly the mirror shook so terribly with grinning, that it flew out of their hands and fell to the earth, where it was dashed in a hundred million and more pieces. And now it worked much more evil than before; for some of these pieces were hardly so large as a grain of sand, and they flew about in the wide world, and when they got into people's eyes, there they stayed; and then people saw everything perverted, or only had an eye for that which was evil. This happened because the very smallest bit had the same power which the whole mirror had possessed. Some persons even got a splinter in their heart, and then it made one shudder, for their heart became like a lump of ice. Some of the broken pieces were so large that they were used for windowpanes, through which one could not see one's friends. Other pieces were put in spectacles; and that was a sad affair when people put on their glasses to see well and rightly. Then the wicked sprite laughed till he almost choked, for all this tickled his fancy. The fine splinters still flew about in the air: and now we shall hear what happened next.



・glorious=〔素晴らしく〕楽しい、愉快な
・have a joke=冗談を言う、ふざける
・terribly=ひどく
・fast=しっかりと
・dash=粉々に打ち砕く
・grain=一粒
・perverted=ゆがんだ、邪悪な
・have an eye for~=~を見る目がある
・that=everything
・only had an eye for that which was evil=邪悪なものしか見えなくなった
・shudder=身震いする
・spectacles=メガネ
・choke=むせる、息が詰まる
・tickle=~をくすぐる
・fancy=想像力、気まぐれ
・fine=〔粒子などが〕細かい


「こりゃおもしろいな。」と、その悪魔はいいました。ここに、たれかが、やさしい、つつましい心をおこしますと、それが鏡には、しかめっつらにうつるので、この魔法使の悪魔は、じぶんながら、こいつはうまい発明(はつめい)だわいと、ついわらいださずには、いられませんでした。
 この悪魔は、魔法学校をひらいていましたが、そこにかよっている魔生徒どもは、こんどふしぎなものがあらわれたと、ほうぼうふれまわりました。
 さて、この鏡ができたので、はじめて世界や人間のほんとうのすがたがわかるのだと、このれんじゅうはふいちょうしてあるきました。で、ほうぼうへその鏡をもちまわったものですから、とうとうおしまいには、どこの国でも、どの人でも、その鏡にめいめいの、ゆがんだすがたをみないものは、なくなってしまいました。こうなると、図にのった悪魔のでしどもは、天までも昇(のぼ)っていって、天使(てんし)たちや神さままで、わらいぐさにしようとおもいました。ところで、高く高くのぼって行けば、行くほど、その鏡はよけいひどく、しかめっつらをするので、さすがの悪魔も、おかしくて、もっていられなくなりました。でもかまわず、高く高くとのぼっていって、もう神さまや天使のお住居(すまい)に近くなりました。すると、鏡はあいかわらず、しかめっつらしながら、はげしくぶるぶるふるえだしたものですから、ついに悪魔どもの手から、地の上へおちて、何千万、何億万、というのではたりない、たいへんな数に、こまかくくだけて、とんでしまいました。ところが、これがため、よけい下界(げかい)のわざわいになったというわけは、鏡のかけらは、せいぜい砂つぶくらいの大きさしかないのが、世界じゅうにとびちってしまったからで、これが人の目にはいると、そのままそこにこびりついてしまいました。すると、その人たちは、なんでも物をまちがってみたり、ものごとのわるいほうだけをみるようになりました。それは、そのかけらが、どんなちいさなものでも、鏡がもっていたふしぎな力を、そのまま、まだのこしてもっていたからです。なかにはまた、人のしんぞうにはいったものがあって、そのしんぞうを、氷のかけらのように、つめたいものにしてしまいました。そのうちいくまいか大きなかけらもあって、窓ガラスに使われるほどでしたが、そんな窓ガラスのうちから、お友だちをのぞいてみようとしても、まるでだめでした。ほかのかけらで、めがねに用いられたものもありましたが、このめがねをかけて、物を正しく、まちがいのないように見ようとすると、とんださわぎがおこりました。悪魔はこんなことを、たいへんおもしろがって、おなかをゆすぶって、くすぐったがって、わらいました。ところで、ほかにもまだ、こまかいかけらは、空のなかにただよっていました。さあ、これからがお話なのですよ。


第一話の終わりです。なんでも邪悪に見えてしまう鏡の破片、いったいどこへ飛んで行くのでしょうか……

英語でアンデルセン童話「裸の王様」(3)

王様の新しい服が出来上って…

And now the Emperor, with all the grandees of his court, came to the weavers; and the rogues raised their arms, as if in the act of holding something up, saying, "Here are your Majesty's trousers! Here is the scarf! Here is the mantle! The whole suit is as light as a cobweb; one might fancy one has nothing at all on, when dressed in it; that, however, is the great virtue of this delicate cloth."


・grandee=高官
・rogue=悪党、詐欺師
・mantle=マント
・suit=〔同じ素材の〕一組の衣服
・light=〔重さが標準や見掛けよりも〕軽い
・cobweb=クモの巣
・fancy=想像する、~のような気がする
・have~on=~を着る
・it=the whole suit
・that=The whole suit is as light as a cobweb; one might fancy one has nothing at all on, when dressed in it
・virtue=長所
・delicate=優美な、繊細な


さていよいよ王様は、高官の役人たちを引き連れて詐欺師たちのところへやってきました。詐欺師たちは何かをささげ持つかのように腕を上げて言いました。「さあ、これが国王閣下のおズボンでございます!これがスカーフ!これがマント!これ全部を着ても、まるでクモの巣のような軽さです。着た時にまるで何も着てないかのような気がするでしょう。しかし、それがこの美しい布の非常に良いところなのです」

"Yes indeed!" said all the courtiers, although not one of them could see anything of this exquisite manufacture.


・courtier=廷臣、機嫌取りの人
・exquisite=この上なく素晴らしい


「本当に全く!」とお城の家来たちはみんな口をそろえて言いました。一人も、この上なく素晴らしいというこの作品を見ることができていないのにもかかわらずです。

"If your Imperial Majesty will be graciously pleased to take off your clothes, we will fit on the new suit, in front of the looking glass."


・graciously=快く
・fit on=試着する
・looking glass=鏡、姿見


「国王閣下が着ておられる服をお脱ぎになるお気持ちがありますならば、私たちがお手伝いをして、鏡の前で新しい服をお着せします」

The Emperor was accordingly undressed, and the rogues pretended to array him in his new suit; the Emperor turning round, from side to side, before the
looking glass.


・accordingly=それに応じて
・array=(人)を美しく着飾る
・from side to side=左右に


王様はそれに応じて服を脱ぎました。詐欺師たちはできたばかりの美しい服を王様に着せているふりをしました。王様は姿見の前で、右に左に向きを変えて自分の姿を見ました。

"How splendid his Majesty looks in his new clothes, and how well they fit!" everyone cried out. "What a design! What colors! These are indeed royal robes!"


・royal=国王の


「なんとまあ新しい服を着た王様が素敵なことか、そしてなんとお似合いなことか!」と皆が大きな声で言いました。「なんと素晴らしい模様なんだなろう!なんとまあ素敵な色であることか!まさに王様の服にふさわしい!」

"The canopy which is to be borne over your Majesty, in the procession, is waiting," announced the chief master of the ceremonies.


・canopy=天蓋(のように覆うもの)
・borne:bear(~を運ぶ、持って行く)の過去分詞
・master=親方、上司、監督者
・announce


「行進の時に国王閣下の上にさしかける天蓋がすでに準備できております」と、その儀式の一番上の監督者が告げました。

"I am quite ready," answered the Emperor. "Do my new clothes fit well?" asked he, turning himself round again before the looking glass, in order that he might appear to be examining his handsome suit.


・appear to=~するように見える
・examining:examine=〔詳細に~を〕観察する
・handsome=素晴らしい


「私も準備できておる」と王様も答えました。「新しい服はわたしに似合っておるかな?」と王様は、さも素晴らしい服を確かめているように見せるため、鏡の前でもう一度くるっとまわって言いました。

さあ、いよいよクライマックスです!(笑)


The lords of the bedchamber, who were to carry his Majesty's train felt about on the ground, as if they were lifting up the ends of the mantle; and pretended to be carrying something; for they would by no means betray anything like simplicity, or unfitness for their office.


・lord of the bedchamber=侍従
・were to:be to=~すべきである(義務)
・train=後に引きずる物、すそ
・felt about:feel about=捜す
・by no means=決して~でない
・betray=〔実態・本心などを〕表す、示す
・simplicity=無知、ばかさ加減


王様の服の裾を持つことになっている侍従たちは、王様のマントの裾をさも持ち上げようとしているかのように、地面の上をまさぐり、そして何かを持っているようにふるまいました。なぜなら、絶対に、自分の馬鹿さ加減や、今の仕事に向いていないことなど示したくはなかったからです。

So now the Emperor walked under his high canopy in the midst of the procession, through the streets of his capital; and all the people standing by, and those at the windows, cried out, "Oh! How beautiful are our Emperor's new clothes! What a magnificent train there is to the mantle; and how gracefully the scarf hangs!" in short, no one would allow that he could not see these much-admired clothes; because, in doing so, he would have declared himself either a simpleton or unfit for his office. Certainly, none of the Emperor's various suits, had ever made so great an impression, as these invisible ones.


・canopy=天蓋(のように覆うもの)
・procession=行進、行列
・capital=首都
・stand by=そばにいる
・gracefully=優雅に
・scarf=肩掛け
・in short=要するに
・simpleton=ばか者
・impression=印象、感動、影響


そして今や、王国の首都の通りで、行列の中ほどの高い天蓋の下で王様は歩いていました。すべての住民は通りの脇で見ていて、窓越しに見ている人たちが「おお、なんと王様の新しい服の美しいこと!マントの裾も素晴らしい!そしてスカーフも!」要するにみんな、このとても称賛されている服が自分には見えないなど認めたくなかったのです。だって、認めてしまったら、自分が馬鹿であるか、自分の職業にふさわしkないと宣言することになってしまうからです。これだけは確かでした。つまり、今までの王様のどんな服も、この見えない服ほど皆に影響を与えたものはなかったということです。

"But the Emperor has nothing at all on!" said a little child.


"Listen to the voice of innocence!" exclaimed his father; and what the child had said was whispered from one to another.


・innocence=純真


「でもさ、王様は何にも着ていないじゃない!」と小さい子供が言いました。
「純真な子どもの言うことに耳を傾けるべきだ!」とその父親が大きな声で言いました。そして、その子供が言ったことが人から人へと囁かれたのです。


"But he has nothing at all on!" at last cried out all the people. The Emperor was vexed, for he knew that the people were right; but he thought the procession must go on now! And the lords of the bedchamber took greater pains than ever, to appear holding up a train, although, in reality, there was no train to hold.


・vexed=イライラした、困った
・took pains to:take pains to~=苦心して~する
・appear=(~のように)見える
・hold up=維持する、支える


「でも、王様は何も着ていないじゃないか!」とついにみんなが叫び出しました。王様は困りました。だって、人々が言っていることは正しいと知っていたからです。でも、今は、この行進を続けなければと思いました!そしてお付きの者たちは、実際、捧げ持つ裾もないのに、まるで裾を捧げ持っているかのように見せるのにいっそう苦心したのでした。

これで『裸の王様』のお話はおしまい!

英語でアンデルセン童話「裸の王様」(2)

臆病な王様は、また別の臣下を遣いに…

The Emperor now sent another officer of his court to see how the men were getting on, and to ascertain whether the cloth would soon be ready. It was just the same with this gentleman as with the minister; he surveyed the looms on all sides, but could see nothing at all but the empty frames.


・officer=役人
・the men=the impostors
・ascertain=究明する
・survey=見回す
・but=except


王様はまた別のお城の役人を男たちのところにやって、仕事の進み具合はどうか、いつ頃布が出来上がりそうかを確かめさせたのです。今度も老大臣の時と同じでした。役人はいろんな角度から機織り機を見ましたが、空の機械があるばかりで、ほかには何も見ることができません。

"Does not the stuff appear as beautiful to you, as it did to my lord the minister?" asked the impostors of the Emperor's second ambassador; at the same time making the same gestures as before, and talking of the design and colors which were not there.


・my Lord 閣下
・ambassador=大使


「この布は、老大臣閣下の時と同じように美しく見えませんか?」詐欺師たちは、この王様の二人目の大使に尋ねました。そして、以前と同じように布を織っているふりをしたり、ありもしない布の柄や色について話したりしました。

"I certainly am not stupid!" thought the messenger. It must be, that I am not fit for my good, profitable office! That is very odd; however, no one shall know anything about it." And accordingly he praised the stuff he could not see, and declared that he was delighted with both colors and patterns. "Indeed, please your Imperial Majesty," said he to his sovereign when he returned, "the cloth which the weavers are preparing is extraordinarily magnificent."


・messenger=使者
・profitable=もうかる、有益な
・odd=奇妙な、変な、おかしな
・accordingly=従って、だから
・declare=はっきり言う、断言する、示す
・delighted with~=~を喜んでいる
・your Imperial Majesty=皇帝陛下(呼びかけ)
・sovereign=国王
・magnificent=素晴らしい


「私は決して馬鹿ではない!」と使者は思いました。きっと、私が今のこの素晴らしい、お金も頂ける仕事に向いていないということなんだ!すごく思いがけないことだけど、このことは誰も気がつきゃしない」というわけで、使者は見えもしない布を褒め、色も模様もすばらしいとはっきり言いました。「国王閣下、まったく」と使者は戻ると国王に向かって言いました。「機織り職人たちが織っている布は非常に素晴らしいものです」

The whole city was talking of the splendid cloth which the Emperor had ordered to be woven at his own expense.


And now the Emperor himself wished to see the costly manufacture, while it was still in the loom. Accompanied by a select number of officers of the court, among whom were the two honest men who had already admired the cloth, he went to the crafty impostors, who, as soon as they were aware of the Emperor's approach, went on working more diligently than ever; although they still did not pass a single thread through the looms.


・a number of=多数の
・select=えりぬきの
・crafty=悪賢い
・diligently=熱心に、勤勉に


町中が、王様が自分でお金を出して織るように命じた素晴らしい布の話で持ちきりになっていました。
そして、今や王様自身が、まだ機織り機の中にある、その高価な作品を見たくてたまらなくなったのです。宮殿にいるえりぬきのたくさんの役人を伴って、その中にはあの正直な、すでに布のことを褒めた二人もいたのですが、王様は悪賢いあの詐欺師のところへ行きました。王様がやってくるのに気がつくと、二人の詐欺師はいっそう熱心に働きつづけるふりをしました。まだ一本の糸も機織り機の中に通していないのに、です。


"Is not the work absolutely magnificent?" said the two officers of the crown, already mentioned. "If your Majesty will only be pleased to look at it! What a splendid design! What glorious colors!" and at the same time they pointed to the empty frames; for they imagined that everyone else could see this exquisite piece of workmanship.


・crown=王冠、王位
・your Majesty=国王陛下
・if…only~=ただ~でさえあればいいのだが
・glorious=美しい
・exquisite=この上なく素晴らしい
・workmanship=[職人の]技量、作品、出来映え


「全く素晴らしいではありませんか」と、王様の臣下のあの二人の役人が言いました。「国王閣下がご覧になればお分かりになるのですが!なんと素晴らしい模様でしょう!なんと美しい色なんでしょう!」そう言いながら二人は空の機織り機を指さしました。なぜなら、二人はほかのみんなはこのこの上なく素晴らしい職人の作品を見ることができているんだと思っていたからです。

"How is this?" said the Emperor to himself. "I can see nothing! This is indeed a terrible affair! Am I a simpleton, or am I unfit to be an Emperor? That would be the worst thing that could happen--Oh! the cloth is charming," said he, aloud. "It has my complete approbation." And he smiled most graciously, and looked closely at the empty looms; for on no account would he say that he could not see what two of the officers of his court had praised so much. All his retinue now strained their eyes, hoping to discover something on the looms, but they could see no more than the others; nevertheless, they all exclaimed, "Oh, how beautiful!" and advised his majesty to have some new clothes made from this splendid material, for the approaching procession. "Magnificent! Charming! Excellent!" resounded on all sides; and everyone was uncommonly gay. The Emperor shared in the general satisfaction; and presented the impostors with the riband of an order of knighthood, to be worn in their button-holes, and the title of "Gentlemen Weavers."


・approbation=称賛
・graciously=愛想よく
・on no account=決して[どうしても・どうあっても・どんなことがあっても・絶対に]~しない
・retinue=〔要人に付き添う〕供人たち
・strain=〔身体の一部などを〕最大限に働かせる
・approaching=近づく、差し迫った
・procession=行進、行列
・resound=〔大音響が〕鳴り響く、とどろく
・uncommonly=極めて
・gay=陽気な、快活な
・share in=~を分かち合う、~を共有する
・general=全員の、全体的な
・riband=〔賞として与えるためのまたは装飾用の〕リボン
・order=順位
・knighthood=爵位、ナイト爵団◆これを授かると Sir の尊称が名前の前につく
・title=称号、肩書き
・Gentlemen:Gentleman=準貴族(貴族ではないが家紋を付けることを許された特権階級)
・weaver=織工


「これは一体どうしたことか?」と王様は思いました。「私には何も見えないぞ!これは本当に大変なことだ!私がばかだということなのか、あるいは国王の座にふさわしくないということなのか?もしそうなら最悪だ」そう思って、これは口に出して言いました。「おお、なんと美しい布じゃ!」「最高の称賛に値する」王様はこう言ってこれ以上ないほど愛想よく微笑んで、空の機織り機をもっと近くに行って見ました。なぜなら、王様の臣下の二人の役人が褒めちぎったものを見えないなどとはどんなことがあっても言えなかったからです。王様のお供の者も機織り機の上に何か見えないかと目を凝らしましたが、みんな誰も同じように何も見ることができませんでしたが、こう大きな声で言いました。「おお、なんと美しい!」そして王様に近々ある行進のために、この素晴らしい布で新しい服を作らせてはいかがかでしょうと言いました。「それはいい!すばらしい!なんという素晴らしいことだ!」とそこにいた人たちはみな叫びました。みんな異様なほど陽気でした。王様もみんなの満足げな雰囲気に浸りました。そして、詐欺師たちにボタンホールに付けるようにと爵位を表すリボンを贈り、”準貴族職工”という称号を与えたのです。

The rogues sat up the whole of the night before the day on which the procession was to take place, and had sixteen lights burning, so that everyone might see how anxious they were to finish the Emperor's new suit. They pretended to roll the cloth off the looms; cut the air with their scissors; and sewed with needles without any thread in them. "See!" cried they, at last.
"The Emperor's new clothes are ready!"


・rogue=悪党
・anxious=~しようと苦心して
・off the looms=織機からはずして
・them=needles


行進の行われる前の晩は、悪党たちは一晩中起きていて、王様の新しい服の仕上げを熱心にやっているところがみんなによく見えるようにと、16もの松明を燃やしました。機織り機から布をはずして巻くふりをしたり、ハサミで空気を切ったり、糸の通っていない針で縫ったのです。「ごらんください!」と悪党たちはついに叫びました。「王様の新しい服が出来上がりました!」

英語でアンデルセン童話「裸の王様」(1)

裸の王様の原題はこれなのね!


私の拙い訳を付けます。

THE EMPEROR'S NEW CLOTHES


Many years ago, there was an Emperor, who was so excessively fond of new clothes, that he spent all his money in dress. He did not trouble himself in the least about his soldiers; nor did he care to go either to the theatre or the chase, except for the opportunities then afforded him for displaying his new clothes. He had a different suit for each hour of the day; and as of any other king or emperor, one is accustomed to say, "he is sitting in council," it was always said of him, "The Emperor is sitting in his wardrobe."


・excessively=非常に、極端に
・in the least=少しも
・trouble oneself about=頓着する
・chase=狩り
・afford=~を提供する
・accustomed t=~が習慣になっている
・in council=会議中で
・wardrobe=洋服だんす


昔々、大変新しい服が好きで、自分のお金を全部服につぎ込んでしまう王様がいました。少しも兵隊たちのことも頓着なしで、劇場に行ったり狩りに行ったりすることにも興味がありません。関心があるのは、自分の新しい服を披露できる機会だけ。1日のうちでも1時間ごとに服を替えました。普通王様とか皇帝のことは皆が「今会議中でいらっしゃいます」というものだが、この王様のことは「衣裳部屋に座っていらっしゃいます」というのが常だった。

"The Emperor is sitting in his wardrobe."っていうのは笑っちゃいますね。


Time passed merrily in the large town which was his capital; strangers arrived every day at the court. One day, two rogues, calling themselves weavers, made their appearance. They gave out that they knew how to weave stuffs of the most beautiful colors and elaborate patterns, the clothes manufactured from which should have the wonderful property of remaining invisible to everyone who was unfit for the office he held, or who was extraordinarily simple in character.


・capital=首都
・court=王宮
・rogue=詐欺師、悪党
・weaver=機織職人
・make one's appearance=姿を現す、登場する
・gave out:give out=言い立てる、宣言する
・stuff=物、代物
・elaborate=複雑な
・manufacture=製作する
・from which:whichは"stuffs"を指す
・property=特性
・remain=〔状態が〕変わらず~のままである
・unfit=不相応な
・office=職場、任務
・simple=単純な、バカな


この王様の国の首都は大きな町でしたが、そこでは毎日楽しい時が流れていました。宮殿には毎日見知らぬ人たちがやって来ました。ある日、二人の詐欺師が自分たちは機織り職人だと言ってやってきました。私たちはこの世で一番美しい色と複雑な模様の織物を織りあげることができます、そしてその織物で作った洋服は、ふさわしくない仕事をしている人やひどく頭の悪い人には見えないという素晴らしい性質があるのです、と言いたてました。

不似合いな仕事をしてるやつや馬鹿には見えないって言ってるわけで。


"These must, indeed, be splendid clothes!" thought the Emperor. "Had I such a suit, I might at once find out what men in my realms are unfit for their office, and also be able to distinguish the wise from the foolish! This stuff must be woven for me immediately." And he caused large sums of money to be given to both the weavers in order that they might begin their work directly.


・Had I such a suit=If I had such a suit:倒置の形の仮定法
・realm=王国、国土
・directly=すぐに、直ちに


「これはまったく素晴らしい服に違いない!」と王様は思いました。「そういう服を着れば、たちどころにわが王国の誰がその地位にふさわしくないかすぐ分かるし、賢いやつと馬鹿な奴をすぐ見分けられる!すぐにその織物を織らせよう」そして、直ちにその織物職人たちが仕事を始められるようにとたくさんのお金を与えました。

So the two pretended weavers set up two looms, and affected to work very busily, though in reality they did nothing at all. They asked for the most delicate silk and the purest gold thread; put both into their own knapsacks; and then continued their pretended work at the empty looms until late at night.


・pretended=偽りの
・loom=はた、織機
・affect=~するふりをする
・delicate=優美な、繊細な、やわらかな
・knapsack=


糸のついてない織機を動かして、よーやるよ、という感じですな(笑)


それから二人の偽の機織り職人たちは二つの機織り機を置いて、実際には何もしていなかったのですが、とても忙しく働いているふりをしました。一番柔らかな絹と、まじりけのない純金の糸を用意するように言い、それは自分たちのリュックに入れました。そして、空の織機に向かって夜遅くまで働いているふりをしました。

"I should like to know how the weavers are getting on with my cloth," said the Emperor to himself, after some little time had elapsed; he was, however, rather embarrassed, when he remembered that a simpleton, or one unfit for his office, would be unable to see the manufacture. To be sure, he thought he had nothing to risk in his own person; but yet, he would prefer sending somebody else, to bring him intelligence about the weavers, and their work, before he troubled himself in the affair. All the people throughout the city had heard of the wonderful property the cloth was to possess; and all were anxious to learn how wise, or how ignorant, their neighbors might prove to be.


・get on with=~に取り組む
・elapse=経過する
・simpleton=ばか者
・manufacture=製品
・To be sure=確かに
・risk=危険にさらす
・person=人格
・intelligence=(敵に関する)情報
・trouble oneself=心配する、やきもきする
・affair=事柄、件、問題
・property=特性、性質
・be to~=~するはず
・ignorant=無知な、ばかな
・prove to~=~であることが判明する


「職人たちが私の服を作っているところを見たいものだ」としばらくして王様は思いました。けれど、馬鹿者やふさわしくない地位にいる者には出来上がったものを見ることができないということを思い出して、ちょっと困ったなと思いました。確かに自分は人格に問題はない、それでもそのことでやきもきする前に、まず、誰かを職人たちとその仕事の様子を見に行かせた方がいいなと思いました。町中の人たちは、この布が持つという素晴らしい特質について既に聞いて知っていました。そして、自分の周りの人たちがそのことでどれだけ賢いのか馬鹿なのかが分かることを楽しみにしていたのです。

"I will send my faithful old minister to the weavers," said the Emperor at last, after some deliberation, "he will be best able to see how the cloth looks; for he is a man of sense, and no one can be more suitable for his office than he is."


・faithful=信頼できる、誠実な
・minister=〔国家の〕大臣
・deliberation=熟考、よく考えること
・a man of sense=分別のある人
・office=職場、職業、任務


「信頼している年取った大臣を職人たちのところに行かせよう」と王様はしばらく考えてから、ついに言いました。「彼なら布がどんな具合かしっかり見てきてくれるに違いない。分別があるから、この任務にふさわしい者はほかにいない」

So the faithful old minister went into the hall, where the knaves were working with all their might, at their empty looms. "What can be the meaning of this?" thought the old man, opening his eyes very wide. "I cannot discover the least bit of thread on the looms." However, he did not express his thoughts aloud.


・knave=悪党、ごろつき
・with all one's might=全力を出して[挙げて・尽くして]、一生懸命に
・loom=はた、織機
・not~the least bit=全然[全く・これっぽっちも]~ない


そこで、誠実な老大臣は広間に入って行きました。そこでは、悪党たちが、空の機織り機に向かって一生懸命仕事をしているのでした。「これは一体どうしたことだ」と老大臣は目を見張りながら思いました。「機織り機に一本も糸が見えないぞ」でも、大臣は思ったことを口には出しませんでした。

The impostors requested him very courteously to be so good as to come nearer their looms; and then asked him whether the design pleased him, and whether the colors were not very beautiful; at the same time pointing to the empty frames. The poor old minister looked and looked, he could not discover anything on the looms, for a very good reason, viz: there was nothing there. "What!" thought he again. "Is it possible that I am a simpleton? I have never thought so myself; and no one must know it now if I am so. Can it be, that I am unfit for my office? No, that must not be said either. I will never confess that I could not see the stuff."


・impostor=詐欺師
・courteously=丁寧に
・be so good as to~=どうぞ~してください
・frame=骨組み、枠
・poor=哀れな、不幸な
・for a very good reason=非常に健全な理由で[まったく当然な理由で]
・viz=すなわち、つまり
・What!=なんてこった!
・I am so=I am a simpleton
・stuff=物、材料


詐欺師たちは、大臣に大変丁寧に、空の機織り機を指さしながらこう言いました。「どうぞもっと機織り機の近くに来て見てください。デザインはいかがですか。色の美しさはどうでしょうか」かわいそうな大臣は、何度も目を凝らして見ましたが、機織り機の上には何にもありません。それはまったく当然のこと、つまり、そこには何もなかったのですから。「なんてこった!」とまた大臣は思いました。「私がばか者だというのか?ばか者だなんて思ったこともない。私がばか者だとしても、今はまだ誰も知らないはずだ。私が自分の職務にふさわしくないということなのか。そんなはずもない。布が見えないなんて金輪際言うまい」

"Well, Sir Minister!" said one of the knaves, still pretending to work. "You do not say whether the stuff pleases you."
"Oh, it is excellent!" replied the old minister, looking at the loom through his spectacles. "This pattern, and the colors, yes, I will tell the Emperor without delay, how very beautiful I think them."


・spectacles=メガネ
・without delay=即刻


「それで、お大臣様!」詐欺師の一人が、働いているふりをしながら言いました。「布にご満足いったかどうかまだお聞きしていないのですが」「おお、大変素晴らしい!」と老大臣は眼鏡をかけて機織り機を見ながら答えました。「模様も色も素晴らしい。さっそく、どんなに美しいか王様に申し上げよう」

"We shall be much obliged to you," said the impostors, and then they named the different colors and described the pattern of the pretended stuff. The old minister listened attentively to their words, in order that he might repeat them to the Emperor; and then the knaves asked for more silk and gold, saying that it was necessary to complete what they had begun. However, they put all that was given them into their knapsacks; and continued to work with as much apparent diligence as before at their empty looms.


・be obliged to~=~に感謝している
・impostor=詐欺師
・pretended=偽りの
・attentively=注意深く
・apparent=見掛けの、あたかも~のような
・diligence=熱心さ


「大変感謝申し上げます」と詐欺師たちは言い、嘘の布の様々な色の名前を言ったり、デザインについて話したりしました。老大臣は、それをそのまま王様に伝えようと、注意深く聞いていました。それから、詐欺師たちは、これを完成させるにはもっと絹糸と金糸が必要だから用意して下さいと言いました。しかし、与えられたものはすべて自分たちのリュックに入れてしまい、以前と同じように、空の機織り機に向かって、まるで熱心に働いているかのようなふりを続けました。

かわいそうなのは大臣でござーい!(笑)

英語でマーク・トウェイン短編『私の懐中時計』

こういうのはいかが

本文は”Gutenburg”から、辞書は”英辞郎””リーダーズ英和辞典(研究社)、訳は、手元にある『マーク・トウエン短編集』(古沢安二郎訳・新潮文庫)を使わせていただいています。


この色の箇所は、注意すべき用法などです。


MY WATCH--[Written about 1870.]


私の懐中時計

AN INSTRUCTIVE LITTLE TALE


・INSTRUCTIVE=ためになる、教訓的な

My beautiful new watch had run eighteen months without losing or gaining, and without breaking any part of its machinery or stopping.  I had come to believe it infallible in its judgments about the time of day, and to consider its constitution and its anatomy imperishable.


・losing:lose=(時計が)遅れる
・gain=〔時間が〕進む
・infallible=絶対確実な
・constitution=構造、気質
・anatomy=組織
・imperishable=不滅の


私の美しい新しい懐中時計はもう一年半も遅れもせず進みもせず、機械のどこにも故障はなく、また一度も止まったこともなく動いて来た。私はこの時計の知らせる時間には絶対に間違いがないし、造りも機械もどんなことがあってもこわれることもないと信じるようになっていた。


But at last, one night, I let it run down.  I grieved about it as if it were a recognized messenger and forerunner of calamity.  But by and by I cheered up, set the watch by guess, and commanded my bodings and superstitions to depart.


・run down=[時計が]止まる
・recognized=存在を認められる
・messenger=使者
・forerunner=先人、先駆者
・calamity=災難、不幸
・cheer up=元気になる
・by guess=推測で
・boding:bode=予言する、予告する
・superstition=迷信、恐れ
・depart=立ち去る、離れる、それる


ところが或る日の晩とうとう私はこの時計を止まらせてしまった。それがまるで災難でもはっきり知らせに来た使者か前触れかなどのように私を悲観させた。しかしやがて私は元気を出し、あてずっぽに時間を合わせ、そんな前兆や迷信は強いて追い払ってしまった。


Next day I stepped into the chief jeweler's to set it by the exact time, and the head of the establishment took it out of my hand and proceeded to set it for me.  Then he said, "She is four minutes slow-regulator wants pushing up."  I tried to stop him--tried to make him understand that the watch kept perfect time.  But no; all this human cabbage could see was that the watch was four minutes slow, and the regulator must be pushed up a little; and so, while I danced around him in anguish, and implored him to let the watch alone, he calmly and cruelly did the shameful deed.


・chief=〔地位や権限が〕最高位の
・jeweler=宝石商、宝石職人
・set=〔時間などを〕合わせる
・establishment=設立物、施設
・proceed=〔行為を〕始める
・regulator=調節装置
・push up=押し上げる
・cabbage=怠け者、ぐうたら
・in anguish=苦悩して、心痛のあまり
・implore=〔切実に〕~を請う
・cruelly=無情にも
・shameful=恥ずべき、けしからぬ


翌日私は正確な時間に合わせようと思って一流の宝石時計店に足を運んだ。するとその店の主人は私の手から時計を奪い、私にやらせないで自分で時間を合わせにかかった。そして主人は言った。「この時計は四分遅れていますな――緩急針を押し上げる必要がある。」私はやめさせようとした――時計の時間はきちんと合っているのだということを主人に判らせようとした。しかしだめだった。その間抜け野郎には時計が四分遅れているということと、どうあっても緩急針を少し押し上げなければならんということしか判らなかった。だから私がどんなにいらいらして主人のまわりを歩き回りながら時計に手をつけないでくれと頼みこもうと、相手は落ち着き払って無残にもけしからん直し方をしてしまった。


*緩急針:「時計三昧」というサイトに次のような説明と図があります。

「ヒゲゼンマイの外端は、ヒゲ持ちで固定され、中心寄りにヒゲ棒が接触しています。この位置を緩急針で左右に調整することで、ヒゲゼンマイの有効長さが規制される仕組みです。 ヒゲゼンマイの有効長が短くなれば、テンプの振動がわずかに速くなり、進み気味になります。逆に長くすれば遅れ気味になります。 このように時計の精度を微調整する仕組みを緩急針調整装置といいます」Photo 


My watch began to gain.  It gained faster and faster day by day.  Within the week it sickened to a raging fever, and its pulse went up to a hundred and fifty in the shade.  At the end of two months it had left all the timepieces of the town far in the rear, and was a fraction over thirteen days ahead of the almanac.  It was away into November enjoying the snow, while the October leaves were still turning.  It hurried up house rent, bills payable, and such things, in such a ruinous way that I could not abide it.


・sicken=病気になる
・raging fever=ひどい熱
・pulse=脈拍、鼓
・in the shade=日陰で
・timepiece=時計、ストップウオッチ◆腕時計でも掛け時計でもよいが、チャイムなどの鳴らないものを指すことが多い
・in the rear=(~の)背後に
・fraction=(a~) ((副詞的)) ほんの少し
・almanac=暦
・hurried up=急がせる、急かす
・house rent=家賃
・bill payable=支払手形
・ruinous=破滅的な
・abide=我慢する


私の時計は進みはじめた。日増しにどんどん進むようになった。一週間もたたないうちに時計は猛烈な熱病にかかってしまい、脈拍は日陰で百五十に上った。二ヵ月の終わりころになると、この時計は町中のあらゆる時計をはるかに追い越してしまい、カレンダーより十三日と少しばかり行き過ぎてしまった。まだ十月の木の葉が紅葉しているというのに、時計のほうはとうに雪を楽しむ十一月にはいっていた。お陰で家賃や払いの勘定やそういったものにせき立てられ、それがひどく懐にひびくのでとうてい辛抱しきれなくなった。


さすがユーモア作家、大分面白い時計になってきました"in such a ruinous way"が「ひどく懐にひびくので」という訳になるとは…さすが翻訳家ですね素人にはできない


I took it to the watchmaker to be regulated.  He asked me if I had ever had it repaired.  I said no, it had never needed any repairing. He looked a look of vicious happiness and eagerly pried the watch open, and then put a small dice-box into his eye and peered into its machinery He said it wanted cleaning and oiling, besides regulating--come in a week.


・regulate=〔機器などを〕調整する
・vicious=意地の悪い
・pried:pry=~をてこで動かす
dice-box=さい筒◆さいころを入れて振り出すための筒Photo_2
・machinery=機械装置


私は直してもらおうと時計専門の店へ持ち込んだ。主人は今まで直したことがあるかと尋ねた。ない、今までちっとも直す必要はなかったのだと私は答えた。主人は意地悪い満足そうな表情をうかべて懸命に時計をこじ開け、やがて小さな筒眼鏡を目に当てて機械を覗き込んだ。これは修理だけではなしに分解掃除をして油を注さなければならん――一週間したら取りに来いと主人は言った。


Photo_3


After being cleaned and oiled, and regulated, my watch slowed down to that degree that it ticked like a tolling bell.  I began to be left by trains, I failed all appointments, I got to missing my dinner; my watch strung out three days' grace to four and let me go to protest; I gradually drifted back into yesterday, then day before, then into last week, and by and by the comprehension came upon me that all solitary and alone I was lingering along in week before last, and the world was out of sight.  I seemed to detect in myself a sort of sneaking fellow-feeling for the mummy in the museum, and a desire to swap news with him.


・tick=カチカチと音を立てる
・toll=〔鐘などが〕繰り返しゆったりと鳴る
・miss=〔機会などを〕逃す、見逃す
・strung out:string out=〈米〉〔話・物事の進行などを〕引き延ばす
・grace=《金》猶予期間◆【同】grace period
・protest=(約束手形などの)支払いを拒絶する
・came upon:come upon=~を襲う
・solitary=世捨て人
・linger=居残る、ぐずぐずする
・week before last=《the ~》先々週
・detect=~を見つける、〔存在などに〕気付く
・sneaking=ひそかな
・fellow-feeling=共感、同情、思いやり、仲間意識、連帯感
・mummy=ミイラ
・swap=~を交換する、~をやりとりする


分解掃除と油注しをして修理してもらった時計は、こんどはすっかり遅れるようになり、教会の鐘のようにゆっくり時を刻んでいた。私は汽車には乗り後れるようになり、すべて約束の時間には間に合わず、夕食も食べそこねるようになった。時計のお陰で借金の支払期限の猶予の三日が四日に延びてしまい、言い訳に出かけさせられてしまった。次第に私は昨日に舞い戻り、やがて一昨日に戻り、やがて先週に戻り、そのうちに自分だけがぽつんと独りっきりで先々週をうろうろして世の中に取り残されてしまったことが判って来た。私は博物館のミイラにひそかに同胞感をいだき、ミイラと世間話をしたいという望みを持つ気持ちになったらしいことに気がついた。


このあたりの表現も傑作


遅れるようになってしまった時計を…


I went to a watchmaker again.  He took the watch all to pieces while I waited, and then said the barrel was "swelled."  He said he could reduce it in three days.  After this the watch averaged well, but nothing more.  For half a day it would go like the very mischief, and keep up such a barking and wheezing and whooping and sneezing and snorting, that I could not hear myself think for the disturbance; and as long as it held out there was not a watch in the land that stood any chance against it.


・barrel=〔時計の〕香箱(こうばこ)◆ぜんまいが入っている薄い円筒:「Repair]というサイトに「ゼンマイがすっぽりと入る形状をしていて、ゼンマイが切れてしまって、時計のほかのパーツに損傷を与えないよう作られた工夫の一つ」とありますPhoto_2
・reduce=縮小する
・average=平均する
・mischief=いたずらっ子
・keep up=〔一定の態度を〕取り続ける
・bark=吠える、叫ぶ
・wheezing:wheeze=苦しそうに息をする、ゼーゼー息を切らす
・whoop=〔ほえるような〕叫び声を上げる、〔百日咳のように〕ゼーゼーと息をする
・sneezing:sneeze=くしゃみをする
・snort=鼻を鳴らす
・disturbance=騒ぎ
・held out:hold out=〔最後まで〕持ちこたえる、抵抗する
・stood against:stand against=~に立ち向かう


私はまたべつの時計店へ出かけて行った。時計屋は私の待っているあいだに機械を全部ばらばらにしてみて、やがてぜんまいの香箱がふくれていると言った。三日もかかればふくらみをもとに戻すことができると言った。そののち時計は平均すればうまく行ったが、それだけの話であった。つまり半日のあいだ時計は唸ったり、息を切らしたり、わめき立てたり、くしゃみをしたり、鼻息を立てたりしつづけ、その騒がしさのお陰で自分の考えごとも聞きとれないくらい、まるでいたずらっ子そっくりの動き方をしていた。そうやってがんばっているかぎりは国中どこをさがしてもこれを追い越す時計は見当たらないくらいであった。


But the rest of the day it would keep on slowing down and fooling along until all the clocks it had left behind caught up again.  So at last, at the end of twenty-four hours, it would trot up to the judges' stand all right and just in time.  It would show a fair and square average, and no man could say it had done more or less than its duty.  But a correct average is only a mild virtue in a watch, and I took this instrument to another watchmaker.  He said the king-bolt was broken.  I said I was glad it was nothing more serious.  To tell the plain truth, I had no idea what the king-bolt was, but I did not choose to appear ignorant to a stranger.He repaired the king-bolt, but what the watch gained in one way it lost in another.  It would run awhile and then stop awhile, and then run awhile again, and so on, using its own discretion about the intervals. And every time it went off it kicked back like a musket. I padded my breast for a few days, but finally took the watch to another watchmaker.


・fool along=ブラブラ進む
・caught up:catch up=追いつく
・trot=小走りする
・judges' stand =審判員タワー
・fair and square=正しい、公明正大な
・mild=軽度の
・tell the plain truth=包み隠さずに言う
・discretion=思慮、分別、行動の自由、決定権
・went off:go off=止まる
・kick back=反動する、
・musket=マスケット銃(ここによると「18世紀初頭火縄銃に代わり、まだ先込めであるが撃針で強打することにより火薬を発火させるマスケット銃が主流となった。機能的に火縄銃と大差はないが口径がやや小さく銃身が長くなったことが特色である。これは射程距離を長くしかつ命中率をあげるためだ。すなわち火縄銃では狙いはつけられず、ある方向に撃つにすぎなかった。ただ火縄銃から現在のライフルまで命中した時の人体または馬に与える威力は大きく変わらない。その意味ではこれにより初めて現在のライフル(施条されたものがライフルだが、日本の小銃に当る言葉が英独語にはなく、通常小銃は全てライフルと呼ばれる)の機能を持ったとも言える」)
・pad=~に当て物をするMusket


ところが後の半日はだんだん動き方がにぶくなり、道草を食っているうちにはとうとう今まで追い越して来た時計全部に追いつかれてしまうのであった。そういうふうに最後に二十四時間の終わりになれば、時計は時間どおりきちんと審判台に駆けつけるので、なるほど平均してみれば実に正確な時間を守っている以上、時計としての義務をやり過ぎているとも怠っているとも文句をつけることはできなかった。しかし時計の場合、平均して正確だということは長所にしてもあまり賞めたことでもないので、私はまたべつの時計屋へこの時計を持って行った。時計屋はキング・ボルトがこわれていると言った。私はそれ以上のひどい故障でなくてよかったと言った。ざっくばらんに白状するなら、キング・ボルトとは何のことか自分にはさっぱり見当もつかなかったのだが、見ず知らずの人間の前で無知をさらすことは好まなかった。時計屋はキング・ボルトを直してくれたが、時計はこんどは一方で進んだ分をほかで埋め合わせに遅れるのである。つまり、しばらく時計が急いでいると思うと、やがて、しばらく休止し、やがてまたしばらく急ぐという具合に、自分勝手に息抜きのころあいを加減するのであった。しかも時計は進むたびごとに小銃のように反動で戻るので、四、五日のあいだは私もあばれようとする胸を何とかなだめていたが、とうとうまたほかの時計屋へそれを持ち込んだ。


He picked it all to pieces, and turned the ruin over and over under his glass; and then he said there appeared to be something the matter with the hair-trigger.  He fixed it, and gave it a fresh start.  It did well now, except that always at ten minutes to ten the hands would shut together like a pair of scissors, and from that time forth they would travel together.  The oldest man in the world could not make head or tail of the time of day by such a watch, and so I went again to have the thing repaired.  This person said that the crystal had got bent, and that the mainspring was not straight.  He also remarked that part of the works needed half-soling.  He made these things all right, and then my timepiece performed unexceptionably, save that now and then, after working along quietly for nearly eight hours, everything inside would let go all of a sudden and begin to buzz like a bee, and the hands would
straightway begin to spin round and round so fast that their individuality was lost completely, and they simply seemed a delicate spider's web over the face of the watch.  She would reel off the next twenty-four hours in six or seven minutes, and then stop with a bang.


・ruin=廃墟
・hair-trigger=ちょっと触れただけで発射する「銃の触発引き金」Hair_trigger
・make head or tail of=~を理解[把握]する◆【用法】通例、否定形で用いられる
・crystal=〔文字盤を保護する〕時計のガラス
・mainspring=(時計の)主ぜんまい
・works=仕掛け
・soling:sole=〔靴などに〕靴底を付ける
・timepiece=時計
・perform=機能する
・unexceptionably=非の打ちどころなく、申し分なく
・save that=~は別として
・let go=自制心から自由になる、自分を解き放つ
・buzz=ブンブンうなる、ざわつく
・straightway=〔英古〕 直ちに、即座に.
・reel off=巻き取る、並べたてる


時計屋は機械を全部ばらばらにし、筒眼鏡の下でそれを幾度も引っくり返していたが、やがて毛状引き金のどこかに故障があるようだと言った。時計屋はそれを修理してくれてさいさきもよさそうだった。ところがこんどの時計はうまく動くには動いたが、十時十分前になると両針がきまって鋏の刃のように合わさってしまい、それからは両方の針がくっつき合ったまま進むのである。そういう時計では世の中でどんな年の功を積んだ人間でもさっぱり時間の見分けがつかないので、私はまたまた時計を直してもらいに出かけなければならなかった。こんどの時計屋はガラス蓋が曲がっているし、大ぜんまいが真っ直ぐになっていないと言った。また機械の部品の一部に底金の半張りを当てなければならないとも言った。時計屋はそういうものをすっかり修理してくれた。すると私の時計は一点の非のうちどころもない動き方をするようになった。ただし、時によると八時間ばかり大人しく動いているかと思うと、突然内部の機械が全部ゆるんで蜜蜂のような唸り声を立てはじめ、時を移さず両針はぐるぐると急速な回転をはじめ、針の見分けが全然つかなくなり、時計の盤面に薄いくもの巣がかかったように見えて来るのであった。そして六、七分のあいだにつぎの二十四時間を回りきってしまい、やがてかちんと音を立てて停止してしまうのであった。


I went with a heavy heart to one more watchmaker, and looked on while he took her to pieces.  Then I prepared to cross-question him rigidly, for this thing was getting serious.  The watch had cost two hundred dollars originally, and I seemed to have paid out two or three thousand for repairs.  While I waited and looked on I presently recognized in this watchmaker an old acquaintance--a steamboat engineer of other days, and not a good engineer, either.  He examined all the parts carefully, just as the other watchmakers had done, and then delivered his verdict with the same confidence of manner.


He said:

"She makes too much steam-you want to hang the monkey-wrench on the safety-valve!"

I brained him on the spot, and had him buried at my own expense.

My uncle William (now deceased, alas!) used to say that a good horse was, a good horse until it had run away once, and that a good watch was a good watch until the repairers got a chance at it.  And he used to wonder what became of all the unsuccessful tinkers, and gunsmiths, and shoemakers, and engineers, and blacksmiths; but nobody could ever tell him.


・cross-question=反対尋問をする
・rigidly=堅苦しく、厳しく
・presently=やがて、まもなく
・other days=昔
・confidence=自信
・monkey-wrench=モンキースパナ
・safety-valve=安全弁
・brain=~の頭を殴る[たたき割る]
・on the spot=すぐその場で、直ちに
・tinker=下手な職人
・gunsmith=鉄砲工
・blacksmith=鍛冶屋、蹄鉄工


私は重い心を抱いてもう一度ほかの時計屋へ出かけて行き、その時計屋が機械を分解するのを眺めていた。やがて私は厳重に時計屋に問いただす覚悟をきめた。この問題はゆゆしい問題になって来たからである。この時計はもともと二百ドル払って買ったもので、すでに修理に、二、三千ドル払わされたようである。眺めながら待っているうちに、その時計屋が古なじみの人間だということに間もなく気づいた――昔の蒸気船の機関士で、しかも大して腕のない機関士であった。彼もほかの時計屋たちがやったようにていねいにすべての部品を調べ、やがてみんなとおなじように自信たっぷりの言い方で裁決を下した。
 彼は言う――
「こいつはあんまり蒸気を出し過ぎるよ――安全弁を自在スパナでうんと締めつけてやる必要があるぞ!」


Monkey_wrench

私はその場でそいつの脳天を叩き割り、自分で費用を出してその男を葬ってもらった。
私のウィリアム叔父は(いまは惜しいことに故人となったが)良馬は一度逃げたらもう良馬でなくなるし、良い時計も一度時計屋どもにいじくられたら最後だめになるとよく言っていた。また叔父は下手くそな鋳カケ屋とか、鉄砲鍛冶とか、靴屋とか、機械屋とか、鍛冶屋とか世の中に沢山いるものだが、その連中は一体どうなるのかなあ、とよく不審がっていたが、はたしてどうなったか誰も叔父に教えてくれる者はなかった。


結構ブラックジョークですねあるいは皮肉…

英語でミーハー―”ミディアム”のJake Weberの記事

雑誌"People"から



Medium102












テレビドラマミディアム”で良いパパ、良い夫ぶりを演じている、私の憧れのJake Weberだけど、その子供時代は結構大変だったらしい


INSIDE STORY: Medium Star Jake Weber's Rock 'N' Roll Childhood


By Oliver Jones


Originally posted Friday September 11, 2009 02:00 PM EDT


Jake Weber Photo by: Frank Ockenfels 3
INSIDE STORY: Medium Star Jake Weber's Rock 'N' Roll Childhood

He spent three nights in a Nigerian prison, countless hours on the back of Mick Jagger's motorbike and a few tense moments with a half-kilo of cocaine strapped to his body while a customs officer eyed him at an Irish airport.

・customs officer=税関検査官

(彼はナイジェリアの拘置所で三晩明かしたことも、ミックジャガーのバイクの後ろに何時間も乗っていたことも、アイルランドの空港で、体に500グラムのコカインを巻き付けたまま、税関検査官の監視のもとで緊張した時間を過ごしたこともある)


Even for the free-wheeling 1960s, that's enough adventure to last at least a few lifetimes. Jake Weber accomplished all of it before he was 12.

・free-wheeling=束縛のない、自由の利く、奔放な
・lifetime=一生涯

(自由で素晴らしい時代だったといわれる1960年代であったのに、それは二回も三回も一生をやり直したと言えるほどの危険な冒険だった。ジェイク・ウェバーは、12歳になる前にそれをすべて経験してしまったのだ)


Weber, 46, who for the past five seasons has played the very picture of familial stability as down-to-earth dad Joe Dubois on Medium (premiering Sept. 25 on CBS), had a rock 'n' roll childhood that was anything but stable. As children of Tommy and Susan "Puss" Weber, parents who were at the epicenter of London's counter-cultural revolution, Weber and his younger brother Charley lead nomadic lives filled with rock music, fast cars, and very little schooling – at least of a traditional sort.

・picture=像、観念、イメージ
・familial=家族の
・stability=安定
・down-to-earth=[宙に浮いてフワフワしているのではなく〕足がしっかりと地に着いた、堅実な、〔人が〕分別[社会常識]のある
・premiere=初公開される
・rock 'n' roll=ロックンロール◆ブルースやR&Bといった黒人音楽をベースにしたアップテンポなポップス。1950年代、ラジオDJのAlan Freedが、セックスを意味するスラングであるrock and rollにヒントを得てこれらの曲をrock 'n' rollと呼んで紹介したのが名称の起源
・anything but=~どころではない、~とは程遠い
・stable=安定した
・Puss=〔呼びかけ〕ネコ(ちゃん)
・epicenter=発生地、震源地
・counter-culture=カウンター・カルチャー、対抗文化、反体制文化◆保守的な生き方に反抗する文化
・nomadic=放浪の
・schooling=学校教育

(ジェイク・ウェバー[46歳]は、『ミディアム』(新シーズンがCBSで9月25日からスタート)で、過去5シーズンにわたって、地に足のついた堅実な父親、ジョー・デュボアとして、まさにしっかりと安定した家族像を演じてきたが、小さい時は、安定とはほど遠い、ロックな子供時代を過ごした。ロンドンのカウンター・カルチャー革命の中心地に住んでいた両親、トミーとスーザンの子供として、ウェバー家の”子ネコちゃん”と、彼の弟チャーリーは、ロックミュージックや速い車に囲まれ、ほんの伝統的な学校教育すらほとんどないような放浪生活をしていたのである)


"Some people can juggle soccer balls. Me? I can roll a killer joint in about 3 seconds flat," Weber jokes. "When I was [4], basically the reason for my existence was to roll the joints."


・roll a joint=〈俗〉マリファナたばこを作る
・flat=〔数量・時間などが〕きっかり、ちょうど、ジャスト


(「サッカーボールをリフティングできるやつもいますね。僕?効き目の強いマリファナたばこを、ジャスト3秒で巻いて作ることはできますよ」と彼は冗談を言う。「四歳の時、基本的には、僕の存在理由はマリファナたばこを作ることでしたからね」)


彼とローリング・ストーンズのつながりにはびっくりですね

Mother's Death


It was a life that was by turns thrilling, chaotic and ultimately tragic. When Weber was 8 and living at the Villa Nellcôte, Rolling Stones guitarist Keith Richard's sprawling hippie hideout in the South of France, he got the devastating news that his mother, whom he had seen grow increasingly paranoid and disconnected with reality during a multi-continent spiritual quest, had died of a drug overdose.

・by turns=代わる代わる
・thrilling=スリルに富んだ
・chaotic=めちゃくちゃな
・ultimately=最後に、最終的に、究極的には
・tragic=悲惨な、悲劇的な
・the Villa Nellcôte(ヴィラ・ネルコート)

Wikipediaより

Nellcôte (often referred to as Villa Nellcôte) is a 19th century sixteen-room mansion on the waterfront(〔都市の〕海岸の土地、海岸通り) of Villefranche-sur-Mer(ヴィレフランシェ・スール・メール) in the Côte d'Azur region of southern France. Nellcôte was leased(貸す) during the summer of 1971 by Keith Richards, guitarist for The Rolling Stones and recording sessions(録音のために連続して行う〕演奏)for their classic 1972 Exile on Main St.(『メイン・ストリートのならず者』) album took place in the villa's basement.


・sprawling=〔広範囲に〕乱雑[無秩序]に広がった
・hideout=〔身を隠すための〕隠れ家、潜伏場所、アジト
・devastating=衝撃的な
・paranoid=偏執性の、被害妄想の[を持った]
・disconnected=切断[分離]された
・multi-continent=多大陸の
・spiritual quest=魂の探求◆魂の救いを求める努力
・drug overdose=薬物中毒


multi-continentの意味がよく分からないのですが、一応訳してみます。


(毎日、スリリングなことやめちゃくちゃなことが代わる代わる起こったり、最後には悲劇的な状況になるようなひどい生活だった。彼は8歳の時、”ヴィラ・ネルコート”に住んでいたが、南フランスの、その建物では、ローリング・ストーンズのギタリスト、キース・リチャーズがヒッピーの隠れ家を際限なく広げようとしていた。そこでジェイク・ウェバーは衝撃的な知らせに接することになる。その頃、彼の母親は、多大陸に広がっていた”魂の探求”に没頭していて、だんだん彼女が偏執的になり、現実から遊離していくのを、彼は目にしていたのだが、その母親が薬物中毒で死んだと知らされたのだ)


That was a seminal moment, and it changed my brother and me forever," says Weber, who years later learned that his mother, diagnosed with depression and LSD-induced schizophrenia, had in fact committed suicide. "It was one of those things you dread, and when it happened finally, your worst fear is realized. Now on our own with our father, an extremely dangerous man, and without her we were screwed."


・seminal=影響力の大きい
・diagnosed with=~と診断されて
・depression=鬱病
・LSD=lysergic acid diethylamide《化》リセルグ酸ジエチルアミド◆幻覚剤
・induced=誘発性の
・schizophrenia=統合失調症◆【語源】schizo(分離した)+phrenia(精神)◆日本精神神経学会が2002年6月30日に、差別や偏見を招きやすい「精神分裂病」という呼び名を「統合失調症」に改めた
・dread=~を恐れる、ひどく怖がる
・realize=実現する
・on one's own=自力で、独力で、単独で、自活して
・screw=~をうまく利用する、だます、苦しめる


(「その知らせを聞いた瞬間のことはとても大きな影響を僕たちにもたらしました。それ以来、弟と僕の生活はまったく変わってしまったのですから」と彼は言う。母親が鬱病であり、LSDの誘発による統合失調症とも診断されていて、実際には自殺だったということを彼は数年後に知ったのだった。「親が自殺するということは誰でも非常に恐れることで、それが現実になった時、あなたは最悪の恐怖を身をもって知ることになるのです。僕たち兄弟はひどく危なっかしい父親と何とか生きていかなくてはならなくなり、母親もいなくなって苦しい思いをすることになったのです」)


Tommy Weber was what his son calls "a force of nature"– a professional race car driver who also made rock documentaries, dealt drugs and was almost always in trouble with authorities, including the incident in Nigeria where he and his boys were held in prison on visa issues. Tommy struggled with addiction up until his death in 2006.


・dealt=deal(~を売る、取引する)の過去形
・authority=権威
・incident=事件
・prison=拘置所、刑務所
・issue=問題(点)、論点
・addiction=依存症、中毒、麻薬常用癖


"a force of nature"はもっとほかの訳があるはずだれど…


(トミー・ウェバーは、息子たちに「自然の力」と呼ばれていたが、プロのカーレーサーで、ロックのドキュメンタリーも作ったり、ヤクを売って始終権力とトラブルを起こしていた。そのトラブルの一つが、彼と息子たちがナイジェリアで、ビザの問題で拘置所に入れらることになった事件である。トミーは、2006年に死ぬまで麻薬中毒と闘った)



Keith Richards and 8-year-old Jake Weber
Photo by: Dominique Tarlé
INSIDE STORY: Medium Star Jake Weber's Rock 'N' Roll Childhood| Medium, Jake Weber


Drug Smuggling


・smuggle=密輸する


"Tommy was a party and everywhere he was, was a good time," says author Robert Greenfield, whose recent book A Day in the Life chronicles the harrowing lives of Weber's parent. "He was a difficult character because of what he did to himself and did to his kids, but he also loved them. That said, you are going to have a lot of trouble selling a guy who straps cocaine to his boys as a good father."

・chronicle=~を年代順に記録する
・harrowing=悲惨な、つらい、痛ましい

この部分も私には難しいが・・・
(「トミー自身がパーティーみたいなものだった。彼がいるところではいつも楽しい時が流れた」と、作家ロバート・グリーンフィールドは言う。彼の最新作『人生のある一日』は、ジェイク・ウェバーの両親の悲惨な人生を年代順に記録したものだ。「トミーは、彼が自分自身に対して、そして息子たちに対してしたことからは理解しがたい人物だ。それでなおかつ、彼は息子たちを愛していたのだ。だから、よい父親なのに、息子たちの体にコカインを紐でくくりつけるなどという奴を売り込むのは至難の業なのだ」


Jake tries to be sanguine about that drug smuggling incident when he was 8. He, his father and brother safely made it past Irish customs on their way to the Villa Nellcôte, where the drugs were intended as gift. "We weren't invited there as mules," he says. "The fact that my dad brought a kilo just made him seem polite."

・sanguine=楽天的な
・incident=事件
・customs=税関
・made it past=乗り切った、突破した
・intend=~を意味する
・mule=〈米俗〉〔麻薬・密輸品などの〕運び屋
・polite=丁寧な、礼儀正しい


(ジェイクは、8歳の時のそのヤクの密輸事件については楽天的に考えようとしている。彼と父親、それに弟の三人は、何とか無事にアイルランドの税関を突破し”ヴィラ・ネルコート”へ向かった。そこではヤクは贈り物を意味した。「僕たちは運び屋としてそこに招かれたわけではないんです」とジェイクは言う。「父がヤクを1キロを持って来たことが、丁寧で礼儀正しいと思われたんですから」)


Jake, age 8, and Mick Jagger
Photo by: Dominique Tarlé
INSIDE STORY: Medium Star Jake Weber's Rock 'N' Roll Childhood| Medium, Jake Weber

All of the chaos in his youth has made him crave stability as an adult. Weber lives in LA with his longtime partner, actress and handbag designer Liz Carey, and their son Waylon, 3. They plan to marry soon and have more kids. "I'm here and I'm doing it," he says of living the family life. "I am working through some of the agro from bad examples that I have seen. It is something I have struggled with, but I'm getting there."

・crave=~を強く望む
・longtime=昔からの
・work through=乗り越える、取り組む
・agro=腹立ち、怒り
・get there=目的を達する


(若い時の混乱状態がすべて、大人になった彼が安定を強く望む要因になっている。ジェイクは、長い間のパートナー、女優でハンドバッグのデザイナーでもある、リズ・ケイリーと、息子のウェイロン(3歳)と一緒にロサンゼルスに住んでいる。もうすぐ二人は結婚して、もっと子供をつくるつもりでいる。「僕は今ここにいて、こうやって生活している」とジェイクは家族との生活を語る。「今まで見てきた悪い見本に対する怒りを少しでも乗り越えようと僕はしているんです。ずっとそれと闘ってきたけど、やっと乗り越えられそうです」


『ミディアム』のデュボア家のような家庭をぜひ築いてほしいなあ…


Before Finding Fame as a TV Dad, the Actor Grew Up in the '60s Drug Scene, Hanging with Rock Stars and Losing His Mother to Suicide


  • Click to enlarge

  • Click to enlarge

  • "Aren't you going to search me too?" asked the 8-year-old with the stringy blond pageboy when a customs official suspected his hippie father of smuggling drugs through an Irish airport in 1971. The officer laughed off the joke—having no idea that the boy, Jake Weber, and his 6-year-old brother Charley each had a half-kilo of cocaine strapped to their bodies—and were headed for the French villa where the Rolling Stones were recording their album Exile on Main St. "My dad had been joking with the guy," recalls Weber, now 46, "so I was trying to act as carefree and unworried as he seemed to be."

    ・search=調べる
    ・stringy=糸のように垂れ下った
    ・pageboy=〔髪形の〕ページボーイ◆なだらかに内巻きにカールした女性の髪形。肩までの長さで、横の髪の毛は顎の下に来ることが多い。
    ・customs official=税関検査官
    ・suspect=疑う
    ・head for
    ・joke with=~とふざける、冗談を言う
    ・carefree=心配のない、屈託のない


    (「僕のことも調べないの?」と、1971年にアイルランドの空港で、ヒッピーの父親がヤクを密輸しようとしたのではないかと税関検査官が疑いを掛けたときに、金髪の細い髪をページボーイにした8歳の少年が尋ねた。検査官はその冗談を笑い飛ばした。その少年、ジェイク・ウェバーと6歳の弟チャーリーが、それぞれ500グラムのコカインを体にくくり付けて、ローリング・ストーンズがアルバム『メインストリートのならず者』をレコーディングしているフランス式の住宅に向かっているのだとは思いもしなかったのだ。「父は、そいつとふざけて冗談を言ったりしていたな」と、現在は46歳になったジェイク・ウェバーは思い出しながら言った。「だから、僕も父がそう見えるのと同じように、屈託がなく、何の心配もしていないように見えるようふるまったんだ」)


    そうなんだーどうして、空港の税関を突破したのかと思ったら、子供たちの体にくくりつけられているコカインには気づかれなかったわけね。今なら、麻薬犬に嗅ぎつけられるだろうけど。


    These days Weber is best known as Patricia Arquette's husband on Medium, which moves to CBS for its sixth season Sept. 25. But back in the psychedelic era, he lived a nomadic life as the son of Tommy and Susan "Puss" Weber, figures in London's counterculture. "Every day, something was going on that was completely insane," says author Robert Greenfield, whose recent book A Day in the Life chronicles the stormy lives of Jake's parents. "But to Jake and Charley, it was just their life."

    ・psychedelic=〔芸術作品・服飾などが〕幻覚状態を想起させる、サイケデリックな、サイケ調の
    ・nomadic=放浪の
    ・figure=人物、肖像、象徴
    ・counterculture=反体制文化
    ・insane=狂気じみた、途方もない
    ・chronicle=(年代順に)記録する
    ・stormy=荒れた、波乱万丈の


    (最近のジェイク・ウェバーは、9月25日に第6シーズンからCBSに移ったドラマ『ミディアム』の、パトリシア・アークエットの夫としてよく知られている。しかし、あのサイケデリックの時代では、彼はトミーとスーザンの息子、ウェバー家の“子ねこちゃん”として、ロンドンの反体制文化の中で放浪の生活をしていたのだ。「毎日、何かしら途方もなく狂気じみたことが起こっていたんです」と、作家ロバート・グリーンフィールドは言う。彼の最新作『人生の一日』は、ジェイクの両親の波乱万丈の生活を年代順に記録したものだ。「でも、ジェイクとチャーリーにとっては、それも毎日の普通の生活にすぎなかったのですがね」)


    『ミディアム』シーズン6からはNBCからCBSに移ったってわけね


    Tommy Weber was a race-car driver who also made music documentaries and dealt drugs—sidelines that brought the family close to rock luminaries. "He was a dazzling and dangerous person to be around," says Weber of his father, who died in 2006 after years of substance abuse. Susan carted her two young sons around the globe on an erratic quest for enlightenment—and supernatural intervention. "I told her constantly, 'There are no flying saucers coming to pick us up,'" he recalls. Their London flat "was the beating heart of the social experiment going on then: drugs, sex, music, the whole thing," says Weber, whose parents hosted pals such as George Harrison or Steve Winwood. "I remember rolling joints for oceans of stoned hippies who were just wandering around."

    ・sideline=サイドジョブ、アルバイト、バイト、副業、内職
    ・luminaries:luminary=有名人
    ・dazzling=目もくらむような、強烈な、
    ・substance abuse=薬物[物質]乱用
    ・cart=連れて行く
    ・around the globe=世界中で
    ・erratic=〔人の言動が〕とっぴな、異常な、常軌を逸した
    ・quest=探求、冒険の旅
    ・enlightenment=啓発、《仏教・イスラム教》悟り
    ・supernatural=超自然の、信じられないほどの、神わざの
    ・intervention=調停、介入、《医》治療介入
    ・constantly=絶えず、常に
    ・flying saucer=空飛ぶ円盤
    ・flat=アパート、共同住宅
    ・beating heart=鼓動を打つ心臓
    ・social experiment=社会的実験
    ・host=客を泊める
    ・pal=仲間、友人
    ・Steve Winwood=イギリス・バーミンガム出身のミュージシャン。兄マフ率いるスペンサー・デイヴィス・グループの一員として「ギミー・サム・ラヴィン」などで1960年代中盤に人気を博し、グループを脱退後はトラフィックのメンバーとしても成功を収めた。1970年代後半以降はソロ・アーティストとして活動
    ・roll a joint=〈俗〉マリファナたばこを作る
    ・oceans of=大量の
    ・stoned=〈米俗〉〔マリファナで〕ハイになった、もうろうとした◆【語源】「さんざん石を投げ付けられて⇒フラフラになる・倒れる(ほど酔う)」と解する説、stone-drunk「完全に酔って」の略とする説などがある
    ・wander around=ブラブラ[ウロウロ]する[歩き回る]、ほっつき歩く

    (トミー・ウェバーはレーシングカーのドライバーだったが、音楽ドキュメンタリーを作ったり、ヤクを副業にもしていて、そのことが家族をロックの著名な人たちに近づけた。「彼は、そばにいると危険だし、驚くような経験をすることになる、そんな人でした」ジェイクは父、トミーのことをそう語った。トミーは何年も薬物乱用をした挙句、2006年に亡くなった。母のスーザンは二人の息子を連れて、悟りとか神の超自然的介入を求めて世界中を旅するという常軌を逸した行動をとった。「僕はいつも母に言ったんです、『僕らを拾ってくれるような空飛ぶ円盤なんて存在しないんだから』って」とジェイクは思い出を語る。家族が住んでいたアパートは「そのころ行われていた社会的実験、ヤクとかセックスとか音楽とか、もうあらゆることの中心、つまり脈打つ心臓のようなものだったんです」とジェイクは言う。彼の両親は、自分たちの住まいにジョージ・ハリソンやスティーブ・ウィンウッドといった人たちを泊まらせていた。「周りでただウロウロとほっつき歩いているハイになったたくさんのヒッピーのために、僕がマリファナたばこを作っていたのを思い出します」)


    The mystique of that life ended for Weber when he was 8 and living at the Villa Nellcôte, Keith Richards' home in the South of France. While staying there in 1971, he was told his mother had died of an accidental overdose. "I was devastated," says Weber. Years later he learned that she had been diagnosed with LSD-induced schizophrenia and committed suicide. "I think the drugs she took and the culture that my family was at the epicenter of unraveled her."


    ・mystique=神秘的雰囲気
    ・accidental=不慮の、偶発的な
    ・overdose=〔薬剤・麻薬の〕過量[過剰]摂取
    ・devastated=精神的に打ちのめされた、精神的にひどく落ち込んだ
    ・LSD=lysergic acid diethylamide《化》リセルグ酸ジエチルアミド◆幻覚剤
    ・induced=誘発された
    ・schizophrenia=統合失調症◆【語源】schizo(分離した)+phrenia(精神)◆日本精神神経学会が2002年6月30日に、差別や偏見を招きやすい「精神分裂病」という呼び名を「統合失調症」に改めた
    ・commit suicide=自殺する
    ・epicenter=発生地、震源地、中心点
    ・unravel=破綻させる


    (ジェイクの神秘的雰囲気を持った生活は、彼が8歳で、キース・リチャーズの南フランスの家、ヴィラ・ネルコートに住んでいるときに終わりを迎えた。1971年にヴィラ・ネルコートにちょうどいるときに、母親が偶発的なヤクの過剰摂取によって死んだと知らされたのである。「僕は精神的に打ちのめされました」とジェイクは言う。数年後に、ジェイクは、母親がLSDの使用による統合失調症と診断されていたこと、そして自殺だったことを知らされた。「ヤクと、僕たち家族がその真っ只中にいた文化によって、母親が破たんしたのだと思っています」)


    His own rootless existence ended at 16, when he was sent to live with his godfather in San Francisco. He seldom spoke of his past, attending Vermont's Middlebury College, where he began acting. "I never wanted anyone's pity," he says. Now Weber's life in L.A.—where he lives with handbag designer Liz Carey, 34, and their son Waylon, 3—is filled with the stability he had dreamed of as a kid. "My journey is about believing that people will actually stick around," he says. "It's a hard thing to believe when you don't have a prototype for it. I've had to develop that for myself."


    ・existence=生存、実在、生活
    ・godfather=後見人、保証人
    ・Vermont=ヴァーモント州
    ・Middlebury=下の地図の



    大きな地図で見る


    ・actually=現に、実際に
    ・stick around=近くにいる、辺りをブラブラする、〔考えなどに〕固執する、《テレビ・ラジオ》チャンネルを変えずに見続ける、聞き続ける
    ・prototype=原型、典型
    ・develop=発展する、明らかにする


    (彼の根無し草のような生活は、16歳の時、サンフランシスコの後見人のところに行かされたときに終わりを迎えた。彼は自分の過去についてはほとんど語ることなく、ヴァーモント州のミドルべり大学に通って、そこで演技の勉強を始めた。「僕はだれにも憐れんでもらいたくなかったんです」とジェイクは言う。現在、彼はロサンゼルスで、ハンドバッグのデザイナー、リズ・ケイリー(34歳)と息子のウェイロン(3歳)と一緒に住んでいるが、そこには、ジェイクが子供のころ夢に見た安定した生活があふれている。「僕の旅は、人が近くにいてくれると信じられるようになるためのものなんです」とジェイクは言って、こう付け加えた。「見本にするものがないと、それを信じるのは難しいんです。自分で、信じられるようにしていかなくてはならないから」)


    よく、父親が小さいころに亡くなったり、生き別れたりすると、男の子は、いわゆる見本になるプロトタイプを心の中に持っていないから、自分の子供に対してどう接したらいいか分からないということがある、とどこかで聞いたような気がするが、幸せな人間関係、家族関係、幸せな家族像というものの経験がないと、その像がうまく描けないということがあるのかもしれないな。ジェイクはいま懸命にその幸せな家族像を作り上げようとしているわけだな

    英語でグリム童話『眠りの森の美女』(2)

    父親の王様はできるだけのことをしました。

    さあ、王女はだんだん成長していきます…

    The maiden grew up, adorned with all the gifts of the wise women; and she was so lovely, modest, sweet, and kind and clever, that no one who saw her could help loving her.


    ・maiden=娘、乙女
    ・adorn=魅力的にする
    ・modest=〔態度・言葉遣いなどが〕しとやかで上品な
    ・sweet=優しい、思いやりのある


    王女は、魔女たちの贈り物を身につけて魅力的な娘に成長していきました.かわいらしく、そのうえしとやかで、優しく、親切で、そのうえ賢くて、会った人はみんな王女を好きにならずにいられませんでした。

    It happened one day, she being already fifteen years old, that the king and queen rode abroad, and the maiden was left behind alone in the castle. She wandered about into all the nooks and corners, and into all the chambers and parlours, as the fancy took her, till at last she came to an old tower. She climbed the narrow winding stair which led to a little door, with a rusty key sticking out of the lock; she turned the key, and the door opened, and there in the little room sat an old woman with a spindle, diligently spinning her flax.


    ・rode abroad=馬車でほかの国へ出かけた
    ・wander about=歩き回る
    ・nooks and corners=隅々
    ・chamber=部屋
    ・parlour=応接間、客間
    ・as the fancy took her=as her fancy takes her=気の向くままに
    ・winding=曲がりくねった
    ・rusty=さび
    ・lock=錠前
    ・spindle=紡錘、つむ(つむいだ糸を巻きつけるもの、両端がとがった円柱)
    ・diligently=熱心に
    ・spin=糸を紡ぐ
    ・flax=《植物》亜麻


    ある日、王女はもう15歳になっていたのですが、王様とお妃さまが馬車で他の国へ出かけ、王女が一人お城に残っていたことがありました。王女は気の向くままにお城の中を歩き回って、隅々まで見て廻り、いろんな部屋や応接間などをにも入ってみました。そして最後に古くからある塔にやって来ました。狭い曲がりくねった階段を上って小さいドアのところに来ました。そのドアの錠前にはさびた鍵がささっていました。王女が鍵を回すとドアが開き、その小さな部屋では、老女が一人座って、熱心に紡錘を使って亜麻を紡いでいるのでした。

    "Good day, mother," said the princess, "what are you doing?"


    "I am spinning," answered the old woman, nodding her head.


    "What thing is that that twists round so briskly?" asked the maiden, and taking the spindle into her hand she began to spin; but no sooner had she touched it than the evil prophecy was fulfilled, and she pricked her finger with it. In that very moment she fell back upon the bed that stood there, and lay in a deep sleep. And this sleep fell upon the whole castle; the king and queen, who had returned and were in the great hall, fell fast asleep, and with them the whole court. The horses in their stalls, the dogs in the yard, the pigeons on the roof, the flies on the wall, the very fire that flickered on the hearth, became still, and slept like the rest; and the meat on the spit ceased roasting, and the cook, who was going to pull the scullion's hair for some mistake he had made, let him go, and went to sleep. And the wind ceased, and not a leaf fell from the trees about the castle.


    ・mother=(年輩の婦人に対する親しみを込めた呼びかけ)おばさん
    ・nod=うなずく
    ・twist=~に巻き付く
    ・briskly=活発に、きびきびと
    ・fulfill=(希望,予言などを)実現させる
    ・fall back=後ろへ倒れる
    ・fall upon=~にかかる、~に降りかかる
    ・court=廷臣、王宮
    ・stall=馬小屋
    ・flicker=揺らめく
    ・hearth=暖炉
    ・spit=串
    ・scullion=〈古〉台所の下働き、皿洗い
    ・mistake=落ち度
    ・about=~のまわりに、周囲に


    「こんにちは、おばさま」と王女は言いました。「何をなさっているのですか」
    「糸を紡いでいるのさ」と老女はうなずきながら答えました。
    「どうやってそんなにくるくると早く糸が巻きつくのかしら?」と尋ねると、紡錘を手にとって自分で糸を紡ぎ始めました。ところが、紡錘に王女がさわるとたちまちにして、呪われた予言が本当になってしまいました。王女が紡錘で指を刺したのです。たちまち王女は後ろに倒れ、そこにあったベッドに倒れ込み、深い眠りについてしまいました。そして、王女だけでなく、このお城全体が眠ってしましました。王様とお妃さまも帰られて大広間に入るとぐっすりと眠りにつき、仕えている人たちもみんな眠ってしまったのです。馬は馬小屋で、犬は庭で、ハトは屋根の上で、ハエは壁の上で、暖炉で揺らめいて燃えていた火もそのまま止まって、他のみんなと同じように眠りにつきました。串に刺さった肉も焼けるのが止まり、何かやらかした台所の下働きの者を叱るのに髪の毛を引っ張ろうとしていた調理師も、引っ張るのをやめて眠ってしまいました。風が吹くのも止まり、城の周りの木の葉も一枚も落ちなくなりました。


    急に眠ってしまったお城の細かい描写が結構面白い、ハエまでいたりして(笑)


    Then round about that place there grew a hedge of thorns thicker every year, until at last the whole castle was hidden from view, and nothing of it could be seen but the vane on the roof. And a rumour went abroad in all that country of the beautiful sleeping Rosamond, for so was the princess called; and from time to time many kings' sons came and tried to force their way through the hedge; but it was impossible for them to do so, for the thorns held fast together like strong hands, and the young men were caught by them, and not being able to get free, there died a lamentable death.


    ・hedge=垣根
    ・thorn=とげのある植物
    ・but=except
    ・vane=風見
    ・from time to time =時々
    ・hold fast together=しっかりと団結する
    ・lamentable=悲しむべき


    それからというもの宮殿の周りには、棘のある植物の垣根ができ、それが年々厚みを増し、ついにはお城が全く隠れてしまい、屋根の上の風見しか見えなくなってしまいました。そしてあたりの国々に、眠り続けている美しいロザモンドのうわさが広がりました。王女はそう呼ばれていたのです。そして時折、たくさんの王様の息子がやってきて、その垣根を何とかして突破しようとしましたができません。力の強い手のような棘がしっかりと絡み合っていて、若者たちはそこにはまって出ることができなくなり、悲しい死を遂げるのでした。

    Many a long year afterwards there came a king's son into that country, and heard an old man tell how there should be a castle standing behind the hedge of thorns, and that there a beautiful enchanted princess named Rosamond had slept for a hundred years, and with her the king and queen, and the whole court. The old man had been told by his grandfather that many king's sons had sought to pass the thorn-hedge, but had been caught and pierced by the thorns, and had died a miserable death. Then said the young man, "Nevertheless, I do not fear to try; I shall win through and see the lovely Rosamond." The good old man tried to dissuade him, but he would not listen to his words.


    ・Many a long year =何年も長い間
    ・should=~のはず
    ・enchanted=魔法をかけられた
    ・sought=seekの過去形・過去分詞
    ・dissuade=(人)に説得[忠告]して〔当初予定していた行動を〕やめさせる


    その後何年もたってから、ある王様の息子がその国にやってきました。そして、一人のおじいさんが、棘のある植物のあの垣根の向こうにお城があるはずだということ、お城では、ロザモンドという美しい魔法をかけられた王女が百年もの間眠っていて、王様もお妃さまも王宮すべてが王女と一緒に眠っているのだと話しているのを聞きました。そのおじいさんは、そのまたおじいさんから、いろんな国の王様の息子が大勢、何とかして棘だらけの垣根を通ろうとしたのだが、皆その棘から逃れることができなくなって棘に突き刺され、惨めな死を遂げたということを聞いたのでした。そこで、その若者は言いました。「でも、僕はやってみることに恐れはありません。きっとそこを通り抜けて美しいロザモンドに会ってみせます」親切なその老人は、やめるようにと説得しましたが、若者は聞く耳を持ちませんでした。

    For now the hundred years were at an end, and the day had come when Rosamond should be awakened. When the prince drew near the hedge of thorns, it was changed into a hedge of beautiful large flowers, which parted and bent aside to let him pass, and then closed behind him in a thick hedge. When he reached the castle-yard, he saw the horses and brindled hunting-dogs lying asleep, and on the roof the pigeons were sitting with their heads under their wings. And when he came indoors, the flies on the wall were asleep, the cook in the kitchen had his hand uplifted to strike the scullion, and the kitchen-maid had the black fowl on her lap ready to pluck. Then he mounted higher, and saw in the hall the whole court lying asleep, and above them, on their thrones, slept the king and the queen. And still he went farther, and all was so quiet that he could hear his own breathing; and at last he came to the tower, and went up the winding stair, and opened the door of the little room where Rosamond lay. And when he saw her looking so lovely in her sleep, he could not turn away his eyes; and presently he stooped and kissed her, and she awaked, and opened her eyes, and looked very kindly onhim. And she rose, and they went forth together, and the king and the queen and whole court waked up, and gazed on each other with great eyes of wonderment. And the horses in the yard got up and shook themselves, the hounds sprang up and wagged their tails, the pigeons on the roof drew their heads from under their wings, looked round, and flew into the field, the flies on the wall crept on a little farther, the kitchen fire leapt up and blazed, and cooked the meat, the joint on the spit began to roast, the cook gave the scullion such a box on the ear that he roared out, and the maid went on plucking the fowl.


    ・bend aside=わきへ曲がる
    ・brindled=【形】ブリンドル模様の◆動物の表皮の模様で、黄褐色または灰色とその濃い色のまだらまたはぶちを指す。
    ・scullion=〈古〉台所の下働き、皿洗い
    ・fowl=ニワトリ
    ・on one's lap=膝の上に
    ・pluck=~をむしる
    ・court=廷臣
    ・presently=やがて、まもなく
    ・stoop=かがむ
    ・look on=~を見る[見詰める]
    ・go forth=出ていく、出発する
    ・hound=猟犬、犬
    ・wag=~を振る
    ・creep on=忍び寄る
    ・leap up=急に跳ね上がる
    ・joint=〔ロースト用の〕大きな肉片
    ・spit=串
    ・roast=肉を焼く、ローストする
    ・box=平手打ち、げんこつ
    ・roar out=大声を上げる


    今や、百年もの年月が過ぎ去っていました。ロザモンドが眠りから覚める時が来たのです。王子が茨の垣根に近づいた時、それが大きな美しい花の垣根に代わり、王子を通すために二つに分かれて、脇へどいたのです。王子が中に入ると、厚い垣根は再び閉じました。王子がお城の庭に着くと、そこでは馬やぶちのある猟犬たちが横になって眠っていました。屋根の上ではハトがみんな、頭を羽の下に突っ込んですわっていました。お城の中に入ると、壁の上ではハエが眠っていたし、台所ではコックが下働きを殴ろうと手を上げたままでしたし、台所の手伝いの娘が黒いニワトリを膝の上に乗せて、今や羽をむしろうとしているところでした。二階に上がっていくと、大広間では王様の家来たちがみんな横になって眠っていましたし、そのもう一段高いところでは、椅子に座って王様とお妃さまが眠っていました。それから王子はもっと中まで入って行きましたが、どこもかしこもあまりにも静かで自分の息遣いさえ聞こえるほどでした。そしてついに塔のところへやってきて、らせん階段を上がって行き、小さな部屋のドアを開けるとそこにロザモンドが眠っていました。眠っている王女があまりにも美しかったので目が釘付けになり、そして身をかがめると王子は彼女にキスをしました。すると、王女は目覚め、目を開いて、とてもやさしく王子を見つめました。王女は起き上がり、二人は部屋を出ました。王様もお妃さまも、家来たちもみんな目を覚まし、驚いて目を丸くしてお互いを見つめました。庭の馬も立ち上がって身震いしまし足し、猟犬たちは飛び上がってしっぽを振り、屋根の上のハトは羽の下から頭を抜き周りを見渡すと、野原へと飛んで行きました。壁の上のハエはそっと前へ進み、台所の火は、急に炎を上げて燃え、肉を焼きました。串に刺さった大きな肉をまたローストし始めたのです。コックが下働きの耳をひどく平手打ちをしたので、下働きは大きな唸り声をあげました。台所の手伝いの娘はまたニワトリの羽をむしり続けました。

    Then the wedding of the Prince and Rosamond was held with all splendour, and they lived very happily together until their lives' end.


    そして、王子様とロザモンドの結婚式が贅を尽くして執り行われ、二人は、命が終わるまで大変幸せに暮らしました。

    めでたしめでたし!!


    『眠れる森の美女』を終わります。

    英語でグリム童話『眠れる森の美女』(1)

    もう一つグリム童話です。

    ディズニーのアニメ、思い出します。子供の頃映画館で見ましたっけ。魔女が怖かった(^_^;)


    sleeping beauty_

    訳は私の拙訳です。

    THE SLEEPING BEAUTY


    IN times past there lived a king and queen, who said to each other every day of their lives, "Would that we had a child!" and yet they had none. But it happened once that when the queen was bathing, there came a frog out of the water, and he squatted on the ground, and said to her, "Thy wish shall be fulfilled; before a year has gone by, thou shalt bring a daughter into the world."


    ・Would that=~であればよいのに◆仮定法で用いられる文語表現
    ・and yet=それなのに、それにもかかわらず
    ・squat=しゃがむ
    ・thy=【形】 そなたの
    ・thou=【代名】 そなたは
    ・shalt=【助動】 shall の直説法二人称単数現在形


    むかしむかし、王様とお妃さまがいました。二人は自分たちの生活について毎日、こう語り合っていました。「子どもがあればいいのに!」でもなかなか子どもは生まれませんでした。しかし、ある時、お妃さまが水浴びをしていると、一匹のカエルが水の中から出てきて、土の上にしゃがむとお妃さまにこう言いました。「そなたの願いはかなえられるだろう。一年もたたないうちに、そなたは女の子を産むであろう」

    And as the frog foretold, so it happened; and the queen bore a daughter so beautiful that the king could not contain himself for joy, and he ordained a great feast. Not only did he bid to it his relations, friends, and acquaintances, but also the wise women, that they might be kind and favourable to the child. There were thirteen of them in his kingdom, but as he had only provided twelve golden plates for them to eat from, one of them had to be left out. However, the feast was celebrated with all splendour; and as it drew to an end, the wise women stood forward to present to the child their wonderful gifts: one bestowed virtue, one beauty, a third riches, and so on, whatever there is in the world to wish for. And when eleven of them had said their say, in came the uninvited thirteenth, burning to revenge herself, and without greeting or respect, she cried with a loud voice,


    "In the fifteenth year of her age the princess shall prick herself with a spindle and shall fall down dead."


    ・foretold:foretell=予言する
    ・contain=〔感情などを〕抑える
    ・ordain=命じる
    ・feast=祝宴
    ・bid=〔古〕 招待する
    ・wise woman=魔女
    ・that=so that~=~できるように
    ・favourable=favorable=好意的な
    ・provide=準備する
    ・leave out=~を除外する
    ・splendour:splendor=豪華さ
    ・draw to an end=終わりに近づく
    ・bestow=贈る
    ・riches=富、財宝
    ・whatever~=~するのは何でも
    ・say=言いたいこと
    ・in came=came in(強調の意味の倒置)
    ・burn to~=~することを熱望する
    ・revenge oneself=うっ憤を晴らす、仕返しする、腹いせをする
    ・greet=あいさつをする
    ・respect=敬意
    ・prick=~を刺す
    ・spindle=紡錘(糸をつむぐと同時に、糸に撚りをかけながら巻き取る道具)
    ・shall=【助動】 必ず~となるだろう


    そして、カエルが予言したとおりになりました。お妃さまは大変美しい女の子を産み、王様の喜びようは大変なもので、盛大な祝宴をするよう命じました。祝宴には、親戚、友人、知り合いばかりでなく、生まれてきた赤ちゃんに親切に、そして好意を持ってもらいたいと魔女たちも招待しました。この王国には13人の魔女がいましたが、魔女たちのための料理をのせたお皿を、王様は12枚しか用意しませんでした。一人除け者になってしまいます。しかし、祝宴はこれ以上ないというほど豪華なもので、祝宴が終わりに近づくと、魔女たちは前に進み出て、赤ちゃんに素晴らしい贈り物をしました。一人は徳を、一人は美しさを、三番目の魔女は富を、という具合に、この世で望めるものはすべてです。11人の魔女が言葉を言い終わった時、招待されなかった13番目の魔女が、何とかしてうっぷんを晴らそうと入ってきました。挨拶も、敬意を表することもせずに、大きな声でこう叫びました。
    「15歳になった時、王女は糸巻き機で自分を刺し、必ずや倒れて死ぬだろう」


    ワー、出てきました、おっかない魔女(>_<)


    And without speaking one more word she turned away and left the hall. Every one was terrified at her saying, when the twelfth came forward, for she had not yet bestowed her gift, and though she could not do away with the evil prophecy, yet she could soften it, so she said,


    "The princess shall not die, but fall into a deep sleep for a hundred years."


    Now the king, being desirous of saving his child even from this misfortune, gave commandment that all the spindles in his kingdom should be burnt up.


    ・turn away=向きを変える、そっぽを向く
    ・do away with=排除する、なくす
    ・evil=不吉な
    ・prophecy=予言
    ・soften=和らげる
    ・desirous of~=~を望む
    ・commandment=命令



    そしてもう後は何も言わずに、向きを変えると広間から出て行ってしまいました。魔女のその言葉を聞いて、みんなとても恐ろしくなりました。すると、12番目の魔女が進み出ました。まだ赤ちゃんに贈り物をしていなかったからです。不吉な予言を消してしまうことは私にもできませんが、その効果を弱めることはできますと魔女は言いました。

    「王女様は死ぬことはありません。でも、その場に倒れて100年の眠りに入ることになるでしょう」

    すぐに王様は、何とかしてこの不運から自分の子どもを救おうと、王国にあるすべての糸巻き機を焼いてしまうように命令を下しました。


    アニメでは、魔女は十何人も出てこなかったような…小さい太っちょの善良そうな魔女(笑)が三人ほど、ではなかったかな?

    英語でグリム童話『白雪姫』(3)

    二度も白雪姫は継母の女王に殺されそうになりましたが…

    But fortunately it was almost evening, when the seven dwarfs came home. When they saw Snow-white lying as if dead upon the ground they at once suspected the step-mother, and they looked and found the poisoned comb. Scarcely had they taken it out when Snow-white came to herself, and told them what had happened. Then they warned her once more to be upon her guard and to open the door to no one.


    ・suspect(人)に嫌疑を掛ける、(人)に罪があると思う
    ・scarcely~when…=~するやいなや…
    ・came to herself=意識を回復した、気がついた
    ・be upon her guard:be upon one's guard=警戒する


    けれども、ちょうどいいぐあいに、すぐゆうがたになって、七人の小人(こびと)がかえってきました。そして、白雪姫が、また死んだようになって、地べたにたおれているのを見て、すぐまま母のしわざと気づきました。それで、ほうぼう姫のからだをしらべてみますと、毒(どく)の櫛(くし)が見つかりましたので、それをひきぬきますと、すぐに姫は息をふきかえしました。そして、きょうのことを、すっかり小人たちに話しました。小人たちは、白雪姫にむかってもういちど、よく用心して、けっしてだれがきても、戸をあけてはいけないと、ちゅういしました。


    The Queen, at home, went in front of the glass and said---


    "Looking-glass, Looking-glass, on the wall,
    Who in this land is the fairest of all?"


    then it answered as before---


    "Oh, Queen, thou art fairest of all I see,
    But over the hills, where the seven dwarfs dwell,
    Snow-white is still alive and well,


    And none is so fair as she."


    When she heard the glass speak thus she trembled and shook with rage.
    "Snow-white shall die," she cried, "even if it costs me my life!"


    ・shall die=殺してやる:三人称主語+shall=話し手の意志


    心のねじけた女王さまは、家にかえって、鏡(かがみ)の前に立っていいました。

    「鏡や、鏡、壁(かべ)にかかっている鏡よ。
     国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」

     すると、鏡は、まえとおなじようにに答えました。

    「女王さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
     けれども、いくつも山こした、
     七人の小人の家にいる白雪姫は、
     まだ千ばいもうつくしい。」

     女王さまは、鏡(かがみ)が、こういったのをきいたとき、あまりの腹(はら)だちに、からだじゅうをブルブルとふるわしてくやしがりました。「白雪姫のやつ、どうしたって、ころさないではおくものか。たとえ、わたしの命がなくなっても、そうしてやるのだ。」と、大きな声でいいました。


    Thereupon she went into a quite secret, lonely room, where no one ever came, and there she made a very poisonous apple. Outside it looked pretty, white with a red cheek, so that everyone who saw it longed for it; but whoever ate a piece of it must surely die.


    ・Thereupon=その後すぐに
    ・long for=とてもほしいと思う


    それからすぐ、女王さまは、まだだれもはいったことのない、はなれたひみつのへやにいって、そこで、毒(どく)の上に毒をぬった一つのリンゴをこさえました。そのリンゴは、見かけはいかにもうつくしくて、白いところに赤みをもっていて、一目見ると、だれでもかじりつきたくなるようにしてありました。けれども、その一きれでもたべようものなら、それこそ、たちどころに死んでしまうという、おそろしいリンゴでした。


    When the apple was ready she painted her face, and dressed herself up as a country-woman, and so she went over the seven mountains to the seven dwarfs.  She knocked at the door. Snow-white put her head out of the window and said, "I cannot let any one in; the seven dwarfs have forbidden me." "It is all the same to me," answered the woman,
    "I shall soon get rid of my apples. There, I will give you one."


    ・get rid of~=~を手放す


    さて、リンゴが、すっかりできあがりますと、顔を黒くぬって、百姓(しょう)のおかみさんのふうをして、七つの山をこして、七人の小人(こびと)の家へいきました。そして、戸をトントンとたたきますと、白雪姫が、窓(まど)から頭(あたま)をだして、
    「七人の小人が、いけないといいましたから、わたしは、だれも中にいれるわけにはいきません。」といいました。
    「いいえ、はいらなくてもいいんですよ。わたしはね、いまリンゴをすててしまおうかと思っているところなので、おまえさんにも、ひとつあげようかと思ってね。」と、百姓(しょう)の女はいいました。


    "No," said Snow-white, "I dare not take anything." "Are you afraid of poison?"  said the old woman; "look, I will cut the apple in two pieces; you eat the red cheek, and I will eat the white." The apple was so cunningly made that only the red cheek was poisoned. Snow-white longed for the fine apple, and when she saw that the woman ate part of it she could resist no longer, and stretched out her hand and took the poisonous half. But hardly had she a bit of it in her mouth than she fell down dead. Then the Queen looked at her with a dreadful look, and laughed aloud and said, "White as snow, red as blood, black as ebony-wood! this time the dwarfs cannot wake you up again."


    ・dreadful look=恐ろしい顔で
    ・ebony=黒檀の


    「いいえ、わたしはどんなものでも、人からもらってはいけないのよ。」と、白雪姫はことわりました。
    「おまえさんは、毒(どく)でもはいっていると思いなさるのかね。まあ、ごらんなさい。このとおり、二つに切って、半分はわたしがたべましょう。よくうれた赤い方を、おまえさんおあがりなさい。」といいました。
     そのリンゴは、たいへんじょうずに、こしらえてありまして、赤い方のがわだけに、毒(どく)がはいっていました。白雪姫は、百姓のおかみさんが、さもうまそうにたべているのを見ますと、そのきれいなリンゴがほしくてたまらなくなりました。それで、ついなんの気なしに手をだして、毒(どく)のはいっている方の半分を受けとってしまいました。けれども、一かじり口にいれるかいれないうちに、バッタリとたおれ、そのまま息がたえてしまいました。すると、女王さまは、そのようすをおそろしい目つきでながめて、さもうれしそうに、大きな声で笑いながら、
    「雪のように白く、血(ち)のように赤く、こくたんのように黒いやつ、こんどこそは、小人(こびと)たちだって、助けることはできまい。」といいました。


    りんごのwhiteの部分ということは、薄い緑色や白っぽい部分、どちらかというとりんごの下方の部分のことかな。red cheekは、毒を塗り赤くしてはっきり分かるようにしておいた部分というわけなんだろうね。


    ついに鏡は答えました。「女王様、あなたが一番美しい…」


    And when she asked of the Looking-glass at home---


    "Looking-glass, Looking-glass, on the wall,
    Who in this land is the fairest of all?"


    it answered at last --


    "Oh, Queen, in this land thou art fairest of all."


    ・ask of~=~に要求する


    そして、大いそぎで家にかえりますと、まず鏡(かがみ)のところにかけつけてたずねました。

    「鏡や、鏡、壁(かべ)にかかっている鏡よ。
     国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」

     すると、とうとう鏡が答えました。

    「女王さま、お国でいちばん、あなたがうつくしい。」


    Then her envious heart had rest, so far as an envious heart can have rest.


    これで、女王さまの、ねたみぶかい心も、やっとしずめることができて、ほんとうにおちついた気もちになりました。


    "envious heart"ねえ、はっきり言ってますね。妬みでいっぱいの汚い女王の心が、とりあえずは満足した、ということでしょうか。


    The dwarfs, when they came home in the evening, found Snow-white lying upon the ground; she breathed no longer and was dead. They lifted her up, looked to see whether they could find anything poisonous, unlaced her, combed her hair, washed her with water and wine, but it was all of no use; the poor child was dead, and remained dead. They laid her upon a bier, and all seven of them sat round it and wept for her, and wept three days long.


    ・unlace=コルセットのひもを緩める、衣類をゆるめる
    ・bier=棺台


    ゆうがたになって、小人たちは、家にかえってきましたが、さあたいへん、こんども、また白雪姫が、地べたにころがって、たおれているではありませんか。びっくりして、かけよってみれば、もう姫の口からは息一つすらしていません。かわいそうに死んで、もうひえきってしまっているのでした。小人たちは、お姫さまを、高いところにはこんでいって、なにか毒(どく)になるものはありはしないかと、さがしてみたり、ひもをといたり、髪(かみ)の毛をすいたり、水や、お酒で、よくあらってみたりしましたが、なんの役にもたちませんでした。みんなでかわいがっていたこどもは、こうしてほんとうに死んでしまって、ふたたび生きかえりませんでした。
     小人たちは、白雪姫のからだを、一つの棺(かん)の上にのせました。そして、七人の者が、のこらずそのまわりにすわって、三日三晩泣きくらしました。


    Then they were going to bury her, but she still looked as if she were living, and still had her pretty red cheeks. They said, "We could not bury her in the dark ground," and they had a transparent coffin of glass made, so that she could be seen from all sides, and they laid her in it, and wrote her name upon it in golden letters, and that she was a king's daughter. Then they put the coffin out upon the mountain, and one of them always stayed by it and watched it. And birds came too, and wept for Snow-white; first an owl, then a raven, and last a dove.


    ・transparent=透明な
    ・raven=(大型の)カラス、ワタリガラス


    それから、姫をうずめようと思いましたが、なにしろ姫はまだ生きていたそのままで、いきいきと顔色も赤く、かわいらしく、きれいなものですから、小人たちは、
    「まあ見ろよ。これを、あのまっ黒い土の中に、うめることなんかできるものか。」そういって、外から中が見られるガラスの棺(かん)をつくり、その中に姫のからだをねかせ、その上に金文字(きんもじ)で白雪姫という名を書き、王さまのお姫さまであるということも、書きそえておきました。それから、みんなで、棺を山の上にはこびあげ、七人のうちのひとりが、いつでも、そのそばにいて番をすることになりました。すると、鳥や、けだものまでが、そこにやってきて、白雪姫のことを泣きかなしむのでした。いちばんはじめにきたのは、フクロウで、そのつぎがカラス、いちばんおしまいにハトがきました。


    And now Snow-white lay a long, long time in the coffin, and she did not change, but looked as if she were asleep; for she was as white as snow, as red as blood, and her hair was as black as ebony.


    ・coffin=棺


    さて、白雪姫は、ながいながいあいだ棺(かん)の中によこになっていましたが、そのからだは、すこしもかわらず、まるで眠っているようにしか見えませんでした。お姫さまは、まだ雪のように白く、血(ち)のように赤く、こくたんのように黒い髪(かみ)の毛をしていました。


    It happened, however, that a king's son came into the forest, and went to the dwarfs' house to spend the night. He saw the coffin on the mountain, and the beautiful Snow-white within it, and read what was written upon it in golden letters. Then he said to the dwarfs, "Let me have the coffin, I will give you whatever you want for it." But the dwarfs answered,
    "We will not part with it for all the gold in the world." Then he said,
    "Let me have it as a gift, for I cannot live without seeing Snow-white. I will honour and prize her as my dearest possession." As he spoke in this way the good dwarfs took pity upon him, and gave him the coffin.


    ・part with~=~を手放す
    ・honour=~に敬意を払う
    ・possession=財産
    ・took pity upon~=~に同情を示した、~を気の毒に思った


    すると、そのうち、ある日のこと、ひとりの王子(おうじ)が、森の中にまよいこんで、七人の小人の家にきて、一晩とまりました。王子は、ふと山の上にきて、ガラスの棺に目をとめました。近よってのぞきますと、じつにうつくしいうつくしい少女のからだがはいっています。しばらくわれをわすれて見とれていました王子は、棺の上に金文字で書いてあることばをよみ、すぐ小人たちに、
    「この棺(かん)を、わたしにゆずってくれませんか。そのかわりわたしは、なんでも、おまえさんたちのほしいと思うものをやるから。」といわれました。けれども、小人たちは、
    「たとえわたしたちは、世界じゅうのお金を、みんないただいても、こればかりはさしあげられません。」とお答えしました。
    「そうだ、これにかわるお礼なんぞあるもんじゃあない。だがわたしは、白雪姫を見ないでは、もう生きていられない。お礼なぞしないから、ただください。わたしの生きているあいだは、白雪姫をうやまい、きっとそまつにはしないから。」王子(おうじ)はおりいっておたのみになりました。
     王子が、こんなにまでおっしゃるので、気だてのよい小人たちは、王子の心もちを、気のどくに思って、その棺をさしあげることにしました。


    And now the King's son had it carried away by his servants on their shoulders.  And it happened that they stumbled over a tree-stump, and with the shock the poisonous piece of apple which Snow-white had bitten off came out of her throat. And before long she opened her eyes, lifted up the lid of the coffin, sat up, and was once more alive. "Oh,heavens, where am I?" she cried. The King's son, full of joy, said,
    "You are with me," and told her what had happened, and said, "I love you more than everything in the world; come with me to my father's palace, you shall be my wife."


    ・had it carried away by his servants on their shoulders=それを召使たちに担いで運ばせた:carriedは受動態の過去分詞
    ・stump=切り株
    ・before long=まもなく、やがて
    ・lid=ふた


    王子は、それを、家来(けらい)たちにめいじて、肩(かた)にかついではこばせました。ところが、まもなく、家来のひとりが、一本の木につまずきました。で、棺がゆれたひょうしに、白雪姫がかみ切った毒(どく)のリンゴの一きれが、のどからとびだしたものです。すると、まもなく、お姫さまは目をパッチリ見ひらいて、棺(かん)のふたをもちあげて、起きあがってきました。そして元気づいて、
    「おやまあ、わたしは、どこにいるんでしょう。」といいました。それをきいた王子のよろこびはたとえようもありませんでした。
    「わたしのそばにいるんですよ。」といって、いままであったことをお話しになって、そのあとから、
    「わたしは、あなたが世界じゅうのなにものよりもかわいいのです。さあ、わたしのおとうさんのお城(しろ)へいっしょにいきましょう。そしてあなたは、わたしのお嫁(よめ)さんになってください。」といわれました。

    And Snow-white was willing, and went with him, and their wedding was held with great show and splendour. But Snow-white's wicked step-mother was also bidden to the feast. When she had arrayed herself in beautiful clothes she went before the Looking-glass, and said---


    "Looking-glass, Looking-glass, on the wall,
    Who in this land is the fairest of all?"


    the glass answered---


    "Oh, Queen, of all here the fairest art thou,
    But the young Queen is fairer by far as I trow."


    ・willing=快く(喜んで)やる
    ・bid=勧誘する、招く
    ・feast=祝宴
    ・array=(人を)美しく着飾る
    ・by far=はるかに、断然
    ・trow=思う


    そこで、白雪姫もしょうちして、王子といっしょにお城にいきました。そして、ふたりのごこんれいは、できるだけりっぱに、さかんにいわわれることになりました。
     けれども、このおいわいの式(しき)には、白雪姫のまま母である女王さまもまねかれることになりました。女王さまは、わかい花嫁(はなよめ)が白雪姫だとは知りませんでした。女王さまはうつくしい着物(きもの)をきてしまったときに、鏡(かがみ)の前にいって、たずねました。

    「鏡や、鏡、壁(かべ)にかかっている鏡よ。
     国じゅうで、だれがいちばんうつくしいか、いっておくれ。」

     鏡は答えていいました。

    「女王さま、ここでは、あなたがいちばんうつくしい。
     けれども、わかい女王さまは、千ばいもうつくしい。」


    Then the wicked woman uttered a curse, and was so wretched, so utterly wretched, that she knew not what to do. At first she would not go to the wedding at all, but she had no peace, and must go to see the young Queen. And when she went in she knew Snow-white; and she stood still with rage and fear, and could not stir. But iron slippers had already been put upon the fire, and they were brought in with tongs, and set before her. Then she was forced to put on the red-hot shoes, and dance until she dropped down dead.


    ・curse=のろい(の言葉)
    ・wretched=惨めな
    ・peace=やすらぎ、安心
    ・stir=動く、動き出す
    ・tongs=はさみ道具 (火ばしなど)


    これをきいたわるい女王さまは、腹をたてまいことか、のろいのことばをつぎつぎにあびせかけました。そして、気になって気になって、どうしてよいか、わからないくらいでした。女王さまは、はじめのうちは、もうごこんれいの式(しき)にはいくのをやめようかと思いましたけれども、それでも、じぶんででかけていって、そのわかい女王さまを見ないでは、とても、安心できませんでした。女王さまは、まねかれたご殿(てん)にはいりました。そして、ふと見れば、わかい女王になる人とは白雪姫ではありませんか。女王はおそろしさで、そこに立ちすくんだまま動くことができなくなりました。
     けれども、そのときは、もう人々がまえから石炭(せきたん)の火の上に、鉄(てつ)でつくったうわぐつをのせておきましたのが、まっ赤にやけてきましたので、それを火ばしでへやの中に持ってきて、わるい女王さまの前におきました。そして、むりやり女王さまに、そのまっ赤にやけたくつをはかせて、たおれて死ぬまでおどらせました。


    結婚式に招かれた女王は、最後は、真っ赤に焼けた鉄の上履きを履かされて、死ぬまで踊り続けねばならなかったのですね。この結末は知りませんでした。


    でもいったい、誰がこの罰を用意したのでしょう?


    結末はずいぶんあっけない、たったの二、三行で、女王は片付けられてしまいましたね


    手持ちの講談社の絵本「しらゆきひめ」では、白雪姫が目覚めて、王子が一緒に僕のお城へ来てください、と言い、白雪姫がそれに応じたところで、小人たちがお祝いを言う。


    そして、

    七人の小人は、ゆめではないかとよろこんで、王子さまとしらゆきひめに、こころから、おいわいをいいました。

    で、終わっていて、女王の最期については触れていませんでした。別に残酷ではないから、この結末を書いてもいいのにね。悪いことをすると罰が与えられるよ、という戒めになるんだし。かの、「疑惑の銃弾」も、そういう結末にしっかりなってほしいもんです。20080228031443




    最初に書いたとおり、これは、大部分、2008年1月の記事の転載です。「疑惑の銃弾」はかのロス疑惑のこと。私がそういう罰が与えられる結末になってほしいと思った通り、私がこの記事を書いた後、同年の10月に三浦和義はロサンゼルス市警の留置所で自殺しましたね…
    上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。